三兄弟の系統樹   作:出来立て饅頭

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第三十六話 死闘とそれから・・・

  ◇  【重厚騎士(ソリッド・ナイト)】ゲイル・アクアバレー

 

 

ザイマンたちを逃がすために俺は純竜級最上位クラスのモンスター【ハイエンド・ディザスター・ドラグヴァイパー】との戦闘を続けていた。

 

最も、俺はメンバーであるアーシアと言う女性をかばって、左腕が溶かされて、肩まで溶けるのを阻止するために切り飛ばした。

 

現在は【ボルックス】をガーディアン運用して、俺も防御重視で【白銀式甲冑 シルベスタ】と俺が持っている中で最も防御力が高くでかい盾を右腕に持っている。盾の場合はそれだけで特殊な効果はないが。

 

【ボルックス】が剣を左右に持って、攻撃役となり俺が盾で相手を注意を引き付けているのだが、俺が重傷を負っていることを差し引いても、目の前の奴はかなり手ごわい。

 

「SYAAAA!」

「く!」

 

目の前の蛇は多種多様な状態異常を与える毒液を吐いてくるのだ。わかっているだけでも相手を溶かす溶解液に【毒】、【麻痺】、【劣化】、【出血】など厄介すぎる!

 

幸い、毒液自体の速さがそれほどでもないことと、【シルベスタ】の装備スキル《重量軽減》のおかげで早めに動くことができるので回避は難しくない。そのため、俺たちの戦闘に巻き込まれる哀れなモンスターが毒液を浴びてどんなものかが判明したわけだが。

 

俺自身が重傷を負っていることが蛇もわかっているらしく、先ほどから攻撃は俺にしかしてこない。純竜級の攻撃である尾を使った払いや叩きつけを何とか受けたり、弾くことができているのはこれまでの技術訓練と<UBM>と言う純竜級以上の敵との交戦経験のおかげだろう。

 

それ以外では【ボルックス】の存在も大きい。現在の【ボルックス】の戦闘力は《ブーステッド・クロス》のおかげでかなり向上している。

 

ステータスは俺と同等になり、俺が持つパッシブスキルの効果も半分だが、機能している。さらには《バースト・イグニション》の効果で俺が戦闘力を上げるアクティブスキルを使用すればその効果もリンクする。

 

【ボルックス】が攻撃するタイミングで俺が攻撃力やSTRが上がるアクティブスキルを使用しながら、戦闘を継続している。

 

それでも、攻撃力不足は否めず相手のHPを削りきることはできそうにない。時間稼ぎが目的だが、負けるつもりで戦闘をしているわけではない。逆転するには相手の急所に剣を突き刺すしかないか?

 

などと考えていると、目の前の【ドラグヴァイパー】は新たな行動に出た。太い体がいきなり膨らみ徐々に頭へと移動して次の瞬間には大口を開けて、そこから大量の【カースドヴァイパー】が飛び出してきたのだ!

 

「なぁ!?」

 

いきなりの事態にとっさの行動できずに、俺と【ボルックス】は大量の【カースドヴァイパー】に巻き付かれ、動きを封じられた。特に俺は首などを噛まれて【呪縛】と【劣化】の状態異常になってしまった。

 

そんな俺たちに【ドラグヴァイパー】は口から大量の毒液を吐き出してそれを浴び続けた俺たちは一瞬で崩れ落ちた。

 

 

 【致死ダメージ】

 【パーティ全滅】

 【蘇生不可能】

 【デスペナルティ:ログイン制限24h】

 

 

デスペナになり、現実に戻った俺は一言・・・

 

「いやな死に方したぜ・・・」

 

大量の蛇に巻き付かれるわ、噛まれるわ、毒液を大量に浴びせられるとかなんて死に方だ・・・それにあの蛇自分が生み出した子供ごとやりやがった。

 

正直自分の手でリベンジがしたいが、ザイマンたちが冒険者ギルドに報告したら、相性のいい<エンブリオ>を持った<マスター>が討伐するよな~

 

とりあえずは流兄貴か芳樹に電話でもするか・・・デスペナになったことと。冒険者ギルドに奴のことを少しでも教えないとな・・・

 

 

 

 

  ◇  【大剣士(バスターソードマン)】クロス・アクアバレー

 

 

俺は仕事終わりにデンドロにログインした。本来なら今日はさっさと明日に備えて寝るつもりだったが、リアルで高次からの電話でデスペナになったと聞き、詳しいことを聞いた後デンドロ内が気になり、少しのつもりでログインした。

 

俺は冒険者ギルドへ向かい、ゲイルと一緒だったパーティが無事なのか確かめることに。冒険者ギルドへ入ると俺に気付いたギルド職員の男性が声を掛けてきた。

 

「クロスさん! ちょうどよかった! 実はゲイルさんが」

「本人から向こうで聞いた。それで、ゲイルとパーティを組んでいた人たちは?」

「全員無事です。今ギルドマスターに報告をしています」

 

無事だったか。ゲイルの時間稼ぎが無駄にならずに済んでよかった・・・そう考えた直後にギルドの二階から数人降りてきた。多分あの中の何人かがパーティメンバーだろう。

 

先頭に居る男が階段の途中で立ち止まり、ギルドに響く声を発した。

 

「この場にいる者たちは聞いてくれ! 今この町で起こっているモンスターの大量発生の原因が判明した! 原因は純竜級モンスター【ハイエンド・ディザスター・ドラグヴァイパー】と言う珍しい種族だ! ヴァイパーの名で勘違いしそうだが、このモンスターは魔獣ではなくドラゴンの一体だ。正確に区別するなら蛇竜と言うべき三大竜種とは別のドラゴンだ! かなり珍しい個体で冒険者ギルドのモンスター図鑑にも発見例は過去に3度ある程度であり、その三度とも発見したのは【ディザスター・ドラグヴァイパー】だそうだ! 今回の奴は【ハイエンド】の名を持つ! 純竜級でも最上位の一握りのモンスターにしか与えられない名称だ!」

 

これらのことを聞いたこの場にいる者たちはティアンの人たちは驚き慌て、<マスター>は喜んでいる。おそらく倒した後のことを想像しているのだろ。

 

「よって! 今回のこのモンスター討伐は冒険者ギルドが依頼した者たち以外は原則禁止とする! 目撃したり遭遇したとしても決して戦わずに生き残ることと撤退に徹してほしい!」

 

次に男性が口にした言葉に<マスター>たちから非難の声が上がった。これを予想していたらしく男性は次の言葉を口にする。

 

「【ハイエンド】の名を与えられたモンスターは戦闘を重ねると<UBM>になる可能性がある! これ以上奴の戦闘力が増すような真似はするべきでない!  この町の安全のためにどうか協力していただきたい!」

 

その情報を与えられて何人かの<マスター>は口を閉じて考え出した。ギデオンでの<UBM>の騒ぎはアルター王国の住人ならまだ覚えている人も多いだろうから、それを踏まえて考え込んだらしい。

 

ごく少数だが、そんなの関係ないねと言いたげな雰囲気の<マスター>がいるようだが。

 

「なお、既に報告を聞き腕利きの冒険者に奴の監視を頼んでいる! いないとは思うが奴と戦おうなどと考えている者で実行した奴は指名手配するからな!」

 

この言葉でほとんどの<マスター>が諦めたようだ。すべてではないので油断はできないが。

 

「カースドヴァイパーの討伐依頼は続けてもらいたいのでそちらも頑張ってほしい! 私からは以上だ!」

 

話し終わった男性に俺に話しかけたギルド職員が駆け寄り何か話している。すると、男性は降りて俺の前までやってきた。

 

「君がゲイルのパーティメンバーで兄弟のクロスか?」

「ああ。あなたは?」

「このギルド支部を任されているディルスという者だ。君の兄弟のおかげで彼らが助かり、貴重な情報もすぐに持ち帰ることができた。そのことで感謝したくてな。本当にありがとう」

 

そういうと男性は深く頭を下げて、後ろに居たおそらくはゲイルが助けたパーティも深く頭を下げた。

 

「感謝なら本人が帰ってきたときにでも言ってやってくれ。俺は本人から話を聞いて気になったからここに居るだけだ」

「そうか・・・わかった。本人に伝えるとしよう」

 

そう言ってディルスは職員とともに奥へと消えた。おそらくは原因のモンスターを誰に討伐依頼を頼むか相談だろうな。などと考えていると今度はディルスの後ろに居た人たちが話しかけてきた。

 

「あ、あの!」

「ん?」

 

だが、話しかけてきた軽装鎧を着た男性はなかなか続きを口にしない。それを見かねたのか魔術師のような男性が助け船を出す。

 

「すいません。我々はゲイルさんのおかげで助かった冒険者パーティです。リーダーは謝罪したくて声を掛けたんですよ」

「謝罪?」

 

はて? 何かしたっけか?

 

「死んでも三日後にはこの世界に戻ってこれるとはいえ、彼に死ぬであろう時間稼ぎをさせてしまいましたから。その謝罪です。本当に申し訳ありません」

 

そう言って男性は頭を下げ、他のメンバーもそれに続く。特にリーダーと呼ばれた男性と美人で胸が大きい女性が何やら真剣に謝罪している。

 

「本人は全然気にしてないぞ? せいぜいあの蛇にリベンジできないかもしれないから、悔しがってるくらいだ」

「そんなもの・・・なんですか?」

「ゲイルだからと言うのももちろんあるだろうが、<マスター>にとってはここで死ぬというのは正直軽い。あんたたちティアンには悪いがそんなに深く考えなくてもいいぞ?」

 

なんせ、俺たち<マスター>にはせいぜいリアルで24時間でこちらにとっては三日間のログイン制限があるだけだからな。かなりの損害になる場合以外ではそれほど重く考えないのが大半だろう。

 

そんな俺の答えに目の前のパーティは驚いているようだ。

 

「まぁ、どうしてもそちらの気が済まないというのなら本人が帰ってきたときにでも何かお礼をしてやればいいさ。今回の件で装備の大半も失ったらしいしな」

 

なんせその【ハイエンド】の蛇は装備品を溶かす溶解液を吐いてきて、ゲイルの持ち物である盾と剣と気に入っていた全身鎧を溶かしたらしいし。デスペナでのランダムドロップも考えると結構な被害だろうな。

 

「わかった、そうするよ。ありがとう」

 

俺の言葉でいろいろ吹っ切れたのか、リーダーと呼ばれた男性はやっと言葉を口にした。

 

「あ、あの!」

「ん? 今度はあんたか美人さん」

「ゲ、ゲイルは本当に三日後には帰ってくるのよね?」

 

俺の言葉は無視ですか・・・

 

「ああ、本当だよ。なんだあいつに惚れたの?」

「そ、そそそそんなわけないじゃない! 何を言ってんの!?」

 

あれ? 冗談のつもりで言ったんだが、顔を赤くしてこの反応・・・そうか、弟にも春が来たか・・・相手はゲームのNPCだけど。

 

その反応を見た他のメンバーからもつつかれて、その女性は慌てることになり、最終的に怒ってメンバー全員を追いかけだした。俺はそれを無視して、ギルド職員にゲイルから聞いた【ドラグヴァイパー】の攻撃手段を話した。

 

そして、ゲイルがデスペナになって二日目に【ハイエンド・ディザスター・ドラグヴァイパー】は情報を集めて相性のいい<エンブリオ>をもつ<マスター>に討伐されてこの件は解決した。




正直な話、三兄弟の個人での戦闘力はゲイルが一番低かったりします。壁役としては優秀ですよ?
ですが、【ボルックス】の能力が多機能で一点特化の<エンブリオ>に比べると能力が一段下がっているのは否めません。
今のところ、全スキルでも一発逆転するようなものもありませんしね。

今回の戦闘での経験は無駄にはなりませんけどね・・・
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