◇ 【
突如として連続の砲撃音が響き渡り、僕たち七人はすぐに戦闘準備を整えた。着ぐるみさんの戦車が何度も砲撃したということは、数の多い群れか一発では倒せないモンスターの可能性がある。
商隊も異常事態を察して止まり、俺たちは竜車から降りて急いで先頭を目指す。ゲイル兄貴は【ボルックス】を装備して、リオンに騎乗している。僕もグリフに騎乗してタタン君を相乗りさせた。シルク君はリオンに。
二人はAGIが低いので緊急の場合は乗せることをあらかじめ決めておいた。着ぐるみさんも低いようだが、AGIを高めるアクセサリーを五枠すべてに装備させるから大丈夫と言ってくれた。
『相手はどんなモンスターだろうな・・・』
「いまだに砲撃音がしているから、群れじゃないですか?」
ゲイル兄貴の言葉にシルク君が答える。
『いや・・・多分単体のモンスターガル』
「その根拠は?」
『俺の【バルドル】の砲撃は着弾地点の衝撃や爆発を考えると結構な威力ガル。ただ、それに反して直接砲弾がモンスターに当たった場合の威力は低い。だから、いまだに砲撃音がしているのなら群れよりも大型のモンスターの可能性が高いガル』
「でも、大きな群れの可能性もあるのでは?」
『大きな群れを率いているのはかなり知能の高いモンスターだ。そういう奴は危機管理能力も高い。砲撃が何度もすれば危険と判断してすぐに撤退するガル』
着ぐるみさんの言葉に質問を投げかけたクロス兄貴と僕は納得した。やがて、戦車がいる先頭にたどり着いたが、【バルドル】はいまだに砲撃し続けている。砲撃の影響で土煙が上がっているのでモンスターの姿が確認できない。
「さすがにあれだけ砲撃されたんじゃもう終わったか?」
「そ、そうだといいんだけど・・・」
ガルド君は状況を見てそう呟き、タタン君も同意している。しかし・・・
『・・・・』
「着ぐるみさん?」
着ぐるみさんは油断なく土煙を凝視している。その様子にシルク君はうろたえているようだが、僕たち三兄弟も着ぐるみさん同様に土煙を注視していた。この場に漂う雰囲気があるモンスターと出会った時と酷似していたからだ。
やがて、土煙から動く影が見えて【バルドル】が再び砲撃を開始した。ところが・・・
ゴン!
影から太い腕が現れて砲弾を弾き飛ばした! そのまま砲弾は空へ高く飛んで爆発。砲弾の飛ぶスピードは拳銃とかと比べると遅いけど、威力が桁違いなのに難なく弾くなんて・・・
シルク君たちは驚いて声も出ないようだが、僕たちと着ぐるみさんは油断なく土煙から出た太い腕の持ち主を注視している。やがて、土煙が晴れて姿を現したのは・・・
真っ黒な甲殻が鈍く輝き、ボディビルダーのような立派な体躯が目立ち、頭には立派な角が前に一本後ろから二本ねじ曲がって生えている。大きさは人間とさして変わらないが、それでも2mは超えている。
確認した直後に目の前のモンスターの頭上に名が表示された。【武血蟲人 ディセンブル】と。
「<UBM>!」
「住処を移動したのか!?」
『なるほど・・・ギデオンで噂になっている奴か。移動するタイミングが重なったらしいな。運が悪い』
ギデオンの騒ぎの元凶にこんなところで遭遇するなんて・・・いつかは討伐されるか移動するとは思っていたけど、今じゃなくてもいいじゃないか!
「うおぉー! <UBM>! 俺初めて見た!」
「ばか!! そんなこと言ってる場合!」
「と、とにかく戦闘準備を!」
初めて見たであろう<UBM>に対してガルド君は驚きながらも感動し、シルク君がそれを注意してタタン君の言葉でシルク君とタタン君はリオンとグリフから降りて、武器を構えたりタロスを呼んだりしていた。
ガルド君も慌ててレーヴァテインを出して構えている。そんな中【ディセンブル】は俺たちを見渡してゆっくりと近づいてきた。
◇ 【
(さて・・・どうするか・・・)
着ぐるみさん改め、シュウはこの状況でどう動くか悩んでいた。ギデオンで騒ぎになっている<UBM>については調べていた。調べた上で手を出さなかった。
この時点でシュウが持っている特典武具は数えるのがめんどくさいくらいには所有していたからだ。まぁ・・・全部着ぐるみというもはや呪いとしか言いようがない結果ではあるが。
それゆえ、所在地が判明した<UBM>の討伐にはノータッチだった。それよりも知り合いのティアンからギデオン周辺のモンスター討伐や片道だけの護衛などを頼まれて時間がなかった。それに何人もの<マスター>が討伐に向かっているので、そのうち相性のいい<エンブリオ>持ちが現れて討伐するだろうと思っていた。
どのみち、フィガロや<バビロニア戦闘団>がギデオンに帰ってくれば討伐されるのは明らかだ。などと考えた結果が今の状況だ。
(俺でも討伐できるかは半々だからな・・・)
なにせ、目の前の【ディセンブル】は古代伝説級。神話級や未だに姿が確認されていない超級を除けば、トップクラスの実力。しかも、戦闘タイプとしては純粋性能型。シュウが戦うとなると相性がいいとは言えなかった。
(考えても仕方がないか・・・・)
トラブルに慣れているシュウは戦うことに切り替えようと集中しだした。だが・・・
「着ぐるみさん。商隊を連れて先に行ってください」
『何?』
横に居たクロスがいきなり驚くことを言った。
「多分、俺たちが戦っても勝てないと思います」
『だったら・・』
「だからこそ、クエストくらいは達成しないと。この中で単体で護衛できるのは着ぐるみさんだけです。時間ぐらいは稼ぎます」
『・・・・』
たしかに、クエストのことを考えるとここでシュウが商隊を護衛するために先へ行き、残った者たちで時間を稼ぐのは理にかなっている。しかし、残った者たちは確実にデスペナになるだろう。
『悩む時間はないですよ。こっちは覚悟完了しています』
リオンから降りて、シュウの隣にやってきたゲイルもクロスと同じ意見のようだ。
「行ってください」
「クル」
ウッドとその<エンブリオ>であるグリフも戦うことに躊躇はないようだ。
「俺たちもいます!」
「全力でサポートします!」
「こ、怖いけど、僕も頑張ります!」
「GOGOGO」
シルク君たち三人も覚悟を決めているようだ。
『・・・・すぐに戻ってくる。それまで頑張れよ!』
やがてシュウは決断して【バルドル】に乗り込み、商隊の御者に合図を送り、走り出す。御者も地竜を走らせて後を追う。その間に【ディセンブル】は手を出すことはなく、商隊を見送り残った六人と一匹と一体を視界にとらえ、両拳を打ち合わせる。
かくして、フルパーティの<マスター>と古代伝説級の【武血蟲人 ディセンブル】との無謀な時間稼ぎが始まった。
◇ 【
着ぐるみさんと商隊を見送ると【武血蟲人 ディセンブル】は両拳を打ち合わせた直後にこちらに突撃してきた。だが、そのスピードは速いとは言えないものだ。向かってくる圧力はすさまじいが。
AGIはそこまで高くはないらしい。ただ、その圧力とプレッシャーにガルド君たちは怯み後ろに一歩下がってしまった。無理もない。相手はこのデンドロでも上位の実力を持つモンスター。
俺は彼らをかばうためにも盾を構えて、【ディセンブル】を迎え撃つために進路上に立ちふさがる。
『こい!《プリズンウォール・バースト》!』
俺はいきなりではあるが、覚えたばかりの【重厚騎士】の習得条件のある秘儀と呼ばれるスキルを発動。
戦闘力を上げるアクティブスキル使用で【ボルックス】の固有スキル【バースト・イグニション】の効果でスキル効果が二倍に。
これで俺のSTRとENDは60%アップ! 【ディセンブル】が俺を攻撃した時、カウンターを決めてやる!
俺が立ちふさがったことで【ディセンブル】はそのまま肩から俺に向かって体当たりを喰らわす態勢になり、俺も衝撃に備えた。その結果は・・・・
ガッキュン!!!
『ごふ!?』
金属同士がこすれるような音が響き、俺は大ダメージを受けた。HPが一気に三分の二以上も減り、盾を構えていた左腕は【左腕骨折】の状態異常に。体が吹き飛ぶことはなかったが、地面を見るとかなり後方へと押された跡があった。
「「「ゲイルさん!?」」」
「《ヒートランス》!」
「クルー!」
シルク君たち三人は俺が大ダメージを受けたことに驚き動揺している。だが、クロス兄貴とグリフは俺から【ディセンブル】を引き剥がすために攻撃を放つ。俺に当たらないように左右に移動して。
クロス兄貴の《ヒートランス》は【ディセンブル】の背中に命中。魔法攻撃に弱いらしく体勢を崩したところにグリフが前足の攻撃で後方へと押し返す。
そのまま、クロス兄貴が接近戦をウッドとグリフは援護する。俺は与えられたダメージの影響で地面に膝をついた。
「ゲイルさん!《フォースヒール》!」
そんな俺にシルク君は自分のやるべきことを思い出して回復魔法を使ってくれた。確かこの回復魔法は肉体損傷系の状態異常も回復するんだったか? うろ覚えのスキル詳細だったが、HPが全回復と言っていいくらいに回復し、【左腕骨折】も治った。
「大丈夫か!?」
「た、立てますか?」
ガルド君とタタン君も俺のそばにやってきて、心配そうに話しかけた。
『大丈夫だ・・・シルク君の回復魔法でな。ありがとう』
「よ、よかったです。で、でもゲイルさんがここまでダメージを受けるなんて・・・」
シルク君の言葉に残りの二人も信じられないといった顔になる。さらには戦っているクロス兄貴とウッド&グリフに視線を向け・・・・
「こいつ固いな!」
「矢も効果がないみたいだ!」
「クル!」
AGIでは格段に高い一人とコンビはスピードでかく乱しながら、攻撃をしていたがクロス兄貴の剣による攻撃ではダメージにならず、剣が目に見えて痛んでいる。
ウッドも矢を放っているが、ずべて刺さらずに弾かれていた。この場では唯一グリフの攻撃が有効のようだがそれも微々たるものだった。
「あの二人も苦戦しています・・・」
「<UBM>ってあんなに強いのか?」
「ど、どうすれば・・・」
初めて<UBM>に遭遇してその実力をまざまざと見せつけられて、この三人は戦意が徐々になくなりつつある。
『あれは、<UBM>の中でも最上位に近いランクだから強いのは当り前さ。そもそも<UBM>は一番ランクが低い逸話級でもティアンが命懸けで戦うほどらしいからな・・・』
こちらは<マスター>六人のフルパーティとは言え、合計Lvカンストにさえ達していない。<エンブリオ>があるだけましという物だ。
「じゃ、じゃあ僕たちでは勝てないんですか?」
『最初から勝つなんて考えてないさ・・・』
「「「え?」」」
『クエストのための時間稼ぎ。俺たちの目的はあくまであいつをこの場にくぎ付けにすること。倒すことは鼻から考えてないよ』
着ぐるみさんたちが目的地に着いてくれれば、それだけで俺たちの目的は達成だ。
『だが、それだって奴の戦闘力を考えれば難易度は高い。全員が実力をフルに使ってもどこまで持つかははっきり言ってわからん』
「「「・・・・」」」
『だが、それでも一度決めたこと投げ出すのは、
俺の言葉は二度としないというセリフに必要以上に感情を込めていた。過去のことが原因でそのことに関しては譲れないものの一つになっている。そんな俺の言葉に最初に反応したのはシルク君だ。
「わ、私は直接は戦わないですが、それでもやれることは多いです! 皆さんを全力でサポートします!」
「ぼ、僕もシルクちゃんと同じです! 皆さんを援護します!」
「俺だって、このまま逃げたくない! 戦うぜ!」
シルク君に続いて、タタン君にガルド君も戦意を奮い立たせる言葉を口にし、己に活を入れた。
『頼む。シルク君とタタン君は後衛で援護を。【タロス】は二人の護衛として配置してくれ』
「「はい!」」
『ガルド君は俺と一緒に前衛だ。絶対に足を止めるなよ? 攻撃は基本ヒット&ウェイだ』
「了解!」
そうして俺は戦線に復帰する。今の時点で挑むにはあまりに大きな敵を相手にするために・・・
ぶっちゃけた話、ディセンブルの見た目はヘラ〇ルカブテ〇モンX抗体がモデルですw
作者はああいう甲虫怪人的な外見大好き。モン〇ンのオウ〇ート防具も大好きでしたw