【完結】北斗の拳 TS転生の章   作:多部キャノン

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本日は二本立てでお送りします


第二十話

「む…………」

「どうされましたか、マコト様?」

「いえ」

 

ジャギの部下の案内により私は今、彼がいるというオアシスへたどり着いた。

 

そこで私が最初に感じた印象は、『特に荒れ果ててはいないな』というものだった。

 

例えば、原作のように村人を埋めて、ジャギ像に対しケンシロウと言わなければ村人同士で首を切らせ合う……そんな悪趣味な催しや、それ以上のことをしているケースも覚悟していた。

が、意外というべきか、今のところそんな様子は見られない。

 

たまたま目につく範囲でやっていないだけか、もしかしたら私だけに隠そうとしている……いや、それはさすがに自惚れすぎか。

ただ、通りすがる村人が案内人に向ける視線を感じるに、彼ら一派が畏れられていることは間違い無さそうだ。

 

そうして本来の歴史とは異なる状況を訝しむ私を他所に、特にトラブルも無いままにあっさりと目的地に到着した。

案内人はオアシスでもひときわ大きな建物。その扉の前に立つと、中にいるであろう人物に声を掛ける。

 

「ジャ……ケンシロウ様。マコト様をお連れいたしました」

 

「わかった。下がれ」

 

(────)

 

案内人に返された声色は、落ち着いた……いっそ威厳があると言っても良いものだ。

原作のように、完全に狂気に塗れた状態では無いのだろうか。

 

 

そして、案内人が下がったのを見ると私は扉に手をかけ……開け放った。

 

 

「…………ジャギ」

 

「よお、マコトじゃねえか。……見違えたな」

 

「それは……こちらのセリフですよ」

 

 

ぱっと見の姿かたちは、私が知る原作とそう変わらない。

ヘルメットに胸もとを開けたジャケットという出で立ち……もちろん、胸にあるのは七つの傷だ。

 

だが、よく見ると筋肉はより絞られて洗練されているし、姿勢や体重移動などの立ち振舞い一つを取ってみても、伝わる印象は紛れもなく強者のそれだ。

 

それに、何より。

 

(闘気が……ここからでも伝わってくる)

 

拳の高みに至ったものは、その身に"闘気"を纏うことが出来る……これは、ラオウのセリフだったか。

 

流石に純粋な闘気量ではラオウには及ばない……はずだ。

しかし、それでもビリビリと刺すようなそれは、これまでのジャギがどれほど研鑽を重ねてきたのかを、如実に私に感じさせた。

 

 

そして、これだけの闘気をむき出しにしている……この事実からわかることは、もう一つ。

私は、それを予感しながらも、まずは言葉で以て問いかける。

 

 

「お久しぶりです。今日、私を呼んだのは何故ですか?」

 

その発言に対し、ばっと大仰な動作から手を差し出すジャギ。

 

「マコト。お前はこっちに来い。これからは俺の下で戦うんだ」

「…………」

 

 

主旨自体は想像通りだが、想定を遥かに超えたストレートっぷりに、思わず面食らってしまった。

 

「部下から聞いてるぜ? お前は北斗神拳を伝承したようだが……戦いぶりを見るに、北斗神拳だけにこだわっている訳ではない、そうだな?」

「それは……まあ、そうです」

「それなら、手段に縛られず生きるお前は、こちら側の人間のはずだ。違うか?」

 

「その返答をする前に……私からも一つ。何故ケンシロウさんを騙って悪事を? ……私の今の仲間に、南斗水鳥拳のレイという人が居ます。彼の妹、アイリさんをさらい売り払ったのはあなたなんですよね?」

 

そう私が逆に問いかけると……彼は一瞬動きを止めた後、ヘルメット越しに表情を歪め……笑った。

 

 

「────────っ。はっ!! それの何が悪い! 言ったはずだ! どんな手を使おうが勝てば、生き残ればいい、それが全てだとな!! それを肯定したのはお前でもあるんだ、何の文句がある!!」

 

自分で自分の言葉に押されるかのように、ヒートアップしながらジャギは続ける。

 

「そうさ! だからそのついでに、ケンシロウのやつに成りすましてやったんだ! やつが誰からも敵視されるようになれば、お前がやつと居る理由もますます無くなるからな!!」

「そうして俺は手に入れた! 金を! 力を! お前を案内したような部下を! あとはお前が俺の下に来れば盤石だ! お前が来るのなら、俺はお前が望む全てを与えてやってもいい!!」

 

 

…………シンに連れ去られたあとの姉さんは、こんな気持ちだったのだろうか。

 

今の返答に覚えた一瞬の違和感……もしくは気づき。

それに対し言いたいこともあるにはあった、が。どちらにしろ、私の答えは決まっている。

 

 

「あなたの答えは分かりました。────それなら、私はあなたと共に行くわけにはいきません」

 

そう言って、私が構えようとする、と。

 

 

「ああ、そうだろうな」

「ッ!?」

 

 

瞬間、ドォンッと轟音が一発。

 

それは、常人では目にも止まらぬほどの速さで銃を構えたジャギが、即座に、躊躇なく。私に発砲してきた音だ。

 

 

右大腿を狙い撃ち込まれたそれは、寸前で回避こそ出来たものの、先手を取られたことで身体が泳ぐ。

そして隙を見せた私に、ジャギはすでに間合いを詰めている。

 

たまらず迎撃しようと手を出した瞬間、私は確かにこの目で見た。

ジャギがまるで無数の手を生やした怪物……いや、阿修羅と化しているその様を。

 

「北斗羅漢撃────っ!!」

「ぐっぅうう────!?」

 

凄まじい速度で振るわれる無数の拳撃。何発かは辛うじて迎撃できたものの、避けきれなかった拳は私の全身を打ち据え、吹き飛ばした。

 

その勢いのまま壁に叩きつけられるが、痛みに呻いている暇はない。

私は相手の行動を見るまでもなく、最短最速で回避行動を取る。

 

私が居た場所に、銃声とともに弾痕が穿たれたのは、その直後の話だった。

 

改めて距離を取り息をつくと、私は内心の戦慄を隠しながらも声を掛ける。

 

「……いきなり、ずいぶん容赦が無いですね。さっきまでは私をモノにしたいように見えましたが?」

「ああ、今もそのつもりだぜ? が、お前は……たった二年で北斗神拳を一から学んで、ここまで来たような化け物は。いまさら口で何を言おうが変わりやしねえ。そうだろう?」

 

……流石というべきか、よく見透かされている。化け物呼ばわりはともかく。

彼も最初からそのつもりだったからこそ、再会した時点からあれ程の闘気を発していたのだ。

 

「どのみち、お前には俺を……生まれ変わった俺の力を、見せてやらなきゃならねえんだ。……だからよお?」

 

 

「────────殺す気でいくが、絶対に死ぬんじゃねえぞ?」

 

 

 

 

「はっはぁっ!!」

「────フゥッ!!」

 

銃声と、鞭を打ち据えたような鋭い音が立て続けに建物内に鳴り響く。

 

ジャギの銃撃を避けながら、私が飛ばした闘気の指弾。それを、ジャギが同じく闘気のこもった手で弾く音だ。

 

如何にジャギの銃の技術が高いものでも、気を張った北斗神拳使いに正面からの銃撃は通用しない。

が、私の指弾もジャギの防御を突き破ることは出来ず、見た目は激しい撃ち合いながら、一種の膠着状態が訪れる。

 

 

それを見て取った私は至近戦に切り替えようと距離を詰める。それと全く同時、同じ考えに至ったのであろうジャギが私に肉薄してきた。

 

瞬間、またもぶわっと現れた無数の腕が、私の視界を覆い尽くす。

 

北斗羅漢撃。

 

原作でもジャギが得意としていた技だが、今振るわれるそれは、私の知るものとはまるで別次元の……一つの、極み。

瞬時に展開されるそれは、拳の弾幕といってもいい。恐るべき技、恐るべき力だった。

 

「北斗羅漢撃────っ!!」

「ハァァッ!!」

「────!! ヌゥッ!?」

 

迫りくる腕に相対した私は、即座に開脚しながら身体を沈み込ませ、地面についた手を補助に横回転。

ジャギの拳に付き合わず、水面蹴りで足をすくう。

 

如何に正面からは対処困難な無数の拳撃といえど、それにより振るわれるものは、あくまで腕だ。

地面すれすれにまで身体を沈み込ませた私への決定打を放つことは出来ず、逆に注意が疎かになった下半身へ反撃を受け、ジャギはたたらを踏んだ。

 

 

すかさず身体を起こすその反動を利用して、突き上げられる私の拳。

必中の気迫を以てジャギのアゴを狙い、打ち込まれたその一撃は。

 

「ガァア!!」

「ッッ!?」

 

信じがたい速度で差し込まれたジャギの腕に阻まれ、空振りに終わる。

 

間髪入れず追撃の連打を打ち込むが、その殆どは体勢を整えたジャギに防がれ、結局出来たのは胸部に浅く掌底を打ち込み、距離を離すことくらいだった。

 

「……チッ」

「…………」

 

……息をつきながら、私は思考を巡らせる。

 

今の攻防だけを見るなら、私はかなり厳しい状況に追い込まれていると言えるだろう。

遠距離戦ではお互い決定打を出せずに膠着し、接近戦では羅漢撃で押し込まれる。

 

そして、私は羅漢撃への対策……それも、初見殺しに等しい手段を使ったにも拘らず、有効な一打をうてなかった形になるのだ。

 

 

……戦う前から、これまでで最強の敵だと予感したことは間違いではなかった。

よくここまで変わった、と。

その努力を想うと、この世界を愛する一人間として感動すら覚えた。

 

 

(────────だけど)

 

 

だけど、私が今の攻防で見出したものは……確かな勝機だ。

 

(…………)

 

悪辣、とまで言うと語弊があるものの、()()()()()()()()()()()()()という、その意味を考え、ほんの一瞬だけ躊躇する気持ちが芽生える。

 

が、しかしそれも即座に割り切って捨てる、と。

 

私は、動いた。

 

「疾ッッ!!」

「うおっ!?」

 

脚に闘気を込めた高速移動で再び、正面から距離を詰める。

すかさず羅漢撃を展開し迎撃しようとするジャギ。

 

それに対し私は────

 

あえて防御の意識を投げ捨てて、最速の一撃を真っ直ぐに、ジャギの頭部めがけて打ち放った。

 

「なっにぃ!? グゥッ!!」

 

 

瞬間、羅漢撃の動きが止まり、全力で防御に移行するジャギ。

 

結果、私の拳こそは防がれたものの、羅漢撃に身を晒したはずの私は、完全無傷。

さらに空いた右手で、すくい上げるような軌道の掌底を、再びジャギの頭部に打ち込む。

 

ジャギも私の狙いが分かったのだろう、それに対しても過敏に防御の手を取りながらも、早くもカウンターで私に拳を打ち込むという対応を行ってきた。

高まった技術力に裏打ちされた、いっそ芸術的なまでの交差法といえる。

 

「フッ────!!」

「ごほぉぁ!?」

 

が、それも想定内。苦悶の叫びとともにジャギの胸元から鮮血が吹き出す。

頭部を狙っていた私の掌底が、寸前で軌道が変わり胸部を穿つ刺突となったためだ。

 

頭部の防御とカウンターで埋められた意識。

その外からもたらされた攻撃を受け、ジャギは呻きながら距離を取ろうとする。

 

「せぇえああああっっ!」

「ぐっぅっぉおおおぉお!!」

 

そこにすかさず撃ち込まれるのは、私が放った闘気の弾幕だ。

ジャギはごろごろと転がり回避を試みるものの、そのことごとくに被弾し、衝撃に悶えた。

 

(────すごいな)

 

しかし、ジャギはそれすらも耐えきると、ガバっと起き上がる。

そして、そのまま……表面上は何事も無かったかのように構え直したのだった。

 

先ほどの刺突も、今の闘気弾も、私の攻撃は全て経絡秘孔を狙ったもので、実際その目論見通りに刺さっている。

にも拘らず、ジャギは今の動作で距離を取りながらも、被弾した端からその対策となる秘孔を自ら突いていき、そのダメージを最小限に抑えたのだ。

 

(……そういえば、原作でもケンシロウさんの秘孔を即座に解除していたっけ)

 

元々そういった術に適性があったのだろうか。

アレは、ジャギが生来持つ、生きるための執念のようなものが技術という形で現れているのだろう。

傍からはどんなに無様に見える形でも、生き残るための最善を尽くす……おそらくだが、これはケンシロウさんやラオウといった強者でも簡単には真似できない、ジャギの本能、反射に由来する技能のはずだ。

 

 

そう、反射。

達人同士の戦いほど、見てから思考する戦い方ばかりでは、その速度に追いつくことは出来ない。

武の極みに至る者を指す言葉に、無我の境地というものも現代にある。

あれは長年の経験を経て、行動を反射的に取るまでに落とし込むことで、他を圧倒する速度を生み出す……そんな技術体系の一つだと、私は認識している。

 

が、この反射は必ずしも良いことにばかり作用するものではない。

何を隠そう、今私がジャギに痛撃を与えられたのは、その反射を逆手に取ったものなのだから。

 

 

「へ……へへ、へへっへ……」

 

彼は、笑う。ただ何を言うでもなく。

 

…………怒りか、諦観か、それとも他の何かか。

その笑いがどういう感情から来るものなのかは、今の私にはわからない。

 

 

果たして今、彼から見てどういう風に映っているのだろうか。

 

 

────彼の感情すらをも戦術に組み込み、攻め立てているこの私は。

 

 

果たして今、彼はどういう想いで対峙しているのだろうか。

 

 

過去、ケンシロウさんに突かれた秘孔により、歪みに歪んでしまった顔。

原作でもヘルメットの中を見られただけで部下を惨殺し、傷が痛むたびにケンシロウさんへの憎悪を募らせ続けたと言うそれは。

 

 

────間違いなく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ものだというのに。

 

 

 

★★★★★★★

 

 

(へっ……本当に、化物だぜ)

 

ジャギは今日だけで何度目になるか分からないその戦慄に、内心身を震わせていた。

 

マコトは、他のやつとは違う────そのこと自体は、あの日話したときから分かっていたことではあった。

 

だが、誰が信じられるだろうか。

多くの伝承者志望が門を叩き、そして破門や事故死と言う形で、夢半ばにして去っていった究極の暗殺拳、北斗神拳。

 

それを、たった二年やそこら学んだだけで、曲がりなりにも幼い頃からの修行という下地があった上で、さらに鍛錬を重ねた自分と互角に戦えている。

以前の劣等感だけで生きていた時にこの光景を目にしていたなら、その事実だけで……いや、それどころか、再会した時に感じた闘気の凄まじさだけで憤死していてもおかしくはなかった。

 

が、今はその強さが。そして、その容赦の無さが……妙に、心地いい。

 

 

今マコトが察知し、狙っている"それ"は、正しい。

ジャギは、ヘルメットの破壊により醜く歪んだ自分の顔を、マコトに見られることをこの上なく恐れており……そして、自身のそんな心も自覚している。

 

そしておそらくマコトは……マコトにだけは見られたくない、という気持ちすら理解した上で今、遠慮容赦なく攻めてきている。

それはジャギにとってはあまりに致命的で、あまりに無慈悲で……。

 

そして。

 

「へ……へへ、へへっへ……」

 

不思議なことに、もしかしたらそれと同じくらいに、嬉しいことでもあった。

 

 

何故なら。

 

 

────勝てばいい、それが全てだ。

 

 

あの日、彼女が言ったことに。彼女が肯定した自分の戦い方に……嘘は、なかったと。

そう、強くなった彼女自身の力を以て。

そして、その力に抗えるだけの自身の成長を以て。

これ以上無く、正しく証明できているということに他ならないから。

 

それこそ、食い詰めて実入りの良い悪事に手を出す瞬間まで、復讐心すら忘れかけていたほどに邁進した自身の努力が、間違いではなかった、と。

そう全身で肯定されているように思えたから。

 

 

だからこそこれに応えて、その上で……彼女に勝ちたい。

そう、ジャギは改めて思い。

 

そして、最後の勝負に出る決意をした。

 

 

「────ガアァァッッ!!」

 

雄叫びとともにマコトのもとへ前進し、距離を詰める。

 

これまで以上に両腕に闘気をみなぎらせ、羅漢撃の構えを取り────そして。

 

両者の身体がぶつかる直前、突然足元から跳んできた"つぶて"がマコトを襲った。

先ほどの銃撃時に抉れた地面を利用し、ジャギが蹴り上げたものだ。

 

一瞬視界が覆われるが、マコトは冷静に左手で弾き飛ばすと、残った右腕を再び頭部に向けて突き出す。

 

「なっ!?」

 

それに対し、ここに来て飛び出したのは、これまで一度も使っていなかったジャギの含み針だ。

これにはさすがに虚を突かれたようで、マコトは慌てて残った右腕で止め、ギリギリのところで被弾を免れる。

しかし、予期せぬ反撃への対処に意識を割かれたことにより、マコトの攻撃の手は止まってしまった。

 

今のジャギの羅漢撃は、それを見逃さない。

 

「ぶふっ! ぐっっぅ、ぅううぅ────っ!」

 

マコトの顔が弾かれ、全身を拳や刺突の嵐が覆う。

半ば本能でなんとか致命の秘孔は避けたものの、身体中を打ち据えた衝撃は筆舌に尽くしがたいものだ。

マコトは為す術無く前のめりに倒れようとし……

 

「おぉぉお────!!」

 

寸前、踏みとどまると、そこからジャギの頭部に向けて拳を打ち出す。

立っているのもやっとなはずのダメージにも拘らず、その拳はこれまでで最も洗練された……ジャギからして、美しいとすら感じる一撃であった。

 

 

────ああ、こいつなら。マコトなら、そう来ると思っていた。

 

 

そう、静かな想いとともにそれを見てとったジャギは────。

 

 

「カァアア!!」

 

 

防御ではなく自ら、その拳に頭をぶつけにいった。

 

「────ッ!?」

 

これまでジャギが必死に守ってきたはずのヘルメット。それに拳が吸い込まれ、驚愕に目を見開くマコト。

その姿を収め、ジャギは自分が最後の賭けに勝ったことを知る。

 

マコトに肯定された、勝つために何でもするというこの姿勢。

 

それを貫き通すために今、この男ジャギは、この最後の瞬間。

恐怖、反射、本能……その全てを心の力でねじ伏せ、あまつさえ利用した。

 

その上で、硬直するマコトに向けて打ち出すのは、とっておきの切り札……

これまで一度も使う素振りすら見せなかったその技────南斗聖拳。

 

 

シンにも肉薄する程に研ぎ澄まされたその一撃を、マコトのもとへ走らせながら、ジャギの心は、叫ぶ。

 

 

────どうだ、見たか。俺はここまで来たぞ。お前が認めた戦い方で、ここまで出来るようになったぞ!

兄者達や、ケンシロウのやつに、こんなことが出来るか? 女一人から得る勝利、その一つのためだけに、プライドも見栄も……愛すらもかなぐり捨てることが出来るか!?

出来るわけがない、これは絶対に、俺にしか出来るはずがないことなんだ!

俺は、俺だからこその、俺にしか出来なかった戦い方で今、お前に勝つぞ!

だから、他の伝承者なんて見るな、お前は俺を! この俺だけを見ろ!!

 

 

「────俺の名を、いってみろォオオッッ!!」

 

 

会心の雄叫びとともにその拳……南斗邪狼撃と名付けた一撃は今、マコトの身体へと到達し────。

 

 

その瞬間、ぼそり、と。

小さく……だけど確かに。

 

 

ジャギは、眼の前で微笑むマコトの口から出た……その言葉を、聞いた。

 

 

 

「────────信じてましたよ、ジャギ」

 

 

 

「なっあぁ!!??」

 

突き刺さると同時、驚きに硬直していたはずのマコトの身体は、ギュルンッと全身を力強く回転させる。

刺さった腕ごと引っ張られる形になり、ジャギは逆に身体が泳ぎ無防備となる。

 

そこに迫るのは、遠心力をフルに活かした渾身の拳。

それは今度こそ防御の手を介すること無く、頑丈なヘルメットを破壊しながら、ジャギの顔面にぶち当たった。

 

「ガッッバァアアア!!?」

 

叫びとともに吹き飛ばされ、仰向けに倒れ伏すジャギ。

遅れて、砕け散ったヘルメットの破片が、からーんっと静かになった建物に鳴り響く。

 

 

「ふぅ────っ…………」

 

そして、倒れこんだジャギが、もう動けないことを見て取ると。

マコトはようやく、座り込んで息をついたのだった。

 

 

「……つかれたぁ」

 

 

戦いは、終わった。

 

 

★★★★★★★

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