三兄弟の系統樹   作:出来立て饅頭

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第十七話 ギデオン観光 ゲイル・アクアバレーの場合

  ◇  【盾騎士(シールドナイト)】ゲイル・アクアバレー

 

 

俺ことゲイル・アクアバレーはデンドロにログインして、ギデオンの街を探索していた。観光がてらとある目的を達成したくてな。

 

とある目的とは馬型モンスターの購入だ。俺のメインジョブである騎士系統は《乗馬》スキルを持っていてAGIのステータスの低さを《乗馬》で補うジョブだ。

 

現在の俺の所持金は不要な物を売り払い、30万リル少々。これなら馬型モンスターも購入できるだろう。選べるモンスターは少ないだろうがね。

 

念のため、【従魔師】に転職してから探そうかね? どの道次のジョブにするつもりだったしな。

 

【従魔師】に転職して俺は商業区画のモンスター専門の商店を何軒か巡り探しているのだが、なかなかこれだと思うモンスターに出会えない。

 

能力が高い馬型モンスターは俺には高くて手が出せないし、そうかといって安いモンスターを選ぼうとしても気に入った奴に出会えない。

 

さすがに今日は諦めて観光をしようかと考え始めた。すると、何やら通りが騒がしくなり騒がしさが段々と近づいてきている。

 

「暴れ馬だ!皆にげてくれー!!」

 

通りの向こう側から興奮状態で蛇行しながら進む銀色の鬣をした灰色の毛並みの馬がこちらへと近づいてきた。周りのティアンの住人達は慌てて建物に避難したり、躱すために逃げたりしていたが。

 

「あう!」

「ああ、坊や!」

 

母親に手を牽かれていた子供がこけて手を離してしまった。その子共に暴れ馬が迫る。誰もがこの後に起こる悲劇を想像して叫び声を上げる中、俺は《瞬間装着》で現在の装備を仕舞い【ボルックス】を装備。

 

子供を庇うために暴れ馬の前に立ち塞がる。

 

『ふん!』

 

現在の俺のメインジョブは【従魔師】なので騎士系統由来のスキルは使用不能。しかし、ステータスはそのまま反映されているので、暴れ馬をそのまま真正面から受け止める。

 

しかし、受け止めた暴れ馬はステータスが高いのか俺を徐々に押し始めた。このままでは庇っている子供が危ないと判断して誰かに子供を頼もうと叫ぶ直前・・・

 

「はいどうどう~」

「BURURU」

 

横から現れたチャイナ服姿の女性が暴れ馬をあっという間に宥めた。もう暴れることはないと判断して俺は警戒を解かずにゆっくりと馬の拘束を解いた。

 

「もう大丈夫ヨ~この子は落ち着いたヨ~」

「BURU」

 

馬は先ほどのまでの暴れっぷりが嘘のように大人しくなった。さらに俺にも近づき鼻を擦り付けてきた。

 

『力ずくで止めて悪かったな? 緊急事態だったんだ』

「BURU」

 

どういう理由で暴れたのかはわからないが、とりあえずステータス任せな強引な止め方を謝っておいた。馬は俺に対して頭を下げ、感謝でもするかのように鼻を擦り付ける。

 

「貴方もありがとうヨ~おかげで子供が無事だったヨ」

『こちらこそ、ご助力感謝します。俺だけじゃあ危なかったので』

 

チャイナドレスの女性の左手には紋章が有ったので<マスター>か。何らかのスキルで止めてくれたのかな?

 

それから子供の母親が子供を抱き上げて無事を喜び、俺と女性に対して感謝の言葉を口にした。そんなやり取りをしている間にこの馬の持ち主がやってきた。

 

「も、申し訳ありません! いきなり暴れ出してしまって」

 

そう言って謝罪する馬の持ち主に周りから文句が飛び交う中・・・

 

「気にすることないヨ~あなたに原因はないから」

『え?』

 

チャイナドレスの女性が周りに聞こえる大きな声でそう言うと周りの人たちも疑問を声を上げた。そんなところに・・・

 

『レイレイさ~ん。暴れ馬の方は止まったガル?』

「離せこの着ぐるみが!」

 

男の<マスター>を片手で引き摺るカンガルーの着ぐるみが現れた。突如として現れた謎の着ぐるみとそれに引きずられる男性に周りの人たちは理解が追い付かない。

 

「うん。誰も怪我してないヨ~。この人が暴れ馬を止めてくれなかったら子供が危なかったけど」

『犠牲者が出てないならよかったガル。おや?そこの君は・・・』

『何か?』

『何でもないガル。とりあえず事情を説明するガル』

 

どうでもいいけどその語尾は何の意味があるんだろう? 謎の着ぐるみが説明をするとどうやらこの暴れ馬は着ぐるみが引き摺っている<マスター>に【混乱】の状態異常を掛けられたと言う。

 

たまたま目撃した着ぐるみとチャイナドレスの女性が分かれて事態を対処しようとしたと言うわけだ。そう説明された瞬間、周りの人たちが未だに引きずられている<マスター>に対して文句の言葉を浴びせたのは言うまでもない。

 

 

 

その後、騒ぎを聞き付けた【騎士】のティアンが現場に到着。着ぐるみに拘束されたままの<マスター>は無実を訴えたが、【騎士】の一人が《真偽判定》のスキルで確認したところ嘘と分かった。

 

着ぐるみとチャイナドレスの女性の言葉は真実だと証明されて、男の<マスター>は【騎士】たちによって連行された。さすがに指名手配にはならないだろうが、罰金とギデオンからの退去となるだろうと言っていた。

 

リアルで用事があるからと早々にログアウトしたチャイナドレスの女性以外はこの場で子供と母親に感謝され、見送っているところだ。

 

「この度は本当にありがとうございました」

「BURURU」

「いえいえ。どうかお気になさらずに」

『そうガル。たまたま目撃したからお節介をしただけガル』

 

現在は馬の持ち主に俺と着ぐるみが感謝されているところだ。ちなみに俺は【ボルックス】を紋章に仕舞っている。街中まであの恰好は物騒すぎる。現在の装備は適当に見繕ったシリーズ装備だ。

 

「いえ。あなた方が居なければこの子の価値が下がるところでした」

「価値が下がるとは、手放すのですか?」

「ええ、店を閉めて故郷の街へ帰るところでした」

 

彼の話だと、故郷の町でも小さな商店をやっていてギデオンで一旗揚げるためにやってきたはいいが、思うように客が集まらず、お金がまだあるうちに故郷に帰ろうと決断したところだと言う。

 

「幸いこの子以外の馬が居ますし、帰るだけであれば問題ありません。それにこの子は私が《テイム》した馬型モンスターですし戦闘力は高いのです。戦いをしない私よりも【騎士】や【騎兵】に就いている誰かが貰った方がこの子も喜ぶかと」

「ふむ」

『それは大変ガル』

 

その話を聞いて、俺はある種の運命を感じた。

 

「でしたら、私にその子を売っていただけませんか?」

「え? いいのですか!?」

「ええ、ちょうど馬型モンスターを探していたので」

「もちろんです。この子もあなたに懐いているようですしありがたいです!」

「BURU!」

 

馬は俺が言っていることが分かったのか鼻を擦り付けてきた。その後の交渉で買い取り額は10万リルになった。恩人であるからタダでお譲りしますなんて言っていたが、さすがにそれは断固阻止した。

 

その後は従魔師ギルドでの手続きや馬の装備に【ジュエル】と乗馬しても戦えるように馬上槍を購入。なおこの馬の名称は【シルヴァリオン・ホース】と言う種族でかなり珍しいモンスターだと従魔師ギルドの職員が言っていた。

 

光魔法を使いこなし、ステータスもAGI以外もそれなりに高いので従魔師ギルドでも高値で取引されているとか。実際、何人かの【従魔師】のティアンと<マスター>が譲ってくれと言ってきたがすでに俺の従魔になったので譲るわけがない。

 

ただ、元の持ち主にはそんなに価値があるのならもっと払った方がいいかと尋ねたら。

 

「いえ、大丈夫です。この子はすでにあなたに懐いていますし。この子を手放したのお金が欲しいからではなく、この子の今後を考えてのことです。どうか、大切にしてやってください」

 

そこまで言われちゃあ、もう何も言えないね。これから先大切にします。

 

その後は故郷に帰る彼を見送った。

 

『いい話を聞けたガル』

 

着ぐるみさんも暇だと言って俺達に付き合っていた。

 

「知り合ったのも何かの縁ですし、これからこのリオンと狩りに行きますが一緒にどうですか?」

『誘ってくれたのは嬉しいが、俺はAGI型じゃないから足手まといガル。また、会った時にでも誘ってほしいガル』

「そうですか。では、機会があれば」

『そんじゃあ、さよならガル』

 

そう言って俺と着ぐるみさんも別れた。早速狩りにでも行こうかと思ったが、《乗馬》スキルが有るとはいえ騎士ギルドで《乗馬》のレクチャーを受けてからの方がいいと考え直した。

 

とりあえずは目的を達成したし。リオンと名付けた馬との乗馬はまたの機会として、あとは観光を楽しむことにしよう。

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