超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 番外編 作:ホタチ丸
とりあえず、今回は思いついたここまでは投稿したかっただけです。
それでは、 続いてしまった“もしも” プラネテューヌ編 はじまります
お兄さん――御波夢人は変わった人だ。
これには自信を持ってはっきりと断言できる。
ゲイムギョウ界と言うちょっと不思議な世界でも、お兄さんのような人は他にいないと思う。
……あっ、ボクの名前はフェルと言います。
成り行き上、ギョウカイ墓場を本拠地にしている犯罪組織マジェコンヌに家族3人で身を寄せています。
ボクの家は元々魔物使いと言われるモンスター達と信頼関係を結んできた家系でした。
ひっそりと暮らしていましたけど、女神が犯罪組織に負けて捕まったと噂されるようになると、ボクらは住む場所を追われるようになったんです。
あの時のことは今でも鮮明に思い出すことができます。
父さんと母さんが決死の思いでボクを守ろうとした時……
【出て来い、俺の相棒! ハードブレイカー!!】
【応!! ……って、待て!? なんだこの腕と足は!?】
【ふっ、ドリルとキャタピラはロマンだろ?】
――変なロボットと、その肩に乗ったスーツ姿の男の人が突然現れたんですよ。
男の人の無駄に得意げな顔と、戦車と人の上半身が合わさったようなロボットが急に現れたことなんて、忘れようとしても忘れられません。
正直、第一印象は工事用のロボットに乗った変な人が来たとしか思えませんでした。
……でも、これがボクとお兄さんの出会いの始まりです。
その後、ハードブレイカーさんに恐れをなしてボクらを襲ってきた人達が逃げ出したのを見て、お兄さんがボク達をギョウカイ墓場へと連れて来てくれたんです。
【住む場所がないなら、ここで生活すればいいさ。ゴミ山以外に何もない場所だけど、あなた達を襲う人達は絶対に来ませんから】
【……本当にいいのかい?】
【ええ、もちろん! ――ただし、1つだけ条件があります】
にかっと笑うお兄さんに父さんが確かめるように尋ねた。
すると、お兄さんは急に真顔になって人差し指を立てた。
何を言われるのかとボクらが息をのんでいると、お兄さんは……
【毎食ちゃんとしたご飯を作ってください!! 食材はこちらで全部用意します!! だから、お願いします!! ――もうカップ麺や冷凍食品だけの生活なんて堪えられないんです!!】
――涙ぐみながら土下座を始めたんですよね。
後から聞いた話だと、犯罪組織にはまともに料理ができる人がいなかったんです。
そのせいでお兄さんはいつもインスタント食品を食べていたらしいんですよ。
元々の薄給に加えて、マジック様から捕まえている女神達の世話の費用まで押し付けられたお兄さんはここ最近まともに食事もとっていなかったみたいで本当に必死でした。
助けてくれた恩人を無下にできないと父さんと母さんが快く承諾したことから、ボクのギョウカイ墓場生活が始まりました。
――でも、前世の知識でこの世界のことを知っていたボクには少しだけ抵抗感がありました。
俗に言うところの『転生者』であるボクは、お兄さんが所属している組織のことをまったく知らない両親と違って予備知識があったんです。
犯罪組織マジェコンヌ……『超次元ゲイムネプテューヌmk2』における敵役でした。
ゲームの内容については少ししかわからないボクでも、マジェコンヌが悪い組織だってことはわかっていました。
だから、最初は本当にここにいていいのかって本気で悩んだんです。
……でも、すぐにそんなことを悩んでいることが馬鹿らしくなってしまいました。
【ゆっくん? この漫画の続きってないの? なかったら、この作者が描いてるこの漫画を買って来てよ】
【ちょっといい? 黒い生地が足りなくなってきたから買って来て欲しいんだけど……あと、できたらミシンも用意してちょうだい】
【ついでにわたしの小説の続きを買って来てちょうだい。それと、これをいつものように妹達に届けてくれないかしら?】
【でしたら、わたくしもこのリストに書いてあるゲームを買って来てくださいまし。やはり、カタログだけじゃ満足できませんわ。ゲーマーとして、わたくし自身の手で評価しませんと】
【漫画と小説は中古本で揃えてるんだから贅沢言わないでくれ!? ミシンやゲームなんてもっと無理だから!? 黒い生地は買ってくるから、用意した針と糸で我慢しくて!? 後、ゲームはマジェコンで我慢してください、お願いします!? ……それと、ロムちゃんラムちゃんへの手紙はちゃんと今度ルウィーの教会に行く時に渡すから預かっとくよ】
――だって、女神達がすごく普通に生活していたんだもんなあ。
しかも、“女神の小屋”なんて札が下がっているプレハブ小屋で全員ゴロゴロしていた。
漫画を読んだり、コスプレ衣装を作ってたり、小説を読んでいたり、ゲームをしていたりと、ボクには楽しんでいるようにしか見えなかった。
お兄さんはお兄さんで女神達の世話をしているなんて言っていたけど、実際はパシリだもんね。
犯罪組織では安い時給で働くアルバイターで、女神達からはパシリのような扱いのお兄さんがさすがに憐れに思えてしまった。
でも、お兄さんは何を勘違いしているのか、犯罪組織をただの株式会社だと思っていたり、女神達を政府の役人だって本気で思ってるんだよね。
マジェコンだって、ブレイブ様が教育係を担当したせいで“娯楽に飢えている人達のためにマジェコンヌが開発した新しいゲーム”ぐらいとしか理解していない。
お兄さん本人としてはブレイブ様のように義憤に駆られてマジェコンをばら撒いているんだろうけど、このまま勘違いしたままで本当にいんだろうか?
それとなくマジェコンヌが犯罪組織だってことを伝えてもお兄さんは笑って取り合ってくれないし、正直どうしたらいいのかがまったくわからない。
さらに、厄介なことにお兄さんにはマジェコンヌで正社員になるなんて目標まであるらしい。
……まあ、理由はお兄さんの様子を見ていればすぐにわかったんだけど。
【いつもありがとうございます、御波さん】
【い、いやいやお礼なんていいって! ――あっ、そうだ! 今度ジャッジ様の鎧を整備するんだけど、ネプギアちゃんも一緒にやらない?】
【はい!! ぜひ手伝わせてください!!】
だって、お兄さんってギアお姉さんにデレデレなんだもんなあ。
尻尾があったら、きっとちぎれるくらいに振ってると思う。
……後日、頭部にドリルがついた鎧を纏ったジャッジ様に追われているお兄さんをみたような気がするけど、ボクは何も知らない。
そんなズレまくってるお兄さんは今、マジック様の前で土下座をしている。
――隣に金髪の女の子を連れて帰って来て。
「それで? そこの小娘はいったい誰なんだ?」
「いや、あの、その……これには深い理由がありまして……」
「いいからさっさと答えろ」
「ひいっ!? 家に帰りたくないって言うから連れてきちゃいました!?」
明らかに怒気を滲ませながら威圧するマジック様にお兄さんは言い淀んでしまう。
はっきりしないせいでマジック様が威圧を強めると、お兄さんは怯えながら早口で答える。
というより、お兄さん?
それって誘拐なんじゃないのかな?
「貴様、勝手な真似をして許されると思っているのか?」
「っ、でも、ほっとけなくて……」
ぎろりと睨むマジック様に、お兄さんは食い下がろうとした。
怯えて震えているのは変わらないけど、絶対に譲らないと言うように真っ直ぐにマジック様を見つめている。
その様子にマジック様はため息をついてしまう。
「はあ、3度目はないぞ? その小娘の面倒も貴様がしろ。いいな?」
「っ、は、はい!! もちろんです!! ありがとうございます!!」
呆れた目で女の子のことをマジック様が認めると、お兄さんは本当に嬉しそうに顔を綻ばせながら地面に額をすりつけた。
勢いよく頭を下げたせいで痛そうな鈍い音を鳴らしたけど、お兄さんは顔を上げずに頭を下げ続ける。
そんなお兄さんを見て、マジック様は疲れたように肩を落として額を押さえる。
……多分、マジック様はもう諦めの境地にいるんだと思う。
お兄さんが誰かをギョウカイ墓場に連れて来たことも、ボク達家族に続いて2度目だ。
他にも、お兄さんが起こす珍騒動にマジック様は毎回頭を悩ませているように見える。
加えて、昨日ギョウカイ墓場に侵入した人達によってギアお姉さんが連れて行かれてしまった。
マジック様としてはお兄さんが連れてきた家出少女よりも、ギアお姉さんの方が問題なんだろう。
「別に夢人に面倒をみてもらう必要なんてないよ。私があなた達を手伝えばいいんでしょ? そんなの簡単だよ」
「――ほう、随分な自信じゃないか」
話がまとまると、今まで黙っていた女の子が挑発的な笑みを浮かべながら話だした。
その言い方に気分を害したらしいマジック様が眉をひそめながら女の子を睨む。
ピリピリした空気を感じてボクもお兄さんも割って入ることができない。
女の子はマジック様に睨まれているにもかかわらず、まるで何も感じていないかのように振舞い続ける。
「だって、私は『特別』で天才だもん。ここで夢人と一緒にいられるのなら、なんだってしてみせるよ」
「ちょっ、おい!? 別にそんなことする必要なんてないぞ!? 俺がお前をここに連れてきた理由は……」
「うん、わかってるよ。夢人が私をここに連れて来てくれた理由はちゃんとわかってるし、嬉しいよ――でも、それとは別に私は夢人と一緒にいたいの」
女の子の発言に黙っていられなくなったらしいお兄さんが急に大声を出した。
でも、そんな心配そうな声を遮って、女の子ははにかみながらお兄さんの頬に自分の指を添わせる。
そんな予想外の事態を目の当たりにしたせいで、ボクもマジック様も驚愕に目を見開かせてしまう。
えっ、この子もしかしてお兄さんのことが好きなの?
お兄さんがもてるなんて、マジック様が優しくなったり、ブレイブ様が悪逆非道の限りを尽くしたり、トリック様が熟女好きになったり、ジャッジ様が暴れることをやめるくらいにありえないって言うのに……っ!?
「それにほら、私こう見えても――リーンボックスの女神候補生だから、ね」
『ぶっ!?』
にやりと横目で笑う女の子の言葉に、ボクとマジック様は思わず噴き出してしまった。
――女神が1人いなくなったと思ったら、新しい人が追加されちゃいました。
お兄さん、いったい何をやってるんですか!?
* * *
「はあ、はあ……チッ、なかなか壊れねェな」
バーチャフォレストの奥、私に向かって何度も刀を振り下ろした女性は肩で息をしながら悪態をついていた。
だけど、いくらやっても私に傷1つ付けることはできない。
プラネテューヌのゲイムキャラとして、あの人との約束を果たすために私は“勇者”が来るのを待たなければいけない。
ゲイムギョウ界のためにも、ここで壊れるわけにはいかないのです。
「あっ、いたいた。リンダ先輩!」
「……あん? テメェ、バイトの分際で何遅刻して――って、なんだそりゃ?」
私を壊そうとしていたリンダと呼ばれた女性は、遅れてきた男性を嫌悪感を隠そうとせずに睨もうとした。
しかし、すぐにその男性が持っている物の方へと意識を向ける。
――それはビニール袋だった。
男性はまるで買い物帰りと言わんばかりに両腕にビニール袋をぶら下げながら歩いてきたのだ。
……あれ?
何故だか、男性から女神の卵の気配を感じるのですけど……もしかして、彼が“勇者”なのでしょうか?
「何って、要はマジェコンの稼働を阻害するそのディスクをどうにかすればいいんですよね? だったら、わざわざ壊す必要なんてないですって」
眉をひそめている女性に説明するように、男性が持ってきたビニール袋から取り出した物を私へと近づけてくる。
その顔が私には悪魔のように見えてしまった。
* * *
ギョウカイ墓場からアイエフさん達に助け出された……というより、無理やりプラネテューヌへと連れて戻された私はゲイムキャラの協力を得るためにバーチャフォレストの奥へと向かっていた。
まだハードブレイカーさんに自爆装置を取り付け終わってなかったのになあ。
そんなことを考えながら奥へと進んでいくと、そこには……
「ふぅ、ここまですればもうこのディスクは使えませんよね? ミッションコンプリートです」
――清々しい笑顔で額の汗を拭う動作をしている御波さんでした。
その手には黒い油性と書かれたマジックペンが握られ、もう片方の手には“もう少し頑張りましょう”ってシールが貼られている落書きがされたディスクを持っていた。
よく見ると、地面には開封済みのスナック菓子の袋が落ちてる。
「いやいや、テメェのやり方の方が壊すよりもえげつねェんじゃないか?」
「何を言ってるんですか? 俺はただディスクが使えないように落書きしたり、シールを張ったり、スナック菓子を掴んだベトベトの手で触っただけですよ? それに壊せなかったんだから、仕方ないですって」
呆れている女の人に御波さんは苦笑しながら、ディスクに何をしたのかを話していた。
私の見間違いでなければ、ディスクが何かに堪えるように小刻みに震えているような気がする。
……もしかして、あのディスクがゲイムキャラなのかな?
でも、御波さんの言う通りあの状態で本当に私達に力を貸してくれるのかな?
正直、壊されるよりもディスクとしてもう修復不可能な気が……
超次元ゲイムネプテューヌmk2 夢の正社員を目指して 始まりません。
という訳で、今回は以上!
細かいところは別として、ここまでは書きたかったんで書いちゃいました。
これで心おきなく本編とコラボの方にも手をつけられます。
それでは、 次回をお楽しみに!