三兄弟の系統樹   作:出来立て饅頭

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第三十五話 ティアンとのパーティクエスト

  ◇  【流浪騎士(ストレンジャーナイト)】ゲイル・アクアバレー

 

 

俺たちの<エンブリオ>が上級である第四形態になったことで戦闘力が劇的に上がり、港町ルヘトで大量発生しているカースドヴァイパー討伐の効率も上がった。

 

まずはクロス兄貴の場合だが、ステータス補正が上がったことで物理的な戦闘力が向上した。これにより剣士系統のアクティブスキルや通常攻撃の威力が上がり、戦闘効率が以前とは段違いに。

 

【ガルドラボーグ】の新しい固有スキル《マジック・アクセルブースト》も現在は10%の強化だが、それでもあるとないとでは大違いだ。使える手札が増えるのはパーティメンバーとしてもありがたい。

 

しかし、いいことばかりではない。《マジック・アクセルブースト》の対価である”ページ5枚消費”は思わぬ落とし穴があった。

 

どうやら、この対価はページに蓄えられたMPを消費するわけではなく本当にページ5枚分を破って文字通り消費する必要があるのだ。

 

これは、クロス兄貴にとっては大きなデメリットだ。【ガルドラボーグ】のMPタンク能力は白紙であるページが黒くなることでMPが溜まる仕様だ。よってページがなくなれば貯められるMPの総量が減る。

 

なお、この破ったページは時間経過で復活することがわかっている。1枚元通りになるのに4時間必要で、5枚が元に戻るには20時間必要ということだ。

 

これが判明してからは、《マジック・アクセルブースト》はここぞという時に使う奥の手という立ち位置になった。

 

次にウッドとグリフについてだが、この二人に関して言えばクロス兄貴のようなことはなかった。新たなスキルの《ストーム・バレット》は問題なく使える。

 

むしろ、使い勝手が良すぎるほどだ。ある程度の威力があり、MP消費も低めで、弾速もかなりのもの。しかも最初に持っていた《弓騎一体》の強化率も増えたことでお互いの戦闘力はますます上がっている。

 

しかも、進化したグリフはおそらく純竜級の戦闘力を持っていると予想している。ま、あくまで純竜級クラスに到達しただけであり、純竜級でもまだ弱いだろうが。それはこれからの進化次第。

 

最後に俺だが、この一言に尽きる「《サンダー・コーティング》便利」と。

 

特に盾に電気が纏わせるのが相性が良すぎる。盾で殴れば追加ダメージで運が良ければ【麻痺】に。しかも盾で相手の攻撃を受ければ【麻痺】になることがある。さすがに攻撃ではないので追加ダメージはないが。

 

地味に追加ダメージである1000固定ダメージも役立っている。確実に1000ダメージが相手に入るというのは助かっている。

 

このスキルを使いやすくするために一度ギデオンに戻って、SPを上げるアクセサリーや自動回復系のアクセサリーを購入したほどだ。お値段は両方合わせて64万リルと高く、最近の収入がなければ危なかったが。

 

そして、現在俺は冒険者ギルドに一人で向かっている。今日は残念ながら二人の予定が合わずに俺しかデンドロにログインできなかったのだ。

 

こればかりは仕方がない。最悪一人で討伐依頼を受けるか、もしくは野良パーティの募集があれば参加すると募集しようか。

 

最近の討伐依頼でジョブも順調に上がっているし、現在の俺のメインジョブは【騎兵(ライダー)】だ。【流浪騎士】もカンストし、俺は予定通り【従魔師】を消し、【銃士】に就き【銃騎士】にも就いた。

 

ただ、残念なことにここルヘトでは銃という武器は入手することはできない。【銃騎士】のレベル上げは不可能と判断して、【銃士】をジョブリセして【騎兵】に就いた。

 

これで俺の下級職のジョブ枠は埋まり、あとは上級職の【大盾騎士】を残すのみ。カンストまではもう少しだな。

 

などと考えながら冒険者ギルドに入ると、受付嬢の一人が俺に気づいて声を上げる。

 

「ゲイルさんちょうどいいところに!」

「何かトラブルですか?」

 

そうカウンターに近づいて聞いてみたが、受付嬢は特に危機感とか緊急の話といった感じではないな?

 

「いえ、そういうわけではないのですが・・・少々困ったことがありまして」

「ふむ・・・とりあえず話だけでも聞きましょう」

 

その後、受付嬢に詳しい話を聞いてみると最近のカースドヴァイパーの大量発生を調査している冒険者パーティに欠員が出たらしい。

 

と言っても、殉職したとかではなく単純に【風邪】に罹ったとのこと。しかもかなり症状が重いらしく、【医者】と【薬師】にそろってしばらくは絶対安静と言われたそうだ。

 

専門家にそう言われれば言う通りにした方がいいだろう。しかし、それで困るのは残りの冒険者メンバーだ。彼らは長年ルヘトで活動していて生活基盤もあるから休むのは問題ないが、今は緊急性が高いであろう依頼をしている最中。

 

さらに悪いことに【風邪】に罹ったメンバーはパーティで最も実力がある壁役。もしも、調査依頼の最中に強敵に出会えば一番矢面に立つパーティの生命線が行動できないというのは痛い。

 

「それを重く見たリーダーのザイマンさんが冒険者ギルドに”どこかに腕のいいタンク役ができる者はいないか? この際信頼できると判断したのなら<マスター>でも構わない”っと聞いてきまして」

「それで俺に?」

「はい・・・お願いできませんか? もちろん報酬は払いますし今日だけで構いません。ギデオンから応援が来る手はずになっているので」

「それでしたら問題ありません。その冒険者パーティーの方たちに会わせてくれませんか?」

 

さすがに俺はよくてもその人たちと実際会って話し合わないとな。

 

「はい、わかりました。彼らは今ギルドマスターと調査地域について話し合っています。ご案内します」

 

そう言うので受付嬢の後に続く。彼女は2階に上がりいくつかある部屋の一つの扉をたたく。

 

「失礼します。受けてくれる<マスター>の方を連れてきました」

「入れ」

 

渋めの声が響き受付嬢が扉を開けるとそこには、屈強な体を服に無理やり収めているような大柄な男に、テーブルを挟んだ対角線上に軽装鎧を着こんだ男性、眼鏡をしている魔術師が着るローブを羽織っている男性にその横でおとなしくしている革製の防具を装備している小柄な女性。

 

最後になぜか入ってからこちらを睨んでいるかなり美人な女性。ついでに言えば胸もかなりでかい。俺が胸に視線を向けたのがわかったのかさらに睨んできた。すいませんね。だけど言い訳するならこれはある意味男の本能です。

 

俺がそんなことを考えていると受付嬢は大柄な男と話してから、部屋を出て行った。そして・・・

 

「まずは来てくれたことを感謝する。俺はここのギルドを預かっているディルスという者だ」

「ゲイル・アクアバレーです」

「名だけは知っている。今回の事態をいち早く教えてくれた<マスター>の一人だからな」

 

まぁ、さすがにトップなら把握しているよな? そのディルスに続いて軽装鎧の男性が話しかけてきた。

 

「私はこのパーティのリーダーをしているザイマンだ。受けてくれて助かるよ」

「まぁ、その前にメンバー全員と話してから判断してくれ。一人すごくこちらを睨んでいるしな」

「アーシア・・・初対面で失礼ですよ?」

「失礼なのはアタシの胸を見たそいつよ」

 

やっぱりバレてたか。

 

「あ~すまない。彼女はあの容姿だから昔からトラブルに悩まされていてな。特に最近は失礼な<マスター>が多くてな」

 

だろうな。彼女の容姿は蜂蜜色の長髪で長身であり、なかなかのプロポーションをしている。リアルだと都会を歩いただけでナンパやスカウトマンが寄ってくるだろうな。

 

「とりあえずは俺がした行為が原因なら頭は下げる。これからパーティを組むかもしれないメンバーだしな」

「・・・アタシはまだ納得してない」

「アーシア、割り切りなさい。壁役をしていたハルスが【風邪】で動けない以上、誰か別の壁役ができる人を入れるしか依頼をする手段がないのですよ」

「調査依頼なんだから壁役なんていらない」

「アーシア、それは本気で言ってるのか?」

 

リーダーであるザイマンがアーシアの言葉に対して怒気を含んだ言葉を口にする。

 

「今回の異常事態はまだ原因が判明していない。もしかしたら純竜級の危険モンスターがいるかもしれないし最悪な場合は<UBM>がいる可能性すらある。たとえそうじゃなくとも不測の事態というのはどういう状況で起こるかわからない。そんな中、戦闘での生命線である壁役がいらないなんて本気で言っているのか?」

「・・・ごめん言いすぎた。ちょっと感情的になってた」

 

さすがに言い過ぎたと理解しているようで彼女はバツが悪そうに謝罪した。

 

「今回はアタシが我慢するけど、あんまりアタシに近寄らないでよ」

 

と言ってもすぐに俺を睨みつけてそんなことを言っているが。

 

「わかった。こちらにも非があるし注意する。とりあえず改めてジョブも含めて自己紹介だ。ゲイル・アクアバレーだ。今のメインジョブは【騎兵】だが、調査に行く前にジョブを切り替えて【重厚騎士】に変えるから安心してくれ」

 

【騎兵】だと、攻撃系のアクティブスキルがいくつか使用不能だからな。万全を期してメインジョブは変えよう。

 

「俺のメインジョブは【剛剣士】だ」

「私はこのパーティの参謀役であるネイソンです。メインジョブは【白氷術師】で主に後衛で援護をしてます」

「私はリリって言います。メインジョブは【高位従魔師】です。うちのモンスターたちで索敵や遊撃を担当しています」

「アタシはアーシアよ・・・メインジョブは【大狩人】よ。主な役割は状態異常攻撃による援護よ」

「普段なら、壁役で俺たちの中で最も合計レベルが高い【鎧巨人】のハルスがいるんだが、聞いていると思うが【風邪】に罹ってな。今日だけだがよろしく頼む」

「ああ、よろしくな」

 

そう言って俺とザイマンは握手を交わした。調査依頼だから俺は戦闘以外ではやることがないが、もしもに備えてだから油断しないように気を引き締めるとしよう。

 

 

自己紹介が済んでギルドマスターとの話し合いで次の調査範囲を決定してから、俺たちは港町を出た。メインジョブを【重厚騎士】に一旦戻して、準備はできたからな。

 

現在、調査地点へと向かって進んでいる。先頭を歩くのはリリのモンスターの【ダークウルフ】だ。真っ黒な毛並みで夜間戦闘が得意で探知系のスキルが豊富な個体だという。

 

さらに上空には怪鳥種である【ハリケーン・ファルコン】がいる。上空からの援護と索敵が主な仕事だ。【高位従魔師】のリリはこの二匹が戦力でサブジョブに【指揮官】に就いてパーティの強化をわずかであってもしているのだとか。

 

なお、【ダークウルフ】の方は従属キャパシティ内だが、【ハリケーン・ファルコン】はパーティ枠を使っている。実力的には亜竜級というのでさすがにキャパシティをオーバーしてしまうとのこと。

 

そんなメンバーで進んでいるのだが、早々に異常にメンバーが気付く。

 

「おかしいな・・・今日はこれまで奇襲が一切ないぞ」

「ええ、これはいよいよ当たりを引きましたかね?」

 

ザイマンとネイソンはここまでカースドヴァイパーの奇襲がないことに原因に近づいていると判断。

 

「全員、周囲を最大警戒してください。いつ何が起こるかわかりません」

 

ネイソンが全員に指示を出す。リーダーはザイマンだが、普段の指示出しはネイソンが担当しリーダーのザイマンは最終意思決定と状況の見極めが主な仕事だという。

 

警戒をより強めた俺たちは《メイルズ林道》の林を突き進み、とある山の境界線まで向かっている。港町ルヘトの北側にあるその山は《クロック山林》と呼ばれ、木材が豊富だが最低でも亜竜級のモンスターがいる上級者向けの場所だ。

 

今回の異常事態はその山林からモンスターが降りてきたか、<UBM>が誕生したと冒険者ギルドは見ているようだ。

 

ザイマンたちのこの異常状態が発覚してからの調査で、そこまで絞り込み今回山林と林道の境界線まで出向き調べることになったと聞いた。

 

慎重に警戒しながら進み、ようやく《クロック山林》の麓へとやってきた。ここから見る限り、王都の狩場の一つである《ノズ森林》よりも木の密度はそれほどでもないようだ。山だからアップダウンが激しそうだが。

 

「よし、ここで辺りに何か異常がないか調べるぞ。すでに異常と言っていい状況だから単独行動はせずに全員で行動しよう。リリ、君のモンスターたちは何かに反応しているか」

「特に何も。クロ君とハリちゃんは特に感じてないみたい」

 

クロ君とは【ダークウルフ】のハリちゃんとは【ハリケーン・ファルコン】の名前だ。名前でわかると思うがクロ君は男の子で、ハリちゃんは女の子だ。

 

「ただ、二人とも辺りをすごく警戒している。彼らの感覚でも何かあるみたいだよ」

「そうか・・・これはますます怪しくなってきたな。全員気を抜くなよ?」

「了解です」

「ああ」

「わかったわ・・・ちょっとそこの<マスター>さん? あたしに近づきすぎよ?」

「アーシア・・・こんな時に何を・・・」

『俺は気にして! アーシア!』

「え!?」

 

突如として俺の《殺気感知》と《危険察知》が反応し、【ボルックス】の攻撃感知のアラームが鳴り響いた。上級に進化したことで【ボルックス】の攻撃察知は俺だけでなくパーティメンバーに当たる攻撃も察知するようになった。

 

アラームの種類と二つのスキルが反応しているのはアーシアの後ろだ。とっさに俺は駆け出してアーシアを左腕を伸ばし突き飛ばした。緊急事態と思ったので、手加減できずにアーシアは近くにあった木に激突してしまった。

 

「きゃ! ちょっと!なにす・・・え?」

 

それでもベテラン冒険者であり、合計レベルも結構高かったのが幸いしてそれほどダメージは受けなかったが。文句を言おうとしたアーシアだったが、俺に視線を向けると目の前の状況に思考が停止した。

 

俺の左腕が毒々しい紫色の液体を浴びて、溶けかけている状況に。

 

「「ゲイル!?」」

『く!』

 

幸い俺は痛覚をオフにしているので、痛みは感じないのだが目の前で溶けている左腕を見るのは恐怖を誘う。だが、それでも気をしっかり持ち【ボルックス】を紋章に戻して、左肩まで溶けるのを阻止するために俺は右腕に片手剣を《瞬間装備》で装備し、左腕を切り飛ばした!

 

切り飛ばされた左腕はそのままものすごい速さで溶けて消えた。

 

「ゲイル、大丈・・」

「周囲を最大警戒しろ! 何か居るぞ!」

 

俺を心配して近づくザイマンに俺は大声でそれよりもやることを叫んだ。

 

「ゲイルの言う通りです! リリ!」

「はい! クロ君は《ダークアロー》! ハリちゃんは《ウィンドブラスト》!」

 

ネイソンはゲイルの言葉を聞き、リリ名を呼ぶ。それに応える形でリリは自身のモンスターに攻撃を指示。クロ君はアーシアとゲイル側へ攻撃を。ハリちゃんはその反対側に攻撃を行うが・・・

 

「手応えがないそうです!」

「ならば、”凍える凍土よ! 我が敵を凍てつかせよ! 《フリージング》!”」

 

ネイソンは自らのスキルを《詠唱》、《範囲拡大》と併用して自身の周りの広範囲を白く染めた。しかし、これは攻撃のための行為ではなく、ダメージは低すぎるほどだ。このスキルの目的は・・・

 

「SYAAAAA」

「そこでしたか・・・」

 

正体不明の敵をあぶりだすため。急に温度が下がったことで変化に対応できなかった蛇型モンスターは姿を現した。

 

そのモンスターはカースドヴァイパーよりも大型で三倍はある大蛇型で、体は赤黒くところどころに黒紫色のオーラが見える。認識したことで頭上に名称を確認。名を【ハイエンド・ディザスター・ドラグヴァイパー】

 

「な!? ハイエンドだと!?」

「純竜級最上位クラス・・・」

「うそでしょ・・・」

 

彼らが驚いたのは名称にある【ハイエンド】が原因だ。確か、純竜級以上のモンスターのその種族の中で一握りにしか付かない最上級の証だったか?

 

「それに聞いたことがないモンスターですね・・・」

「ネルソン、それは本当か?」

「おそらくは新種でしょう。もしかしたら下位のモンスターを大量に生むことができる種かもしれません。そう考えれば、今回の事態の説明ができます」

 

ザイマンが剣を構え、その後ろでネルソンが魔法をいつでも使えるように準備をしている中で、俺はリリに回復アイテムを使用してもらっていた。

 

「出血は止まったけど・・・」

「十分だ。ありがとう」

「だ、大丈夫なの?」

「<マスター>は痛覚すら無くすことができるんだよ。とは言え、片腕しかない以上戦力は半減だな」

 

突き飛ばしたアーシアも心配そうにこちらをうかがうが、今は俺のことよりもこの状況をどうするかだな。

 

「【ボルックス】ガーディアン運用」

 

とりあえず、戦力を補うために【ボルックス】をガーディアン状態で紋章から出すことに。【ボルックス】も左腕部分が溶けかけているが、動かすのに支障はないようだ。

 

「え? これってあなたの防具じゃ?」

「これが俺の<エンブリオ>でモンスターとして自立行動もできるんだよ。【ボルックス】見ての通り俺は片腕を失ってる。お前は攻撃に専念してくれ」

 

指示を出した後に俺は【アイテムボックス】から片手剣を二つ取り出して、地面に刺す。それから【ボルックス】が剣を抜き、俺をかばうように前に出る。俺も右腕で持っている盾の中で一番大きなものを《瞬間装備》して、戦闘に備えるが・・・

 

「ザイマン、ネイソン。正直に答えてくれ。こいつに勝てるか?」

「・・・正直厳しいだろうな」

「ですね・・・相手は何をしてくるかわからない新種のモンスター。こちらも万全なメンバーではない。とはいっても万全だったら勝てるのかと言われても難しいですね」

「そうか・・・」

 

その言葉を聞いて、俺は決断した。

 

「ここは俺が時間を稼ぐ。皆はこいつのことを冒険者ギルドに報告してくれ」

「な!?」

「・・・・いいんですね?」

「ああ、君ならそれが最良だとわかるだろう?」

「・・・すいません。あと、ありがとう」

「おい! ネイソン!」

 

ザイマンはまだ何か言いたいようだが、目の前の純竜が動き出し、事態は動く。

 

「行け!」

「ザイマン! 行きますよ! アーシアとリリもいいですね!」

「う、うん・・・」

「・・・わかった」

「ああ、くそ!」

 

ネイソン以外のメンバーは戸惑っていたが、それでも普段から指示を出しているネイソンの言葉に従い、この場から離れていった。

 

「さて・・・蛇公。時間稼ぎに付き合ってもらうぞ! 俺たちはしつこいぞ!」

 

こうして俺の時間稼ぎの純竜級との戦闘は始まった。

 

 

 

 

「ネイソン! なぜ! ゲイルに時間稼ぎを!」

「それが最良の選択だからです・・・」

「どこかだ! 今日だけとはいえメンバーに死ねと言っているんだぞ!」

 

ネイソンの指示が納得できずにザイマンは噛みつくが、彼は重要なことを忘れている。

 

「彼は<マスター>ですよ?」

「あ・・・」

「・・・」

「それがどうした!」

 

アーシアは今思い出し、リリはネイソンの考えに気付いていた。

 

「お忘れですか? <マスター>は死んでも三日後にはこの世界に帰ってくることができるのですよ」

「!」

 

そう、<マスター>ならたとえ死んでも三日間のログイン制限で済むのだ。そういう意味ではあの場でゲイルが時間稼ぎをするのは理にかなっている。理屈上では。

 

「だからって! 死ねことを前提にするのは間違ってるだろう!」

「私だってこんなことはしたくありませんよ!」

「「「!?」」」

 

ネイソンは彼には珍しく声を荒らげている。

 

「ですが、今最も重要なのはあのモンスターがいたという情報を冒険者ギルドへ届けることです! 全滅した場合でも彼が三日後には情報を届けてくれるでしょうが、その間に港町ルヘトが無事である保証はありません!」

「!」

「それは・・・」

「そうだね・・・」

 

三日間。この間に何が起こるかもしれない不安要素。確かにネルソンの言うことは至極もっともな話だ。

 

「彼が信頼できるであろうことは私も一緒に行動して、確信しています。いくら死んでも蘇るからと言って死ぬことを前提にされることは<マスター>とて嫌うでしょう。それでも彼は自分から時間稼ぎをすると言ってくれました。ならば、私たちはそれに答えるべきではないですか?」

「・・・そうだな。すまないネルソン」

「わかってくれればいいのです。急ぎましょう」

 

ネルソンの言葉を聞いてメンバーは港町ルヘトへと急いで戻る。

 

「ゲイル・・・」

 

アーシアはゲイルが時間稼ぎしている方角を見て、何かを考えている様子だが、すぐに切り替えて足を速める。

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