超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 番外編   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
ちょっと私用で時間が取れなかったので、今日はこちらを投稿します。
前に活動報告に書いていた短編です。
それでは、 続いてしまった“もしも” ラステイション編 はじまります


続いてしまった“もしも” ラステイション編

「――と言うことがあって、本当に大変でしたよ」

 

「それは災難だったんだね」

 

 目の前で苦笑しながら自分の体験談を話す青年に、僕は無難な答えを返す。

 しかし、決して適当に返事をしているわけではない。

 彼が来た時はいつもこのように僕が聞き手に回って話を続けさせているのだから。

 

「いやあ、毎回毎回愚痴をこぼしちゃってすみません。ケイさんしか俺の話をまともに聞いてくれなくて、本当に辛いんで……」

 

「まあ、僕でよければ何時でも話ぐらいは付き合わせてもらうよ」

 

「本当にありがとうございます――あっ、それと今回持ってきたのは50台しかないんですけど、足りますか?」

 

「ああ、いつもありがとう」

 

 もうお決まりとなった社交辞令を繰り返しながら、青年は僕に1枚のディスクを手渡す。

 ディスクが納まっているプラスティックケースには、【マジェコン ラステイション用】と書かれたラベルが貼られていた。

 非常識な話で、このディスクを破壊するとマジェコンの山が出てくる光景は未だに信じられない。

 

 彼――御波夢人はとても不思議な青年だ。

 犯罪組織の一員でありながら、敵対関係にある教会にマジェコンの販売許可を取りに来た時はさすがの僕もその時飲んでいたコーヒーを噴き出しかけた。

 話を聞いてみると、彼は何を勘違いをしているのか、マジェコンをとても素晴らしいものだと勘違いしているらしい。

 その考えを立場上肯定することはできないが、もしも無許可でばら撒かれたら困ってしまう。

 

 だから、僕は考えた。

 ばら撒かれてしまうのなら、僕が彼の意を受けてマジェコンを全て買い取ってしまえばいいのだと。

 要はセールスマンと顧客の関係を彼と結んだのである。

 そして、買い取ったマジェコンを全て教会で破棄すればラステイション中に広まることもない。

 そのおかげもあり、ラステイションはプラネテューヌやリーンボックスに比べてマジェコンの普及率は低くなっている。

 

「ところで、ノワールの調子は相変わらずかい?」

 

「……あーまー、はい。他の女神の方々に弄られるのは相変わらずなんですけど、最近ちょっと荒れ気味で」

 

「どうかしたのかい?」

 

 言い辛そうに視線を宙に向ける彼を見て、僕は噂に聞いていたプラネテューヌの女神救出作戦の影響でノワールの身に何かあったのかと勘ぐってしまう。

 

「あ、あははは、これも俺のせいなんですけど、実はナナハ……リーンボックスの女神候補生をギョウカイ墓場に連れて帰っちゃいまして」

 

「っ、そ、それは……」

 

「あ、ああ!? えっと、その誘拐とかそう言うことじゃなくて、お互いの合意の上でのことですよ!?」

 

 思わず噴き出しそうになってしまった僕は悪くないだろう。

 まさかリーンボックスでそんなことが起こっているなんて思わなかったのだから。

 そんな僕に対して、彼は慌てて弁明をする。

 

「そりゃ、保護者の了承とかは貰ってませんけど、あの時のナナハにはベールさんが必要だって思って……結局、あっちの教祖の人や変なメイド服姿の人から見たら誘拐だと思われても仕方ないことをしちゃいましたけど、俺は……」

 

「それが間違っているとは思っていないんだろう?」

 

「はい。俺、ナナハをベールさんに会わせたこと、絶対に間違ってなかったと思います」

 

 僕が確信を持って尋ねると、彼は先ほどまでの弱気な態度が嘘のように力強く言い切った。

 そんな彼に僕は思わず笑ってしまう。

 

「だったら、それでいいじゃないか。君の行動で彼女が救われたのならば、それは胸を張るものだと僕は思うよ」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

 自分の行動を肯定されたのが嬉しかったようで、彼はパアッと顔を明るくさせて頭を下げた。

 こう言う素直に行動できる彼だからこそ、犯罪組織に所属していても僕は信頼できるし安心して世間話も続けられる。

 ただ、僕のことを微塵も疑っていない様子の彼から犯罪組織の実情を聞き出すために利用していることについてだけは少しの罪悪感を感じてしまうのだが。

 

「ところで、その話とノワールにどんな関係があるんだい?」

 

「えーっと、そのせいでベールさんがナナハのことを散々可愛がったり、自慢したりするせいでノワールさん以外にもブランさんがちょっと……」

 

「ああ、なるほどね」

 

 言葉を濁してはいるが、その意味はちゃんと察することができる。

 つまり、ノワールは妹に会えたリーンボックスの女神に嫉妬をしているのだ。

 ユニの前では完璧な女神を演じようとするノワールだが、本当はもっと姉妹の触れ合いをしたいと思っていたことは僕にも分かっていた。

 だから、3年近く会っていなかった妹に会えて浮かれているリーンボックスの女神が羨ましくて仕方ないと思っているに違いない。

 

「だから、出来ればユニちゃんにギョウカイ墓場に来てもらえないかと……」

 

「それはさすがに無理だね」

 

「い、1泊2日!? 日帰りでもいいからノワールさんと話す機会を!?」

 

 即答する僕に、彼は必死に頼み込んでくる。

 でも、さすがに女神候補生を犯罪組織の根城に連れていくのは許可できない。

 姉のように頑張ろうとしているユニに、そんな情けないノワールの姿を見せたら、きっと色々と大変なことになりそうだからね。

 

 

*     *     *

 

 

 おいらはネズミであって人間じゃない。

 

 生まれを憎んだことは今まで1度もなかった。

 でも、あの日あの時あの瞬間――おいらは自分がどうして人間に生まれなかったのかを心の底から憎んでしまった。

 

「こんぱちゃん……どうしておいら達は人間とネズミに別れてしまったっちゅか?」

 

 ――そう、マイスウィートラブリーエンジェルこんぱちゃんに出会ったから。

 

「ああ、こんぱちゃんこんぱちゃんこんぱちゃん! どうしてこんぱちゃんはそんなに天使なんでちゅか! どうしておいらはネズミなんでちゅか!」

 

 気分はもうロミオとジュリエットのような身分の違いの愛に胸が張り裂けそうでちゅ。

 初めて知ったこんぱちゃんと言う天使への愛で、おいらは狂ってしまいそうでちゅ。

 

「おい、さっきから何をキモいことばっか言ってんだよ。んなことより、さっさとゲイムキャラ探せよ」

 

「ふん、これだからガサツな下っ端は」

 

「ああん? 喧嘩売ってんのか、テメェは?」

 

 崇高な天使への愛を理解しようともしない下っ端なんて放っておくとするっちゅ。

 今はゲイムキャラを探すことよりも、こんぱちゃんへの愛をどう言う形で伝えるのかが問題っちゅからね。

 

 ……おいらの愛をこんぱちゃんに伝えるのはかなり難しいっちゅ。

 こんぱちゃんは女神の味方で、おいらはその敵っちゅ。

 普通に考えたら、2人が愛し合うのは不可能でちゅ。

 だけど、そんな小さなことで諦めきれるほど、おいらの気持ちは小さくないっちゅ!

 

「お昼買ってきましたよー!」

 

「おっせーぞ、バイト! ……って、こりゃ一体何だ?」

 

「何って、テイクアウトしてきた牛丼ですけど」

 

「アタイはハンバーガーだって言っただろうが!!」

 

 下っ端を無視していると、後ろの方からバイトがのんきな声でパシリから帰って来たっちゅ。

 頼んでいたものと違うことに下っ端がうるさく怒鳴っているが、バイトは気にせずおいらに牛丼を手渡してきたっちゅ。

 

 このバイト――名前は忘れたっちゅけど、犯罪組織内でも色々とパシリをやらされているせいか、見た目と違ってそこそこ使えるっちゅ。

 後、確かプラネテューヌの女神候補生にお熱って噂が……っ!?

 

「ちょっといいっちゅか?」

 

「どうかしましたか? あれ、もしかして玉ねぎ駄目でした?」

 

「いや、別に牛丼に不満があるわけじゃないっちゅから。でも、次からは紅ショウガはいらないっちゅよ」

 

「分かりました。覚えておきますね」

 

 どうにも紅ショウガの味が苦手なんちゅよね。

 食べられないことはないっちゅけど、積極的に食べたいとも思えない味で……って、そんなことはどうでもいいっちゅよ!!

 

「ちょっと相談……いや、お前に聞きたいことがあるっちゅ」

 

「俺に、ですか?」

 

 首を傾げて不思議そうにするバイトに、おいらは本当に聞きたかったことを尋ねる。

 

「お前はプラネテューヌの女神候補生が好きって聞いたっちゅけど、本当なんでちゅか?」

 

「ま、まあ、はい」

 

 おいらの質問を、バイトはあっさりと肯定したっちゅ。

 照れ臭そうに頬を掻きながらも、しっかりと頷いたっちゅ。

 

「でも、おいら達と女神は敵同士っちゅ。それでも、お前は好きって言えるっちゅか?」

 

「言えます。俺はネプギアちゃんのことが好きだって」

 

 意地の悪い問いかけにも、バイトは即答してみせたっちゅ。

 しかも、はっきりと好意を口にしてっちゅ。

 

「いや、ワレチュー先輩の言いたいことは分かりますよ。でも、俺は自分の気持ちに嘘ついていられるほど、器用に生きられないみたいなんです。今だって、ネプギアちゃんに会いたい、ネプギアちゃんの声が聞きたいって思っちゃってますから」

 

 おいらが黙っていると、バイトはにやけながら話を続けてきたっちゅ。

 言い訳にも聞こえるそれに、おいらは酷く共感してしまうっちゅ。

 

「失って初めて大切なことに気付く――なんてベタな話ですけど、ギョウカイ墓場からネプギアちゃんがいなくなって、胸の中にぽっかりと穴が開いたような感じがしたんですよ。当たり前のように傍にいられて、すぐにでも会いに行ける距離にいたはずなのに、今はどこで何をしているのかが分からないことがすごく辛い」

 

「バイト……」

 

「最初は可愛くて、俺なんかの仕事を手伝ってくれる優しい子だから一緒にいたいなって気持ちだけでした。でも、今はネプギアちゃんの存在に、俺が今までどれだけ助けられてきたのかって実感しちゃうんですよね」

 

 うん? あれ、ちょっと方向性が変わって来ているような気がするっちゅ。

 バイトも何故か悟りを開いたような顔をしているっちゅ。

 

「時給はいつまで経っても上がらないし、雇用形態の変化もない。それなのに、仕事はどんどん増えていく。毎日8時間以上働いているはずなのに、定時以降は全てサービス残業。しかも、マジェコンの販売量がノルマ以下になると、全部買い取りになるから俺の給料が……」

 

「おい!? しっかりしろっちゅ!?」

 

「ワレチュー先輩、知ってますか? ネプテューヌさん達の遊んでいるゲームやマンガとかも俺の給料から引かれているんですよ? おかげで働いても働いても収支がマイナスになってですね……」

 

「もういいっちゅ!? もういいっちゅから!? お前はもう休んでいいっちゅよ!?」

 

 ……バイトが憐れ過ぎてもう見ていられないっちゅ。

 と言うより、犯罪組織がブラック過ぎて笑えないっちゅよ。

 

「でも、ネプギアちゃんがいてくれたから頑張ってこれたんですよ。どんなに辛い目にあっても、理不尽な暴力に振り回されても、ネプギアちゃんがいてくれるだけでよかったんです。最近だと頭の中でネプギアちゃんの声が聞こえてきたり、ゴスロリ衣装みたいなネプギアちゃんが見えたり……」

 

「お前の気持ちはよーく分かったっちゅ――だから、おいらに任せろっちゅ」

 

「ワレチュー、先輩?」

 

 うっすらと涙を浮かべているバイトに、おいらはドンと胸を叩いて宣言するっちゅ。

 

「お前とプラネテューヌの女神候補生の恋、おいらがプロデュースしてやるっちゅ! こう見えても、おいらはネズミ界で縁結びのプロフェッショナルだったっちゅよ!」

 

「ほ、本当ですか!? 俺の恋を応援してくれるんですか!?」

 

「当たり前っちゅ! お前はおいらの大切な後輩なんでちゅから!」

 

「っ、ワレチュー先輩!!」

 

 感極まった様子で抱きついてくるバイトを受け止め、おいらは優しく頭を撫でてやるっちゅ。

 バイトの鼻をすする音と胸にわずかな湿り気を感じるが、決して不快に思わないっちゅ。

 

 ――何故なら、バイトの恋を応援することはおいらの愛を成就させるために必要なことなんでちゅから!!

 バイトとプラネテューヌの女神候補生が結ばれれば、必然的においらとこんぱちゃんも親しくなるはずっちゅ。

 そう、恋の駆け引きとは大胆かつ繊細に行わなければいけないっちゅ。

 押してダメなら引いてみろ、1人でダメなら2人でぶつかるまでっちゅ!

 

 そして、絶対にバイトとプラネテューヌの女神候補生を親密にさせてみせるっちゅ!!

 ……さすがに幻聴や幻覚を見るほど追いつめられているバイトを放っておくこともできないっちゅからね。

 

 

「……何だ、これ」

 

 1人蚊帳の外だった下っ端が牛丼を食べながら、そんなことをぼやいていたことに、おいらとバイトは気付きもしなかったちゅ。

 

 

*     *     *

 

 

 ――その一撃はまさに不意打ちだった。

 

「ッ、アッ!?」

 

 気付けば、アタシは組み敷かれていた。

 押し倒され、身動きが取れない。

 

 アタシが……ラステイションの女神候補生であるアタシが不覚を取ったって言うの!?

 

「ぐっ……っ!?」

 

 離れなさいよっ! と言う叫びをアタシは思わず飲み込んでしまった。

 1秒でも早く起き上がり、目の前の男をぶっ飛ばしてやりたかったはずなのに。

 

「あっ……」

 

 初めて見る本気の『男』の目に見つめられ、アタシは動くことができなかった。

 そのまるで逃がさないと言わんばかりの強い眼差しに、意味もなく心臓が跳ね上がる。

 

 ……ちょっ、アタシってば何を考えてるのよ?

 傍にはネプギアもいるのよ?

 ライバルが見ているって言うのに、いつまで無様に転がっている気なのよ?

 ほら、早く立ち上がりなさいよ。

 

「え、ぁ、う……」

 

 いくら心の中で自分を鼓舞しようとしても、口から出たのは言葉にすらならない情けない音だけだった。

 元々熱かった顔が恥ずかしさでさらに火照ってくる。

 心臓の音と波の音だけがやけに大きく聞こえる。

 

 ……アタシ、このままどうなっちゃうの?

 やだ、見つめられているだけで苦しいはずなのに顔も動かせない。

 それに……あれ、ちょっと待って? もしかして、アタシこのまま……

 

「ごめん」

 

 アタシを押し倒している男が低い声でそう告げた。

 辛そうに見える硬い表情のまま、男はアタシと合わせていた視線をやや下へと下げる。

 つまり、アタシの唇に向けられたのだ。

 

 ……う、嘘、でしょ?

 ほ、本気でそんなことをしようとしているの?

 そんなアタシ、まだ初めてなのに。

 

 自分がどうなるか予想がついているにもかかわらず、アタシの体は少しも動かなかった。

 頭の中が真っ白になって何も考えられない。

 ただギュッと瞳を閉じてその時を待つだけ……

 

「えっと、その、間違えました」

 

「……はあ?」

 

 聞こえてきた声に目を開けると、そこには顔中に冷や汗をかいていた男――アタシも知っているケイに情けない愚痴をよくこぼしている御波さんの姿があった。

 

 超次元ゲイムネプテューヌmk2 夢の正社員を目指して 始まらないわよ。




と言う訳で、今回はここまで!
この“もしも”、ルウィー編までは一応の形になっているのですよね。
……ただ、リーンボックス編が修羅すぎて困ってます(汗)。
まあ、明日からはまた本編の方を投稿しますので、いつか手直しして投稿しますね。
それでは、次回をお楽しみに!
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