◇ 【
ゲイル兄貴がデスペナしてからしばらく経ち、僕たちはルヘトの北にある狩場《リースル海岸》や南の狩場である《シルヘト洞窟》などで狩りをしている。
この二つの狩場はたまに海竜種の純竜が目撃されるので、結構な上級者用の狩場だ。まぁ、僕たちは今まで遭遇してないけど。それでも亜竜級のモンスターがいるのでレベル上げでも収入と言う意味でも潤っている。
そのおかげで僕は【狩人】をカンストし、【弓狩人】に就けた。クロス兄貴も【大剣士】をカンストして次のジョブを悩んでいたけど、【
これで僕たちはLv500まであと上級職を残すのみとなった。今就いているジョブをカンストしたら就くため条件を達成しなきゃね。
ただ、順調じゃないこともある。ゲイル兄貴の予備の全身鎧がまだ作ってもらってないんだよね。ブルバスさんに手に入れた亜竜級のモンスターの素材を持って行ったんだけど・・・
「残念だが、これらで全身鎧を作っても今のお主では物足りないと思うぞ? 最低でも純竜クラスの素材がいるな」
と言われてしまった。ゲイル兄貴は僕たちの壁役だし、予備の全身鎧と言ってもやはり能力的には高い方がいい。そのため純竜の素材目当てで、この狩場をうろついてるんだけど、なかなか出会えないんだよね。
まぁ、純竜は絶対数が少ないって話だし、テイムモンスターでも純竜は高値で取引されている。それを考えると当たり前なんだけどね?
おかげでゲイル兄貴は【騎兵】がカンストしたし、たまたまルヘトに来てた商人から銃を購入できたから、現在は【銃騎士】に就いてレベル上げしてるけど。なお、購入した銃はそんなに強くはない。
現在は《シルヘト洞窟》で狩りの合間の休憩中。この洞窟はところどころ海水が流れてて、外の海に繋がってるから、索敵には注意が必要だけどね。
「う~ん。なかなか出会わんな? 純竜」
「そうだね。そろそろ出てきてほしいよ」
『俺的にも以前の戦闘で苦手意識が出る前にさっさと出会って戦いたいもんだ』
「素材的にもね」
『一体に出会った程度では全然足りないと思うがな』
ああ、確かに。このデンドロはリアルだからそれぞれにドロップ品が配られるような仕様じゃないしね。
「ここで全身鎧を作ってもらえば、ドライフ皇国に行けるんだがな」
『話し合ったからいいかもしれないが、本当にいいのか? アルター王国だってまだ行ってないところが多いが?』
「気にするな。ほかの国も興味があるし隣国だ。ここにはいつでも戻ってくればいいんだしな」
「そうだよ。僕もいろんな国を見たいし」
そう。今回の素材集めでゲイル兄貴の全身鎧を作ってもらえば、僕たちはドライフ皇国へと行く予定なんだ。理由としてはゲイル兄貴に強い銃を購入してもらうのもあるけどね。
まぁ、その前にギデオンや王都で旅の準備とあと一つの上級職に就いてからだけど。ドライフだと騎士系統には就けないからゲイル兄貴が困ることになるし。
なんて、ことを話していたら僕の《索敵》に反応があった。
「話し合いはここまで。次のお客さんだよ」
『俺の方にも反応があった。反応がでかいしこりゃ大物か?』
「お? ついに純竜か」
僕たちが休憩している場所は結構な広さがあり、半分は海水ですぐ目の前に大海原が見える。ここなら相手が海の中に居ても倒せるかな?
「グル~」
「グリフも警戒してるね。結構強いかも」
上級になったグリフは戦闘能力がかなり上がってめったに相手を警戒しなくなった。そのグリフが警戒してるってことは、同格か差があまりないかのどちらかだと思う。
やがて海中に大きな影が見えて、それが徐々に大きくなりながら僕たちに近づき、次の瞬間に水面が大きく立ち昇った!
「GREE!」
現れたのは、濃い蒼色の鱗をしている太く長い竜だった。対象を確認したので頭の上に名称が表示される。【ハイ・ウォーター・ドラゴン】と。
◇ 【
目の前に現れた【ハイ・ウォーター・ドラゴン】に俺たちは戦闘態勢をとっくに済ませて、いつでも動けるように構えている。
確か、ウォーター・ドラゴンって海竜種では一番数が多いドラゴンだったよな? 最も目の前の奴はその中でも強い個体のようだがな。
「やっと純竜に出会えたが、いきなり上位種かよ」
『それでもハイエンドじゃないだけましだな』
「油断はできないけどね」
「グル~」
そうだな。目の前のドラゴンはハイエンドって付いてないが、そのワンランク下の【ハイ】って枕は付いているし十分に強い個体だろう。
などと考えていると目の前のドラゴンに先手を取られた。
「GREE!」
口から勢いよく水を放出された。多分ブレスなんだろうが、俺たちには効かないぞ? 俺は余裕で回避し、ウッドもグリフに乗っているので軽々回避。AGIが最も低いゲイルも・・・
『《シールドガード》! 《ガード・ウォール》!』
盾で受け止めた攻撃のダメージを軽減するスキルと防御力をプラスするスキルを使用してドラゴンの攻撃を耐えた。
現在のゲイルのメインジョブは【銃騎士】なので攻撃用アクティブスキルの大半は使用不能だが、防御スキルなら問題なく使用できる。
ブレスが魔法攻撃だったら耐えられなかったかもな? その場合は俺の【ガルドラボーグ】で対処するだけだが。
「GRE!?」
さすがに相手は真正面から受け止められるとは予想外だったらしく、かなり驚いている様子。でも、戦闘中にそんな余裕があるとはな?
「灼熱の槍よ! 穿て! 《ヒートランス》!」
「グルー!」
俺は相手の隙に《詠唱》スキルで威力を底上げした《ヒートランス》を相手に放ち、それに続いてグリフも《ウィンドブレス》を放った。
まぁ、相手は水のドラゴンだから俺の火属性魔法はあんまり効かないが、レベル上げにはなるだろう。
「《パラライズアロー》! 《ポイズンアロー》!」
ウッドも【弓狩人】のアクティブスキルを使用して攻撃している。【狩人】の攻撃スキルは状態異常を付与するのがほとんどな援護系だからな。
とは言え、さすがに純竜級だとそう簡単には状態異常にならずにダメージだけである。それでもウッドは続けている。なれば御の字だしレベル上げにはちょうどいいだろうしな。
そんな純竜はスピードの速い俺や飛んでいるウッド&グリフには攻撃せずに、真正面で盾と銃を構えている、ゲイルに攻撃を集中しているが・・・
「GREEE!」
『《ガード・ウォール》! 《フレア・ショット》! 銃の攻撃はアクティブスキルを使用しても嫌がらせにしかならんか!』
ENDを上げるアクティブスキルを使用しながら、【銃騎士】で覚えたアクティブスキルを使っているが、効果はないようだ。【銃騎士】で覚えるアクティブスキルは、属性付与された銃弾を放つのがほとんどだしな。
現在のゲイルの【銃騎士】のレベルでは純竜に効果的なスキルはまだ覚えていないし、たとえ覚えていたとしても銃の能力的にもダメージを与えられるかは微妙だろうな。
やはり、ゲイルの装備のためにも早めにドライフには行くべきだな。
「GREEE!」
ウォーター・ドラゴンは自身の攻撃が通用しないゲイルに攻撃を続けている。いや、それは悪手だろう? 攻撃が通用しない時点で逃げるなり戦い方を変えればいいのにな。
ゲイルは相手がムキになったことを利用して徐々に後退していった。その行動を押していると判断したのかウォーター・ドラゴンは徐々に前進していく。自身の逃げ場がなくなるとは知らずに。
「GRE!?」
気付いた時にはもう遅い。ドラゴンは自身の体がはっきりと見えるくらいの浅瀬へと入りこんでいた。慌てたドラゴンは逃げようとするのだが・・・
「させないよ」
「グル!」
後ろには空を飛んで回り込んでいたウッドとグリフがいる。さすがにあの二人を躱して逃げるのは致命的な隙を晒す。ドラゴンには俺たちを倒す以外に生き残る術はなくなっていた。
そんなドラゴンを倒すのにさして時間はかからなかった・・・
◇ 【
出会った純竜【ハイ・ウォーター・ドラゴン】を倒した俺たちはそのドロップ品を持ってブルバスさんの店へとやってきた。
本来なら一匹倒したくらいでは素材は足りのないのだが。このデンドロは某狩りゲーのように一人一人に素材がはぎ取れるわけでもないし、各自にドロップ品が配られる仕様でもない。
倒した場合にその地点にドロップ品が転がるだけだ。ただ、今回はそのドロップ品でかなり予想外のことが起こったのだ。それは・・・
「おい! こりゃあどういうわけだ!? モンスターが丸々残っているじゃねえか!?」
現在、ブルバスさんの店兼自宅の庭に【ハイ・ウォーター・ドラゴン】のドロップ品である【完全遺骸】という名の素材アイテムをアイテムボックスから出したところだ。
「やっぱかなりのレアケースみたいだな?」
「僕たちも倒した後びっくりしましたからね」
「あんなのがドロップするとは思わなかったからな・・・」
順番にクロス兄貴、ウッド、俺の言葉だ。実際倒した後にドロップしたのが倒したと思ったモンスターまんまのはく製のようなものだったからあわてたぞ。もう一匹来たのかと思ったわ。
だが、よく見ると動かねえし生きてるのか怪しかったから、覚えたての《鑑定眼》で見てみたら何とか【完全遺骸】っていう素材アイテムだということだけわかった。
いや~各国を旅するために容量の大きなアイテムボックスを買ってなかったら持ってこれなかったぜ。とりあえず、いまだに【完全遺骸】の前で驚いて固まっているブルバスさんに事情を説明。
「【完全遺骸】・・・噂は本当だったのか」
「「「噂?」」」
「生産職の間で語り継がれておる話だ。モンスターの素材が丸々手に入る【完全遺骸】という名の素材アイテムがあると。もっとも、<UBM>を倒した者の中にそれを手にした者は確認されてあるが、それ以外のモンスターで手に入ったという話は聞いたことがない。手に入らないのではないかと言われていたんだが事実だったか・・・」
ちょっとまて。確かデンドロって2000年以上の歴史があるよな? この際理屈は置いておいて、そんな長い歴史があるデンドロで眉唾だと思われていた素材アイテムだと?
「・・・ひょっとして、これってこのままでもとんでもない価値がありますか?」
「あるじゃろうな? 中にはとんでもない値段で買い取ろうという者が居ても不思議ではない。素材的にもこれはかなりのものじゃ。個人はおろか、国が買取に動くぞ?」
それはまた・・・とんでもないものを手に入れてしまったわけか。
「どうする? これを使えばかなりの全身鎧が作れるが、はっきり言って金に換えればお前さんらの装備をすべて買い替えてもおつりが出るぞ?」
「どうする?」
「いや、お前の全身鎧作ってもらえばいいじゃん?」
「だよね?」
・・・悩みもしなかったよこの二人。
「いや・・・いいのか?」
「何を悩む必要がある?」
「そうだよ。ゲイル兄貴は壁役で僕たちのパーティでは防御の要だよ? いい防具が手に入るなら逃す手はないよ」
むう・・・確かにこの機会を逃せば二度と手に入らない類のものになるだろうし・・・ここは二人の言葉に甘えるか。
「二人ともありがとう。ブルバスさんこれで全身鎧を作ってください」
「よし!! 任せておけ! こんな素材を任せてくれるのなら全身全霊を持って期待に応えて見せる!!」
そう言って嬉しそうにやる気をみなぎらせるブルバスさん。彼にとってもこの素材を扱いたかったようだ。
でもまさか、このことが外に漏れて強盗や盗賊の<マスター>が【完全遺骸】を狙いに来るとは思わなかった・・・犯罪者のティアンが来なかったのは不幸中の幸いだけど。
結構間が空きましたが、なんとか更新できました。年内最後になるかはまだわかりません。もう一話くらいは更新したいと考えていますが、リアルがどうなるかがわかんないので・・・できないかもしれません