三兄弟の系統樹   作:出来立て饅頭

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第十話 神造ダンジョン<墓標迷宮>

 ◇  【魔法剣士(マジックソードマン)】クロス・アクアバレー

 

 

俺は一足早くにデンドロにログインして弟たちを待っているところだ。いつもは俺が最後に合流していたからな。今日は仕事が早く終わったので、驚かそうと思い早めに来たと言うわけだ。

 

それに一つ考えたいことがあったからな。今日まで俺達は何度かデンドロにログインしてジョブクエストを受けたり、同じ系統職業の<マスター>とパーティを組んだりして知り合いやフレンドを増やした。なお、知り合いのほとんどがティアンだ。

 

知り合ったティアンに相談したり、クエストとして戦闘の指導を頼んだり魔術師ギルドで魔法の講義にも参加したりとティアンとも交流を深めて戦闘能力の向上を目指した。

 

おかげで【魔法剣士】のLvカンストにもう少しでジョブ関係のスキルも充実。少しづつだが強くなっている実感も感じている。次のジョブも【剣士】と【魔術師】をメインジョブにしてLvを上げる予定だ。

 

弟たちも順調にデンドロを楽しみ強くなっていると電話で言っていた。ただし、順調なのは<エンブリオ>を除いてだ。

 

俺達の<エンブリオ>は未だに第一形態のままで第二形態に進化していない。ネット情報やフレンドの<マスター>たちの話では早ければデンドロ内時間で四日もあれば進化するらしい。

 

俺達兄弟は平均で約六日はデンドロ内で活動しているのにだ。これには俺達も頭を悩ませている。そのことに付いて相談した結果、とあるところに行ってLv上げをしてみてはどうかと言うことになった。

 

その場所ならばモンスターを倒し続けても誰にも文句を言われないし、運がよければレアなアイテムも手に入るそんな場所がアルター王国の王都にあるのだ。

 

そこは神造ダンジョン<墓標迷宮>だ。

 

デンドロのダンジョンは2種類ある。モンスターが占拠した砦跡やモンスターが掘って住み着いた洞穴など諸事情によってダンジョン化した自然ダンジョン。

 

そして、もう一つが神造ダンジョンと呼ばれるダンジョンだ。これはざっくばらんに言えば運営によって創られたゲームなどではお馴染みのモンスターが絶えずリポップし、ダンジョンから出てくることもなく、宝箱がランダムで配置されるダンジョンだ。

 

この神造ダンジョンは現在確認されているだけで七つある(本当は九つ存在するが、この時点では1つは発見されておらずもう一つは監獄に有るため、知らない<マスター>が多い)

 

その内の一つがアルター王国の王都アルテアに存在する<墓標迷宮>。神造ダンジョンの中では最も入りやすいと言われている。

 

入るための条件がアルター王国所属であることと【迷宮探索許可証】と言うアイテムを手に入れ自身の名を記載することだけだからな。他の場所は山奥や森林深くに有ったり、入るためのアイテムが手に入り難かったりと難しいとのこと。

 

ちなみにこの【迷宮探索許可証】はお金で買うとお値段10万リルと言う大金なのだ。だが、逆に言えばお金さえクリアできるのなら簡単に手に入ると言う事。

 

クエストや討伐をしてお金は20万リルを超えてきた俺達なら手に入るので挑戦して色々な経験を積もうと言うわけだ。

 

丁度、ゲイルとウッドがログインしてきたので早速向かうとしよう。

 

 

 

 ◇  【弓士(アーチャー)】ウッド・アクアバレー

 

 

珍しく最初にクロス兄貴が待ち合わせ場所に居た。それについて驚いていると、してやったりと言う顔をされる。ちょっとイラっとした。

 

とりあえず落ち着いて、今日は<墓標迷宮>に挑戦するので、さっさと目的地に向かう。【迷宮探索許可証】はすでに手に入れているから問題なし。

 

そう言えば僕たちが許可証を買ったお店、【魔王骨董品店 中央大陸支店】って店だったけど・・・本店は離島の天地か海上にあるグランバロアかな?

 

などと考えていたら<墓標迷宮>のある墓地区画へとたどり着いた。当然だけど西洋ファンタジーのお国柄だからお墓も西洋風だね。墓地を進み<墓標迷宮>の入り口を監視している門番さんに許可証を見せ、デンドロ初のダンジョンへと挑戦する。

 

 

<墓標迷宮>は地下へと続く地下迷宮で階層がどれくらいあるのかはまだわかっていない。提示板で判明しているのは31階層までだった。

 

その階層までたどり着いたのは合計Lv300越えの上級職<マスター>フルパーティだと言う。とは言えこれはあくまで提示板に情報提供している人の記録だ。

 

中にはそれ以上の情報を持っていても誰にも明かさず情報を独占している人も居るだろうね。

 

そんな<墓標迷宮>に初挑戦する僕たちはまずは1階層の探索をするところではあるが・・・

 

「じゃあ、予定通り4階層までは一直線に階段を目指すぞ」

『「了解」』

 

僕たちは早々と情報収集して覚えた階段までの道のりを警戒しながら進む。普通ならダンジョンなのだし探索するのだが、これには事情がある。

 

この<墓標迷宮>は5階層ごとにボスが配置されていてそのボスを倒すと次の階層へと行ける。そして五階層ごとの階層に出てくるモンスターの種族は決まっているのだ。1階層から5階層に出てくるモンスターは・・・

 

「「「「アァアァ~」」」」

『「「げぇ」」』

 

僕たちの目の前に出てきたのは全身が腐って骨や内臓が見えて、けれど倒れることなくゆっくりとした足取りでこちらに手を伸ばしながら近づくゾンビたちだ。正式名称【ウーンド・ゾンビ】

 

そう、1階層から5階層に出てくるモンスターはすべてアンデットなのです。【スケルトン】や【スピリット】などはまだマシだけど、このようにゾンビパニックホラー映画の様なリアルなゾンビが居る。

 

さすがにあんなモンスターには近づきたくないし、矢がもったいないから使いたくない。と言うわけで・・・

 

『「兄貴。まかせた!」』

「ちょっと待て!せめてグリフには手伝ってもらうぞ!」

「クル!?」

 

グリフは僕も!?っと言いたげな鳴き声を上げる。

 

「グリフ、仕方ないからさっさと終わらせよう?」

「クル~」

 

心底嫌そうにグリフは鳴き声を上げるが、そんな僕たちをモンスターたちは待ってはくれない。徐々に接近するゾンビたちに向けてクロス兄貴とグリフはこっちにくんな!の思いを込めた魔法攻撃を浴びせるのだった。

 

 

何度かの遭遇戦をクロス兄貴とグリフの頑張りで何とかしつつ、僕たちは4階層へとたどり着いた。ここからはゾンビはではなく【スケルトン・ファイター】などのちょっと強めのアンデットや【ファントム】と行ったモンスターが出てくる。

 

極稀に【フレッシュゴーレム】が徘徊しているらしいが、こいつに出会った場合は我慢して戦うことにしている。経験値が高めらしいから。

 

この4階層からは探索を行うと決めていた。ゾンビ系のレアモンスターは一種類のみでそいつは出会うことが滅多にないし、Lv上げに来た以上は戦わないないと。そんな訳で探索を行いながら出会うモンスターを撃破してゆく。

 

【スケルトン・ファイター】はスケルトンが多様な武器と盾を持ち、多少は機敏に動く。しかし、ゲイル兄貴にはダメージを与えられず蹂躙された。その暴れっぷりはゾンビ相手に暴れられなかったストレスを晴らすかのごとく。

 

【ファントム】は半透明の幽霊型のモンスターだ。通常攻撃はこちらのHP、MP、SPを吸収するドレイン攻撃にデバフや闇属性魔法攻撃をしてくる。デバフや魔法攻撃はそれほど強力ではないが、物理攻撃は無効だし最初の階層では強い部類だね。

 

そんな厄介なモンスターもクロス兄貴やグリフの魔法攻撃に倒されたけど。相手のデバフや魔法攻撃は【ガルドラボーク】によって吸収された。

 

そんな感じで探索をしながら出会うモンスターを倒しまくった。探索結果は宝箱は発見できなかったが。まぁ低階層では滅多にないと言う事かな?

 

その後は5階層への階段を見つけ、さっさと降りた。5階層でも探索を行う。その途中で【フレッシュゴーレム】と運悪く遭遇。現在戦闘中です。

 

「AAAA!」

『ふん!』

 

【フレッシュゴーレム】は死体で作れた2m越えの体のすべてが太く重圧なアンデット。その大振りなデカい拳による攻撃をゲイル兄貴は盾で真正面から受け止めた。

 

現在のゲイル兄貴は《ダメージ軽減》スキルで20ダメージ分は減算され、今装備している盾もなかなかの装備だ。

 

 

 【エレメンタル・シールド】

 各属性のエレメンタルモンスターの素材で作り上げた盾。属性耐性がある。

 

 ・装備補正

 

  防御力+100

  火、水、風、土属性耐性+5%

 

 ※装備制限:合計Lv35以上

 

 

装備スキルはないタイプだが、防御力が高く属性耐性もあるので、ゲイル兄貴には有用だろう。Lvも上がりENDも高くなっているゲイル兄貴は敵の攻撃を低ダメージで受け切った。

 

「炎よ!敵を燃やせ!《ファイヤーボール》!」

 

その隙にクロス兄貴が火属性の魔法攻撃を放つ。《詠唱》スキルでMPを追加で込めて威力を上げて。《詠唱》は自身で考えた言葉を唱えてMPを上乗せして魔法の威力、射程、範囲などを強化するスキルだ。

 

クロス兄貴の場合は【ガルドラボーク】の《オーバー・マジック》があるので下位互換にしかならないが、同時使用も可能らしく使い方のバリエーションは広がったと喜んでいた。

 

「《インパクトアロー》!」

 

僕もゲイル兄貴の後方から援護射撃をしている。けど通常攻撃はせずに攻撃スキルで唯一効果のある《インパクトアロー》をクールタイムを考えながら使用している。

 

「クルー!」

 

グリフも《ウィンドブレス》で援護してくれている。僕たちも強くなり装備も今のLv帯ではそれなりに強力なので【フレッシュゴーレム】が倒れるのにそう時間はかからなかった。

 

ボスモンスタークラスだったらしくドロップは【死体巨人の宝櫃】だった。ただ、名称がブラックすぎる。これからでてくるアイテムを手に持つの嫌だな~

 

「この【宝櫃】どうする?」

『開けるなら俺がしようか?』

「僕としてはお願いしたい」

 

ゲイル兄貴は平気なようだからこの【宝櫃】を開けるのは任せよう。どんなものが出ても買い取りになるだろうけど。とにかく倒せたし、探索の続きだね。

 

 

 

 ◇  【騎士(ナイト)】ゲイル・アクアバレー

 

 

極稀に出会うはずの【フレッシュゴーレム】を倒した結果、今の俺のLvは48になった。4階層から本格的に戦闘を繰り返し、レアモンスターを倒したがなかなか経験値がおいしいなこのダンジョン。神造ダンジョンは全部こんな感じなのかね?

 

兄貴とウッドもLv47にはなっている様だ。この調子で<エンブリオ>も進化してくれればいいんだが、ステータス画面を見ても変化はない。

 

いつになれば進化するのかね?不安や疑問はあるが、今はこのダンジョンを探索するかね。探索を再開して出会うモンスターを倒していると、俺達の目の前に広い部屋とその内部に居るモンスターを見つけた。

 

十メートルはありそうな巨大なスケルトン。名は【スカルレス・セブンハンド・カットラス】 その名が示す通り六本の腕は鋭利な刃物のような骨になっており、頭はなく何やら骨が連結して長い鞭のような形状になっている。

 

あれが5階層に配置されているボスモンスターだ。俺達は軽く戦闘の配置を相談して部屋へと入り戦闘を開始。しばらくして、俺達は苦戦していた。

 

「KAKAKA!」

『く!?』

 

正面で相手の攻撃を引き受けている俺は、意外と素早い左右に三本ある骨刃の攻撃を防ぎきれずにダメージを受けている。手数もありSTRも高いらしく俺は無視できないダメージを蓄積していく。

 

「くそ!?」

 

クロス兄貴も俺が引き付けている間に攻撃しようとするが、そのたびに頭に連結している骨の鞭が高速で振るわれ先端の刃が兄貴に迫り、それに対処しなくてはならなかった。

 

「《インパクトアロー》!」

「クルー!」

 

唯一攻撃できているのがウッドとグリフだ。しかし、スケルトンであるボスに対して有効な攻撃方法が《インパクトアロー》と言う矢が当たった瞬間に衝撃を発生するスキルだけであり、何度か外してもいる。

 

グリフの方は与えるダメージはデカいが、MP消費が激しく何度も使えず決め手に欠ける。

 

正直に言ってこのままでは負けるだろう。もしかしたら初のデスペナルティにもなるかもしれない。全く持って苦しい戦いだ。しかし、それと同時に楽しくもある。

 

強大な敵に苦戦し、諦めずに勝つためにはどうすればいいのかを考えるのはすごく楽しい。今の俺は笑みを浮かべているだろう。

 

このボスを倒すために一か八か、【ポルックス】をガードナーとして使い人数を増やそうかと考えた。だが・・・

 

『ん?』

 

突然、敵の攻撃がよく見えるようになり攻撃を防ぐことができるようになった。戸惑い何があったのか考察する。

 

(AGIが上がったわけではない。俺の速さは変わらない。だとしたら・・・)

 

変化は俺だけではなかった。ウッドとグリフの攻撃のダメージが上がった様な気がする。それに後ろから・・・

 

「グリフ!?なんだか大きくなってない!?」

「クル!」

 

そんな声が聞こえた。それとウッドの攻撃は多少上がった程度だと思う。だが、グリフの攻撃は劇的に変わっている。今までの《ウィンドブレス》はうちわで風を送るような物だったが、先ほどからの《ウィンドブレス》は扇風機の強ボタンクラスの勢いがあった。

 

俺はこの状況の変化について、もしかしたらと思い兄貴に確認をする。

 

『兄貴!もしかしたら俺とウッドの<エンブリオ>が進化したかもしれない!』

「それは本当か!?」

『俺からは確認できないが、グリフは成長したんじゃないか!』

「うん!以前より一回りはデカくなったよ!」

「確かにそれなら進化しているかもな!俺もきついがステータスを確認して見る!」

 

そう言うと兄貴は骨鞭の攻撃を何度か受け、何度目かの接触時に自らの剣に骨鞭を絡め取った!その隙にステータスの<エンブリオ>項目を確認すると・・・

 

「なるほど!ウッド!俺の後ろに来てくれ!」

「わかった!」

 

クロス兄貴はステータス画面を見た後にウッドにそう指示を出した。移動の際にグリフが視界に映ったが確かに大きくなってるな? 

 

ウッドとグリフが兄貴の後ろにたどり着くと、兄貴はさらに続けて指示を出す。

 

「今から新しいスキルでグリフにMPを譲渡する!グリフはそのまま《ウィンドブレス》をボスに当てまくれ!」

「グリフ!クロス兄貴の言う通りにして!」

「クル!」

「いくぞ!《サークル・トランスファー》!」

 

クロス兄貴がスキル名を宣言すると、部屋に仄かに見える薄い緑色をした結界が構築された。

 

「MP譲渡対象はグリフだ!」

 

さらに兄貴は言葉を続け、その直後に【ガルドラボーク】のページが開き黒いページが徐々に白紙になってゆく。その際に蒼い粒子がグリフへと流れていく。

 

「クルー!」

 

その流れが止まるとグリフは《ウィンドブレス》をボスに向けて放った。先ほどまではMP管理のため攻撃できなかったのにだ。兄貴の言葉通りなら【ガルドラボーク】の新スキルはパーティメンバーにMP譲渡できるようになったようだな。

 

《ウィンドブレス》は威力も高いしクールタイムも短かったが、MP消費が高いためグリフのMPでは多用は出来なかったがこれなら問題解決になる!

 

その後はグリフと【ガルドラボーク】のスキルコンボにより、ボスモンスターを何とか撃破することに成功した。

 

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