ガルパ☆ピコの奇妙な冒険   作:4kibou

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魔が差して息抜き。


スタービートクルセイダース
憑かれちゃった!


 時はガールズバンド戦国時代。

 数々のバンドが群雄割拠するここ……ライブハウス『さーくる』で。

 今日も嵐が、吹き荒れるゥ――!

 

「あの、まりなさん。香澄ちゃんが刑務所に入れられたって」

「何ィ――――ッ!?」

 

 馬鹿なッ!?

 

 

 

 ☆★☆

 

 

 

「有咲っ!」

 

 後ろから名前を呼ぶ声を聞いて、市ヶ谷有咲はふり向いた。

 見れば遠く、玄関口からこちらまで駆けてくる少女の姿が見える。

 

「沙綾……」

「か、香澄はっ!? ねえ、どうなったの!?」

「……分かんねえ。私もまだ、ここに来たばっかりで……」

「そんな……ううん。そうだよね……ごめん……」

「沙綾……」

 

 そう言ってうつむく少女――山吹沙綾は〝彼女〟の良き理解者である。

 思えば有咲が馴染むもっと前より仲良くしているようだった。

 それは心配も一入だろう、と有咲は努めて冷静に思う。

 

「……ったく、なにしてるんだよ香澄のヤツ。刑務所とか、私はじめて来たんだけど……」

「私も……」

「私も」

 

 同意する声がふたつ。

 うん? と不審に思って声のほうを向くと、そこにはいつの間にか馴染みある顔が立っていた。

 

「おたえっ!?」

「りみも居るよ」

「おたえちゃ……待って……!」

「いつからそこに居たの……?」

「ついさっき」

「…………、」

 

 花園たえと、牛込りみ。

 どちらも彼女たちが所属するガールズバンドのメンバーだ。

 ともかくこれで全員揃った。

 あとはひとり――牢屋に入ってしまった少女を含めるだけになる。

 

「――行くぞ、香澄のとこへ」

「……そうだね。怯えてても、ダメだもんね……」

「刑務所、はじめて見る」

「なんか、怖いね……?」

 

 四人はしっかりと決意を胸に秘めながら、受付に向かって歩きだした。

 

 

 

 ☆★☆

 

 

 

 曰く、彼女――戸山香澄が刑務所に入った理由は、一時的なものであった。

 いきなり路地裏で襲ってきたバンドマンたちを叩きのめし、総勢三十人を病院送りにしたのだ。

 しかし外傷は一切無し。

 血も一滴すら流れていない状態で、脳も体も異常はない。

 中には未だ意識の戻らない者もいるが、それにしたって「キラキラ……ドキドキ……うう……」と呻くぐらいで健康に問題はないとのことである。

 もう牢屋に入っておく必要もないのだが、それを香澄は拒否しているらしい。

 

「一体どうして……」

「香澄のことだから獄中ライブとかしてたり……ねーか」

「いくら香澄ちゃんでもそこまで……」

「あ。ギター、持ってくるの忘れた」

「いや持ってこなくていいから……」

 

 が、そんな少女たちの想像を戸山香澄は遙かに超えていた。

 いや、斜め上に突き抜けていた――!

 

「――やかましいっ! うっとーしーぞこのあまーーーっ!!」

「は?」

「返って、有咲……私はこの牢屋から出るつもりはない……」

「え、いや……え……香澄?」

 

 深く被られてネコミミ型の髪が突き抜けた学帽。

 襟に鎖がつけられた長ランを、花咲川の制服の上から着込んだ姿。

 なぜか彼女は牢屋のベッドのうえでごろんと寝転がりながら、おかしな姿で勝手なことを嘆いていた。

 

「私は星の住人……星の鼓動を聞いた瞬間から『運命』に囚われていた……ッ! 私こそがこの『星』の『囚人』だったッ!!」

「いや意味分かんねえし……ていうか二週間後には『さーくる』でライブやるんだろ? さっさと出て蔵に集合なー」

「あ、待って待って私も行くー!」

 

 ガチャリと開けられた牢屋から、「とうっ」と勢いよく香澄が飛び出す。

 愛用のギターを抱えているあたり用意がいい。

 

「てか、刑務所にギター持ち込みOKだったのか……」

「うん! 弾いてたー」

「本当に獄中ライブやってたんだね……」

「香澄ちゃん、大丈夫……?」

「私も一緒にやりたかった」

 

 スタスタと外へ向かう彼女たちの足取りは軽い。

 星の鼓動を聞いた――そう語る香澄によって結成されたガールズバンド。

 夜空にきらめく五つの綺羅星。

 無限の可能性を秘めた超新星。

 これぞ期待の新星バンド。

 集いし彼女たちの名前こそがそう――『Poppin‘Party』である。

 

「てかなんで牢屋に入ってたんだよ」

「あ、それはねー。えっと、そう! 私にッ! 悪霊が取り憑いているッ!」

「……はあ?」

 

 頭大丈夫かこいつ、みたいな目で見つめる有咲。

 どや顔でポーズを決める香澄はもちろん気付いていなかった。

 

「悪霊……?」

「うん。悪霊さん。なんかね、ギター弾いてたらこう、ドバァーって! 出たの!」

「幽霊……ちょっと怖いかも……」

「ね、香澄」

「どうしたのおたえ」

「見たい、そのユーレー」

「いいよ!」

「えッ!?」

 

 驚く有咲をよそに、むんと集中力を高める香澄。

 その手にはきっちりとギターが構えられている。

 なにをするかの見当は四人ともまったくついていない。

 ……そもそも香澄は悪霊と言ったが、それは本当に見せたいと思って見せられるものなのかどうか。

 というか非科学的すぎていくらなんでもありえねーというのが有咲の素直な感想だ。

 そりゃあねえだろ、と呆れ半分で香澄を見ていたそのとき。

 

「――それっ!」

 

 じゃん、とかき鳴らされるギターの音。

 同時に、

 

「うひぇあっ!?」

 

 バゴン! と近くにあった牢屋の柵がへし曲がる。

 一瞬で起きた変化。

 香澄どころか、その鉄柵には誰も指一本ですら触れていない。

 けれど、しかし、圧倒的に。

 目に見えるほど確実に、それはまるで殴られたように歪んでいる。

 ――有咲の背筋に、嫌なものが走った。

 

「……わ、わぁー」

 

 ちなみにやった本人であろう香澄まで若干引いている始末だった。

 

「……て、お前まで引いてどうすんだよっ!?」

「い、いやいやだってこんなに強いって思わなくて! ど、どどどどうしよう有咲!? これ弁償とかしないとダメかな!?」

「お、落ち着いて香澄。とりあえず事情を説明しないと――」

「あ、あわわわ……」

「……凄いユーレー」

 

 折れ曲がった牢屋の鉄柵を前に騒ぐ五人の少女。

 結局のところ、それをやったのが彼女たち……もとい香澄だとは誰も思うまい。

 そも事件にしたってそのとおり。

 戸山香澄という女子高生にそこまでの力があるはずもないのだ。

 そう――少なくとも、香澄自身には。

 

「(……今の)」

 

 そんな中で、山吹沙綾はたしかに見ていた。

 香澄がギターを弾いた瞬間。

 その音が響くのと時を同じくして、彼女の背後から放たれた弾丸のような拳を。

 

「(腕、だった……でも、あれは人……いや、悪霊……?)」

 

 一瞬だけ見えたその姿は人間の肌とはかけ離れていた。

 お化け、というのはすこし違うような気もする。

 全員が破壊痕に驚いているが、真に驚くべきはそちらのほうだ。

 マジックでもなんでもなく、いまの香澄には〝何か〟が憑いている。

 

「超能力かよ……香澄、どうなってんだ……?」

「いやー……私にもさっぱり……」

「香澄ちゃん、怪我とかない? 平気?」

「だいじょーぶ! ほら、ぜんぜん!」

「……なんか、ちょっと面白いかも」

 

 幽霊バンド、というたえの呟きに「いいねー」と香澄が声を弾ませて応える。

 

「(……まあ、どうでもいっか)」

 

 そして沙綾は考えるのをやめた。

 悪霊とかなんとか知らないけど影響ないならそれで、みたいな感じである。

 短き青春を駆け抜ける彼女たちにとって大事なのは未知ではなく目の前のことだ。

 つまるところ、二週間後に差し迫ったライブのコトである。

 

「で、香澄。その服はなに?」

「さーやたちの前に来たまりなさんからもらっちゃって。似合う?」

「……あはは、どうだろー……?」

 

 時はガールズバンド戦国時代。

 数々のバンドが群雄割拠する争いの時代。

 今そこに、新たなる風が吹き荒れる――!

 

 

 

 ☆★☆

 

 

 

「困るわ……刑務所なんかに入られちゃあ、困るのよ……」

 

 暗い室内で、彼女は静かに呟く。

 闇に溶け込むような髪と瞳。

 一筋の光だけがその身をわずかに映し出している。

 

「これから先……ガールズバンドの時代は変わる……ッ! 『革命』が起きるのよッ! 新たな時代が……〝流れ〟が巻き起こるッ!!」

 

 革命、それはつまりレボリューション。

 全くもって異なる価値観、能力の台頭。

 古いものは淘汰され、新しいものが成り代わる。

 ガールズバンドが音楽をもって争う時代は終わりを告げる。

 それはさながら戦場の銃に剣が取って代わられたように。

 数多の騎兵隊がガトリングに容易く屈していったように。

 

「そしてッ! その〝流れ〟の中心にいるのは私ッ! 時代の辿り着いた頂点に君臨する者こそがこの私よォーーーッ!!」

 

 バァーン、と奇妙にポーズを取りながら彼女は高らかに宣言する。

 

「私こそがガールズバンドを支配するッ! 〝力〟が必要なのよッ! すべてをねじ伏せるための圧倒的な〝力〟がッ!」

 

 ゆらり、と。

 その背後に、ひとつの影が現出する。

 

「もう何者にも……そう、二度と! 二度とだ! 『さーくる』を壊させはしないッ!」

「あ」

「ん?」

 

 突然パッと明かりがついた。

 ふり向けばクマの着ぐるみが入り口で立ち尽くしている。

 なんか、こう、物言いたげに。

 

「……や、あの……電気、消えてたんで……」

「…………気にしないで、美咲ちゃん」

「本当スイマセン、まりなさん」

 

 バタン、と扉が閉められる。

 彼女はひとつコクリと頷いて、明るく前を向いた。

 

「――うん!」

 

 今日もライブハウス『さーくる』は平和である。           




ギャグです(真顔)

毎日投稿は精神的なスタンド攻撃を受けるのでもうやらない(戒め)

ゆっくり投稿します。そうスカートをまくるようにゆっくりと書くのだ……


ガルパ☆ピコ特有の二つ名を是非とも使っていきたくて書きました(厨二)
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