前回までの『ガルパ☆ピコの奇妙な冒険』は――
「ま、まさかお前は……!」
「チッ☆ チッ☆」
「――トヤマ・カスミ!」
「――Yes! I am!」
追い詰められた花薗たえ! しかしそれは彼女たちの策略だった!
「いつからそこに居たというのッ!?」
「初めからいましたよ……まりなさん……」
「くっ――おのれPoppin‘Partyィーーーッ!!」
『キラッ!!』
「無駄ァ!」
今ここに、最終決戦の火蓋が切って落とされる――!
「……有咲ちゃん? どうしたの……?」
「いや、なんか、香澄が間違ったコトを言ってるような気がして……ライン送っとこう」
「分かるんだ……」
それがツッコミ役としての基本スキルである。
☆★☆
「やっと……一撃」
「…………っ」
「私の『ランダムスター』をたたき込めました……けれど、一撃だけ」
ガードレールを背に、まりなは痛む体を必死で起こす。
いまの一撃で何本か骨が砕けた。
重心を支える足がぶるぶると震えだしている。
幸いなことに呼吸に問題はない。
流れる鮮血と身を内側から焦がすような痛みは問題だが、とにかく動けるならばどうにかできた。
眼前の戸山香澄は、ゆったりと『スタンド』を構えてこちらを見つめている。
「まだ
「……ッ、う……侮って、いたのね……私は……」
「……?」
「侮っていた……あなたたちを……Poppin‘Partyという集団を……ガールズバンドを……侮っていた……出し惜しみを、してしまった…………!」
けれど、と。
「――もう
「!! 『ランダムスター』ッ!」
「故にッ! 『サァァアァアクルゥウゥゥウウウ』ッ!!」
キラッ☆ と撃ち出された拳を、まりなの『サークル』が防ぐ。
おたえのモノと比べて、香澄のパワーはスピードともに桁違いだ。
こればっかりは真実、まりなの『スタンドパワー』を上回っている。
予想外だったのはそれだ。
戸山香澄に発現した『ランダムスター』は、彼女の『サークル』を凌駕する性能を秘めていた。
それを見誤ったのは単にまりなの失敗だ。
だからこそ、側頭部に受けた傷は痛みを伴う自身への罰だと彼女は思い込んだ。
「ぐあっ……!?」
「このまま! 覚悟してください! まりなさん!」
香澄の『ランダムスター』の拳に、まりなの両腕が砕ける。
彼我の力関係は一目瞭然だった。
彼女の『サークル』では歪んだ星の突きを防ぎ切ることは到底難しい。
――だが、それは単なる力比べであったらのこと。
「……
血の滴る両腕に表情を歪めながら、まりなはニッと微笑んだ。
「いいえッ!
「いっけぇー! 『ランダムスター』ッッ!!!!」
「無駄よォッ!! 『
――――しん、と。
それは、まるで時間が止まったかのような静寂だった。
「!?」
「これが……『サークル』の本当の力……」
〝――声が、出ない!〟
香澄は真っ先にその異変に気付いた。
いや、声だけではない。
体の隅から隅まで、まるで固まったように……地面の中に埋められたみたいに、ピクリとも身動きをすることができない。
生命活動は問題なく続いている。
ただ不思議なことに、体を動かすことも、声を出すこともできはしないだけ。
「あなたたちでは敵わないわ……たとえ優れたパワーとスピードを持つ『ランダムスター』だろうと、触れたモノをウサギに変える『スナッパー』だろうと! この止まった音の世界では指一本ですらあなたたちは動けない!」
コツン、とまりなの靴音があたりへ鳴り響く。
どこまでも静かな周囲へと、波のようにそれだけが広がっていく。
喉は震える。だが声はでない。
心臓は動いている。でも体は反応しない。
それはまさしく息苦しさを感じさせる空間に詰め込まれた感覚だ。
実に見当違いな例えではあるが、そう――まるでびっしりと文字の並んだ新聞紙のなかのたった一文字に、彼女自身がなったようだ――なんて考えが香澄の頭に浮かぶほど。
「音が止まれば音のなかで生きるあなたたちも動けないのよ……止まった音のなかで動けるのは私だけ……この月島まりなだけが自由に音を出すことができる! ……ところで香澄ちゃん……これがなんだか分かる?」
「!」
〝――ピックだ!〟
ずらり、とまりなの両手いっぱい、指の間に挟み込まれた多数のピック。
彼女たちバンドガールを貫いたものとは違う、安物のピックだろう。
「そう!
まりなの手から放たれたピックが、ぶわりと網を広げるように宙へ舞う。
動けない香澄を囲むように放たれるピックの投擲。
それはまりなの手元から離れてしばらくすると前進を止め、ピタリと香澄の目前で完全に停止した。
たったの一瞬で完成した、ピックの包囲網である。
「その数、その枚数! ぜんぶのピックを打ち落とすのは不可能というもの……再び動き出したとき、あなたの運命は決まった……そしてッ!」
「!!」
ドゴン、と撃ち抜かれるおたえの体。
悲鳴はない。
苦悶に塗れた声はない。
ただひくついた眉と腹部からの出血が、その威力を物語っていた。
「これでふたりともノックアウト……
すべての音が止まった世界では、動くこともままならない。
彼女たちの『スタンド』でさえ反応させることはできなかった。
バンドガールであるが故に、その精神は音と強く結び付いている。
ガールズバンドである限り、香澄たちの『スタンド』が停止した音のなかで動くことはない。
「――そして、音は響き出す」
「っ! 『ランダムスター』ッ!!」
『キラキラキラキラキラキラーーーッ!!』
形振り構わず出した『スタンド』で、香澄は向かってくるピックを弾き飛ばす。
が、
「(……っ、駄目……数が多い……!?)」
迫り来る
さらには一枚や二枚なんて可愛らしい数でもない。
いくら優れた『スタンド』である『ランダムスター』であっても、それらすべてを捌くのは不可能だ。
よって、結果はまりなの予言通りに。
「――うぅッ!?」
香澄の小さな体に無数のピックが突き刺さる。
つい朝方もその光景は見たが、彼女自身、まさか自分がそんなコトになるとは微塵も想っていなかった。
――噴水のようにまき散る血液が、彼女の視界を真っ赤に染めていく。
「チェックメイト……よ……勝った……BanG Dream! ファーストシーズン、完ッ!!」
「まり、な……さん……」
伸ばした腕が空を切る。
よもや立ち上がる力はない。
遠く、掠れた視界のなかで、香澄は同じように血をまき散らしながら吹き飛んでいくおたえの姿を見た。
ピクン、と指先だけが動いたが、けれどもそれだけ。
為す術無く、起死回生もなく――戸山香澄は、闇の底に意識を沈めていった。
☆★☆
突然それが突っ込んできたのは、りみと有咲が未だまりなを探していたときだった。
「うわぁ!?」
「なに!? なに!?」
隣家の壁を破壊して流れてきた物体が、ふたりの横に突き刺さる。
砲弾と見間違う威力と速度だった。
そんなものが至近距離で通過していくのだから、心臓も縮み上がらなければ普通ではない。
「――って、おたえ!?」
「すごい血が出てる……! おたえちゃん!」
「ま、待ってろ! すぐ救急車呼んで――」
「逃げ……りみ……有咲……!」
がしっ、と有咲の携帯を握る腕を掴んで、息も絶え絶えにおたえは言う。
「敵わ、ない……まりな、さんには……『サークル』には……!」
「は、はぁ!? なんだよそれ!? こんなときにワケ分かんないこと言ってる場合――」
「――それは、今から分かることよ」
背後から聞こえた声に、覚えはあった。
振り向けば予想どおり。
……けれど有咲の予想と違ったのはひとつ。
まりなは、すでにその壊れかけた『スタンド』を構えていたというコト。
「まりなさん……!」
「市ヶ谷有咲と、牛込りみ……やっぱり私には運命が味方しているわ……すでに花園たえと戸山香澄は始末したッ! 残るはあなたたちと山吹沙綾のみよッ!」
ザン! と血に塗れた体を動かしながら、まりなは力強く地を踏みしめた。
「あなたたちの星の旅路はここで終わらせるッ! 私のこの『サークル』で!!」
「ああ、もう――なにが……起きてるんだよ……これ……!?」
頭をかかえる有咲と、おたえを抱き留めるりみ。
彼女たちの前に立ち塞がる壁は、笑みと共にその拳を突きつけた。
>ピックって刺さる?
トランプを突き刺すキャラもいるから……(震え)
>平然とピックに恐怖を覚えるバンドガール
そら(体を貫かれた記憶があったら)そう(ピックにも恐怖する)よ。
>ギャグって?
ああ!(条件反射) それって真剣に意味分かんない勝負書いてること?(錯乱)