ガルパ☆ピコの奇妙な冒険   作:4kibou

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キラキラだとか音だとか

『キラァ!』

「!?」

 

 突如として現れた悪霊が香澄のギターを殴りつける。

 容赦ない一撃だった。

 〝叩く〟のではなく〝壊す〟というまでの勢い。

 躊躇なんて一切ない全力の拳だ。

 その、奇声とも雄叫びとも取れぬ声に驚きながらも、四人は香澄の背後をじっくりと見つめて――

 

「(……な)」

「(なに、これ……?)」

「(ギターの……音……?)」

「(……香澄の音だ)」

 

 響いた音に、ただただ呆然と息を呑む。

 だって、そうだ。

 戸山香澄のギターの弦は切れている。

 人間離れした神業的技術を持つならまだしも、彼女は違う。

 ただのバンド活動に励む女子高生のひとり。

 残りの弦でまったく違和感のない音を響かせるなど事実無理だ。

 けれど、彼女たちの耳にまで届いた音はどうか。

 

「(なんで……音が、出てんだ……!?)」

「(いや、まさか……そんな……!?)」

「(香澄ちゃんの後ろの……)」

「(ユーレー……!)」

「――まだまだいくよっ!」

 

 浮かび上がった悪霊の姿はしっかりと全員の目に映っている。

 否――観客を除いた彼女たちの目にこそ映っている。

 つまるところPoppin‘Partyだけがその光景を認識する。

 弦が切れても戸山香澄は歌い続ける。

 そのギターは彼女の手元を離れて鳴り渡る。

 背後に立った彼女自身のエネルギー像が、これでもかと高らかに吠え叫ぶ。

 それが、それこそが――

 

『キラキラキラキラキラキラキラーーーーッ!!!!』

 

 歪な星形をした、彼女の操る力。

 殴られたランダムスターが香澄の思うとおりに音を奏でていく。

 衝撃音がまさしく演奏へと成っていく。

 ただ殴りつけているのではない。

 あの悪霊は奇声をあげながら楽器を壊しているのではない。

 そう――言うならばそれは、殴り弾いていた。

 

『キラキラキラキラキラキラキラッ!!』

「まだっ、もっと! もっと早く!」

「(香澄ィ!?)」

「(な、なに言ってるの……!?)」

「(香澄ちゃん!?)」

「(……私も負けてられない)」

 

 困惑する三人を余所に、静かに闘志を燃やす花園たえ(リードギター)

 しかしながら悪霊の猛攻は止まらない。

 なにせ曲はまだ終わっていない。

 演奏の必要がある限り、香澄の悪霊が手を止めることはない。

 

『キラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラーーッ!!』

「うおぉぉおおぉぉおおぉおおッッッ!!!!!!」

 

 連続で叩かれるギターが音を鳴らす。

 悪霊が渾身の叫び声をあたりへ撒き散らす。

 戸山香澄までこの場で大きく叫び声をあげる。

 最早会場の盛り上がりは尋常ではなかった。

 誰も事態を把握できてはいない。

 けれど人間「なんかそういう空気」があれば同調するものなのだ。

 つまるところ、ワケも分からないのにオーディエンスは凄いテンションアゲアゲでナイトフィーバーしていた。

 

『キララララキラーーッ! 弾くのはッ!』

 

 ぐん、と振り上げられた手が小指から順に握りしめられていく。

 固く、きつく、どこまでも強く。

 

「――私の『スタンド』だッー!!」

『キラァッ!!』

 

 ボッゴォーン! と最後の一撃がギターに突き刺さる。

 

「――、――、……!」

『――――、』

 

 ――そして〝音〟は〝風〟になった――――

 観客が無意識のうちにとっていたのは「敬礼」の姿であった――

 涙は流さなかったが無言の星の詩があった――

 奇妙な感動があった――

 

「(あ、駄目だ。もうツッコミ切れねえ)」

「(なにこの……なに?)」

「(凄い歓声……だけど……)」

「(うん。盛り上がってる。いい演奏だった)」

「みんなーっ! ありがとーっ!」

 

 どっと沸く観客席。

 巻き起こる拍手喝采と、アンコールを望む多数の声。

 香澄はそれに笑顔で応えた。

 ギターの弦は切れてもその演奏は絶やさず。

 いつしか伝説として語り継がれることになるPoppin‘Party主催ライブ。

 その結末は――大成功のもと幕を下ろした。

 

 

 

 ☆★☆

 

 

 

「冗談じゃねぇーっ!」

 

 ガタン、と立ち上がって怒声をあげたのは有咲だった。

 ライブも無事終了したその日の夜。

 蔵に集まって成功を祝すはずの場には、妙な空気が漂っていた。

 主に香澄のライブ中の言動について。

 

「なんだよ『スタンド』って!? なんであんなのがいきなり出るんだよーっ!」

「あわわわわ、あ、有咲っ!? お、落ち、落ち着い――」

「これが落ち着いていられるかぁーっ!!」

 

 がくがくと激しく香澄の肩をシェイクする有咲。

 その揺れ具合に早くも相手が再起不能になりかけているのは言うまでもない。

 

「あはは……有咲。香澄、気絶しそうだけど……」

「……ハッ! おい、大丈夫か香澄!?」

「あ、あたまが、ぐわんぐわん、する……」

 

 あ、お星様だーとかなんとか言って、香澄はバタンとたえの膝に顔からダイブした。

 天然少女はそれに驚くこともなく自然と頭を撫で始める。

 完全にペットと飼い主の絵面だ。

 

「寝てねえで説明しろよ! 香澄ぃ!」

「ユーレー、上手だった」

「いやおたえはたしかに上手かったけどもうすこし気にするところがあるだろ!?」

「……? あ、弦が切れてた」

 

 張り替えないと、と呟くたえに膝枕状態の香澄がうなずく。

 全くもって見当違いだった。

 

「もうワケ分かんねえよ……! お客さんは妙に盛り上がってるし、香澄の悪霊はギター殴って弾いてるし、弦が切れてんのに支障もねえし、なによりキラキラキラキラライブ中に叫んでんのに誰もなにも言わねえし! おかしすぎんだろ!?」

「……あ、そうだ!」

「なんだ!? 今度はどうした香澄!?」

「ランダムスター!」

「……はぁ?」

 

 わりと本気で低めの声が出た。

 仮面というか対人用というかそういうものを剥がしてもなかなか出ないトーンだ。

 が、そも市ヶ谷有咲がどういう少女か知っている香澄にはなんの効果もなかったらしい。

 

「名前、この……えっと……そう! 『スタンド』の名前!」

「名前ぇ~?」

「うん! キラキラしてる! ギターと同じ! だから、『ランダムスター』かなって」

「悪霊……あーいや、『スタンド』……だっけか。それに名前って……」

 

 今さらながらこの友人の感性はけっこう真面目にどうかしているのではないか、と本気で心配になる有咲なのだった。

 

「キラキラしてるっていうより、キラキラって言ってたけどね……でも良いんじゃない? 香澄らしくて」

「沙綾まで……」

「でしょ!? さーやもそう思う!?」

「はいはい、思うよ。思うから。だからちゃんと説明してね」

「? えっと、私、『スタンド』のことは一切知らないけど」

「え?」

「は?」

 

 有咲と沙綾の声が重なる。

 ぴたりと体が固まったのは言うまでもない。

 なにせ戸山香澄こそが悪霊……『スタンド』を身に付けた本人だ。

 なにかしら知っている、と思うのが常だろう。

 だがしかし、彼女は常識で測りきれないモノを持っていた。

 なんてことはない、それは『星のカリスマ』とも言うべきバンドメンバーをまとめあげる――まあ、なんていうか、無鉄砲さというか、考えなしというか、そういう感じの計画性の無さだった。

 ……訂正(つまるところ)、大らかな心の持ち主だった。

 

「…………も」

「も?」

「もうやだーーーーっ!!!!」

 

 有咲は嘆いた。

 ただただこの理不尽な現状を嘆いた。

 それを一体、誰が責められるというのだろう。

 

「……香澄」

「? おたえどうしたの?」

「私も出た。ユーレー」

「わ、本当だ」

「――――、」

 

 そして花園たえは『スタンド』を獲得した。

 有咲は目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 ☆★☆

 

 

 

 暗い夜道を彼女たちはふたりで歩く。

 会話はないが気まずさもない。

 長年連れ添った幼馴染み同士の感覚だろう。

 隣を歩く少女は、つい先ほどまでの空気を忘れられないのか鼻唄を歌っていた。

 

「…………、」

 

 空を覗けば月が出ている。

 あたりは暗くなって久しい。

 少女の軽やかな音はとても夜の街に合っていて、こんなタイミングでもなければ微笑みのひとつぐらいは返せたように思う。

 だから問題は、少女が感化されたその空気が、目下彼女のなかで大きな問題になっているところだった。

 

「……友希那?」

 

 くるり、とふり向いた少女が名前を呼ぶ。

 不意に足を止めた幼馴染みを、どこか心配するように。

 

「なんでもないわ。楽しそうね、リサ」

「まあねー。友希那は楽しくなかったの?」

「……驚いた、といったほうが正しいかしら」

「そりゃあそっか」

 

 あんなものを見ればねー、とおかしそうに笑う少女。

 ……そう、驚いている。

 ライブのパフォーマンスは勿論のこと、その最中に起きた出来事についても。

 

「――戸山さんのギター、見ていたかしら」

「え? 香澄の? ……あー、途中で弦が切れちゃったやつ?」

「そう。でも彼女は音を切らさなかった。聞いたところによると、戸山さん自身(・・・・・・)がずっと音を出していたらしいわ」

「へえー……香澄、凄いじゃん」

「……凄い、で済む問題なのかしらね」

「?」

 

 彼女――湊友希那は考える。

 ライブ中に突然起きたハプニング。

 それを上回る常識を覆すような驚きの現象。

 思い返せば香澄以外のメンバーの顔にも微細な変化があった。

 視線の動き、瞬きのタイミング、ほんの少しブレた音。

 彼女たちはたしかに、目には見えないなにかを見ているようだった。

 

「……すこし、探ってみる必要があるかもしれないわね」

「探るって……なにを?」

「それは分からないわ。でも――」

 

 見上げた夜空には星の輝き。

 なによりも直感が囁いている。

 これには何か、得体の知れないモノがある……と。

 

「――いずれは私たちに、関係してくるものなのかもしれない」

 

 本格派ガールズバンド『Roselia』――

 彼女たちがその秘密に触れるのは、もうすこし先の話である。

 

 

「……ところで、ウサギは居てなんでネコは居なかったのかしら……」

「あははー……なんでだろうね?」

「納得いかないわ……」

 

 無論、彼女たちの趣味の違いである。




ギャグです、と言って誤魔化すのもキツくなってきたぞうコレ。

そして長めなプロローグ終わり。


香澄の声でずっとキラキラ言ってるのを想像していただけると非常に脳に負荷がかかります。

オラオラとキラキラって似てるしなにかと星に関係あるし実質ポピパは三部メンバー(錯乱)という発想から行き着いた結果でした。

初期案だと実はRoseliaで書くつもりだったのがなにをどうやっても友希那さんがラッシュの掛け声をしてくれなかったので没になったところでもう既に私は狂っていたような気がする(戦慄)
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