三兄弟の系統樹   作:出来立て饅頭

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第二十五話 ウッド&グリフVS八腕の男

  ◇  【強弓騎兵(ヘビィ・ボウ・ライダー)】ウッド・アクアバレー

 

 

現在、僕とグリフは背中から6本の腕を生やした男と戦っている。いや、生やしたと言うのは語弊があるね。正確には6本のサブアームがあるバックパックの様な物を背負っているのだし。

 

戦ってみて分かったのだけど、この6本のサブアームがなかなか厄介な能力なんだ。僕はグリフに乗って戦っているんだけど、かなり助かっている。

 

「そら」

「グリフ!」

「クル!」

 

八腕の男はサブアームを僕たちに向けて粘着性のある糸を放出した。それを回避すると糸は木の枝に撒き付いて男はそのままどこぞの映画のアメコミヒーローのように、僕達を追ってきた。

 

さらには追撃として男が放つ魔法攻撃を回避している。どうも男の攻撃手段は魔法であのサブアームから出す糸を拘束と移動に利用している。その速さは魔法系の職業であるだろうに、なかなかの速さだ。

 

「ステータスのAGI以上に速さが出るのは厄介だね」

 

まぁ、<エンブリオ>のステータス補正がMPやAGI特化かもしれないし、何かスキルで強化されている可能性もあるけど。

 

「いい加減早く捕まれ」

「いやですよ。負けたくないので」

 

そうやって僕たちの鬼ごっこは続いている。どちらにもこの状況を打破するガードを持ちそれを切るタイミングを逃がさない様に。

 

 

 

    ◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

サブアームを持つ男は名をククリと言い、彼の<エンブリオ>の名は【拘束六腕 アラクネ】と言う。

 

能力特徴は<マスター>の思考で自由自在に動き、腕から【拘束】の異常状態にする糸を出すことだ。また、この糸は頑丈で生き物以外に巻き付けて自身を引っ張り移動させることが可能であった。

 

さすがに移動に使うのは簡単ではなかったが、ククリはそれを短い期間で習得した。それができるからこのような<エンブリオ>が生まれたのだろうが。

 

反面、ステータス補正は糸を生み出すためのMPとAGI以外は最低値のGが大半でHPとSPに関しては補正なしというアンバランスなものだった。

 

そのため、ククリは前衛系のジョブは最初から除外してMPやAGIが高いジョブを模索した。何度か実際にジョブについて確認したところ、魔術師系統のジョブに落ち着いた。

 

最初は【魔術師】に就き、戦闘を重ねた結果を見て考えたところ自分には威力重視の魔法スキルが相性がいいと判断。【魔術師】をカンストした後は、魔術師系統派生下級職である【火術師(フレイム・メイジ)】へとジョブチェンジして、その判断が正しかったことを確信した。

 

その後は初心者相手にPKを繰り返し、同じことをやっていた<マスター>と徒党を組み、気の合う二人とPKを続けた。

 

狩りを続けた結果、【火術師】もカンストして次のジョブには【斥候(スカウト)】を選択。これはパーティに必要だと考えた結果からだ。その後も順調にLvを上げ続け、現在は上級職の【紅蓮術師(バイロマンサー)】となっている。

 

 

現在、ククリは狩りを邪魔をした<マスター>を追いかけているところだ。だが、ステータスの数値以上の速さを持つククリでも目の前の相手に追いつけないでいた。

 

(俺が追い付けない相手は初めてだな・・・)

 

彼のアラクネを使った某アメコミヒーローのような移動方法と拘束糸による状態異常で追いつけなかった相手はいない。しかし、目の前の相手には糸はことごとく躱され、攻撃の魔法スキルも当たらない。

 

(相手はヒッポグリフに騎乗しているから、おそらくジョブは騎兵系統。<エンブリオ>は不明だが、俺が追い付けないところを見ると騎獣と<マスター>のステータスを上げるようなものか?)

 

追いつけないながらククリは相手の能力を考察し続けた。

 

(もしそうなら、気を付けるのは騎獣のスキルと騎乗者のアクティブスキルのみ。ならば先手必勝)

 

ククリは相手が全力を出す前にこちらの切り札を切る決断をした。するとククリは一番上部のサブアームから左右同時に糸を出して、まるでパチンコのように上空へと飛んだ。

 

「《サークルバインド・レイン》!」

 

そのまま上空でスキルを宣言。するとサブアームがウッドとグリフに向き、大きな魔方陣が出現するとその中央から蜘蛛の巣の形をした大きなネットが射出された。その大きさはかなりのものであり、ネットの外へと逃げれるかわからない。

 

《サークルバインド・レイン》 【拘束六腕 アラクネ】が第三形態になったときに習得した現時点で唯一のアクティブスキル。<マスター>の最大MPの半分を消費して、相手を拘束する巨大ネットを放出する。

 

拘束の網はウッドとグリフを中央に捉える。彼らならば範囲外に逃げることもできるだろうが、それは相手に大きな隙を晒すことと同義だ。

 

(逃げようとしたところを最大威力の魔法スキルを喰らわす。それで倒せなくとも大きなダメージを与えれば十分)

 

ククリはアイテムボックスからMP回復アイテムを取り出して口に含みながら考え、相手の隙を逃がさないように観察していた。

 

だが、相手の<マスター>が選択した行動はククリの予想外のものだった・・・

 

「グルー!!」

 

突如、相手の騎獣であるヒッポグリフが大きな咆哮を上げると真っ赤なオーラを纏い、威圧感が増大した。そして・・・

 

「グリフ!《ウィンドブレス》!」

「グル!」

 

<マスター>の指示でヒッポグリフはククリに風のブレスを放った。そのブレスはもはや暴風の嵐と言っていいもので、ククリが放った巨大ネットを巻き込みそのまま敵対者を飲み込んだ。

 

魔術師系統で<エンブリオ>のステータス補正もHPなしであるがゆえにあっという間に0に到達。デスペナになった。

 

 

 

  ◇  【強弓騎兵(ヘビィ・ボウ・ライダー)】ウッド・アクアバレー

 

 

戦っていた<マスター>のランダムドロップが空から落ちているのを確認して、僕は警戒を解いた。落ちてきたものはほとんど粉々みたいだから、拾っても意味なさそうだけど・・・

 

「グリフ《騎獣咆哮》解除」

「グル」

 

僕の言葉を聞いてグリフのオーラが消えて、同時にスキルデメリットであるステータス半減の効果で装備がやや重く感じる。

 

まぁ、今回は短時間だけの使用だったからこの状態もすぐに治るんだけどね? どうもこの《騎獣咆哮》は時間いっぱいまで使用するとデメリットは20分だけど、短時間使用する場合はデメリットも短時間で済むみたい。

 

「グリフご苦労様。おかげで勝てたよ」

「クル~」

 

僕はグリフの労をねぎらい、やさしく頭を撫でてあげた。グリフも嬉しそうに目を細めている。

 

「じゃあ、兄貴たちの応援に向かおうか?まだ戦っているかもしれないし」

「こっちは終わったぞ」

『俺もだ』

 

兄貴たちの加勢に行こうとセリフを言ったら、それに答える声が聞こえた。相手は確認するまでもなく兄貴たちだ。

 

「そっちも勝ったんだね?」

『おう。ついでに臨時収入でランダムドロップゲットだ』

「あ~俺は派手に攻撃しちまって、相手がデスペナになったかようわからん」

 

ゲイル兄貴は僕と違いランダムドロップを手に入れたようだ。クロス兄貴は相手のデスペナを確認できていないらしい。

 

「まぁ、生きてたとしても今喧嘩売ったら、三対一だから襲うことはないだろうが」

「でも、<UBM>を倒しに言った仲間が戻ってきたら?」

『それがあるか・・・じゃあ、さっさとここを離れよう。ギデオンに<UBM>のことも報告する必要があるしな』

 

ゲイル兄貴の言葉にうなずいて僕たちは早々にここから離れてギデオンへと帰ることに。本当なら<UBM>も確認したほうがいいんだろうけど、リスクが高いしやめとこう。

 

あいつらの仲間が倒したならいいけど、返り討ちにあった場合のことも考えないとね。

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁはぁ・・・行ったね?」

 

三兄弟が森から離れるのを物陰から確認していたのは、クロスと戦っていた女性ナナリだ。彼女がどうやってクロスの攻撃から生還したかというと・・・

 

「ちょろまかした装備のおかげでデスペナにならずにすんだよ・・・」

 

彼女は以前に仲間と一緒に襲った商人たちの荷物の中から、【救命のブローチ】というアクセサリーを仲間に黙って懐に入れていたのだ。

 

クロスと戦いで念のため装備していたので、攻撃を耐えることができた。

 

「あいつら・・・覚えときなよ?他の仲間と合流して襲ってやるからね・・・」

 

完全に自業自得だと思うが、当の本人はそんなことはかけらも思っておらず、残りの仲間を待って復讐する気満々だった。

 

「それにしても・・・あいつら遅いね?かれこれ2時間ぐらい経ってないかい?」

 

<UBM>を討伐に向かった仲間たちがかなり遅いことを今頃気にし始めた彼女。彼女だけの話ではないのだが、大半の<マスター>は<UBM>の力量を真の意味で理解していない。

 

もっともランクが低い逸話級ですら、ティアンが命を懸けて討伐するのに。それこそ神話級では国の存亡を懸けることすらある。ゆえに・・・

 

「いつまでかかって・・・ゴフッ? なんだい?」

 

突然咳き込んだことを不思議に思い視線を下に向けると・・・

 

「へ?」

 

・・・・自分の胴体に紫色をした棘が二つ刺さっていた。

 

「はぁ!?」

 

慌てて後ろを振り返ると、そこに居たのは仲間が討伐に向かった<UBM>が居た・・・

 

「な、なんで・・・」

 

そのまま<UBM>は突き刺した棘付き手甲の腕を振るい、彼女を力任せに引き裂いた。その瞬間、蘇生不能になりデスペナとなる。

 

彼女が最後に見たのは、自身を殺した<UBM>の名である【武血蠱人 ディセンブル】だった・・・




オリジナルのエンブリオ考えるのはいろいろ難しいですわ。まぁ、その分楽しいです。

その延長線上で<UBM>も考えるのが楽しい。詳しい能力やその他もろもろは次回に説明します。
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