「ああ~びっくりしたぁ~」
リアルでも経験がないのにいきなりスカイダイビングをやることになるとは思わなかった・・・提示板でも書かれていなかったが、ひょっとしてわざと書き込まれていなかったのか?
しかし、びっくりして鼓動が速くなる音や汗を掻いた感触に歩いている土を踏む音・・・情報通りすごくリアルだ。現実と言われても信じてしまうくらいには。
「とりあえず感動するのは後にしてあそこに向かうか・・・」
俺の目の前には巨大な門と街を囲む巨大な壁。そしてその門の向こう側にはいろいろな装備をしている人が行き来している。とりあえずは門を潜ってその周辺で待っていればいいだろうな。ひょっとしたらもう待っているかもしれないしな・・・
などと考えながら門を潜ると横から声を掛けられた。その声は俺がよく知っている者の声だ。
「もしかして兄貴・・・ゲイル・アクアバレーですか?」
「お?」
俺に声を掛けたのは銀髪を肩以上に伸ばして後ろで束ねている。青い目をした狩人のような恰好をした二十歳前後の男性だった。声は聞き覚えがあり、顔にもリアルの面影が残っているので一発でわかった。
「ああ、そうだ。お前さんはウッド・アクアバレーでいいんだよな?」
「あ~よかったぁ。合流できるかどうかわからなくてドキドキしてたんだよ」
目の前に居るのが俺達三兄弟の三男で水谷 芳樹。キャラ名はウッド・アクアバレーにちゃんとしている様だな。
「まあ、髪の色と目の色を変えたぐらいでわからないほどじゃあないだろう?」
「確かにそうだけど、ここはリアルと遜色ないから緊張するんだよ」
「ああ、それはあるな。俺もこれほどとは思わなかったしな」
とりあえず立ち話もなんだから、近くに有ったベンチに座りチュートリアルのことを話す。
「まさかいきなりスカイダイビングするとは思わなかったな・・・」
「僕も驚いて思わず大声で叫んじゃったよ・・・」
ああ、やっばりこいつもスカイダイビングを味わったのか。
「でもまさかお前が一番先に待っているとは思わなかったな」
「それは僕も思った。ただ、流兄貴じゃない・・・クロス兄貴は凝り性だからキャラメイクや装備品のカタログで悩んでるんじゃないかな?」
「ああ~眼に浮かぶな・・・」
それからしばらく雑談をしていると不意に門から街に入ってきた中に知っている人に似た顔を見つけた。
「おい、ウッド。喜べ兄貴らしき人物を見つけたぞ」
「やっと来た・・・」
俺達はそろってその人物に近づき、俺が声を掛ける。
「そこの人、名前はクロス・アクアバレーじゃないかな?」
「違います」
「嘘着け!声がリアルと同じだぞ!」
「む!そうか・・・声もキャラメイクで変えておけばよかったか・・・」
いきなりボケをかました目の前の人が俺達の長男で水谷 流 キャラ名はクロス・アクアバレーにしているはずだ。
「クロス兄貴遅かったけど、やっぱりキャラメイクや装備に時間掛かった?」
「おう!いやーあそこまでいろいろ弄れるとは思わなくて遊んでたら時間掛かっちまった!」
兄貴のキャラは紙は角刈りにして色はワインレッド。目は茶色で装備は魔法使いのロープを短くして動きやすくしたものを羽織ってあとは蒼と黒の色合いの上着とズボンを着ている。
「戦士風な人が魔法使いのコプスレしているみたいだな」
「言うな・・・俺もそう見えるのを気にしているんだからよ・・・」
あ、自覚してた。
「まぁまぁ、とりあえず当初の予定通りジョブに就きに行こうよ」
「そうだな」
「そうするか」
ジョブと言うのはこの<Infinite Dendrogram>で強くなるために必要な物だ。現在の俺達のLvは0これはジョブに就いていないからであり、ジョブに就かなければ永遠にLv0のままである。
ジョブには下級職、上級職、超級職と在り最初に就けるのは下級職だけである。上級職は就くために条件があり、その条件が下級職のLvカンストの場合がほとんどだ。今から俺達はそれぞれが就きたい下級職に就くための場所へと向かっているのだ。場所は事前情報で入手済みだ。
「まず最初は【
「おう」
「楽しみだ」
下級職にも色々あり、前衛攻撃職である【戦士】や【闘士】などのできることが幅広い職業からできることを一つのことに集中した【剣士】や【槍士】などいろいろある。他にも後衛攻撃職である【弓士】や【銃士】 魔法攻撃職である【魔術師】などもある。
さらには生産職に【鍛冶師】や【皮革職人】などこのアルター王国では幅広い職業を選べるのが特徴の一つだ。まぁ、その国限定のジョブとかもあるんだかね? 【武士】とかは天地に行かないと就けないらしいし。
今のところは確認すべきところはこんなことろか? そんなことを考えながら進んでいるうちに目的の場所へと到着しウッドは無事に【弓士】へと就いた。
「次はゲイル兄貴の【
「おう」
【騎士】はアルター王国限定のジョブだ。能力としては前衛攻撃職でどちらかと言うと防御が得意な、いわゆるタンクができる前衛だ。
「そう言えば何で【騎士】を選んだ?」
「【戦士】とどっちかにしようか悩んだんだが、やっぱり騎士甲冑着て見たかった」
「ゲイル兄貴は全身鎧とか好きだよね」
うむ。元祖狩りゲーと言われているゲームシリーズでも全身鎧系ばっかり狙っていたからな。・・・あのゲームカッコいい全身鎧の防具は結構強いモンスターばっかりだったから苦労したっけなぁ・・・
閑話休題。
目的地へ着いて早速【騎士】になるための手続きをし、無事に【騎士】に就くことができた。
「最後は兄貴だけど・・・」
「クロス兄貴は行く場所多いよね?」
「すまんが付き合ってくれ二人とも」
まあ、文句があるわけじゃあないからね。まずは魔術師ギルドへと行こう。俺達がジョブに就くために目指していた場所はジョブ専門のギルドだ。ちなみに冒険者ギルドもあるが、ここは所謂何でも屋であり能力があれば誰でもクエストを受けることができる。
ジョブ専門のギルドはそのジョブに就いた者しかクエストを受けられない場所だ。そのジョブに就くこともできるためにまずは目指したと言うわけだ。
普通なら<エンブリオ>が羽化してからその能力に有ったジョブを選択すればいいと思うだろうが、どうも情報収集したところ第0形態では<マスター>のパーソナルや行動などを経験して<エンブリオ>が生まれると言う。
ならば最初にジョブを選んでもその行動で<エンブリオ>の能力をある程度は誘導できるのではないかと言う意見があるのだ。実際それを実行した人は選んだジョブでも使える能力をもった<エンブリオ>が生まれたと言う。
まぁ、この<Infinite Dendrogram>では下級職は六つまで上級職は二つまで就けるので最初に失敗しても<エンブリオ>に合わなければセーブポイントでジョブリセットもできるからそれほど問題はない。ちなみに下級職はLv50でカンストで上級職はLv100でカンストだ。
考え事をしている間に魔術師ギルドに到着。すぐに手続きをして兄貴は【
【
この【魔法剣士】は攻撃魔法が使える前衛攻撃職だ。ただ、このジョブに就くためには兄貴がしたように【魔術師】と【剣士】の二つのジョブに就く必要がある。しかも能力的には器用貧乏でLvがカンストしても【剣士】や【魔術師】のように特化しているジョブには敵わない。手札が増えることは利点だが、逆に言えばそれ以外の利点がないジョブだ。
「兄貴的にはよかったのかそのジョブで?」
「問題ない。前衛で剣を扱いたいし魔法も使ってみたいからな。両方ができるこのジョブは俺の理想だ」
ふむ・・・気持ちはわかるかな?リアルじゃ絶対にできない魔法を使ってみたいと言う気持ちは。
「とりあえずこの後はどうしようか?<エンブリオ>羽化してないけど戦闘する?」
ウッドが聞いてくるが、さすがに<エンブリオ>が生まれていないのに戦闘はなぁ~
「と言うかウッド、お前矢は持っているのか?」
「一応は。ただ先がとがっていない木の矢だけど」
「・・・・とりあえず今ある所持金で装備を整えるだけ整えようか?」
「・・・・そうだな」
「・・・・それがいいかも」
と言うわけで装備を整えるために移動しようとし、剣士ギルドを出た瞬間左手の<エンブリオ>が輝きだした!
「え!?」
「おいおいこれってまさか・・・」
「多分想像通りだと思うよ・・・」
「「「羽化する!!」」」
俺達の<エンブリオ>が誕生しようとしていた。