今回、私が一人で神の国-ゴッドランド-に乗り込もうと決断した理由は、大きく二つある。
一つは、リンちゃんの存在だ。
原作でケンシロウさんが向かった神の国-ゴッドランド-。
ここは元特殊精鋭部隊レッドベレーの生き残り達の巣窟だ、あの男が生きて帰れるはずがない……とバーのマスターは言う。
それを聞いたリンちゃんはなんと、棍棒らしきものを持っただけの身で、そのまま神の国-ゴッドランド-の最奥まで乗り込んでくるのだ。バイタリティあるとかそういうレベルじゃない。
……ケンシロウさんが暴れている混乱の影響もあっただろうとはいえ、どの兵士にも見つからず、首領である
おまけに、そこまでたどり着いたところで大佐に利用され、ケンシロウさんが手傷を負うという事態も起こっている。
私達が行って同じことが起きた際、今度もリンちゃんが無事でいられる可能性ははっきり言って低いだろう。
というわけで、このリンちゃんの暴走を抑える役割をケンシロウさんにお願いしたい、というのが一つ。
そしてもう一つは、私自身の成長のためだ。
まだまだ未熟な使い手としてのこの身、ケンシロウさんが付いてきてくれているのはものすごくありがたいし、何より安心感がある。
が、この安心感というやつが曲者だ。
これがあるのが当たり前になると、いざ本物の強敵と出会った。ケンシロウさんも居ない、さあどうしようという状況になった際、私は何も出来ない可能性がある。
原作の知識と、この世界における心の重要性を知っているからこそ、背中を守るものがいない状況で修羅場を乗り越える経験が必要だ、と考えていたのだ。
その点、南斗六聖拳ほどの強さではないが訓練を積んだ軍人の集団というのは、言い方は悪いが非常に手頃な相手と言えた。
彼らを一人で相手取るぐらいのことが出来ないのなら、この先の強敵達とはとてもじゃないが戦っていられないだろう。
つまり、私はこの世界に来て以来初となる"
「む────しかし」
ケンシロウさんはかなり心配そうに渋っていたが、この先を考えて必要な経験だと思っていること、危険だと思ったらちゃんと逃げることを説得材料にし、なんとか納得してもらうことが出来た。
一度Yesと言ったならば、ケンシロウさんが約束を違える心配は要らないだろう。
あと、リンちゃんの身の確保はお願いします。
切実に。
★
そんな経緯で私は今、運転をする兵士の横、助手席で車に揺られている。
もちろん、男が何かしでかさないように見張りながらだ。
と、気を張っていたらあっという間に着いた。
リンちゃんが一人であっさりたどり着ける位置ということを考えると、近いのも当然か。
「では、すみませんがしばらく大人しくしていてください」
という言葉と共に秘孔を突いて眠ってもらう。
助ける約束で案内をしてもらった以上、問答無用で殺すつもりは今の所無い。
……ちょっと甘いだろうか、とも思ったが、ケンシロウさん達も従順な相手は意外に見逃していることも多いし、まあ良いだろう。
さて、着いたは良いがバカ正直に正面から乗り込む必要は特にない。
訓練をしている所に潜り込んだケンシロウさんにならい、スニーキングミッションと行こう。
首領である大佐。彼の居場所が塔であることは原作で把握しているが、今回も同じ場所に居るかはわからない。
どのみち幹部格のマッド
そんな風に方針を決め、私は潜入を始めたのだった。
この時、暗殺拳北斗神拳の使い手として、何処までバレずに潜入しおおせるか。
その修行の成果を試すことが出来る機会に、少しばかりワクワクする気持ちがあったのは否定出来ない。
★
────やはり、甘かったかも知れない。
かくして神の国-ゴッドランド-に潜り込んだ私を出迎えたのは、ずらっと臨戦態勢で並んだ訓練兵と思わしき男たちと、その中心に陣取り油断無くこちらを窺うマッド軍曹。
ワクワクは一瞬で霧散した。
……私が潜入してから、まだ数分も経っていない。これは間違いなく、入る前から察知されていたと考えるべきだろう。
原因として考えられるとすればあの運転手の男だが、少なくても到着後の気絶は確実に実行している。
つまり、それ以前に何かしら連絡をしていた、ということになるが、それはそれで不可解だ。
何故なら。
(妙だ……この時代には通信機なんて精密機器はもう残っていないはず……いや)
少なくとも私が知る原作に置いては、今この時代には遠距離間での通信が出来るような上等なモノは無い。
基本的に村や街での伝達手段は口伝ばかりだった。
実際、その遅れのせいで避けられなかった惨劇は数知れない。
車やバイクがあるなら通信機ぐらい、とも思わなくも無いが、核に汚染された影響で電磁波やら何やらが悪さをしているのかもしれない。
しかし、彼らは核戦争前から存在していたバリバリの精鋭軍人、その特殊部隊の生き残りだ。
考えてみれば、『情報伝達手段』など軍人なら真っ先に重要視して確保に乗り出していてもおかしくはない。
おそらく、あの基地と護送車……もしくは兵士の装備とのみ繋がるような限定的なモノだろうが、何かしらの伝達手段があったのだろう。
運転中か、私が先程戦っていた時のどちらかはわからないが、それにより連絡をしていたのだ。
『敵対者きたる。厳重警戒を』と。
……正直、少し舐めていたかもしれない。
単純な拳法の力だけが全てではない、と頭には入れていたはずなのに、この脅威の可能性を見落としてしまっていた。
とはいえ、私がやることは変わらない。
一瞬自分を戒めた後、改めてGOLAN達を正面から見据えると、代表してマッド軍曹が声を上げる。
「ようこそようこそ! 麗しき侵入者よ! 我らがGOLANの尖兵を倒してのけたというその腕! 是非とも見せていただきたいものだ!」
すでに臨戦態勢だったためか、私の知る人物像より少々テンションがお高い気がする。
それは軍曹だけでなく周りの男達も同じなようで、ギラギラとした目を私に向けていた。
「日頃の訓練の成果を発揮する良い機会だ。良いな、貴様ら!」
「ははっ!!」
「疾ッ────!」
男たちが返事をするのと同時、私は最も近くに居た不運な男一人に飛びかかると、死なない程度の力で拳を一閃。派手な音とともに吹き飛ばした。
「ぐべぇっ!?」
あっさりと白目を剥き昏倒する男。
そしてすぐさま元居た位置に戻り、改めて彼らに向けて発言をする。
「私は、あなた達兵士全員まで殺すつもりはありません。おとなしく道を空けていただけないでしょうか」
最初に口で言うだけなら聞く耳など持たれないだろうが、力の一端を示したことで少しは効果がある……かもしれない。
これで軍曹との一対一に持ち込められれば、幾分話は早くなるだろう。
実際、兵士のうち何人かは動揺し尻込みを始めているのが見えた、が。
「ヒヒ、戦わないでくださ~い、だってよこいつ」
「へ、へへへ……一度、思いっきり人を殺ってみたかったんだ」
「おんな、おんな……めちゃくちゃに殴ってやってもいい、おんなが目の前に」
「この人数差でかか、勝てると思ってやがるバカ女は、おし、おしおきし、してやらないとなぁ」
それ以上に、GOLAN式に教育……または洗脳済みの男達が発する狂気。
この空間に溢れかえったそれに圧され、殺意が膨れ上がっていく。
やはり、戦いは避けられないようだ。
そうと決まればやることは単純だ。
言葉での説得を諦めた私が構えると同時。
「ぶち殺せ──ッ!!」
元精鋭部隊、レッドベレーにしてGOLANの兵士たちが、私に向けて殺到した。
★
ナイフ、鉄球、棒、ヌンチャク、刀……多種多様な武器で襲いかかる兵士たちの攻撃をかいくぐり、反撃で打ち倒していく。
男たちの動きは訓練されたそれだったが、北斗神拳の修行で手を合わせていた、トキさんやケンシロウさんの動きとは比べるべくも無い。
一合ごとに一人、また一人と兵士が沈んでいく。
……しかし、そのペースは私が想定していたものよりにぶいものとなっていた。
「ッ────!!」
胸元を狙ってまたも飛んできた飛来物をかわす。
その飛来物……マッド軍曹が誇る武器、吸血のニードルナイフはそのまま後ろに居た兵士に突き刺さり、痛みの悲鳴を演出する。
これが、想定外の要素。
兵士たちの戦いに合わせ、軍曹も容赦なく得意技の一つである投擲を私に仕掛けてきていたのだ。
まとめて倒そうと大技を狙うと、このニードルナイフの被害を受けかねない。
ケンシロウさんのように刺さっても筋力で無理やり止血をする……なんて自信は正直無かったので、余計な出血を避けるため必然、慎重な立ち回りにならざるを得なかった。
おまけに、ニードルナイフは射線上に味方がいようがお構いなしだ。
とにかく、私に一撃与えるために味方すら使い捨てよう、という邪悪な意志が感じられた。
「ファハハハどうしたどうしたぁ! 逃げてばかりでは夜通しかかっても終わらんぞぉ!」
「……ッ、ずいぶん、手厚い援護ですね。避けてるだけで勝手に全員倒してくれそうじゃないですか」
「ほざきおって。どのみち、この程度も避けられん弱卒はGOLANには必要無いわ!」
そんな言葉を聞いても当然のことだ、とばかりに襲い来る兵士達。
この思想の、思考の統一こそが彼らが軍隊である所以と言えるだろう。
「とはいえ、なかなか超人的な強さだな。これだけの獲物にはそうそうお目にかかれない。そろそろ俺も混ざるとしよう」
そういって両手にナイフを構えながら近づく軍曹。
彼ら兵士は軍曹の力に自信を持っているようでニヤニヤと笑うが、これは私からしてもチャンスだ。
ここで軍曹を倒せば面倒な投擲物もなくなり、何より兵士たちの士気も折ることが出来るだろう。
そう思い軍曹を見据え構えなおす。
シュルルルルル、という空気を切り裂くような音を私の耳が捉え、全力で回避をすることになったのは、それと同時だった。
バク宙のような動きで大きく後方に跳び下がり、着地をする私。
しかし、"それ"は確かに回避したはずの私の両肩を浅く抉る。
「うっ────!?」
それの正体は、投擲武器。
それもこれまで使われていたニードルナイフ、ではない。
(────ブーメラン!)
……GOLANにおいてこの武器を使いこなし、回避に専念した北斗神拳の使い手を捉えることが出来る男は、私が知る限りただ一人。
軍曹が喜色をあらわにその男を歓迎する。
「────おお! まさかあなたまでおいで下さるとは!」
「フ……何やら面白いことになっているようだったのでな」
(この男も、降りてきたか……!)
「あなたが来られれば百人力でしょう! ────
★
「ぐっ────!?」
投擲されたブーメランとナイフがまたも私を切り裂く。
如何に回避や防御をしようとも、その位置に常に先回りするように投げられるブーメランと、大佐の指示を受けそれを援護するナイフの連携。
統率された特殊部隊の本領ともいえるそれに、今や私は防戦一方となっていた。
「バカめ! 貴様が如何に優れた拳法使いだろうとこのお方に勝てるわけがない! 大佐は超能力者なのだ!」
「フ……俺にはお前の動きを読むことが出来る。お前がどう動くかそれすら前もってな!!」
「…………!」
状況の打開策として考えられるのは、敵の意を読み、流れるように動くことで回避ないし迎撃を行う北斗神拳、空極流舞。
しかし、それをするにはここには多くの意識が混ざりすぎている。
さらに訓練を続ければ大佐と軍曹だけを嗅ぎ分けることが出来るようになるのかもしれないが、今はそれが可能なほどにこの技の練度は高まっていない。
敵兵士を盾に無理やり突破する、というのも考えたが、すでに兵士たちは軍曹と大佐の命令で下がっている。
それに、気絶あるいは死んだことで倒れた兵士たちとは、先程の回避でずいぶん離れてしまっていた。
……大佐は訓練により、私の目と筋肉の微弱な動きで先読みする技術を身に着けている。
ケンシロウさんが行ったように目を瞑り、一切の気配を消し去れば封じることは出来る……が、飛来物が多すぎるこの状況では、それをしたところでジリ貧になるだけだろう。
考えているうちに、さらに攻撃をもらう。
致命傷こそ避けられているが、あまり長引くとやがて出血多量により行動不能となるのは目に見えている。
抑えようとはしていても、ブーメランやナイフが体を掠めるたびに。
どうにかしなければ、と焦る想いに体が縛られていった。
そうして、ますます回避が困難な状況に追い込まれていく。
どうすればいい。この状況で、どうすればこの超能力を攻略出来る。
回避して、考えて、回避して、考えて、考えて────。
(……………………あれっ?)
その時、私はとある一つの考えに至り。
それと同時、ピタリ、と。
まるで、戦闘が突然終わったかのように静止したのだった。
★★★★★★★
「…………?」
精鋭軍人二人による嵐のような連携攻撃を凌ぐため、自身もまた激流のごとき動きを以て回避に勤しんでいた女。
それが突然、まるで核戦争前にはあったロボットのスイッチが切れたかのように、その動作を停止する。
直前まで行動を読んでいたとはいえ、さすがにこの不可解な心の動きまでは予測が出来なかった大佐。
無論、獲物の血を求めていたブーメランはむなしく空を切り、大佐の下に戻る。
とはいえ、何の問題も無い。
単に止まったというのならばそのまま串刺しにするだけだし、これがフェイントで急に動くつもりというならなおさら簡単だ。
自分はそれすらも読んで攻撃が可能なのだから。
そうして必勝の予感を以てブーメランを投げようとする、と。
戦闘中にもかかわらず突然、女がフゥーっと大きく息をついた。
「────やめました」
これまでの苦悶、煩悶の表情から一転。
妙にさっぱりとした、笑顔にすら見える表情で呟いたのは、降伏とも取れる宣言。
「ほう……ついに諦める気になったか? 女の小柄な身で、よくぞここまで戦い抜いたものだがな」
「ファハハハ! 我らGOLANに忠誠を誓うというのであれば、今からでも半殺しで済ませてやることもやぶさかではないぞ!」
その敵対者二人の言葉に対しても、女はあくまで落ち着いた、自然な様子で返す。
「ああいえ。えっと、どうやってあなたの超能力……予知を破ろうだとか、どうやったらスマートに勝てるかとか、小賢しく考えていたのですが……その、気づいたんです」
「む……?」
────ごちゃごちゃ考えるより……もう正面突破のほうが早いなって。
そう言うやいなや、前傾姿勢になり、スゥゥっと深呼吸をし始める女。
……明らかに、足に力が入ってきている。
このあまりにも分かりやすい体勢から取る動作など、もはや大佐が予知するまでも無く一目瞭然だ。
すなわち、ただまっすぐ前に跳びかかるだけ。
────だが、これは。
「動き、読めるんですよね? それでは、軍曹にちゃんと伝えてあげてくださいね」
女はそう続けるとさらにそのまま、倒れ込むのではないかと見紛うほどに身体を落とし…………
瞬間、床が爆裂し、女の姿がかき消えた。
「────!! 軍、」
軍曹、とかけようとした声が届く前に、ふわっと身体が宙に浮く軍曹。
「大、────」
こちらに向けた、おそらく助けを求めるのであろう最期の言葉を発する前。
先程まで二人が繰り出していた連携、それがさざ波か何かに思えるほど。
そんな、本物の連撃の嵐が軍曹の全身を覆いつくし、瞬く間に絶命させた。
★★★★★★★
結局のところ結論としては、『読まれても対応が追いつかない速さで動けばいい』だった。
これに至る直前までは、如何に上手く、キレイな形でこの超能力を破るか、ということばかり考えていた。
……まだまだ完璧な実力とは言えない私が、この世界で生きるにあたり、思考をし続けることは間違っていない。
実際、こうした考えを続けていたからこそ、ミスミさんを始めとした人たちの死の運命を曲げることが出来ている。
が、しかし。
(北斗神拳が出来ることは……決してそれだけじゃない)
伝説にして最強の暗殺拳、北斗神拳。
その伝承者を目指すからには、小賢しく、小綺麗に立ち回るばかりというのは……そう、如何にも"ふさわしくない"。
────北斗神拳は、こんなものではない。
もっと、もっと。圧倒的な、問答無用の強さで敵を打ち倒す。
そんな姿にも幼い頃から自分は憧れていたはずだ、と。
元より、私はここに、より強くなるために来たのだ。
その初心を思い返した私は、余計なことを考えるのをやめて、ただただ自分にできる最速だけを信じ、追求することにした。
そうして今、私の動きに集中していたはずの軍曹が、為す術無く地に沈む。
その様を、私の顔を、呆然とした表情で見やる大佐。
もはや彼が何を考え、何をしようが関係ない。
だからそのままもう一度、同じ体勢を取る。
「う、ぉ……あ、あぁぁ……!」
────ただし、それはもう一段加速する。
先ほどと違うのは、状況。
周りを囲む兵も居なくなり、より十分な足の踏み場、スペースが確保できている。
先ほどと違うのは、心構え。
一対一となりさらに余計な雑念の全てを取り払って、ただただ身に流れる闘気を脚に集中させていく。
……先ほど、大佐は私を指し小柄な身、と言った。
その通りだ。私は彼らやケンシロウさんに比べれば小柄で……そして、身軽。
その上で闘気の扱いは、足運びは。
すでに北斗神拳伝承者と比べても恥じないものとなっている、はず。
だから、ただ"それ"だけに集中をした時、その一点においてなら。
おそらくは、きっと。
「────私は、ケンシロウさんより、速い」
「ぁ、待ッ────────」
先ほど、軍曹を倒した時のそれを超える爆裂音が響き渡る。
極限まで狼狽はしていてもさすがは大佐というべきか、動きに反応すると、すでに持ち替えていた爪のような暗器で迎撃を試む。
が、動揺により弱まった心から繰り出されるその動きは、トップスピードに乗った今の私から見ればスローモーションだ。
それは、これまでされていたことの意趣返しのように。
私は彼の全ての動きに対し"後出し"で完膚なきまでに叩き伏せ、先に着地する。
それに遅れて、宙を舞っていたGOLANの首領、大佐。
全身をズタズタにされたその肢体が、ドシャァっという音と共に地に倒れ伏した。
(────私は、まだまだ、強くなれる)
決着が、ついた。
★
「……ゲッゥ……ば、バカ、な……それほどの、それほどの力がある、なら、何にでもなれるはず……お前、は……なんのために、こんな……」
「……ただ、生きるため、です」
「そんな……そんな、つまらない、こと、で……こ、後悔、せん……の…………か………………」
そう言うが最期、大佐はそのまま息を引き取った。
……彼も、なまじ強かったがために、核戦争で生き残ったために。
自分が最も優れた、神に選ばれた存在だ……そんな妄執に取り憑かれてしまった。
しかし。
「────ただ生きるのって、結構大変なんですよ」
もし彼が私が知るような、この世界に数多く居る強者たちの存在に気がつくことが出来ていたなら……ここまで増長し歪むことは無かったのかもしれない。
────彼や、今の私の実力で頂点に立てるようならこの世紀末、苦労は無いのだ。
……とはいえ、私もあまり偉そうなことを言える立場にはない。
この世界で目覚めてしばらくは、この生き方というやつを迷走させ、周りにご迷惑をおかけしたものだ。
ただ、後悔せんのか、と言う言葉だけは。
それに対してだけは私は、自信を持って、するはずがない、と返すだろう。
苦労ばかりのこの世紀末だが、こう見えても、私は。
「ご心配には及びません。ちゃんと、楽しんでますよ」
……そうして、あとに残されたのは、狂気に染まった軍人達の
この日、神の国-ゴッドランド-は崩壊した。
楽しようとしたらハードモードになってたでござる