超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 番外編   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
気がつけば、もう3月ですね。
VⅡまで残り2カ月切ったのかぁ……お金貯めないと。
それでは、 心配の理由 はじまります


心配の理由

「……それで、これがそうですか?」

 

「……他に怪しい物があると思うの?」

 

「……いえ、ないですね」

 

 目の前に浮かぶ“穴”のような物を見つめながら、黒ウサギとアベルは微妙な顔をしていた。

 十六夜を探すことに奔走している途中、様々な人達からの目撃情報を元に2人で森の中に入って見つけた“穴”。

 嫌な予感をぷんぷんと匂わせている“穴”。

 何もないところにぽっかりと開いている不自然な“穴”。

 常人なら近づくことも憚れる代物であろう。

 しかし、2人の探している人物の感性は常人のそれとは異なっており、予測することさえもままならない。

 ――だが、こう言う場合、2人は十六夜が何を仕出かすのかは今までの付き合いから身を持って知っていた。

 

「なんですか!? 何なんですか!? そんなにこの黒ウサギを困らせて、いったい何をしようって言うのですか!?」

 

「お、落ち着きなよ!? まだ十六夜君がこの中に入ったとは限らな……」

 

「ありえません!! それだけはぜーったいにありえませんよ!!」

 

 両手で頭を抱えて絶叫する黒ウサギの気持ちが分からないでもないが、アベルはとりあえず宥めようとする。

 だが、クワッと目を見開いて宣言する黒ウサギの言葉を否定できず、情けなくもアベルは視線を逸らしてしまう。

 アベルも十六夜がこの“穴”の中に入ったことを半ば確信していたのである。

 

「あーもー、私にもこの“穴”が何なのかも分からないって言うのに、どうして十六夜さんは自分からそう言う風に地雷を踏み抜いて行くのですか!? アレですか!? 1週回って馬鹿って言うことなんですか!?」

 

「……きっと何も考えてないと思うよ。ただいつものように面白そうだからってだけじゃないかな?」

 

「分かってましたよ!? それは黒ウサギにも分かってましたとも!? ――ですが、どうしてこう勝手なことばっかりしてくれやがるんですか、あの人は!?」

 

 本人がいないことをいいことに、黒ウサギは溜まった鬱憤を吐きだしていく。

 遠い目をして十六夜が何を考えていたのかを推測するアベルの言葉を聞いて、黒ウサギの瞳には涙がジワリと浮かんでしまう。

 振り回されてばかりで悲しくなってきたのだ。

 

「ギフトゲームは明日なのですよ!? いくら小規模な物と言えども、無断欠席なんて言語道断の最悪な所業なのですよ!? このままだと、せっかく回復の兆しが見えてきたコミュニティの活気にも影響が……」

 

「――はあ、仕方ないな。僕が行ってくるよ」

 

 十六夜を見つけられなかった時のことを考えて顔色を青くさせる黒ウサギに、アベルはため息をつきながら提案する。

 その顔は既に真剣そのもので、険しい視線を“穴”へと向けていた。

 

「黒ウサギは万が一のことを考えて、他を探しておいてくれないか? この“穴”には僕が入るから」

 

「そんなの駄目です!? 無謀すぎます!? 自殺行為です!? せめて、この“穴”が何か分かるまで……そうです!! 白夜叉様ならきっと何かご存じのはず……」

 

「頼んですぐに調査してくれるかは分からないでしょ?」

 

「うっ」

 

 “穴”へと1歩近づくアベルを、黒ウサギは慌てて止めようとする。

 だが、咄嗟に思いついた案を鋭い指摘で却下され、頭の上に生えている耳も力なく垂れてしまう。

 そんな黒ウサギに、アベルは苦笑しながら口を開く。

 

「大丈夫。とりあえず、こっちを問答無用で吸い込むみたいな危ない物じゃなさそうだし、十六夜君を見つけたらすぐに帰ってくるよ」

 

「……分かりました。アベルさん、どうかご無事で」

 

「うん、行ってくるね」

 

 最後まで自分の身を案じてくれた黒ウサギが渋々納得する姿に、アベルは心の中で感謝して“穴”の中に突入しようとする。

 まずは恐る恐る右腕を伸ばして“穴”の中に入れる。

 腕は“穴”を貫通することなく、まるで消えてしまったかのように見えなくなってしまう。

 だが、アベルは自分の腕がちゃんと存在していることを理解している。

 しかも、右腕にはこの場に吹いていないはずの風を感じているのだ。

 

(よし、特に問題ないな。このまま一気に……)

 

 右腕に異常がないことから、“穴”が空間を繋げる魔法のようなものだとアベルは解釈する。

 “穴”の向こうがどのような場所なのかは推測できないが、とりあえず危険な物でなかったことにアベルは安堵する。

 そして、覚悟を決めて徐々に“穴”の中へと体を滑り込ませる。

 

(うっ……ここはどこだ? 特に何も見当たらないけど――って、あれ?)

 

 “穴”を通り過ぎた途端に差し込んできた太陽の光に、アベルは思わず目を細めてしまう。

 すぐに光に慣れた目で辺りを見渡すと、そこは何も特出したものが見当たらない草原だった。

 その何もない景色に拍子抜けしてしまったが、すぐに十六夜が興味を示しそうな物を探そうとする。

 だが、動こうとする意思に反して、アベルの体はまったく動かない。

 

「え? あれ? どう言うことなの!?」

 

 慌ててジタバタと動くが、アベルの視点は変わらない。

 首や腕と言った上体は動くのに、どうしても今立っている場所から動くことができないのだ。

 そんな風に焦るアベルの耳に、少しだけ聞きとり辛い黒ウサギの声が“穴”の向こう側から聞こえてくる。

 

『……えっと、その、アベルさん? 見事に嵌まっちゃってますよ?』

 

「へ?」

 

 黒ウサギに言われて初めて、アベルは自分の現状を正確に認識できた。

 

 ――なんと、アベルの体は上半身だけ空中に浮いていると言う奇妙な状態だったのである。

 

「嘘!? これ、どうなってるの!?」

 

『知りませんよ!? こっちからはアベルさんの下半身だけが宙に浮いているって、すごい不気味な光景が黒ウサギの目の前で繰り広げられちゃってるんですから!?』

 

「それはこっちも同じだよ!?」

 

 どうやら“穴”につっかえてしまったらしい。

 アベル自身、踏ん張ろうとしても空中に浮いている状態のためにどうすることもできない。

 

「そっちから押し出してくれないかな!? この体勢、すごく気持ち悪いんだけど!?」

 

『無理無理無理ですってば!? と言うよりも、レディに殿方の臀部を触れと言うのですか!?』

 

「そんなことは今はどうでも……」

 

『どうでもよくなんかありません!? 森の中で殿方の臀部を触るなんて、完全に不審者じゃないですか!? そんな目で見られるなんて、黒ウサギには耐えられません!?』

 

「ああもう!?」

 

 “穴”の向こうで慌てている黒ウサギが頼りにならないことを理解したアベルは、この状況を打開するために考えを巡らせる。

 だが、こんな特異な状況に身を置かれているアベルが冷静に考えられるはずもなく……

 

「誰かー!? 誰かいませんかー!? 助けてくださーい!?」

 

 助けを呼ぶ声だけが虚しく草原に響くのであった。

 

 

*     *     *

 

 

「――っと、簡単に説明すると、だいたいこんな感じかな」

 

「箱庭にギフトゲーム、それにノーネームに魔王ですか……」

 

 みんなで軽くお菓子をつまみながら、私達はファルコムの説明を聞いていた。

 途中途中で私達も捕捉したし、だいたいのことは分かってもらえたと思う。

 現に、ネプギアはファルコムが説明した単語を反芻している。

 

「うん、単純にゲイムギョウ界とは別世界だと思ってくれればいいと思うよ。あたしも最初は戸惑ったし……」

 

「ふーん、そんな世界もあるんだ」

 

 ファルコムは最初に箱庭に着いた時のことを思い出しているのだろう。

 すごく微妙な顔をしている。

 箱庭に着く直前に乗っていた船が嵐に襲われて投げ出されてしまったと言っていたので、そんな顔をしてしまうのも分からなくない。

 でも、異世界の存在を平然と受け入れて相槌を打っているナナハの様子に、少しだけ疑問を感じてしまう。

 

「あまり驚いてないのね。正直な話、驚くか疑われるかの2択だと思っていたわ」

 

「まあ、ボク達もちょっと特殊ですけど、このゲイムギョウ界以外の世界を知っていますから」

 

 目をパチクリとさせる飛鳥に対して、フェルは苦笑しながら答える。

 異世界の存在を知っていたから驚いていなかったらしいけど、その特殊な事情っていったい何だろう?

 

「ほら、これも美味しいわよ」

 

「ありがとう。こっちもなかなかだった」

 

「本当? それじゃ、わたしにもちょうだい」

 

「いいよ。あーん」

 

「あーん……うん、美味しー!」

 

 そんなことを考えていると、隣に座っていたラムからお菓子をおすそ分けしてもらった。

 ちょうどまだ食べていなかったものだったので、私は喜んで頂く。

 お返しとして、私はラムの口にさっきまでもきゅもきゅと食べていたサンドイッチを齧らせてあげる。

 ニコッと笑うラムがほほ笑ましくて、何だか私も嬉しくなってくる。

 

「って、あなた達はちゃんと話を聞いてたの?」

 

「うん、聞いてた」

 

「難しいことは分からないけど、とにかく夢人がいた世界とは違う世界から来たってことでしょ?」

 

 半目で睨む飛鳥に構わず、私とラムはお菓子とサンドイッチを食べる。

 主に説明が必要だったのは飛鳥やネプギア達だけだったし、何も問題ないはず。

 それよりも、私の優先事項は新しく友達になったラム達との親睦を深めることだから。

 

「コルル、気持ちいい?」

 

『あぁ~、気持ちいいよ~』

 

「ふふ、気持ちよすぎて少しふやけちゃってるみたい」

 

『ええなぁ、次はワシもお願いしますわ』

 

 その隣でも飛鳥の呆れた視線をものともせず、エルとロムが三毛猫とコルルを撫でていた。

 話の方は聞いていたかどうかも怪しい。

 でも、2人が楽しそうなら問題ないよね。

 

「……ちょっと眩暈がしてきたわ。人が真面目に話しているのに、食べたり猫を愛でたりしているだけだったなんて」

 

「……分かるわ、その気持ち」

 

 手で額を覆う飛鳥の肩を、ユニが優しく叩いて宥める。

 どうやら2人の仲も良くなったみたい。

 これなら私達の事情を説明した甲斐もあったと思う。

 

「あははは、ネプギア達から他に何か聞きたいことはあったりするかな?」

 

「うむ、その箱庭には吾輩好みの幼女はどれだけ……」

 

「はいはい、トリックは無視していいとして、私は特にないかな」

 

 無駄にキリリとした顔で尋ねようとするトリックの言葉を遮り、ナナハはネプギア達の顔を見渡す。

 ユニは黙ったまま首を横に振り、ロムとラム、フェルも何も言わないところを見ると、質問はないらしい。

 

「――あ、あのう、質問とはちょっと違うんですけど、やっぱりその十六夜さんって人を探しに行った方がいいんじゃないでしょうか?」

 

 このまま真面目な話が終わるかと思ったら、ネプギアが恐る恐る手を上げて発言する。

 

「話を聞く限り、十六夜さんが心配いらないくらい、えっと……すごい人だってことは分かったんですけど、それでも私は探したほうがいいと思うんです」

 

「……ネプギアさんって、本当に真面目な子みたいね。まるでお手本のような提案じゃない」

 

「……そう見えるだけよ。今もガチガチで緊張しているだけで、中身がポンコツなのを隠そうとしているだけよ」

 

「聞こえてるよ!? そんなことないから!?」

 

 一瞬、十六夜のことをどう表現していいのか迷ったネプギアを前にして、飛鳥とユニは小声で話しあう。

 でも、それはネプギアだけでなく、私達も筒抜けだった。

 案の定、ネプギアは慌てて誤解を解こうとする。

 

「中身がポンコツって、酷いよ!? そう言うユニちゃんだって、すごく寂しがり屋のくせに見栄っ張りなんだから!?」

 

「は、はあっ!? そんなわけないじゃない!? アタシが何時寂しいとか言ったのよ!?」

 

「え、でも、ナナハちゃんが……」

 

「うん、ユニは寂しがり屋で間違ってないよ。この間も泊りに来た時に……」

 

「言うな!?」

 

 ナナハも加わって3人でガヤガヤと騒ぐネプギア達を見ると、本当に仲がいいんだと思う。

 ……そんな風に言い合える友達がいることが、少しだけ羨ましく感じる。

 

「え、なになに? ユニちゃん、もしかしてナナハちゃんの所にお泊まりしたの?」

 

「わたしもお泊りしたかった(しゅん)」

 

「じゃあ、今度はみんなでパジャマパーティーでもしようか? 場所はリーンボックスの教会――ううん、せっかくだから、夢人の所にでも押しかけちゃおうか?」

 

「えええ!? で、でも、夢人さんに迷惑なんじゃ……」

 

「――いい加減にしなさいよ!! 話がズレまくってるじゃないの!!」

 

「イタッ!?」

 

 3人の会話が膨らむと、ロムとラムも興味を持ったらしい。

 新しく2人を加えてのんきに会話を続けるのかと思えば、ユニが大きな声を出して中断させてしまう。

 ついでに、ネプギアの頭をバシッと強く叩いた。

 

「……うぅぅ、どうして私だけ」

 

「そもそもアンタが十六夜さんを探そうって言い出したのが原因じゃない」

 

「そうね。ネプギアさんも心配いらないって分かっていながら、どうして探したほうがいいって思ったの?」

 

 痛そうにユニに叩かれた場所を擦るネプギアの目には涙が浮かんでいた。

 結構、痛かったらしい。

 そんなネプギアを見て、ユニは呆れたように鼻を鳴らす。

 続けて飛鳥がネプギアの真意を聞こうと、会話を本題へと戻した。

 

「……だって、心配じゃないですか。当たり前のように傍にいた人が急にいなくなったりするのって」

 

「確かにそうだけど、十六夜君なら平気だろうし、どうにかなるなんて想像できないもの。きっと大丈夫よ」

 

「それでも万が一ってことがあるかもしれませんし、何が起こるかなんて分からな……」

 

「――はいはい、ネプギアもそこまでね」

 

「もぎゅっ!?」

 

 今にも泣き出してしまいそうな雰囲気で飛鳥に訴えかけるネプギアを、ナナハは強引に止めた。

 いきなり後ろから口を塞がれて、ネプギアはかなり驚いたようで大きく目を見開かせている。

 

「むぐぅ!? もがもぎゅっ!?」

 

「うんうん、ネプギアも言いたいことはちゃんと分かってるよ。でもさ、私達よりも十六夜さんのことをよく知っている飛鳥達が大丈夫だって言うんだから、少しは信じてあげなよ」

 

「もがぎゅっ!?」

 

「……多分、離して欲しいって言っているんだと思うんですけど」

 

「あ、そっか」

 

「――ぷはーっ! もー、酷いよ、ナナハちゃん!?」

 

 フェルのおかげで解放されたネプギアは涙目でナナハを睨みつける。

 対して、ナナハはそんなネプギアの視線を無視して飛鳥へと声をかける。

 

「ごめんね。ネプギアがこんなことを言ったり、さっきみたいにユニが突っかかったのには理由があるんだ」

 

「その理由って、私達が聞いても大丈夫なの?」

 

「問題ないよ。それに、次は私達の番だからね」

 

 申し訳なさそうに飛鳥が尋ねると、ナナハは苦笑した。

 そして、1度ネプギア達の顔を見てから語り始める。

 

「今から3年とちょっと前――犯罪組織のせいで、私達は大切な家族と離れ離れになっちゃったんだ」




という訳で、今回は以上!
まあ、VⅡよりも先に作品の方をどうにかしないといけませんよね。
頭の中で広がる妄想に私のタイピングが追い付かない現状をどうにかしたい今日この頃です。
それでは、次回をお楽しみに!
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