◇ 【
僕たちがカースドヴァイパーの大量発生というべき事態を冒険者ギルドへ報告してから、港町ルヘトはその対応を迅速に行った。
まずは、《メイルズ林道》を隅々まで調査するためにベテランの冒険者パーティに緊急依頼を出した。これはティアンの人たちが担当し、パーティの中にモンスターの探知や索敵のスキルレベルが高い人たちが依頼を受けて調査に出ている。
<マスター>が担当しない理由は単純に信頼と経験の差だろうね。こういうのは冒険者ギルドに長い間貢献してきた人や経験豊富な人が選ばれるものだし。まぁ、そういうことに特化した<エンブリオ>持ちだと話は変わるけど、この町にはそういう<マスター>はいなかったみたい。
それに<マスター>は増えているカースドヴァイパーの討伐という役目がある。原因がわからないが今も増え続けているであろう蛇たちを討伐して数を減らさなくてはならないしね。
これは緊急の討伐依頼として、実力がある者に冒険者ギルドも声掛けをしていた。討伐報酬も高く、ドロップ品もいつもより高く買い取るとあって受ける<マスター>は多い。
中には情報を聞き付け、足を運んできた<マスター>たちもいたくらいだ。ついでにカースドヴァイパーのドロップ品の一つである皮目当てに商人も護衛を連れて買取に来ていた。商魂たくましすぎるね。
僕たち兄弟も時間があればログインしてカースドヴァイパーの討伐を繰り返している。そのおかげで僕は【狩人】はあと少しでカンストだ。兄貴二人もそろそろカンストするってリアルで聞いた。
多分だけと今日兄弟で集まって狩りする予定があるから、それでカンストまで行くんじゃないかな? そうなれば僕は次のジョブは【
ゲイル兄貴は【従魔師】をジョブリセをしてから【
問題はクロス兄貴だよね。いまだにどの下級職に就くか悩んでいるようだし、下級職の選択で魔術師系統の上級職が決まるから悩むのは仕方ない。
などと、港町ルヘトの中央広場で考えていたら兄貴たちもログインした。僕は考え事をやめて、兄貴たちに合流する。
「今日もよろしくね」
「ああ、こっちこそ頼むな」
「はぁ~下級職どうしたのものか・・・」
まだ悩んでるね? 独り言が口から無意識に出るくらいに。
「悩みは解決しないか?」
「俺の戦闘スタイルに直結する悩みだからな・・・おろそかにはできん」
「その悩み<エンブリオ>が上級に進化したら解決するんじゃない?」
「そんな単純なら早いとこ進化してほし・・・い?」
僕の冗談と願望が半々のセリフにクロス兄貴が答えてる後半に、突如として僕たち三人の左手の甲の紋章が淡く輝いている。その輝きは徐々に強くなっているようだ。
「これって・・・もしかして進化?」
「「タイミング良すぎだろう」」
僕のつぶやきに兄貴二人のセリフがユニゾンした。
◇ 【
俺たち三兄弟のエンブリオがついに上級へと進化するようだ。結構長い間進化しなかったが、上級は下級と比べるとかなりの能力らしいから、どういう進化をするか<エンブリオ>も悩んでいたのかね?
何はともあれ、進化するのなら歓迎だ。ウッドの言う通り進化すれば俺の悩みが解決するかもしれないしな!
そして、輝いていた左手の甲は徐々に輝きを弱めてしばらく経つと収まった。紋章自体には変化はない。というか紋章は最初に刻まれてから変化しないんだったか?
「とりあえず、ステータス画面で能力確認しよう」
「だな!」
「楽しみ!」
ゲイルの冷静な言葉に俺とウッドはうれしそうにうなずいた。まぁ、冷静に勤めていようとするだけであいつも嬉しいんだろうけどな。
現在、三人でステータスを確認中・・・・なるほどこういう能力になったか! これなら俺の悩みも解決するな! ステータス画面に描かれている内容に俺は満足した。
「兄貴は悩みを解決できるようだな」
「わかるか?」
「それくらいはね」
「よかったね」
「二人の能力はどうだ」
「俺の方も納得だ。攻撃力不足を補えるかもしれない」
「僕の方は不満なんてなかったから、基礎能力の強化になったよ」
それぞれ<エンブリオ>の能力に満足しているようだ。俺たちは討伐依頼を受けてまずはお互いの<エンブリオ>能力の紹介をすることにした。港町ルヘトを囲んでいる壁の近くで俺たちは各自の<エンブリオ>を実際に出して確認もすることに。
「まず俺から紹介するな。口で説明するよりはステータス画面を見せたほうが早いだろう」
まずは俺から二人に見せることにした。ステータス画面に描かれている<エンブリオ>の能力はこんな感じだ。
【吸収魔書 ガルドラボーグ】
TYPE:ワールド・アームズ
装備補正
MP+20%
ステータス補正
HP補正:G
MP補正:D
SP補正:G
STR補正:D
END補正:F
DEX補正:F
AGI補正:D
LUC補正:G
まず、名称が以前の【吸収魔本】から【吸収魔書】に変化。外見も以前は古めかしいだけの本だったが、今は古めかしいのは変わらないが各所に装飾がされて、そのおかげでアンティークの古書のような感じになった。
さらにTYPEもテリトリー・アームズからワールド・アームズに変化。ステータス画面のヘルプで確認したところ、ワールドというのはテリトリーの上位カテゴリーの一つで、純粋な上位互換と書いてある。
あとは地味にステータス補正がSTRとAGIがDになった。これが俺にとって一番ありがたい。この補正なら魔術師系統の下級職や上級職になってもある程度は物理ステータスが上がる。
スキルの方もレベルが上がったり、新スキルを習得した。
《マジック・アブソープション》Lv5 アクティブスキル
<マスター>の周囲6mに魔法を吸収する結界を構築する。
吸収された魔法攻撃はMPとして<エンブリオ>に蓄積される。
《マジック・アクセルブースト》Lv1 アクティブスキル
<マスター>のSTRとAGIを【ガルドラボーグ】のページ5枚を消費して
20%アップする。
以前の《マジック・アブソープション》はLv3だったから一気に二つもレベルアップだ。《マジック・アクセルブースト》も今の俺にはありがたい効果だ。
【ガルドラボーグ】のステータスを見て二人の反応は・・・・
「これ完全に兄貴の悩みを解決する進化だな?」
「そうだね」
まぁその通りだろうな。<エンブリオ>の進化がド直球で俺のほしい能力を補った形だ。
「おかげで悩みが解決したから俺的にはありがたい。これで他のジョブは魔術師系統にできるからな」
俺たち三人はグリフ以外魔法攻撃がないしな。魔法攻撃スキルを増やす意味でもそうしたほうがいいだろうな。
「じゃあ、次は進化したグリフを見せるよ」
「やっぱ成長してんのかね?」
「そういう意味でも楽しみだな」
進化したグリフがどのように変わったのかワクワクしながら、ウッドは紋章からグリフを呼び出す。
「グリフ出てきて」
「グルー!」
紋章から出てきたグリフはまず体が大きく成長していた。以前は馬サイズだったが、今は筋肉がより発達し見た目以上に大きく感じる。
上半身の鷲部分も色彩が美しい毛並みになっており全体的に美しさとカッコよさが増していた。ただ・・・
「グル~!」
「よしよし」
頭をウッドにこすりつけ甘える姿は以前と変わらない。ウッドに甘えん坊なところは変わらずこれは性格的な部分だから一生変わらないのかもな。
ウッドはグリフが納得するまで構い、グリフが納得したところで俺たちにステータスを見せてくれた。
【超翼馬 ヒッホグリフ】
TYPE:ガーディアン・ギア
ステータス補正
HP補正:G
MP補正:F
SP補正:E
STR補正:F
END補正:G
DEX補正:D
AGI補正:F
LUC補正:F
ステータス補正に変化はないが名称が以前の【鳥獣馬】から【超翼馬】に変わっている。TYPEもチャリオッツ・ガードナーからガーディアン・ギアに変化。
ヘルプによるとガーディアンはガードナーの上位カテゴリーの一つでガードナーが単体戦闘力を強化していった場合の進化先とのこと。ほかに、数優先のガードナーでレギオンというのがあるらしい。
ギアはチャリオッツの上位カテゴリーの一つで、単純な乗り物としての上位互換。ほかには<マスター>が乗り込む物の追加パーツや強化する効果のアドバンスという上位カテゴリーがあるらしい。
ということはグリフはステータス補正より、戦闘力と騎獣としての能力優先の進化をしたということだろう。それは固有スキルのレベルアップと新スキルでも察することができる。
《弓騎一体》Lv4 パッシブスキル
<エンブリオ>に騎乗すると<マスター>のSTRとDEXが50%アップ
<エンブリオ>の全ステータスも40%アップ
副次効果として<マスター>に対する拘束系状態異常耐性付与
《ウィンドブレス》Lv4 アクティブスキル
<エンブリオ>の攻撃スキル。口から不可視の風属性魔法攻撃ブレスを吐く。
Lv4になったことで、威力が上がり攻撃範囲も広がった。
《ストーム・バレット》Lv1 アクティブスキル
小さな竜巻状の弾丸を三つ飛ばす。
MP消費が低めで威力もそこそこ、クールタイムも短い
既存のスキルがレベルアップしてさらに強力になり、新たなスキルを習得していた。特に《ストーム・バレット》を覚えたのをウッドは喜んでいた。
これまでグリフの攻撃スキルは《ウィンドブレス》しかなく、このスキルはここぞという時に使う切り札的な技だ。そのため、普段でも使える使い勝手のいいスキルがあればいいなっと思っていたという。
「グリフ、改めてよろしくね?」
「グル!」
ウッドの言葉に気を引き締めた凛々しい顔で返事をするグリフ。かっこいい姿だが、直前に見せた甘えん坊な行動でギャップがすさまじい。ある意味グリフらしいともいえるが。
次はゲイルの【ボルックス】を見せてもらうとするかね?
◇ 【
クロス兄貴とウッドのグリフは確実に進化で強化されたようだ。もちろん、俺の【ボルックス】だって強くなっている。
「今度は俺の番だな」
「ある意味一番楽しみだぜ」
「そうだね。防具としてのデザインも変わったのかな?」
それは俺も気になる。早速お披露目をするとしよう。
「装着、【ボルックス】」
「おお? これはまた・・・」
「かっこいいね!」
【ボルックス】を装着した俺を見て、二人はそんな言葉を口にした。というかしまったな? 装着するんじゃなくて、ガードナーとして呼び出せば、俺も【ボルックス】を見れたんだ。
俺は装着した【ボルックス】を改めて紋章に戻して、ガードナーとして紋章から出した。
「ほほう! これはなかなか・・・」
俺の目の前には、基本の騎士甲冑をカスタマイズしたような重厚な全身鎧があった。以前の【ボルックス】は武骨なフルプレートアーマーって感じだったからな。
だが今は、光沢のある鋼色が艶消しを施してあるように目に優しく重厚な作りながら各所に騎士らしい装飾がされているので騎士が装備するのなら違和感が一切ない。
外見を確認できたので、次はステータス画面を二人に見せた。
【双騎鎧 ボルックス】
TYPE: ウェポン・ガーディアン
装備補正
防御力+670
ステータス補正
HP補正:D
MP補正:G
SP補正:E
STR補正:C
END補正:C
DEX補正:E
AGI補正:E
LUC補正:G
【ボルックス】も名称が変化して【双人鎧】だったのが【双騎鎧】に。そして、TYPEがアームズ・ガードナーからウェポン・ガーディアンに変化。
ガーディアンはもう知っているからいいとして、ウェポンというのはアームズの上位カテゴリーの一つで兵器運用に特化している場合に変わるとのこと。まぁ、パワードスーツだしな? 兵器と言えば兵器だな。
防御力も大幅に上昇して、ステータス補正もSTRとENDがCになった。さらには新たなスキルを二つ覚えた。
《ブーステッド・クロス》 パッシブスキル
【ボルックス】がガーディアン運用時に自動発動する《バトル・シルエット》強化スキル
ステータスが<マスター>と同等になり、<マスター>が所持しているパッシブスキルが
【ボルックス】にもリンクする。ただし、効果は半減。
《サンダー・コーティング》Lv1 アクティブスキル
<マスター>が装備している武器に電気を纏わせて
1000の固定ダメージと【麻痺】の効果を付与する
《ブーステッド・クロス》を覚えたことで【ボルックス】の戦闘力が上がった。これで以前よりガーディアン運用する機会も増えるだろう。
あと地味に嬉しいのは《サンダー・コーティング》だな。これである程度は攻撃力不足を補えるだろう。二人の感想は・・・
「ゲイル兄貴の<エンブリオ>は多機能だよね?」
「そうだな。スキルは戦闘補助とガーディアン運用がほとんどだし、防具としての性能に防御力と耐久値も高めだろうしな」
言われてみればその通りだな? 少なくとも二人のエンブリオに比べれば一番多機能だな。
「ともかく、全員の能力は数字と文字で確認したんだ。次は実戦を通して確認しよう」
クロス兄貴の言葉にうなずいて、俺たちは受けたクエストを達成するために歩き出した。
ついに上級に進化です。ちなみにここまで遅くなったのは<UBM>の戦闘経験が原因です。特にゲイルなんてデスペナしてますしね。
それと三人の<エンブリオ>が同時期に進化するのはこれが最後です。これからは単独行動で別々の経験が増えていく予定です。
余談。三兄弟の<エンブリオ>能力特性。
ゲイルの【ボルックス】の能力特性 機械甲冑性能&自立行動。
機械甲冑性能と防具としての防御力に自立行動ができる能力。さらには戦闘力を補助するスキルなど意外に多芸な<エンブリオ>。
ただし、多芸であるがゆえにリソースが分散してしまい一つ一つの能力はそれに特化している他の<エンブリオ>より低め。
なぜ、一つに特化せずこのようになったかは本編で語られる予定。
クロスの【ガルドラボーグ】の能力特性 魔法吸収&MPタンク
敵味方問わず、結界内に到達または結界内で発動した魔法を吸収し、吸収した魔法はMPとして<エンブリオ>に蓄積させる基本スキル特化。
限定効果なため、相手を選ぶが型にはまれば超強い。MPタンクとして自身の魔法攻撃でMPも貯めることができ、貯まったMPを使用する各種スキルを覚えたため最初に比べると活躍の場は増えた。
ただ、TYPEが初期の段階でテリトリー・アームズだったのでテリトリー単体の場合と比べてリソースが分割される事態に。
さらには本人が物理的な攻撃手段もある【魔法剣士】をメインジョブにし、戦闘経験を積んだことでステータス補正にもリソースを振り、スキルも物理的な方面を強化する物が増えた。
これらの解説も本編で語られる。
ウッドの【ヒッホグリフ】の能力特性 戦闘力&騎乗戦闘
三兄弟の中で一番能力がシンプル。そのためリソース効率が一番よかったりする。
戦闘力と騎乗戦闘にリソースのほとんどを費やし、スキルもその補助が多い。何気に戦闘力で言えば三兄弟で一番高く、ガチンコ戦闘では最も完成度が高い。
その分、特殊なスキルや状態異常、からめ手を使ってくる相手には少々苦戦する。シンプルであるがゆえに、正攻法以外に現在は弱め。
なお、初期の段階でチャリオッツ・ガードナーであった理由は本編で語られる。