【完結】北斗の拳 TS転生の章   作:多部キャノン

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すげェ!この誤字報告超助かる!
感想、評価、ブックマーク含め皆様のおかげでまだ作品に死兆星が落ちずに済んでおります。
いつもありがとうございます。

────
マコトくんは出来るだけ真面目に生きようとはしますが、それはそれとして様式美も好みます。
というか北斗の拳ファンで様式美が嫌いな人は多分あまり居ません。


第五話

外に出た私達の眼に飛び込んできたもの。

それは、村人たちに襲い掛かるZ-ジード-の面々と、その中心にいるリーダー格の大男が、リンちゃんの幼い身体を高く持ち上げ何事かを叫ぶ光景。

 

それはまぎれもなくこの村が迎えた苦難、悲劇。

このままではさらなる惨劇により血が流れることになるのは、ここにいる誰もがたやすく想像が出来るだろう。

 

ただ、多数の犠牲者が出ていた私が知る流れに比べると、村人の被害はかなり少ないように思える。

しっかりと武装され、素人だてらに隊列を組んで当たれているのが理由だろうか。

 

原作との違い……私がこの村に入った時に訴えかけた警告によるものだとするなら、想像以上の成果だった。

 

……正直、よく初対面の怪しい女の言葉を信じてくれたものだ。

 

声という障がいを患ったリンちゃんがなんだかんだ捨てられずに育っていたところも見るに、Z-ジード-の被害でピリピリしていたとはいえ、元々彼らは善良な気質なのかもしれない。

 

それならばなおさら、その優しさが暴力に踏みにじられるところを見過ごすわけにはいかない。

 

 

「おー! なんだー!」 「てめー!」 「こらぁー!」

 

早速とばかりに息巻いた、Z-ジード-のうちの三人の男に取り囲まれる私とケンシロウさん。

 

……こちらを見る男たちの眼に、隠す気も無い好色な気配を感じたときはゾワッと鳥肌が立ったが。

この世紀末で旅をする以上、この先このようなことはいくらでもあるだろう。

 

早めに慣れるよう、つとめて平静を装い、声をかける。

 

「今、用があるのはリーダーの男です。どいてください」

「あぁ!? なめてんじゃねブびゃゴッッ!?」

 

そうですか、の言葉とともに、一切の躊躇をせず力任せに顔をぶちぬく。

同時にケンシロウさんもすでに残り二人の顔を吹き飛ばしている。

 

 

これ以上明確なものはないと言える、そんな敵対意志を示した私達に、激高した他メンバーが襲い掛かる。

 

迫りくる敵を細めた眼で見やりながら、私は今自分が使える"力"を改めて振り返るため、思考を巡らせた。

 

 

 

修行のさなか────

ケンシロウさんとトキさんのおかげで、ようやく地に足をつけることが出来た私だったが。

 

それでも、現実として残された時間が多くないことには変わりがない。

ケンシロウさんのコピーを辞めた以上、すぐに自分なりの戦い方を模索し、完成度を高める必要があった。

 

そこでまず、私が考えたテーマが『取捨選択』だ。

 

つまり、北斗神拳のうちそれが必ずしも必要な技か、そうでないかの選択をし、重要度の高いものから全力で覚えていく、という形だ。

 

それは、千八百年の歴史を持つ代々の継承者からすれば邪道も邪道。

 

そもそも北斗神拳に限らず、一つの技を完成させることで初めて次に繋がる、という技も多いため、そうそう都合よくばかりはいかない。

 

しかし、死の灰の影響で二人の身体がいつ動かなくなるかわからないことと、姉さん……ユリアの存在のこともある。

その無茶を通すため、ケンシロウさんもトキさんも全面的に協力してくれた。

 

取捨選択にあたって優先度が低いもの……

たとえば原作であった『肩を組んだ際に突いて時間差で髪の毛が全部抜けて舌も引っこ抜かれる』なんて使用用途が狭いにも程がある秘孔。

こんなものは、どう考えても後回しでいいだろう。

 

そういった強者相手に押せるものでもない、生存に必須とは思えない要素を一旦切り捨てる。

その上で可能な限り大きな効果を発する秘孔、技を選んで傲慢に、かつ貪欲に吸収していく。

 

その多くは「こんな場面に使えるこんな技が欲しい」という私のリクエスト(おねだり)によるものだ。

北斗神拳自体の継承にはじまり、ワガママばかり聞いてもらっている二人には感謝の念しかない。

 

結果として私は、いくつかの格下相手を手早く片付けるための必殺の秘孔と、後に立ちはだかる強敵たちを想定した奥義……

 

そしてなにより、これから何度も降りかかるであろう"とある状況"を見越した技の鍛錬に注力することになった。

 

 

 

 

こうした経緯のもと振るわれる拳……

それにより敗れた悪党は、秘孔による爆散と、私自身が振るう北斗神拳でない拳による被害が混ざり、その骸を晒している。

 

そうしてZ-ジード-の大半を片付けた私達だが。

 

……ここに来て一つの問題に直面することになった。

 

 

「…………くっ」

 

……それは、リンちゃんを抱えるリーダー格ジードとの距離だ。

 

「ぬぅ~っき、貴様らかぁー! ここに来る前も、俺の仲間をやったのは~ッ!!」

 

彼らにとっての脅威が二人居るためか、村人たちの抵抗が想定より激しかったためか……

ともかくリーダーであるジードは私達の拳が届かない、かなり警戒した位置にまで下がっており、他メンバーを倒している間も近づく隙が無かったのだ。

 

ゆえに今、追い詰められたジードが取った選択とは。

 

 

「貴様らぁ! このガキが見えないのかぁ! それ以上一歩でも近づいて見ろ、その場でこいつの首をへし折ってやるぞ!!」

「────ッ」

 

格上を前にした悪党の特権にして最後の手段────すなわち、人質。

 

……それは単純ながら、恐ろしく有効な作戦だ。

事実、原作でもケンシロウさんはこの卑劣な手管により、多くの命を取りこぼし、時には自らが傷つけられている。

 

如何に触れられれば爆散する恐ろしい拳法の使い手を相手どろうとも、その距離にまで近づかなければ脅威でも何でも無い……

世紀末の世を小賢しく生きる悪党たちは、その思考に至るまでの早さは折り紙付きなのだ。

 

「……外道な」

「ッ────そちらに、近づかなければ、いいんですね」

 

「おーその通りだ! ……そうだ、そのまま両手を上げな。てめぇら二人ともだ! ……よし、ヤロウども! わかってるな!」

 

ヒヒヒッ、と下卑た笑いとともに残ったZ-ジード-達が再び取り囲もうとする……

今度はその顔に、勝利の確信から来る歪んだ笑みを張り付かせながら。

 

「当然、そいつらにも手を出すんじゃないぞ! この娘の命が惜しいのならなぁ!!」

 

そのままぐっとリンちゃんの首を掴むジード。

 

両手を上げたまま取り囲まれようとする私達と、苦しそうな顔のリンちゃんの目が交差した。

 

 

…………その、瞬間だった。

 

 

「ッ……ぅぅぅ────! ………ケ……ケ──────ン!! マコト、さ──────ん!! ……逃げて──────ッ!」

 

「────!」

 

 

────それは、リンちゃんの心の叫び。

地獄ばかり見てきた幼い少女の前に、今なお突きつけられた苦難の時。

 

それでもこの娘は、自分の身をいとわずその叫びを上げる。

"ここから逃げて" "自分のことは気にしないで"、と。

 

ケンシロウさんの秘孔の効果と、何より彼女自身の心の力。

それによって、本来出せるはずのない声が出せた────事情を知らぬ村人たちは、その奇跡に驚嘆する。

 

そして、驚いたのは耳元で突然大声を上げられたジードも同じ。

 

人形のように固まっておけばいいものを、と。

彼からすれば『大人しかった道具』の突然の奇行。

それに煩わしさを覚え、人質を取ってから一度も私達から外さなかった意識を今、リンちゃんに向ける。

 

 

(今ッ──────!!)

 

 

────それを確認すると同時、揃って挙げられていた私の両手が、残像すら生み出す速度を以て一つの"型"を取り始める。

 

 

それが描く軌道は、北斗七星。

 

その型────『天破の構え』にて練り上げられた闘気を放出し、"触れずして敵を打ち倒す"。

 

 

その技の名は。

 

 

(私自身の戦い方を探し始めたあの日以来、ずっと考えて、修行してきた。この世紀末で生きる人達を、一人でも多く守るために……こんな時! どんな種類の力が、技が! 私に必要なのかを────ッ!)

 

 

 

────────北斗神拳、奥義。

 

 

 

「天破活殺ッッ!!!」

 

 

 

両指先から高速で射出される闘気の弾丸。

ただでさえ油断していたところへの、拳など届こうはずもない位置に居たはずの女から放たれた、理外の端から来る攻撃。

それに全身を穿たれたジードは、たまらず悲鳴を上げ転げ回った。

 

衝撃により手放されたリンちゃんの身体が宙に投げ出される。

そしてそのまま重力に従い地面に落下……することも当然なく。

私が型を始めると同時に走り出していたケンシロウさんに優しく抱えられる。

さすがのナイスキャッチだ。

 

ケンシロウさんに抱きつき涙するリンちゃんの方に、私も駆け寄る。

 

────が、そこに再び現れるは、大きな影。

 

「ぐっぅうう! きさ、まぁっ! 何を、しやがったぁあー!!」

 

せっかく手にしていたはずの絶対の勝機を逃した男、ジードは怒りのまま吠える。

天破活殺を受け、ジードは倒れない。

むしろその殺意をさらに激しいものにし、私達に血走った目を向ける。

 

……先程撃った天破活殺。

それは、一瞬の隙の間に放つために威力を抑えて撃った、不完全なもの。

本来はアレにより秘孔を突くことで決定打となるのだが、あの状況でそこまでの技を繰り出すほどの練度は、今の私には無かったからだ。

 

 

それに、それに、だ。

 

 

罪のない村人を襲い、あまつさえリンちゃんを人質に取った一切の同情の余地が無い悪党、ジード。

彼を倒すという、この旅の始まりを象徴するにあたっての"ふさわしい技"など、とっくに決まっている。

 

 

────それこそ、私が生まれる前から。

 

 

ケンシロウさんのやること全てをなぞる気はすでにない。

が、最初は、この最初ぐらいは。

 

ケンシロウさんの掛け声も含めて借りたこの技を使っても、バチが当たることはないだろう、と。

 

 

「うおぉ~! ぶっ殺してやるぅうう!!!」

 

 

激高し襲い来る巨体、ジード。

それに対し私は柔らかく曲げた指先で、その顔を"撫でるように突く"。

 

 

「あたぁっ!」

「ぬぅっ!?」

 

そのまま突く、打つ、叩く、穿つ!

 

「あぁたたたたたたたたたた──────ッッ!!」

 

 

────北斗、百裂拳。

 

 

ジードの巨体が宙に舞い、地面に叩きつけられる。

それを確認する前に、私とケンシロウさんはすでに背を向けて歩きだしている。

 

しかしそこに三度立ち上がり、私に追いすがるは五体満足のジード。

顔を見ずとも、歪んだ笑いを浮かべているのが手に取るように分かる。

 

「待てぇい! ……ぐふふ~しょせん女の手遊び! 貴様の拳など、蚊ほども効かんわ~ッ!」

 

……そこまで聞いた私は立ち止まり、首だけを回し、その"最期"を見やりながら……

 

 

 

それを告げる。

 

 

 

「────────あなたはもう、死んでいます」

 

 

 

なにぃ、という声も最後まで発することは無く。

この荒野における悪の頭目ジードは、文字通り爆発四散したのだった。

 

 

 

 

その後、村人達との挨拶もそこそこに、私達は再び旅立った。

 

その道中を伴にするのは私とケンシロウさんともう一人、村で出会った少年、バットくん。

私達の戦いぶりを見て、ついていけば食いっぱぐれは無いと考え同行を願い出たのだ。

 

ケンシロウさんは勝手にしろ、という態度だったが、私としてはありがたい話だ。

 

正直なところ、私達は旅慣れしているからこの先も大丈夫……とはとてもじゃないが言い難い。

実際、今回この村にたどり着いたときも、かなりギリギリの状況だった。

 

……原作でこれ以降、ケンシロウさんが水分不足で倒れる、という描写がなくなったのは案外、彼のマネージメントが本当に有用だった可能性もある。

せっかくだし大いに頼らせてもらおう。

何も武力による解決だけが、生きるために必要なものではないのだ。

 

「ところでバットくんはいいんですが……リンちゃんは来ていないんですか?」

「あぁん? なんでリンが来るんだよ。あの村に残るに決まってるじゃねえか」

 

……あれ、そうだったか。

ああ、確かに言われてみれば、この段階では私の知る知識でもリンちゃんは合流していなかったんだ。

 

(……やっぱり、原作の記憶に曖昧な部分が増えてきている)

 

バットくんと出会った際、薬を塗ってくれようとした出来事に最初戸惑ったこともそうだ。

『言われてみればようやく』気づくぐらいに記憶の抜けや食い違いが発生し始めているのを感じる。

 

当然だ。

元々あった北斗の拳以外の記憶に加え、すでにこのマコトという生で得た様々な記憶が日々積み重なっているのだから。

 

(あまり、知識に頼ってばかりもいられなくなるな)

 

まだまだ鮮烈に記憶に残る出来事、エピソードは覚えていられる自信があるが、それもそういつまでも持つものではないだろう。

 

私がこの世界でなそうとすることのためにも、もっと頑張らないといけない……

一抹の不安とともに決意を新たにし、私は歩き始めたのだった。

 




天破活殺に代表されるように、北斗世界は飛び道具めっちゃあります。
なんなら手からビーム出して「砂地を凍結させ動きを見切るか」とか平気でやってきます。
子供心に読んでて一番???ってなったのは多分あの瞬間です。
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