三兄弟の系統樹   作:出来立て饅頭

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第十二話 初デスペナルティ

 ◇  水谷 芳樹

 

 

<エンブリオ>が第二形態に進化して、二つ目のジョブに就いてからリアルでは一か月過ぎたよ。その間、僕たち三兄弟は仕事が忙しくなったので三人でデンドロは出来なかったけど、時間をやりくりして個人でLv上げをしていたよ。

 

僕の【騎兵】はLv26になってスキルは《瞬間装着》、《騎乗》、《騎獣強化》の使えるスキルを覚えた。他には騎乗時に騎獣と僕のステータスを上げるアクティブスキルを覚えたくらいかな? 【騎兵】はスキルが少ない様だし。

 

兄貴たちも目標のLv25はクリアしているらしく、仕事も落ち着いてきたので次の土日には三人でログインできそうとも言っていた。

 

高次兄貴の【重騎士】で覚えたスキルは《瞬間装着》、《アーマー・ブースト》、《耐久向上》、《ガード・ウォール》。

 

《アーマー・ブースト》は装備している鎧に分類される防具の防御力をアップするスキル。《耐久向上》は装備している防具の耐久値の消費を抑えるスキル。

 

《ガード・ウォール》はスキル使用中は防御力を+200アップするアクティブスキル。

 

これらを覚えたことと【重騎士】のステータス補正でかなり堅くなったと言っていた。

 

流兄貴の【魔術師】は火属性魔法と風属性魔法の攻撃魔法を中心に覚えている。【魔術師】は全部の属性魔法を広く浅く覚えられるため、一つの属性に特化した魔法職には及ばないとのこと。

 

ついでに言えば、兄貴がメインジョブに考えている【魔法剣士】のような前衛魔法攻撃職はあくまで攻撃魔法が使えるジョブであり、それ以外の補助的な魔法は使えないと言っていた。

 

だからこそ、【魔術師】で覚えられる魔法スキルで攻撃魔法が多い火属性と風属性を選択したとのこと。

 

覚えたスキルは《ファイヤーアロー》、《フレイムランス》、《ウィンドカッター》、《ウィンドブラスト》それに《瞬間装着》だ。

 

全員が覚えた《瞬間装着》はアイテムボックスにある別の防具をすぐに装備するスキルだ。装備していた物はアイテムボックスに仕舞われる。アクセサリーも対象だ。

 

これは《瞬間装備》と一緒で、ある程度戦っていれば覚えるスキルとのこと。

 

このように僕以外も目標を達成して、スキルも覚えていよいよ次の土日にはギデオンへと出発する。ゲーム内とは言え僕は旅行の経験があまりないから、楽しみで仕方がない。まだまだ先の話なんだけどね。

 

その為にもお仕事をがんばるので今日はもう寝ます。おやすみ~

 

 

 

 ◇  【重騎士(ヘビィーナイト)】ゲイル・アクアバレー

 

 

デンドロにログインした俺はクロス兄貴やウッドがまだ来ていないのを周りを見て確認して、しばらく待つことに。

 

予定を立ててリアルで約一か月。ようやく仕事が落ち付いてきたので今日三人でギデオンへと向かうことになっている。

 

ギデオンへ向かうには南の<サウダ山道>を越えて、次に<ネクサ平原>を進んだ先にある。どちらも出てくるモンスターの平均Lvは俺達では問題にならないくらいだ。

 

しばらくして兄貴とウッドがログインしてきた。

 

「待たせたか?」

「いや、そんなことはない。待ちきれなかっただけだよ」

「では、今から出発しますか?」

「念のため、回復アイテムとかを買い込んでからだな。それとギデオンへ行くから何か都合のいいクエストがないかジョブギルドと冒険者ギルドにも行ってみよう」

 

クロス兄貴の言葉に納得して、俺達は各ジョブギルドと冒険者ギルドへと向かう。だが、ちょうどいい依頼がなかったので、受けるのはやめにして回復アイテムを買い込みギデオンへと向かう。

 

ある意味、依頼を受けなかったのは不幸中の幸いだったがな。なぜなら・・・俺達はギデオンへ向かう途中でデスペナになってしまったのだ。

 

話は<サウダ山道>の中腹でボスモンスターである【ブラウンアームドベア-】を倒した直後の話だ。

 

 

ボスモンスターを撃破してドロップ品である【茶色腕力熊の宝櫃】を手に入れて俺達は順調にギデオンへと向かっていた。

 

「この調子なら、急げば今日中には着くね」

『俺がAGI低いから、グリフに乗せてもらった場合だがな』

「て言うかゲイルよ?お前馬はいつになれば手に入れるんだ?」

『王都の馬や馬モンスター専門の売買店に行ってみたが、高くてさ。一番安い馬でも20万リルするんだぜ?』

「高!」

『それに今後のことも考えて、馬モンスターにしたいんだ。ギデオンにはモンスター売買の店も多いと聞くし、金を溜めて【従魔師】にでもなってからかな』

 

などと話していると道の真ん中に奇妙な物が見えた。それは岩がいくつもくっついたオブジェの様なものだった。最初に見た時は落石でもあったかと言う考えだったが、その岩は俺達が近づくと動き出した!

 

「なんだこいつ!」

『ゴーレムタイプのモンスターか!』

「あ、兄貴たち!モンスターの名称をよく見て!」

 

ウッドが驚いた様子でそう言うので頭上に出ているモンスター名を確認すると、そこには【破岩巨人 バルギグス】とあった。

 

「この名称は・・・<UBM>か!」

 

クロス兄貴も驚愕する。俺もいつかは出会うと思っていたがここで出会うとは思わなかった。

 

<UBM> ユニーク・ボス・モンスターの頭文字でこのデンドロでは屈指の戦闘力を誇る強力なモンスターだ。この世界にはボスモンスターは何体何種類もいるが、<UBM>は世界に一体一種類で同じモンスターは絶対に居ないある意味<マスター>のようなモンスターだ。

 

<UBM>にも階級はあるし優劣はあるようだが、例外なく固有のスキルを持ちステータスも亜竜クラスはおろか純竜クラスを超える個体も居ると言う。

 

そんな<UBM>の一体である【破岩巨人 バルギグス】が先頭に居た俺にその巨大な拳を無造作に横に振るう。その攻撃はそんなに速さはなく、俺も余裕を持って盾を構え攻撃に備えた。だが・・・

 

『ぐは!?』

 

盾と拳が激突した時、俺は吹き飛ばされ近くの岩に叩きつけられた!HPもこれまでで一番のダメージを受け、一気に減った。

 

「ゲイル!?」

「兄貴!」

 

クロス兄貴とウッドもこの結果に驚いている。先ほどのボス戦でも相手の攻撃を余裕で受けていた俺が吹き飛んだのだから。

 

『気を付けろ二人とも!こいつのステータスは今までの敵と桁が違う!』

 

俺はダメージを受けた身体で立ち上がろうとする。しかし、状態異常の【痙攣】になっているのでうまく動かせない。

 

『AGIは見た目通り低い様だから、足を絶対に止めるな!二人が攻撃を受ければ一発でデスペナだぞ!』

 

とにかく先ほどの攻防で考察できることを二人に伝える。二人はそれぞれ別方向へと駆け出し、その行動を見た【バルギグス】は重い足を一歩だけ動かした。

 

「炎よ!貫く槍となれ!《フレイムランス》!」

「《インパクトアロー》!」

「クルー!」

 

二人は余裕でスキルを放った。クロス兄貴の《フレイムランス》が相手に接触して当たった個所を赤く熱せられる。グリフの《ウィンドブレス》もちょうど真ん中に炸裂し、相手は体勢を崩す。

 

その体勢の崩れた所にウッドの《インパクトアロー》が当たり衝撃を発生させるが、その直後に矢が壊れてしまった。

 

「やっぱりENDも相当に高いみたいだね」

「だが、魔法攻撃の効きはいいみたいだな!このまま攻撃を続ければ勝てるぞ!」

 

<UBM>に対して有効な攻撃を持っていたことを確信して、士気を上げようとする。直後に【バルギグス】は不可解な行動を取る。

 

二人に向けて両腕を向け手のひらを開いたのだ。この不可解な行動に二人は警戒し足を止めてしまった。その瞬間【バルギグス】の指がミサイルのごとく二人に放たれた。

 

「「なぁ!?」」

 

その攻撃は先ほどの遅さがなんだったのかと言いたいくらい弾速があり、足を止めてしまった二人に回避不可能。そのまま何度か大き目の岩が激突し、二人のHPはあっという間に0になった。

 

 【パーティメンバー<クロス・アクアバレー>が死亡しました】

 【蘇生可能時間経過】

 【<クロス・アクアバレー>はデスペナルティによりログアウトしました】

 

 【パーティメンバー<ウッド・アクアバレー>が死亡しました】

 【蘇生可能時間経過】

 【<ウッド・アクアバレー>はデスペナルティによりログアウトしました】

 

俺のパーティメンバーの項目が無くなり、二人が初めてデスペナになったことがアナウンスとして伝えられる。

 

『この野郎!』

 

この時の俺は兄弟二人を倒されたことで冷静で居られなくなり、【痙攣】が治った直後に【バルギグス】に剣を振るった。しかし、その剣は当たった直後に粉々に砕けてしまう。

 

『なぁ!?』

 

この結果に俺は疑問を浮かべた。

 

(折れるとかならまだわかるが、粉々になるのは明らかにおかしい!まさか武器破壊系のスキルが有るのか!?)

 

考察を続けたかったが、【バルギグス】は俺に腕を振り上げてそのまま振り下ろし俺は・・・

 

 【致死ダメージ】

 【パーティ全滅】

 【蘇生可能時間経過】

 【デスペナルティ:ログイン制限24h】

 

 

 

 ◇  水谷 流

 

 

<UBM>にデスペナされて俺はリアルでしかめっ面をしていた。初めてのデスペナルティ、初の<UBM>遭遇、一瞬の油断。いろいろな考えが頭をよぎり何とも言えない感情が渦巻いている。

 

そりゃ<UBM>が強力な個体で種類によっては国の一大事になるほどだとは聞いていたが、あそこまで簡単にやられるとは思わなかった。もっと善戦できると思ったんだがな・・・

 

「いや、こんな考えがある時点で相手を甘く見ていたんだろうな」

 

今まで苦戦はしても順調だったから、<UBM>が相手でも今までと同じだと考えてしまったんだろうな。相手はモンスターの中でも最上位クラスだと言うのに。

 

<UBM>にも優劣として<逸話級(エピソード)>、<伝説級(レジェンダリー)>、<古代伝説級(エンシェントレジェンダリー)>、<神話級(マイソロジー)>、<超級(スペリオル)>と階級があるようだが。

 

あいつがどの階級かはわからんが、あいつが居る限り俺達はギデオンに行くことができない。これは少々困ったことになった。

 

まぁ、デンドロ提示板にでも<UBM>に出会ったことを書き込めば上級職の<マスター>辺りがパーティを組んで討伐に向かうだろうが。

 

<UBM>を倒せば世界に一つだけの強力な装備が手に入るらしい。これはティアンからも聞いた話で最近では<マスター>も少ないが手に入れた者たちもいるらしい。

 

それらは特典武具と呼ばれ、<UBM>を討伐した中で最も貢献した者がシステムで選ばれ贈られるとか。これにより<マスター>も実力に自信がある者たちは<UBM>を探しているそうだが、滅多に出会えないらしい。

 

だからこそ、<UBM>発見の情報は実力者の<マスター>なら喉から手が出るほど欲しい情報だ。提示板に書き込まなくても、デスペナが空けてデンドロ内で情報として他の<マスター>に売るなりすれば、儲かるかもしれない。

 

なんて考えていたら、テレビ電話の着信があった。相手は高次と芳樹だからサッサとつなぐ。

 

『あ~もしもし?兄貴?』

『もしもしこちら芳樹です』

「オウ。とりあえず初デスペナおめでとう」

『『めでたくない』』

 

俺の軽口に二人して突っ込まれた。やはり俺と芳樹の後に高次もデスペナになったか。その後、俺達をデスペナにした【破岩巨人 バルギグス】に付いて話し合う。

 

『多分だけど、あいつはSTRとEND特化なモンスターで数値は下手したら1000超えてるかも』

「そのかわり、AGIは息してないようだがな」

『でも、それを補う形であのロケットパンチもどきがあるんだろうね』

「あれは厄介ではあるが、俺達が喰らったのは足を止めたのが原因だからな。俺とグリフなら動ければ回避は難しくないだろう」

『後、二人がデスペナになった後に剣で攻撃したら粉々になった。攻撃した武器を破壊するスキルが有るのかも』

 

話し合いは続くが、ちょっと疑問が俺に浮かんだ。

 

「と言うか、俺らはなんでこんな話をしているんだ?」

『『ん?』』

「相手はデンドロのモンスターでは最上級クラス。はっきり言ってやり始めて上級職にもなってない俺達じゃあ勝ち目ないだろう?」

『『だから?』』

「え?」

 

俺の疑問に二人は何を聞いてんだみたいな顔と言葉を口にした。

 

『それは諦める理由にはならないよ兄貴?』

『そうだぜ兄貴。はっきり言って俺は悔しい。油断があったとはいえほとんど何もできないままやられたのが』

「・・・」

『全く勝ち目がないならともかく、流兄貴とグリフの攻撃は効いたんだし勝てないと決めつけるのは僕は断固阻止する』

『俺もだ。むしろ今度は探し出してリベンジしたい。デスペナ明けたら倒されているかもしれないけど、それでも俺は挑戦する』

「・・・理由は?」

『『だってこのままじゃあ、悔しいだけじゃん』』

「はっはっは。俺もだ」

 

負けたままでは悔しい。ただそれだけだが、ゲームでリベンジするのならそれだけで十分だよな!

 

「次は勝とうぜ」

『『おう!』』

 

こうして俺達は<UBM>にリベンジするために夜遅くまで話し合った。

 

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