◇ 【
俺達三人がジョブに就き、手持ちの所持金で装備御整えようと剣士ギルドを出た直後に俺達の<エンブリオ>が羽化する兆しを見せた。
「タイミング良すぎだな・・・」
「そんなことよりもどんなのが生まれるんだ!」
「楽しみだね!」
俺はタイミングの良さに驚いているが、兄であるクロスは待ちきれない様にそわそわし弟のウッドは左手の甲をじっと見つめた。
まあ俺だってどんなのが生まれるのか楽しみではあるな。そんなことを考えている間に光は輝きを増して紋章になった。<エンブリオ>が羽化すると左手の甲に<マスター>の証である紋章が浮かび上がるらしい。ちなみに俺の紋章は騎士甲冑を着込んだ騎士が背中合わせで並んでいる物だった。
「ふむ・・・俺の紋章は中々カッコいいな?二人はどんなのだ?」
俺は二人にも訪ねてみた。まずは兄のクロスが答える。
「俺のはなんか本が開いている紋章だな?」
俺のよりシンプルな紋章だ。次は弟のウッドが答える。
「僕のは羽を広げた鳥の紋章ですね」
むむ? 中々カッコいいなそれ。二人が答えたので俺も自分の左手の甲を見せた。
「そっちもなかなかいいなぁ~」
「カッコいいですね!」
二人にそう言われると照れる・・・俺達は話をする前に剣士ギルドの入口に居るので邪魔になるため取り敢えず移動することに。そして比較的近くの中央噴水広場までやってきた。
「とりあえず、ステータス画面で<エンブリオ>を確認するとしよう」
「そうだな」
「異議なしです」
そう言うと二人は早速ステータス画面を開き、<エンブリオ>の項目を見ている様だ。俺も見るとしようかね・・・ステータス画面を開き<エンブリオ>項目を開くとそこに書かれていたのは・・・・
◇ 【
俺達は自分の<エンブリオ>のステータス画面を確認している最中だ。そして俺は自身の<エンブリオ>を見て能力も確認した結果、歓喜した。
魔法を使いたいと思っていた俺にはぴったりの能力だしこれなら前衛で剣も扱える。あとは実際に戦闘して使い勝手を確認したいが、残念ながら今すぐにそれは出来そうにないな・・・・
「確認できたか?」
「オウ!」
「できたよ」
ゲイルが確認の声を上げる。二人の様子は落胆しているようには見えない。ゲイルはまだまだ判断材料が足りないって感じか? ウッドはニコニコしているので好みに合ったんだろうな。まぁ、<エンブリオ>の能力が気に入らないって言うケースはないらしいからそこは心配してないけど。
「じゃあ、よければどんな能力か説明し合うか?」
「ちょっと待て。ここではやめておこう」
「なんで?」
「ほかの<マスター>に聞かれる恐れがある。さすがにそれは避けたい」
この<Infinite Dendrogram>がリリースされて半年、PKやNPCであるティアンを襲うような強盗まがいの<マスター>も出始めているらしいからな。そんな奴らが今周りにいないとも限らん。
「少し危険だが、装備を整えて街の外で話そう。今の俺達じゃあ防音設備がしっかりした飲食店を知っていても金が足らんだろうしな」
俺の意見に二人は納得し、ジョブギルドで聞いたお勧めの店に向かいできるだけ装備を整えた。ゲイルは円形盾と直剣を。ウッドは先が尖っている木の矢と弓を新調した。俺は悩んだが少々お高いサーベルを購入した。ちなみにお値段はゲイルが3000リルでウッドが3500リル俺が4000リルだ。
王都アルテアは四方に門があり、その先は初心者に向いている狩場なんだそうだ。俺達は東門の先にある<イースター平原>の門の近くに集まっていた。
「ここなら大丈夫かね?」
「ま、楽観視はできないけど気にしすぎるのもな」
「これで聞かれたら運が悪かったと思うしかないかと」
確かにな。
「まずは俺から説明するな。まず俺の<エンブリオ>の名前は【吸収魔本 ガルドラボーグ】だ」
ステータス画面ではこんな表示だな。
【吸収魔本 ガルドラボーク】
TYPE:テリトリー・アームズ
装備+MP100
ステータス補正
HP補正:G
MP補正:D
SP補正:G
STR補正:E
END補正:F
DEX補正:F
AGI補正:E
LUC補正:G
『保有スキル』
≪マジック・アブソープション≫Lv1 アクティブスキル
<マスター>の周囲2mに魔法を吸収する結界を構築する。
吸収された魔法はMPとして<エンブリオ>に蓄積させる。
≪オーバー・マジック≫ アクティブスキル
上記のスキルによって蓄積されたMPを<マスター>の魔法攻撃に使うことができる
ステータス補正はそんなに高くはないがスキルが魔法限定ではあるが強力だな。魔法を多用するモンスターならかなり有利に戦えるだろう。二人にも口頭で説明する。
「完全に対魔法特化な<エンブリオ>か」
「前衛で攻撃ができるクロス兄貴にはぴったりだね」
「まぁ、さすがに初心者の狩場には魔法を使うような奴はいないだろうがな」
俺は気に入っているがこいつの能力がフルに使われるのは暫くあとだろうなぁ・・・
◇ 【
「じゃあ次は僕の<エンブリオ>を紹介するね」
「ん?紹介?」
「こういうことだよ。出てきて!ヒッポグリフ!」
「クル~!」
僕がそう言うと紋章から一体のモンスターが出現した。そのモンスターは体の前半身が鷲で残りが馬の幻獣ヒッポグリフだ。
「おお、かっこいいな!」
「これはすごい。ひょっとしてガードナーの<エンブリオ>か?」
「半分正解。この子は【鳥獣馬 ヒッポグリフ】チャリオッツ・ガードナーだよ」
ステータス画面で見た場合はこんな感じだったよ。
【鳥獣馬 ヒッポグリフ】
TYPE:チャリオッツ・ガードナー
ステータス補正
HP補正:G
MP補正:F
SP補正:E
STR補正:F
END補正:G
DEX補正:D
AGI補正:F
LUC補正:F
『保有スキル』
≪弓騎一体≫Lv1 パッシブスキル
<エンブリオ>に騎乗すると<マスター>のSTRとDEXを20%アップ。
<エンブリオ>の全ステータスも10%アップ
副次効果として<マスター>に【酩酊】の状態異常耐性付与
≪ウィンドブレス≫Lv1 アクティブスキル
<エンブリオ>の攻撃スキル。口から不可視の風属性魔法攻撃ブレスを吐く。
≪風の加護≫Lv1 アクティブスキル
騎乗時に任意で発動する防御結界スキル。<エンブリオ>の意思でも発動可能。
魔法攻撃のダメージ10%減少、遠距離攻撃ダメージ20軽減
<マスター>のMP消費
ステータス補正はクロス兄貴のガルドラボーグより低いけどその反面スキルは一つ多い。ガルドラボーグほど強力なスキルではないからかもしれないけど。
「クル~」
ヒッポグリフが僕に甘えるように頭を擦り付けてきた。なんだかかわいいな。あと、出してみて初めて分かったけどヒッポグリフは普通の馬よりも一回り小さいみたいだ。それでもチャリオッツだし僕なら乗れるよね?
兄貴たちにはスキルの説明もしておいた。するといろいろ考えだした。
「初期に飛べるモンスターに乗れるのって反則に近いような・・・」
「いや、そうとも言えないぞ?空を飛ぶモンスターはどれも強力って話だ。遭遇なんてしたらデスペナは確定だ」
あ~そう言えばそんな情報もあったね。確かこの<Infinite Dendrogram>のデスペナルティーは24時間のログイン制限だったけ?最初に知った時はそんなのありかって驚いたっけ。
しかも、極偶に<UBM>って言う超強い個体も飛んでいるって話だし、しばらくはヒッポグリフに乗って飛ぶのはなしかな?
「クル?」
「なんでもないよ。あと今日から君のことはグリフって呼ぶね?これからよろしくね!」
「クルル!」
とにかくしばらくはグリフと一緒に強くなろう。
◇ 【
兄と弟の<エンブリオ>の詳細を教えてもらい、次は俺の番になった。
「ゲイル兄貴の<エンブリオ>はどんなのかな?」
「俺のもまずは出してみていいか?」
「いいぞ?説明だけだと判断できないのか?」
「まぁ、そうだな。装着【ボルックス】」
俺が言葉を口にした瞬間、俺の装いは激変した。端的に言えばフルプレートの全身鎧を装着しているだろう。
「全身鎧とはゲイル兄貴の好みにドンピシャだね?」
「いや・・・フルプレートの全身鎧にしては、妙に重厚すぎるな?」
『兄貴は鋭いね。この<エンブリオ>の名前は【双人鎧 ボルックス】で機械式甲冑・・・いわゆるパワードスーツだよ』
ステータス画面で確認した性能説明はこんな感じ。
【双人鎧 ポルックス】
TYPE:アームズ・ガードナー
装備防御力+150
ステータス補正
HP補正:D
MP補正:G
SP補正:E
STR補正:D
END補正:D
DEX補正:E
AGI補正:F
LUC補正:G
『保有スキル』:
≪バトル・シルエット≫
<エンブリオ>をガードナーとして扱う場合に自動発動するスキル。
ガードナーとしての戦闘力は<マスター>のステータスの半分。
ステータス補正は兄や弟の<エンブリオ>より高い様だが、反面スキルは一番少ない。おそらくはステータス補正と防具性能特化な<エンブリオ>なんだろうな。あと、ガードナーとしても扱えるらしいが、スキル説明によるとガードナーとしての戦闘力は現時点では弱い。
俺自身がまだステータス的に弱いからな。俺のステータスがガードナーとしての強さに直結するスキルだからしばらくはガードナーとして運用できないかな?
俺の<エンブリオ>の説明が終わると二人は驚いていた。
「現時点でも強力な<エンブリオ>だな・・・」
「装備防御力も今のLvで装備できる物では一番高いよ・・・」
まぁ、そうだな。ちなみにこの<Infinite Dendrogram>では武器や防具にはLv制限があり、装備が求めるLvでないと装備することができない。そう言う意味では俺は最初の装備としては破格な物を手に入れたことになるな?
「よし。全員の<エンブリオ>の確認はできたな。ちょうどいいからこのままLv上げでもするか?」
「いいですね。僕もグリフと一緒に戦って見たいです」
「クル!」
「異議なしだ」
クロス兄貴の提案に俺とウッドは反対することなく同意した。そのまま<イースター平原>を進みモンスターを探すことに。さてさて・・・・初の戦闘はどんなものかな?