ガルパ☆ピコの奇妙な冒険   作:4kibou

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儚い微笑み

 

 前回までのガルパ☆ピコの奇妙な冒険はッ!?

 

「街が雪山になってた……」

 

 以上ッ!

 

 

 

 ☆★☆

 

 

 

 ――寒さとはつまり生命を追い込む最上の手段だ。

 手足の末端から段々失われていく体温を感じつつ、奥沢美咲は前に進む。

 極寒の街は雪山とも思えるモノだった。

 吹雪で一メートル前方さえしっかりとは見えない。

 これがひとりの少女の『スタンド』によるものだと言うのだから、最早ワケが分からなかった。

 というかこれはもう街ではなくガチの雪山なのではないだろうか。

 

「(ま、まつげが……凍って……!)」

「み、美咲ちゃん大丈夫……?」

「花音、さん――」

 

 ふり向いた松原花音は、自身のスタンドに乗って浮遊していた。

 

「……寒くないですか」

「? うん」

「……そのクラゲ、あったかいんですか?」

「うん」

 

 神は死んだ。

 

「うっぐふう」

「ミッシェル! こころん大変! ミッシェルが!」

「そんな! 一大事よ! 脈がないわ!」

「はぐみに任せて! えい!」

 

 ドゴォ! と容赦なく叩きこまれるコロッケ。

 彼女のコロッケは生命の神秘。

 その精神の具現化である元気印のコロッケだ。

 つまるところ停止した心臓ぐらいは動かせる。

 

「……はっ、危なかった……」

「良かったわ! 目を覚ましたみたい!」

「わーい! ミッシェル! ほらもっと食べて! はぐみのコロッケだよ!」

「うーんこのなんだろう致命的なミスを犯した翌日みたいな気分……」

 

 一時のツッコミ不在が一生涯残る傷となる。

 彼女の失った数秒は決して数秒で取り戻せる次元ではなかった。

 つまりもう手が回らない。

 

「ていうかいつまで吹雪のなかを進めば……!」

「見えてきたわ! あそこが吹雪の中心よ!」

「え――」

 

 ――そこに、呆然と座る少女と氷付けの氷川紗夜がいた。

 

「紗夜先輩……!?」

「こ、凍ってる……」

「あ、日菜ちゃんだ!」

 

 永遠を思わせる氷の牢獄のなかに少女がふたり。

 すこしも寒くないワケではないけどたぶんそういう感じ。

 ありのままの姿を見せかけた紗夜は実に悲しみのメトロノームだった。

 つまり姉妹愛である。

 

「助けるわよ!」

「も、もちろん……はっ」

 

 動き出したミッシェルがピタリと固まる。

 見れば右半身が凍っていた。

 

「こ、この吹雪……スタンドすら凍るってことか……!」

「だ、大丈夫だよ美咲ちゃん! 私のスタンドに掴まって……!」

「(あ、本当に暖かい)」

 

 便利だなあ、と思うのも束の間、ミッシェルの手足がバキバキに凍っていく。

 

「うわやっぱダメだ!? ちょ、これどうするのこころ!」

「心配することはないわ!」

 

 そう言う弦巻こころも凍っていた。

 

「心配なんだけど!?」

「既に薫が動いているもの!」

「薫さん……? はっ、まさか――」

 

 そう、ハローハッピーワールド最後のひとり、瀬田薫の向かった先とは――

 

 

 

 ☆★☆

 

 

 

 地面と接触寸前だった白鷺千聖は、ふとその腕に包まれた。

 どこか覚えのある香りと感覚。

 それが誰のものであるのか、彼女は記憶を探ろうとして――

 

「やあ千聖、無事かい?」

 

 探るまでもない、とため息をついた。

 

「どうして薫がここに居るの……」

「私だけではないよ」

「ちょ、チョココロネがありますぅ!」

「ぶ、ぶ、ブシドー!」

 

 コロネに埋もれる麻弥と、コロネをすぱっと両断するイヴ。

 見事な空を裂く剣さばきだった。

 

「あなたたちは……!」

「ったく、いきなり人が落ちてくるし、なんか外見たら吹雪いてるし……私たちが寝てる間になにがあったんだよ」

「あ、有咲ちゃん! 向こうから誰か――」

「うん? ……って、まりなさんじゃん!」

 

 ゴッ! と弾丸のように迫るまりな。

 さながら人間大砲とでも言うべき光景に、りみと有咲が咄嗟に構える。

 ――そこへ。

 

「ここは私に任せて」

「ちょっ!? 待っ……」

「――おたえちゃん!」

「これは、香澄のぶん」

 

 ガツン、直撃した拳にまりながうめき声をあげた。

 

「ぐ、ふぅえ……!?」

「まだ、Poppin‘Partyは終わってない……! これも香澄のぶん!」

「ぐあ――――ッ!」

 

 直角に軌道を曲げて勢いもそのままに飛んでいくまりな。

 だが、それを易々と許す彼女でもない。

 

「うおおお『CiRCLE』ッ! 今度こそ音よ――」

「いや、それはないだろ(・・・・・・・)

 

 が、止まるはずの音はどうか。

 周りの動作はどうか。

 依然として動き続ける周囲の空間に、彼女は困惑と共に叫ぶ。

 

「な、なにィーーーッ!?」

「音を止めるなんて普通じゃねえ。……普通じゃねえから、私のツッコミ範囲内だ。私の『スタンド』なら……ツッコミを入れられる」

 

 甘辛パーソナリティ。

 目覚めたその力は、この世すべての異常を切り捨てる――!

 

「ば、馬鹿な市ヶ谷有咲ッ!? スタンドに目覚めたというのッ!? おのれPoppin‘Partyィーーーーッ!!」

「――まだ!」

「ぬうッ!?」

 

 ざっ、と回り込んだまりなの飛んでいく先に、キラリと流れ星みたいに少女が立つ。

 どこに行くか、どこへ飛ぶか。

 その計算のすえに導き出した答えを無視した直感に従って辿り着いた正確な位置。

 戸山香澄は、思いっきりその拳を振り抜く。

 

『キラ!!』

「ぐぉあッ!?」

「香澄!」

「香澄ちゃん!」

「良かった……無事だった、香澄」

「まだまだーーーっ!」

「くぅお……! そんな、こんな、ところで……! 『CiRCLE』――!」

「!」

「香澄っ! そのまま! 私の『スタンド』は――!」

 

 止まりかけた音がバリンと割れて散っていく。

 市ヶ谷有咲の後ろに現れた鍵盤模様の人影が、ゆらりとハリセン片手に立ち上がる。

 

「止まった音を無効化できる!」

「さすが有咲っ! うおおおお『ランダムスター』ッ!!」

「うぐぅあ――ッ!?」

 

 追撃を受けたまりなが超速でまたもや吹き飛ぶ。

 今度は香澄の逆側――ちょうど千聖たちの居るほうに。

 

「こ、こっちに来るわよ……? ……薫?」

「――シェイクスピア曰く、『運命とは、最もふさわしい場所へと、貴方の魂を運ぶものだ』……」

「……は?」

「!?」

 

 荒唐無稽の(ファンタスティック)一人芝居(モノドラマ)

 それはつまり瀬田薫の生み出す彼女だけの演じる世界。

 絶対的なまでの信条が現れた異次元の精神力。

 飛来するまりなを掴んだ黒い外套は、少女にも、老婆にも、少年にも、青年にも、化け物にも、人間にも見える異様な形をしていた。

 

「――つまり、そういうことさっ!」

「ぐあッ……!?」

 

 貫いた脚撃がまりなの腹部に衝撃を走らせる。

 

「千聖!」

「――っ、意味が、分からないわ……本当にっ!」

 

 けれども、言いたいことはなんとなく分かってしまうのがなんともしょうがない。

 名前を呼んだだけでも応えるのはまあ、ある意味役目といえば役目で。

 数日前から現れた、この自分にとっては正直あまり要らない能力もこう使うのだろう、と彼女は即座に理解した。

 

「あぁあっ……『サークル』ッ!!」

「不服ではあるけれど!」

 

 ガツン、とサークルの拳が鉄の仮面に遮られて防がれる。

 反撃を予測した――いや、それ以上に攻撃後の隙が出る部分をズレなく完璧に見当をつけてガードした。

 その息の合った連携は、けれどたしかに間違いなく――

 

「君ならそうしてくれると信じていたよ」

「……あら、じゃあしなければ良かったかしら」

「フフ……ああ、だがそうはしなかった。それは、なんとも……儚い……」

「…………そろそろ帰りたいのだけれど」

「ちぃッ……! やはりガールズバンド! おのれ……!」

「無駄よ」

 

 振り抜かれた拳を、傷一つない鉄仮面が防ぐ。

 その後ろから、正体不明の黒い外套が細く――それでいて見ようによっては太い――脚を斧のように叩き付ける。

 

「ぐぅうッ……!」

「さあ……いま一度空の旅と行こうか! 千聖!」

「でも薫。あなた、高いところダメでしょう?」

「シェイクスピア曰く、『慢心は人間の最大の敵だ』」

「おのれガールズバンドォーーー!!」

「――つまりそういうことさッ!!」

 

 蹴撃がスタンドごと彼女の体をそのまま吹き飛ばす。

 水切りの要領で地面を滑っていくまりな。

 ざりざりと地面を削って、血を撒き散らし、パンになった足とチョココロネの腕を千切ってぶっ飛び続け――

 

山吹色の(サンライトイエロー)――!」

「なッ……何ィーーーーッ!!??」

 

 その途中にある路地裏から、山吹沙綾がスタンドを構えて飛び出した。

 

「さすが彩先輩! ビンゴです!」

「わ、私の『エゴサーチ』は本当の使い方じゃないのに……!」

「でもそうなりましたっ! ならば響けッ! 私の――」

「うおおおおおおおおおおおお『CiRC――」

「ハーートビィィイイイイイトォオオオオ!!!!」

 

 音を止める前に突き刺さった沙綾の拳が、メキメキとまりなの頭蓋を凹ませていく。

 

「いやぁああぁあぁあああッ!!??」

「さーや!」

「遅いぞー沙綾ー!」

「沙綾ちゃん! これで――」

「うん。ポピパ、揃った」

 

 殴り飛ばされたまりながまたもや宙を舞う。

 家屋の壁を破壊し、電柱を砕き、石壁を貫いて街を突き進む。

 だがそれでも彼女は生きている。

 ライブハウスのスタッフはバンド演奏による影響で、その程度の被害なんて日常茶飯事だ。

 故にこそ彼女の命はいまだに翳りを見せない。

 一端のライブハウススタッフとしての意地と誇りが、彼女を精一杯繋ぎ止めていた。

 

「――さて、では行くとしようか。子猫ちゃんたち」

「……どこへ行くっていうの?」

「へ? ジブンもですか?」

「アヤさん! 無事だったんですね!」

「あ、うん……なにがなんだか分からないけど……」

 

 ふっ、と微笑みながら瀬田薫は優雅に身を翻した。

 

「決まっているさ。この冷たくも儚い氷の世界を終わらせるために」

 

 黒い外套はまるで王子様のような衣装に身を包んで、キラキラと星を散らすのだった。




>ハロハピ厳冬期雪山縦走
みなさんも雪山で遭難したときのために北沢印のコロッケを買っておきましょう。

>つまりそういうことさ
ごり押しとか言うんじゃない。儚いから。

>……は?
儚いから(目逸らし)

>黒い外套
なんにでも見える。なんにでもなれる。

>鉄仮面
人間やめそうとか言っちゃうとwryyyyy

>ポピパ勢
甘辛パーソナリティってそれツンデレじゃね? って思ったらなんか合格。

>クライマックス感って大事だよね
それなー(脳死同調)
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