前回までのガルパ☆ピコの奇妙な冒険は……
「私には悪霊が取り憑いている……!」
その①――戸山香澄に取り憑いた「悪霊」! その名はッ!
「弾くのは――私のスタンドだッ!」
〝ランダムスター〟! 歪んだ星を暗示する『能力』ッ!
そして立て続けに襲い来る災難! 不穏に塗れるバンドガール!
「ギターの『弦』が切れたっ!?」
「戸山さん……彼女の後ろには、何かがいるわ」
「私も出た、ユーレー」
バンドメンバーにも広がるスタンドの力! 圧倒的な運命の渦!
それはたったひとり――すべてを知る彼女によって描かれたシナリオだった!
「私が世界を支配する……この狂ったようなガールズバンドの世界を支配するッ! そのためには圧倒的な力こそが必要なのよッ!!」
「(またやってる……)」
月島まりな! ライブハウスさーくるのスタッフである彼女こそが真の敵!
「この私、戸山香澄はいわゆるヘンタイのレッテルを貼られている……」
「変態っつーか変人っつーか……」
「星の鼓動を必要以上に重視していまだ忘れられないこともある……気合いを入れて書いた歌詞は意味が分からないと言われるし、キラキラドキドキには我を忘れるなんてしょっちゅうのこと……」
「香澄語だからな……」
「だがこんな私にも! 吐き気のする「悪」はわかる!!」
「香澄語だな……」
「悪とはてめー自身のためにボケを利用しツッコむヤツのことだ!」
激情に燃え上がる香澄! 困惑する有咲!
つまるところの通常営業! 平常運転ッ!
「は?」
「ましてやシリアスをーっ! きさまがやったのはそれだ! 有咲の「ツッコミ」は被害者自身にも法律にも見えないしわからない……」
「いやむしろ私が被害者だろ」
「だから――私がツッコむ!」
「そんなことしたら収拾がつかなくなるぞー」
「りみりーん! 有咲が! 有咲が酷いこと言うー!!」
「ちょっと待てーーーーっ!!!!」
時はガールズバンド戦国時代。
数々のバンドが群雄割拠する争いの時代。
そこに紛れこんだ新たなる『力』が彼女たちの戦いを加速させる。
世はまさに大ガールズバンド時代へと突入したッ!
「ところでランダムスターのせいでランダムスターが壊れないか心配なんだけど」
「香澄語ォーーーーッ!!!!」
「有咲ちゃん、落ち着いて! 香澄ちゃんのせいじゃないからっ!」
ガルパ☆ピコの奇妙な冒険。
彼女たちの物語はついに、大きな変化を遂げていく――!
☆★☆
「という夢を見たんだけど」
『……そんなコトで土曜日の朝から電話してくるんじゃねーっ!!』
「(よかったいつもの有咲だ)」
意識を失って倒れた友人は、案外元気なままだった。
☆★☆
「――とにかく、話はまとまった」
ソファーに腰掛けながら、重苦しい面持ちで有咲が言う。
衝撃のPoppin‘Party主催ライブから一日が過ぎた土曜日の朝。
五人は市ヶ谷邸にある蔵の地下室にあつまって、緊急会議を開いていた。
議題はもちろんのこと、目下彼女たち――主に有咲と沙綾――の頭を悩ませている常識を越えた不可思議な現象……『スタンド』のことだ。
「香澄はなんも分かってない。おたえはなんか出るようになっただけ。りみは……なんかずっとチョココロネ食べてるし……沙綾の話を信じるしかないよな」
「私も分かんないことだらけだけどね……あの口ぶりからして、まりなさんが何か知ってるのは間違いないと思う」
「私もそう思う!」
どじゃーん、とギターを弾きながらネコミミ型に突き破った学帽を被る香澄。
有咲にとっては頭が痛い話だった。
土壇場では頼りになるだけにこうなると本当に我が道が星の道である。
ゴーイングマイウェイ、と言えば聞こえは良いがそれも限度が……と思いかけてこれ以上の我が道を突き進む知り合いが脳裏をよぎった。
「(ハロハピよりは……どうなんだろ……)」
「いくよ! 『ランダムスター』ッ!」
「私もやる。ユーレイ……じゃなくて『スタンド』……」
じゃん、と部屋中に響き渡るふたり分のギターの音。
それと同時に出現した〝像〟を見て、有咲は額をおさえながらため息をついた。
「(なんかもう常識とかで向こうを越えてる気がする……!)」
「いえー! おたえー!」
「香澄!」
ピシガシグッグ、と妙にテンションの高いふたりを見ないようにして、とりあえずと有咲は困ったように笑っている目の前の
先ほど……というかここ二日三日の間、ずっとチョココロネを食べ続けている錯覚すらしてくるりみはともかく、沙綾は冷静に状況を推測してくれている仲間だ。
香澄たちの持つ『スタンド』が出ていないというのもある。
持ってしまえば何にせよ向こう側になってしまう以上、頼れるのは彼女だけだった。
――そう、少なくともいまは。
「今日は練習、のつもりだったけど……そうもいかないよね、これじゃ」
「本当にな……せめて香澄たちの……あれ……『スタンド』ってのがなにか、私らは知る必要があると思う」
「うん。それは同感。おたえが使えるようになったのも、なにか理由があるはずだしね」
「だよなあ……なあ香澄。その『スタンド』? 使えるようになった切欠とか、覚えてたりは……」
しないか、と途中まで言ってがくりと有咲は肩を落とす。
が、
「あ、それなら多分、あれだと思う」
「……は? え、いや、覚えてる……というか心当たりあるのか、香澄!?」
「いやーまあ……えへへ」
「――――!」
まじか、と大きく目を見開いたのは沙綾も同様だった。
有咲はがばりと勢いよく立ち上がって、なぜか照れている香澄へと詰め寄る。
「な、なんだよそれっ!? 原因はっ!?」
「刺さっちゃった」
「なにがだっ!?」
「ピック」
ぽかん、と口をあけて呆然と見つめる有咲。
香澄はなにが恥ずかしいのか頬を若干赤く染めていた。
彼女にはその意味がまったく分からない。
「……ぴっ……く……?」
「うん! なんかね、こう、黄金色のピックでね! 私の胸に、こう、ドスッて!」
「――――――」
なにを、言っているのか、さっぱり分からない。
「ピックが……刺さった……?」
「あれ? 有咲? ……あれ?」
「沙綾……私はもう駄目だ……あとは頼んだ……」
「有咲!?」
ばたん、と倒れ込むPoppin‘Partyのツッコミ役。
常識を遙かに飛び越えた現実はひとりの少女にとって荷が重すぎた。
「と、ところでりみりんはどう思う? その、さっきからずっと……いや本当にずっとチョココロネばっかり食べてるけど――」
「え?」
「――え?」
と、話を逸らそうとした沙綾はそこで信じられない光景を見た。
錯覚でもなければ幻覚でもない。
どこからどう見ても彼女の手元にパンの袋はない。
けれども今し方ひとつのチョココロネを食べ終えたりみの手には、すでに新しいチョココロネがしっかりと握られていた。
……いや、見間違いでなければ、彼女の手からチョココロネが現れたような――
「……見た? 手から出てきた
「え、いや……うん、まあ……?」
「あのね。それが……私の……『
「――――、」
沙綾は遠のく意識をぐっと持ち堪えた。
耐えろ、と自分に必死で言い聞かせる。
いま倒れたらこの場でツッコミができる人間がいなくなる。
それだけは駄目だ。
もはや無法地帯となった市ヶ谷邸の蔵でしっかりと話を進行できるのは彼女か、腕のなかで眠る有咲の他にいないだろう。
ならばせめて、この力尽きてしまった友人のためにも頑張るべきだ。
「……もうこうなったら、行くしかないよね……」
「行くって、さーや。どこに?」
「決まってるよ、香澄」
――『さーくる』へ、と。
「やっぱりさーくる……いつ出発する? 私も同行する」
「花園院」
「気になってた。『スタンド』のこと……まりなさんなら、なにか知ってるはず」
「私も……自分の手からチョココロネが出るなんて、やっぱり冷静に考えたら普通じゃないよね……」
「りみりんも……」
どうしてその真面目さを有咲が起きているうちに発揮できなかったのか、という言葉をぐっと呑み込んで沙綾は立ち上がる。
目的はそう……最初から決まっていた。
なにもかもが分からないのなら、その手掛かりを探るしかない。
「じゃあ、行こう」
ざりっ、と外に出て並び立つ五人の少女。
それは運命の歯車が動き出した、決定的な瞬間だった。
「いざ……『さーくる』に!」
「あ、みんなおはよー」
「あ」
「え?」
……瞬間だったのだが、そこに平然と月島まりなは現れた。
朝の出勤途中なのだろうか。
彼女はいつものボーダーシャツの上に黒のジャケットを羽織ったお決まりの格好で、ニコニコと香澄たちに手を振っている。
運命とは時に残酷なものである。
「――――確保ぉーっ!!」
香澄の声に、眠っていた有咲までもが反応した。
「えぇっ!? ちょっ、いきなりっ!? なに!? なんなの!?」
「逃げないでくださいまりなさん!」
と、全力疾走しながら沙綾。
「ちょっと事態を説明してもらうだけで!」
なんて、髪を振り乱して走る有咲。
「やっぱり気になる……『スタンド』の正体とか」
わりと真剣に考え始めたおたえ。
「このチョココロネって、やっぱり賞味期限とかあるんですか!?」
わりと壊れ始めたりみ。
「いまの私、すっごいキラキラドキドキしてる!」
そもそも初めから壊れている香澄。
「(な、なんで!? なんで土曜出勤の朝から追われる羽目に!?)」
思いっきり自業自得の月島まりなを追って、彼女たちの旅は始まりを告げる――!
ギャグだった(冷静)
>ピック
弓と矢とかガールズバンドであるワケないだろ! せやピックぶっさせばええやん(狂気)
>まりなさん
最初はラスボスムーブ全開で行こうか悩んだ結果逃げ回りながらガンガン戦うライブスタッフになってしまった。猛省。
>花園院
ここしかないと思った。反省はしている。後悔はしてない。