ガルパ☆ピコの奇妙な冒険   作:4kibou

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スマイルオーシャン
スカイライブはまた今度


 

「さあ! 行くわよみんな!」

「…………、」

 

 そう言う弦巻こころに、美咲はそっと眼下を見下ろした。

 ――雪山だ。

 見慣れた街とは思えない白さが視界を埋め尽くしている。

 自家用ヘリで弦巻邸から出発した彼女たちの旅路は、スタートから思いっきりぶっ飛んでいた。

 ……というか外の状況がぶっ飛んでいた。

 なんだこれ、と抱えたくなる頭を振って美咲は隣のこころを見る。

 

「どうしたの、美咲?」

「……もう一度、説明をお願いしたいんだけど」

「あら、分かりづらかったかしら。良いわ! じゃあもう一回言うわね!」

 

 バン! とヘリの扉は開け放たれた。

 メンバーは総勢五人。

 

「これよりあたしたちは――」

 

 弦巻こころ。

 

「わあー……! たかーい!」

 

 戸山香澄。

 

「真っ白だね!」

 

 北沢はぐみ。

 

「ふええ……!」

 

 松原花音。

 

「…………、」

 

 そして、奥沢美咲。

 

「――街に、飛び降りるわ!」

「(だから薫さんは向こう(・・・)に行ったのかあ……)」

 

 遠い目をしながら、彼女は遠くない未来を受け入れることにした。

 

 

 

 ☆★☆

 

 

 

 ――もとより。

 人間は高所を恐れる生き物である。

 地上何十メートル、何百メートルなんて足が震えて当然だ。

 ヘリの上から見た景色はぜんぶが作り物めいていて実感がない。

 まるでミニチュアでも見ているみたいな感覚だが、頬を撫でる風が明確に現実を突きつけてくる。

 なにより恐ろしいのはこんなところからパラシュートもなしに飛び降りることだ。

 ……そう、パラシュートもなしに。

 こんな、ヘリを飛ばすような高所から。

 生身一つで飛び降りる。

 みんなで。

 弦巻こころはそんな宣言をしたのだ。

 

「(ありえない……!)」

「楽しそう!」

「だよね!」

「でしょう!」

「(神様――!)」

「美咲ちゃん……」

 

 見かねた花音が、ぽんと美咲の肩に手を置いた。

 

「花音さん……」

「逆に考えてみよう……? 飛んじゃってもいいさ……って」

「――――いやなに言ってるんですか」

 

 直後、こころは飛んだ。

 

「わーーーーい!」

「ええ!?」

 

 マジで飛んだ!? と美咲がふり向くよりも早く。

 続いて戸山香澄は流れ星になった。

 

「ひゃあーーー!」

「うそ!?」

 

 戸山さんまで!? と驚く暇なんてあるべくもない。

 そうして北沢はぐみは空へと旅立った。

 

「行くよーーー!」

「ちょっ!?」

 

 残されたのは、美咲と花音だけ。

 ガクガクと震え始めた足で、彼女はゆっくりと同乗者を見る。

 

「か、花音さん……!」

「――ごめんね、美咲ちゃん」

 

 ばっ、と少女の体が機体から離れる。

 一瞬だった。

 手を伸ばす余裕すらなく、奥沢美咲は取り残された。

 

「……っ、ああ、もう……! これだから――!」

 

 くり返すが。

 人間は高所を恐れる生き物である。

 体を揺らす風、眼下に広がる小さな景色。

 落ちれば死ぬ、ということを正常に理解しているが故に、その恐怖は大きい。

 しかもこれに至っては倍々ゲームのように膨れ上がるのだから質が悪い。

 一メートル、二メートル違うだけでも震えは変わる。

 ましてや地上何十、何百メートルなんて生まれたての子鹿にならないほうがおかしい。

 だから、ことこの状況において彼女は紛うことなき常識的な知性の持ち主だった。

 

「これだからツッコミ役は貧乏くじなんだ――!」

 

 渾身の叫びと共に美咲は空へ飛び立った。

 羽ばたく翼なんてないけれど。

 命を守るパラシュートなんてないけれど。

 そうするしかないから、もうそうするしかなかった。

 

「――ってやっぱ無理ぃぃいいぃぃいいいい!?」

 

 風を切って落ちる美咲。

 程なくして先に飛び降りた四人の姿が見えてくる。

 花音を除いた三人とも笑顔なのが既に恐怖だ。

 

「楽しそうね、美咲!」

「こ、こころ! ぱ、パラ! じゃなくて着地! どうするの!?」

「それはもちろん『コレ』で行くわ!」

 

 きらり、と輝いた彼女の背後に像が現れる。

 ピカピカ、ニコニコと輝く謎の物体。

 それだけで美咲はなんとなくこころの言いたい無茶を察知した。

 

「あたしたちの『スタンド』で着地するわ!」

「おー! それじゃあ『ランダムスター』ッ!!」

「(名前あるんだ……!?)」

「それがかーくんの『スタンド』なんだね! じゃあはぐみも!」

「(うわーやばいやばいどうしようあたしの『スタンド』って着ぐるみ(ミッシェル)なんですけど!?)」

 

 よく分からないこころの笑顔とも、ヒトガタである香澄の星とも違う。

 奥沢美咲の『スタンド』能力は、単純に着ぐるみだった。

 もっと言えばミッシェルだ。

 単純に着替えの手間が減っただけだ。

 どうしろと。

 

「地上まであと五秒よ! 笑顔で!」

「いくよ『ランダムスター』ッ!!」

「はぐみのコロッケならこのぐらい余裕だよ!」

「ふえええええええええええええ!」

「ああああもうどうにでもなれーーーッ!」

 

 ――次の瞬間、彼女たちは盛大に地面と激突した。

 道路に走る亀裂。

 紋様のように広がるスマイルの痕。

 飛び散っていく無数の星。

 アスファルトを砕くコロッケ。

 少女を優しく受け止めたジェリーフィッシュ。

 そして、

 

「…………あ、これ身体強化スーツみたいな感じだ……」

 

 両足を地面に突き刺したミッシェルが、ずうんと立っているのだった。

 

 

 ――ガルパ☆ピコの奇妙な冒険ッ!

 

 第四部!

 

 スマイルオーシャン

 

 

「あたしはこの笑顔の海から自由になる……!」

「まるで雪山ね、ミッシェル! 登りましょう!」

「ひとりの囚人は壁を見ていた……もうひとりの囚人は鉄格子からのぞく星を見ていた……あたしはどっちだ?」

「もちろんあたしは笑顔を見るわ!」

「星!?」

「そういえばかーくんから星が出てた!」

「…………、」

 

 松原花音はじっと自分を受け止めたクラゲを見つめていた。

 補足するとスタンドである。

 

「でも、街はなんとかしないと……」

「だから解決しに行くのよ!」

「つまり吹雪の中心まで行くってことか……いや、これ本当に大丈夫……?」

「でもすごいねー、街全体を凍らせちゃうなんて……」

 

 これが日菜さんのスタンドかー、とあたりを見渡してほえーと漏らす香澄。

 規格外であることに気付いているのかどうか怪しいところだった。

 

「(せめて! 市ヶ谷さんとは言わないから! せめて! せめて山吹さんが欲しい!)」

 

 美咲もといミッシェルの切実な願いだった。

 

「……って、こころ。なんか、向こうから飛んできてるけど……」

「?」

「あ、ほんとだ。かーくん、あれあれ」

「え? あれって……」

 

 目をこらしてみれば、たしかに見える。

 急速に接近する黒いなにか。

 手足があるので生き物ではある。

 なんかうっすらと叫び声も聞こえるので人間ではある。

 ――そして、戸山香澄が敗北を喫した相手でもあった。

 

「――まりなさんだ!」

「え」

「みんな下がって! 『ランダムスター』ッ!!」

「うわあああああああああ――あッ!? あなたたちはッ!?」

『キラァッ!!』

「ぐおぉーッ!?」

 

 バゴン、と撃ち抜かれてピンボールのように飛んでいくまりな。

 それを香澄は凄い勢いで追いかけて行く。

 まさか彼女が自身の『サークル』で飛んできて、そのまま殴られて飛んでいったなんて誰も思いもしないだろう。

 

「かーくん行っちゃったね」

「なんだったんだろう……」

「うーん、でも楽しそうだったわ!」

「(ああ、ちょっと負担が減った……)」

 

 かくしてこのように。

 ガールズバンドを巻き込んだ戦乱は、次第に終わりへと近付いていく――!    




>飛び降りる
まあ、やるよね

>笑顔
案の定

>コロッケ
今作屈指のヒーラーです。

>クラゲ
すごい可愛い。たぶん。

>ミッシェル
ハッピーフライトモード標準装備のアイアインマン的ベアー。

>頭ハロハピ感足んねえぞ!?
OKもっとハメを外していきたい(真顔)
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