三兄弟の系統樹   作:出来立て饅頭

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第二十九話 綱渡りの接戦

  ◇  【紋章剣士(ルーン・ソードマン)】クロス・アクアバレー

 

 

俺たちが【武血蟲人 ディセンブル】と戦い始めてからどれくらいの時間がたったのかはわからない。俺たちには時間のことを考える余裕がないほど目の前の相手に集中していたからだ。今のところは誰一人やられることなく戦えている。だが、それは全員の能力がこれ以上ないくらいにかみ合っているおかげだ。それでも集中力が切れたら瓦解する綱渡りの戦闘だが。

 

「《ヒートランス》!《ダブル・マジック》!」

 

俺は敵の周りを高速移動しながら、魔法で攻撃している。と言うより俺の攻撃手段で敵に有効なのが魔法攻撃しかないと言うべきだが。

 

相手は事前情報の通りHP、STR、ENDが高く俺の物理攻撃ではダメージを与えられない。接近戦でダメージを与える手段はあるが、俺たちの中で最も防御力があるゲイルがあれほどダメージを受けた以上、俺だと一撃でデスペナだ。

 

俺以外に敵に有効打を与えているのは、ガルド君にグリフだ。

 

「おらー!」

 

ゲイルの陰からガルド君が飛び出して、大剣【レーヴァテイン】を振るってダメージを与えている。どうも【レーヴァテイン】は相手の防御力を下げてダメージ計算する能力のようだ。防御力無視とかではないだろう。進化していけばそうなるかもしれないが。

 

「クルー!」

 

グリフもウッドを騎乗させたまま相手に接近して前足を振るっている。グリフのステータス値はウッドのステータス強化スキル重複によりこの場の味方では一番高い。物理攻撃では俺たちの誰よりもダメージを与えている。

 

しかし、ガルド君はステータスがまんべんなく高い戦士系統。俺の剣士系統や魔術師系統のように特化したステータスではないためAGIが相手と差がない。一撃当たれば終わりなのは俺と変わらないが、ガルド君には相手の攻撃を回避する手段も耐える手段もない。

 

そのため、ゲイルと組み隙を見て攻撃するしかなく攻撃事態も全力の一撃とは程遠い。

 

グリフの場合はウッドの騎兵系統の騎獣強化スキルは騎乗状態で発動するのがほとんどだ。ウッド自身も攻撃はしているが、ほとんどの矢は当たっても弾かれてしまう。

 

与えるダメージも俺の魔法攻撃ほど大ダメージを与えているわけではない。【ウィンドブレス】もグリフ自身のMPが高くないため物理攻撃よりは多少多いくらいだ。属性も関係しているのかもな。

 

攻め手はいるが決め手に欠ける。それが俺たちの現状だ。しかも、攻め手以上に大変なのが壁役のゲイルと後衛のシルク君とタタン君だ。

 

壁役のゲイルはガルド君を主に守っているが、相手の攻撃力が高くすべての攻撃でHPが半分以上も減ってしまう。それでもゲイルはステータス強化スキルや秘儀を使用して耐えている。攻撃はする余裕はないが、【重厚騎士】の秘儀である《プリズンウォール・バースト》は自身が喰らったダメージを相手にも与えるカウンタースキルでもある。

 

それでダメージを与えてはいるが、相手のHPが高くスキルのクールタイムの関係で何度も使用できない。それでも何とかなっているのはシルク君が回復を。タタン君がゲイルを優先的にサポートしているからだ。

 

そんな二人もゲイルを援護するためにMPの消費が激しく、MP回復アイテムを時折消費している。思ったほどアイテム使用率が低いが、戦闘になってからMPとSPが自動回復している。おそらくはシルク君の<エンブリオ>のスキルだろう。

 

タタン君の<エンブリオ>のタロスは二人の護衛として残っている。【ディセンブル】が時々二人に向けて肩から紫色の針を飛ばすのだ。それを弾き飛ばしているのがタロスだ。

 

ゲイルとウッドの従魔たちは遠距離でこちらの様子を見ている。彼らは自分たちが割り込める戦闘ではないと判断して、離れたのだ。

 

そんな綱渡りの接戦を何とか個々の能力のおかげで、維持できている。とは言え本当に綱渡りでありぎりぎりだ。あとどのくらい持つかわからない。

 

それでも、着ぐるみさんが商隊を目的地に行くまでは踏ん張らなくてわ!

 

 

 

  ◇  【武血蟲人 ディセンブル】

 

 

ディセンブルは歓喜していた。それは目の前の人間たちの戦いぶりが原因だ。

 

(素晴らしい・・・)

 

目の前の六人と妙な気配のする二体は、実によい連携で自分と戦っている。最近挑んできた者たちとは比べるのも馬鹿らしいほどに。

 

さらには、自分との戦闘力の差があるのもわかっているだろうに誰一人諦めずにできることをやっている。

 

(これだ・・・我が求めていた戦いはこれのなのだ!)

 

【ディセンブル】は<UBM>になる前から、戦いに明け暮れていたモンスターだった。戦い己を鍛え強くなることに心躍る戦いにすべてをささげた武人だ。

 

その性質は今も変わることはない。むしろ<UBM>になったことでさらにどん欲になったとさえいえる。ゆえに【ディセンブル】は決断した。

 

突如、【ディセンブル】の甲殻の隙間から紫色の液体が流れた。流れた液体は【ディセンブル】の体で徐々に固まり、鎧となった。さらに手の平からも同じ液体が流れて、今度は大剣の形になった。

 

(さぁ、我のこの武装にどう対処する!)

 

【ディセンブル】のこの行動で第二ラウンドが始まりを告げた。

 

 

 

  ◇  【重厚騎士(ソリッド・ナイト)】ゲイル・アクアバレー

 

 

何とかぎりぎりの戦いを続けていたが、とうとう【ディセンブル】は自身の手札を切ってきた。自身の血液を操作固体化させて鎧と大剣を作り出した。

 

それを見て俺は一応装備していた片手剣を《瞬間装備》を使って、【破岩盾 バルギグス】と交換した。武器を使う相手には相性がいい盾だし、鎧を纏いさらに防御力が増したあいつに片手剣を持っていても意味ないしな。

 

武器を変えた俺が気になったのか、【ディセンブル】は大剣を両手で持ち俺目掛け突撃し上段から振り下ろそうとする。

 

『《ガード・ウォール》! 《シールド・パリィ》!』

 

俺はその攻撃に対抗してアクティブスキルを連続使用。防御力が【ボルックス】のスキル効果で400アップ! さらに”シールド・パリィ”は盾で攻撃を受けた時、DEXの数値が相手と差があればあるほど攻撃を弾き、相手をわずかの間【硬直】状態にする。

 

俺は【バルギグス】を構えて、相手の大剣を正面から迎え撃つ。相手の攻撃が盾と激突した時・・・

 

バッキィン!

 

 

大剣を弾き返すことに成功した。しかも、うれしい誤算が起きた。【ディセンブル】の作り出した大剣が粉々に砕けたのだ。どうやら硬度とは別に武器としての耐久値はかなり低いらしいな!

 

「”パワースラッシュ”!」

 

この大きな隙を俺の後ろに居たガルド君は見逃さずにスキル使用の大きな一撃を叩き込んだ! その攻撃を受け【硬直】状態の【ディセンブル】はまともに受けてしまい、後方に3、4歩下がった。

 

「二人とも下がれ!」

 

クロス兄貴の言葉に俺とガルド君はすぐに下がり・・・

 

「《オーバー・マジック》! 《ヒートランス》!」

 

クロス兄貴の【ガルドラボーグ】の固有スキル使用で数倍の大きさになった《ヒートランス》が【ディセンブル】に飛んで行った。

 

《ヒートランス》は【ディセンブル】の右肩に直撃し、大ダメージと同時に肩の甲殻を溶かして針の発射口をなくすことに成功していた。

 

「クルー!」

「《ストレングスブースト》! タロス!《アームマシンガン》!」

 

さらにはグリフとタロスが追撃を放った。二人が狙ったのは溶けた右肩。甲殻が溶けた直後なら柔らかくなっている。実際、《ウィンドブレス》溶けかけの甲殻は吹き飛んでタロスの弾丸が次々と【ディセンブル】の肉体に貫通する。

 

結果的にかなり損傷した右肩はその影響からか、右腕はだらんと力なく動こうとしなかった。

 

それでも【ディセンブル】は左腕に今度は棍棒を作り出し、戦う意思を示した。そんな奴の雰囲気は楽しくて仕方ないといった印象を受けた。

 

 

 

  ◇  【強弓騎兵(ヘビィ・ボウ・ライダー)】ウッド・アクアバレー

 

 

何とか【ディセンブル】に大ダメージを与えることができた。けどそこからはまた苦しい綱渡りの戦闘のくりかえしだ。最初に比べたらましなんだけど。

 

武器を作り出した最初の攻撃でゲイル兄貴に武器を壊されてからは、警戒したのかゲイル兄貴をあまり狙わなくなった。

 

代わりに、後衛の二人を狙いだして壁役がゲイル兄貴からタロスに変わった。だが、タロスはどうも戦闘力特化なガードナーらしい。その戦闘力をタタン君が付与魔法で強化している。

 

さらにシルク君が回復魔法で回復もする。タロスは機械式ゴーレムだが、回復魔法で回復できる。しかも魔法を受けるとステータスがアップするスキルを持っているらしく、回復魔法を受けて明らかに動きがよくなっている。

 

時々ゲイル兄貴が壁役を代わり、盾を使ったスキルで【ディセンブル】を吹き飛ばして、僕たちが攻撃している。今のところはそれがうまくいっている。

 

このまま続ければ、着ぐるみさんが商隊を送り届けるまでは何とかなりそうだ。とは言え、今は戦闘に集中しよう。弓を構え矢を番えてクールタイムが終わったスキルを使う。

 

「《スパイラルアロー》!」

 

僕が放った矢が【ディセンブル】の右肩に深く突き刺さる。右肩が損傷しているからあそこだけは矢が突き刺さりダメージになる。しかも、いくつかの状態異常にもなっているらしく、かなりのダメージになっている。

 

少々卑怯な気もするが、相手のほうが各上なのだから手段なんて選んでいる場合ではないしね。

 

とは言え、こちらもかなりきつくなってきた。回復アイテムは数個しかないし、集中して戦い続けた結果精神疲労がやばい。

 

壁役をしているタロスとゲイル兄貴も傷つきながら戦っているので、HPとは別に体力が怪しいし、タロスの場合は機械式であるからか先ほどから駆動音がぎこちない。

 

後衛の二人も疲労が目に見えてわかるほど息が荒い。クロス兄貴とガルド君も集中と緊張によるものか汗がひどい。

 

正直なところこれ以上戦闘が続くと近いうちに誰かがデスペナになる。それをきっかけにして順番にデスペナとなるだろう。

 

だが、そんな状況でも誰一人として弱音を吐かず、気力を振り絞って戦闘を続けている。一秒でも時間を稼ぐために。

 

しかし、そんな状況もついに動いた。【ディセンブル】がこれまでの戦闘で流れた血を操作して自らに纏わせて、鎧を再構築した。しかし、その鎧は身を守るものというよりもかなり攻撃的な物だ。

 

たとえて言うならアメフト選手の防具に棘や斧のような突起物がついたものかな? そんな防具を纏った【ディセンブル】は相撲取りのような体勢をし、そのままシルク君とタタン君目掛けて突撃した!

 

敵は勝負に出たんだ! 僕たちの戦闘を支えているのは壁役をサポートしている二人。その二人を同時に倒すために特攻をしてきた!

 

この攻撃に対してゲイル兄貴が動き、バルギグスを構えスキルを宣言する。

 

『《プリズンウォール・バースト》! 《シールドパリィ》!』

 

秘儀と盾で弾くためのスキルを使い、ゲイル兄貴は腰を落として相手を待ち構える。ゲイル兄貴の後ろではタロスが控えて万が一に備えている。そして・・・

 

ドッコォォン!!!

 

『ぐは!?』

 

ゲイル兄貴は耐えきれずに、吹き飛ばされた! しかも先ほどの一撃で大ダメージに状態異常が複数重複した! その結果、ゲイル兄貴のHPは0となり・・・

 

 【パーティメンバー<ゲイル・アクアバレー>が死亡しました】

 【蘇生可能時間経過】

 【<ゲイル・アクアバレー>はデスペナルティによりログアウトしました】

 

ゲイル兄貴がとうとうやれらた! しかも【ディセンブル】はゲイル兄貴の奥義の効果でダメージを受けたし、攻撃的な鎧にいくつも亀裂が入ったが、それでも止まらずにそのまま直進!

 

タロスが迎え撃ち渾身の右ストレートで鎧を破壊したが、【ディセンブル】の勢いは止まらずにタロスにそのまま突進! タロスは粉々になり光の粒子となった。

 

「「ゲイルさん!? タロスも!?」」

「もうだめだ・・・」

 

シルク君とタタン君は驚いてその場を動けずにいた。ガルド君もとうとう集中力が切れ諦めてしまったようでその場に崩れ落ちた。

 

そのまま【ディセンブル】は二人にも突進していった。数秒後には二人もデスペナになる。援護したいがここからでは矢が刺さらないし、グリフの攻撃では二人を巻き込みかねない。

 

ここまでかと僕も諦めかけたその時・・・

 

「最後の悪あがきだ! 喰らえ!」

 

シルク君とタタン君の前にクロス兄貴が割って入り、スキルを放った!

 

「《オーバー・マジック》! 《スパイラルセイバー》!」

 

手にした剣を両手で持ち、魔法剣技スキルである《スパイラルセイバー》を《オーバー・マジック》で強化して放つ。

 

これによる極太の魔力螺旋が剣から放たれて、【ディセンブル】に命中した直後には摩擦音を響かせて、押し戻した。

 

ギリャギリャギリャ!!!!

 

いや押し戻すどころか、かなりの勢いがあった【ディセンブル】が逆にすごい勢いで後方へと押し返されている。敵も両足で耐えようとしているが、大地を巻き上げて押され続けている。

 

やがて、極太の魔力螺旋は【ディセンブル】の体を貫いた! その後に魔力螺旋は消えた。あとに残ったのは体の中央に大穴が空いた【ディセンブル】。両断されなかったのは、ぎりぎり端っこの体が残っていたからだ。

 

沈黙する僕たち・・・しばらくして僕のスキルの《魔物言語》で翻訳された声が聞こえた・・・

 

『ミ・・・ミ・ゴ・ト・・・』

 

片言であったし、よく聞き取りづらかったが確かに僕の耳に聞こえた。その直後に【ディセンブル】は前のめりに倒れ、光の粒子となった。

 

 

 【<UBM>【武血蟲人 ディセンブル】が討伐されました】

 【MVPを選出します】

 【【クロス・アクアバレー】がMVPに選出されました】

 【【クロス・アクアバレー】にMVP特典【血晶甲剣 ディセンブル】を贈与します】

 

アナウンスがされたが、その場に生き残った僕も含めた全員が沈黙していた。正直アナウンスの内容が理解できない。それからたっぷり数分経ってから全員が口をそろえてつぶやいた。

 

「「「「「か、勝った?」」」」」

 

必死になって戦った結果、ゲイル兄貴とタロスを倒されたが、勝つことができた。そのまま僕たちは事実を受け止めるのにさらに数秒必要とし、ようやく理解したとたんに【気絶】した・・・




一度は書いてみたかった武人系敵キャラw
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