◇ 【
俺は今ミニガン型の<エンブリオ>を持った大男のマスターと戦っている最中だ。いやこれは戦っているとは言えないな。
「おらおら~! 耐えているだけか!」
『うるさい』
本人のセリフもうるさいし、ミニガンの発射音も全く持ってやかましい。大男の仲間もこの場から居なくなっている。流れ弾を嫌ったのか、それとも別の理由があるのかはわからんが。
「おっと、そろそろだな? 【イフリート】! 《
大男がそう言うと、ミニガンが一瞬輝きその後に発射された弾が変わった。今まで撃っていた弾は当たると小規模の爆発を発生させたが、今度は衝撃を発生させている。こちらも小規模だが、なかなかに実用性がある。
(おそらく、あのミニガンの<エンブリオ>はアームズ系統。特性としては武器としての性能優先と言ったところか? あとはステータス補正も高めか? どちらにしろタイプとしては俺の【ボルックス】と同じか)
デンドロでは<エンブリオ>の特性と言うか、特徴が大きく分けて3つあると言われている。ステータス補正重視。性能重視。スキル重視の3つだ。
ステータス補正重視はその名の通り<エンブリオ>のステータス補正が最低でもD以上の高めの物だ。シンプルに強いタイプで従来のゲームでもお馴染みであり理解しやすい。
性能重視はアームズ、ガードナー、チャリオッツ、キャッスルなどの物としての性能が高いタイプだ。俺とウッドの<エンブリオ>はこのタイプで進化してスキルを覚えたとしても性能を上げたり、性能を補助する類の物を覚える。
最後のスキル重視は<エンブリオ>のスキルが強いタイプだ。クロス兄貴の<エンブリオ>がこのタイプだ。限定条件などで発動可能な物が多く、型にハマれば強い。逆に言えば戦いが限定されると言う事だが。
目の前の大男の<エンブリオ>は【イフリート】と言うらしい。銃としての性能と弾丸を生成する能力。および生成する弾丸をスキルで交換して色々な弾を扱える。中々使い勝手のいい<エンブリオ>だ。
『戦っている俺としては厄介極まりないが』
「はっはっは!俺の<エンブリオ>【硝炎弾雨 イフリート】でお前をハチの巣にしてやるぜ!!」
やかましいから早くあの口を黙らせたいが、どうやって黙らすか・・・
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彼、大男の<マスター>であるドルンの【硝炎弾雨 イフリート】はゲイルが考えた通りアームズ系統。能力は弾丸生成と交換だ。
【イフリート】の現在の形態は第三。第一形態時はサブマシンガンのトンプソンと呼ぶ銃だった。進化することでサブマシンガンから軽機関銃のFN ミニミと言う銃に。そして、第三形態に進化した時には機関銃であるミニガンへとなった。
進化がそのまま銃のバージョンアップになった形だ。それからスキルとして弾丸を<マスター>のSP、MPを使って生成。進化したことで弾丸のバリエーションである《衝撃弾》と《爆裂弾》も生成できるようになり、<マスター>の所持するアイテムボックスに入れておけばすぐさまスキルで交換可能。使い勝手はいい。
ただし、デメリットとしてステータス補正はSP、MP、END以外はF以下。さらに生成した弾丸は【イフリート】でしか使用ができない。そして、何より厄介な点は弾丸は生成できるだけで無限ではないことだ。
それゆえ、ドルンはアイテムボックスを二つ持っている。一つを弾丸専用にして【イフリート】で生成した弾丸が大量に入っている。
上級である第四形態に進化すれば、弾の生成の効率アップする可能性もあるためドルンは<UBM>の討伐には参加せずに森にやってくるティアンや<マスター>を相手に経験値稼ぎをすることにしたと言うわけだ。
話を戦闘の様子に戻そう。はっきり言えば、ゲイルにとって【イフリート】を持つドルンは相性が最悪な敵だ。ゲイルの【ボルックス】には遠距離攻撃手段がなく、ジョブ構成にも遠距離攻撃手段はない。
このまま何もせずにいればHP、ENDが高いゲイルでもいつかはHPが無くなる。そう、何もせずにいればだが。
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「どうした!どうした!?このまま何もせずに終わるだけかぁ~!?」
『・・・・』
弾をばらまき、相手が防御するだけの状況にドルンは気分を良くしていた。
「全身鎧を着ているところを見るとてめぇはEND型だろう!? 防御してるだけで勝てる訳ねぇだろう!」
(もっとも。AGI型でも弾丸は回避できねえがな!)
<マスター>が超級職に就いている者が少なく、ティアンでも超級職に就いている者たちが滅多に人前で戦わないため、大部分の<マスター>たちは超級職の常識はずれの強さを知らない。
超級職のAGI型であれば、弾丸を回避するどころか武器で弾くことが可能なのだが、未だに上級職が大多数のデンドロでは一部の者しか知らない事実である。
補足はこれくらいにして、現状の戦闘は圧倒的にドロンが有利だった。目の前の全身鎧の<マスター>が防御のみだと言う事から遠距離攻撃手段がないことは明白。
防御スキルのアクティブスキルを使用しているのでHPの減りは緩やかだが、【イフリート】の弾は3万発以上はあるし、こちらの弾が尽きる前に相手のSPが先に尽きる。
これらのことを考えてドルンの気分は最高潮だった。仲間の大半が<UBM>の討伐に向かった時は正直言って面白くなかった。なんせ向かった奴らは全員が上級エンブリオ。ドルンと残った二人は未だに下級エンブリオ。
<エンブリオ>は上級になると、さらに強さの格が上がるのは仲間の戦闘を見ていたドルンから見ても明らかだった。
ドルンとしては仲間が<UBM>を倒せるだろうと考えている。相手がどんなモンスターかはわからないが、合計Lv300越えと上級エンブリオ持ちの<マスター>が12人も討伐に向かったのだから、問題ないと考えている。
ならば自分は、目の前の<マスター>とこれから騒ぎを聞きつけてやってくる者たちを蹂躙して、上級エンブリオを手にしてやると妄想していた。
そんなことを考えていたから隙が生まれた。
ゲイルはアイテムボックスからある物を三個投げた。その投げた物はドルンの足元に音をたてて落ちると・・・
「あん?」
真っ白い煙を周囲にばら撒いた。ゲイルが投げたのは【煙幕爆弾】と言うアイテムで投げると周囲に真っ白煙幕をばらまく物だ。
「妙な小細工しやがって! 出てきやがれ!」
ドルンは自分の周囲に弾を放ち、相手を探したが命中音がしなかった。仕方がないので撃つのをやめた。いくら弾が多いからて言って無駄弾を放つのはまずいと考えたのだ。弾の消費が速い機関銃でもあるし。
しばらくは様子を見ようと周りを警戒して、いつでも【イフリート】をぶっ放す準備をした。やがて視界の端に煙が流れたのが見えた。
「そこか!」
身体をその煙が流れた所に向けると、ちょうど剣と盾を構えてこちらに飛びかかっている先ほどの全身鎧を着た<マスター>が居た。
「終わりだ!」
ドルンは目の前の<マスター>に【イフリート】をぶっ放し、弾丸を浴びせた。弾が《衝撃弾》だったので何度かの衝撃音の後に全身鎧の<マスター>は倒れた。
勝利を確信したドルン。しかし、次の瞬間・・・・
「あん?」
自身の<エンブリオ>と両腕が地面に落ちていた。
「は、はぁぁぁ!?」
痛覚設定をオフにしているので痛みはないが、状態異常の【出血】に【腕部切断】で事実上の戦闘不能。この状態を回復できるのは回復能力に特化した<エンブリオ>か司祭系統上級職の【司教】の回復魔法を使うしかない。
「ど、どうなってんだ!?」
狼狽えるドルンの背後では、鈍く輝く白銀色の全身鎧を装備したゲイルが今しがた相手の両腕を断ち切った剣の血を振るって取っているところだった。
◇ 【
俺の目の前で自身の両腕を無くして慌てふためいている戦っていた<マスター>が居る。この状況ではもはや勝負は俺の勝ちだろうな。このまま何もせずにいれば相手は【出血】でデスペナだ。
なんてことを考えていたらようやく俺に気付いたようだな。
「て、てめぇ! なんで二人もいるんだ!」
「単純な話だ」
そう言う俺の隣に【ボルックス】が並ぶ。
「俺の<エンブリオ>はアームズだけでなくガードナーでもあるのさ」
「はぁ!? そんなのありか!?」
「相手の戦力を読み間違えたお前が悪い」
まぁ、俺の【ボルックス】はある意味初見殺しでもあるがね。まさか全身鎧が自立行動可能とか想像する奴は零ではないだろうが少ないだろうしな。
「こ、この野郎が!?」
そう言って目の前の敵は蹴りを放ってきた。もしかしたら蹴りスキル特化の【
とは言え両腕が無くなっているので、バランスが悪く蹴りの威力が乗っていない。俺はたやすく盾で受け止めて【ボルックス】に首を刎ねるように指示。ガードナータイプは頭の中で考えるだけで指示を出せるのがいいね。
蹴りを受け止められた瞬間に【ボルックス】に首を切られた敵はさらに大出血し、HPが一気に減りデスペナとなった。あとに残ったのはランダムドロップの品だ。
「よし。これを回収した後はクロス兄貴とウッドを探すか」
ランダムドロップを【ボルックス】と一緒に回収して、俺は二人を探しに向かった。