ガルパ☆ピコの奇妙な冒険   作:4kibou

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サッドネスメトロノーム

 

 前回までのガルパ☆ピコの奇妙な冒険は――

 

「私の『サークル』がッ!?」

 

 まりなは激怒した。

 

「すごいよりんりん!」

「ありがとう……」

 

 圧倒的コンビネーションの前に歯が立たないまりな!

 追い詰めるRoseliaの猛攻は未だ止まらない――!

 

 

 

 ☆★☆

 

 

 

 ――逃げるしかない。

 まりなの出した結論がそれだった。

 正直言って『サークル』の音止めを打ち破られたダメージはでかい。

 とてつもなくでかい。

 それまで余裕綽々油断たっぷりの態度をとり続けてきた彼女をして、

 

『流石にこれはちょーっとまずいかなー?』

 

 なんて首をかしげるぐらいだった。

 止まった音の世界は絶対だ。

 だからこそどんなに追い詰められてもそこに起死回生の一手があった。

 まりなを最強たらしめていた理由でもある。

 故にその世界が破られた以上、彼女の優位性は揺らぎつつある。

 

「(逃げなくては……このふたりから……距離を取らなくては……!)」

 

 ……だが、本当にそれで良いのだろうか。

 勝負から逃げる。

 それはつまり月島まりなの敗走を意味する。

 勝てないと言ってしまったも同然だ。

 たかだかガールズバンドのメンバーに、ライブハウスのスタッフである彼女がそんな弱みを見せて良いモノか、と。

 

「(いいやッ! これは『負け』ではない! 『敗北』ではないッ! これは勝利のための逃走よッ! 私が目指すのはただひとつ――!)」

 

 くるん、と踵を返してまりなは走り出した。

 

「いざッ! 『さーくる』へ!」

「あっ! まりなさんが逃げる! 追いかけるよりんりん!」

「あこちゃん……射程……は……?」

「足りてないっ! りんりんは!?」

「わたしも……だめ……」

「(ラッキー! これは、私の時代――)」

 

 ニヤリと笑うまりなの運勢は、しかしそう長く保たなかった。

 不意に頭上をおおう黒い影。

 猛スピードで迫り来るソレに気付くまで0.5秒。

 さらに対応へ舵を切るまで0.5秒。

 きっかり一秒のリアクションを経て、容赦なく影はまりなに激突した。

 

「ごはっ!?」

「うわあ!」

「ん?」

「……あれ、って……」

 

 バスケットボールのように道路を跳ねるまりなと、勢いそのまま滑っていく落下物。

 それがちょうど減速して止まった先に、ひとりの少女が立っていた。

 

「……なにを、しているの……?」

「! おねーちゃん!」

 

 がばり、と落下物――もとい氷川日菜が顔をあげる。

 奇しくも姉妹が揃った感動の再会シーンなのだが、色々と涙を流すには理解不能な部分が多すぎた。

 道路に横たわる月島まりなとか。

 遠くでこちらを見ている白金燐子と宇田川あこのふたりとか。

 気のせいでなければ空から落ちてきた系ヒロインの妹とか。

 

「日菜、顔中泥だらけだわ」

「でもおねーちゃんに会えたからプライスレスだね!」

「意味が分からないわ……」

 

 いや本当に意味が分からない、とため息をつきながら紗夜がハンカチで日菜の顔を拭く。

 

「……悪いけれど、『CiRCLE』……」

「!」

「あのふたりの射程距離外に居る今こそが唯一の機会よ……ひとりでも、不安材料は減らすに限る……!」

「(これは……やはり……)」

「?」

 

 ぽかん、と声もでない状況に首をかしげる日菜と、二度目の感覚に確信を得る紗夜。

 手足は末端までまったく動かないが、生命活動が停止したワケではない。

 圧迫感からして音を止めているのだ、と冷静な頭で理解した。

 

「氷川紗夜……氷川日菜……! ここでッ!」

「!!」

「終わらせる――!」

 

 浮かび上がるスタンドから拳が放たれる。

 ちょうど、直線上に並んだふたりを貫く形だった。

 不幸中の幸いというのがあれば、タイミングと、咄嗟の判断力。

 止まった音が再開するその瞬間。

 意識するのでもなく当然のことのように、気付けば紗夜は前に出ていた。

 胸に走った鋭い衝撃と苦痛に、顔を歪めながら。

 

「――――っ!!」

「え?」

 

 要するに、考えるまでもなく。

 

「間一髪……という、ところかしら……でも」

「おねーちゃん……!」

 

 突き刺さった『サークル』の腕を、水色が掴む。

 ……貫通した。

 凹んだとか、そういうレベルではない。

 むしろなんで生きているのか分からない重傷だった。

 たぶん補正だ。なんかの補正だ。

 なので、いまの紗夜にとってはそれだけが頼りである。

 

「私の音は決して変わらない――」

「! これは……」

 

 パキパキと『サークル』の腕が――ひいてはまりなの腕が凍っていく。

 同時に抉られた腹部の傷さえも覆っていく。

 寒さはないのに氷結するのは、先ず間違いなくそういうことだ。

 

「逃がすわけにも……この子に怪我を負わせることも……いかないわ。だから」

「……おのれRoselia……まだやるというの……!?」

「――Determination Symphony」

 

 悲しみのメトロノームが響き出す。

 

「足を止めるなら……これで十分でしょう……」

「――いいえ、不十分よ。私の『サークル』の前ではッ!」

 

 無理やり引き剥がされた氷が砕ける。

 氷川紗夜の『スタンド』に罅が入っていく。

 大きな一撃は文字通り命を侵す一手だった。

 ぼう、と薄れかける視界のなかで、しかし彼女はしっかりと、目尻に涙を浮かべる誰かを見た。

 

「(――日菜)」

 

 それだけで、折れかけた意識が再起する。

 自分にとっての理由としてはそれこそ十二分。

 凍りつく『サークル』の腕を掴みながら、紗夜はゆっくりと笑った。

 

「……大丈夫よ」

「っ!」

「……私は……あなたの……」

「くらえRoseliaッ!! ピックだァーーーッ!!」

 

 ――大事な何かが切れる音。

 無数のピックに刺されていく氷川紗夜を、誰もがただ見ているしかない。

 彼女はまだ生きている。

 傷口を氷でふさいで止血しながら、ピックの集中砲火を一身に受けきった。

 けれど、その光景に痛みを覚えたのは彼女ではなく。

 

「!?」

 

 ビキッ、と見事にかたまる体。

 まりなの足下から指先まで、先ほどの比ではないぐらいの寒さ。

 凍りついたように動かない肉体に、彼女は思わず驚愕に目を見開いた。

 

「な、に……ッ! これは――!」

「――――」

 

 見える。

 氷川日菜の背後に、誰かと同じなにかが見える。

 それはきっと同じ色で、同じ形の。

 

「(同じタイプの、スタンド――!)」

「――――――、」

「っ! このままではまずいわ! 『CiRCLE』ッ!!」

 

 停止していく周囲の音。

 なにもかもが動けなくなる彼女の世界。

 しかし、

 

「なッ……! 馬鹿なッ!?」

 

 それでもなお、凍結は止まらない。

 

「そんな……! 音を! 目に見えない音すら凍らせているというのッ!? そ、そんなデタラメが――ッ!?」

 

 たまらずまりなは『サークル』で自身を殴りつけて脱出する。

 吹き飛んだ体は遙か遠くまで。

 距離も角度も度外視だが、いまはなにより離れるのが先決だ。

 すべてが凍てつく氷の世界。

 彼女のスタンドさえ凌駕する少女の力が広がっていく。

 それ即ち、暴走とも呼ぶべき圧倒的なスタンドパワー――!

 

「街が……凍りつくッ!!」

 

 ――その日、彼女たちの街は『雪山』へと変貌を遂げた。




>つまりどういうこと
次回からやべーやつら編がはじまる

>雪山……あっ(察し)
ここからが俺たちのステージだ!(勢い)

>展開が雑オールライト
圧倒的に尺が足りない

>ふむ……これはつまり姉妹愛じゃな?
いいえケフィアです(違
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