◇ 【
かなりのレアアイテムを手に入れたことでそれを手に入れようと強盗や盗賊の<マスター>たちがやってきたが、全員をぶちのめして何人かは”監獄”に送った。
まぁ、欲に目がくらんで大して腕も作戦もなくやってきたような手合いだったから勝てたようなものだが。これが<超級>の【犯罪王】ゼクス・ヴュルフェルや野盗クランの《ゴブリン・ストリート》だったらさすがにやばかっただろう。
あとで知ったことだが、【犯罪王】は現在王国にはおらず他国で犯罪をしており、《ゴブリン・ストリート》もメンバーのセーブポイント登録のため他国へと遠征中だったとか。運がよかった。
そんな状況でもブルバスさんは防具作りに集中しており、素材を渡してデンドロ内時間で五日がたったころに・・・・
「完成だ! これが今の俺の最高傑作だ!」
「「「おお~」」」
ブルバスさんが作った全身鎧は深い青色をしており、どこか品のある美しい鎧だった。一見すると美術品のようだが、各部位に動きやすくするための工夫や防御力アップのために厚くしており、実戦的な物だとわかる。詳しい内容を見てみると・・・
【ブルー・アーク・アーマー】
【高位鎧職人】であるブルバスが【ハイ・ウォーター・ドラゴン】の
【完全遺骸】を使って作った全身鎧。
超級職に就いていない職人謹製の全身鎧としては最高峰。
装備補正
SP+20%
防御力+880
海属性耐性+30%
装備スキル
《魔法攻撃軽減》
《物理ダメージ減少》
《破損耐性》
※装備制限 Lv480以上
かなりの高性能だ。SPが上がるのはありがたいし、防御力は現時点の【ボルックス】よりも高い。装備スキルもかなりいいのだが・・・
「今すぐは装備できないな・・・」
「まぁ、こんだけ性能が高けりゃな」
「残念だね」
まぁ、贅沢な悩みだがな。これを買おうと思ったら多分一千万リル以上すると思うしな。
「ああ~すまんな。お主の今のレベルを考えておらんかったわ」
「いえ、レベルなら上げれば問題ないので。作ってもらってありがとうございます。約束のお金です」
「そう言ってもらえるとありがたい」
俺は材料費はこちらの持ち込みなので手間賃や作業費として100万リルを払った。
「まいどあり」
「今更ですが、その値段でいいんですか?」
「無論だ。材料を持ち込めばこんなもんだ。むしろこれでも高い方だぞ? わし的にもよい経験だったしな」
そう言ってブルバスさんは満足そうに【ブルー・アーク・アーマー】・・・長いから【BAA】でいいか・・・を見ている。
「鎧はいつか壊れるだろうが、お前さんの助けになるなら作り手として本望だ。使うときは遠慮せずに思いっきり使ってやってくれ」
「はい」
その後は【BAA】をアイテムボックスに収納した。この日のために購入した《窃盗》スキル対策が施されたものだ。お値段の関係上、あまり高い物は買えなかったが・・・
ブルバスさんとも改めてあいさつを交わして店を出た。その後は適当な飲食店に入り今後の活動に関して話し合いだ。
◇ 【
適当な飲食店に入った僕たちは軽食としてサンドイッチと紅茶を注文して、今後の予定を話し合う。
「さて、ゲイルの全身鎧も完成したしドライフ皇国へ行くための最終準備の確認だ」
「まずは、ギデオンで俺のリオンに牽いてもらう馬車を買うんだよな?」
「それから僕たちの最後の上級職にも転職しなきゃね?」
「そうだな。最低でも俺はここで就いておかないとな」
ゲイル兄貴が就こうとしている【
「その後は王都の《墓標迷宮》で金稼ぎだ。始めていく国だと思うように金を稼げないだろうしな」
「手に入れたアイテムは王国で売るんだよね?」
「他国の方が高く買い取ってくれるだろうが、王国はそういうことに厳しいからな」
そもそも《墓標迷宮》が《神造ダンジョン》では一番出入りが簡単らしいからね。王都にあるうえに入るのに必要なのは許可証とアルター王国に属していることだけだし。
そうであれば、王国が《墓標迷宮》産のアイテムを自国で売ってほしいって考えるのは当たり前なわけで・・・もっとも、カルディナに裏のルートで横流しされている物が倍以上の値段で取引されているらしいけど。
「この町でやり残したことはないか?」
「あ~すまん。アーシアから食事に誘われてるんだ。しばらくはこの町に居たい」
「「へ~」」
「何か言いたげだな?」
あのアーシアっていう美人さん、やっぱゲイル兄貴に惚れたのかな? 相手はゲームのNPCだけどゲイル兄貴にも春が来たのかな?
「もうお付き合いしてるのか?」
「付き合いってなんだよ? 危ないところを助けてくれたお礼だって本人が言ってたぞ? 俺は気にしてないって伝えたが、アーシアがそれだと私の気が済まないって言われたからな~」
「「・・・・はぁ~」」
「なんだそのため息は?」
まぁ、ゲイル兄貴がこうなのはしょうがないんだけどね? 昔のとある事情が原因で女性に関しての機微がわからないから。アーシアさんを義姉さんっていうのは無理かな?
そんなわけでしばらくはこの町に滞在したわけだが、その間にアーシアさんはゲイル兄貴にアプローチをしているようだけど、ゲイル兄貴は全くその気がない。おかけでアーシアさんのパーティメンバーの皆がクロス兄貴と僕に相談に来たりもしたけど、こればかりはどうしようもないんだよね・・・
ゲイル兄貴がそんなことをしている間に僕はグランとスオウのレベル上げを行っている。しばらく彼らに戦闘はさせていなかったからね。戦闘以外では出して構ってたんだけど、そろそろレベル上げをしないと僕との差が開いてしまうし。
その甲斐あって二人はめでたく進化して、グランは【グランヴォルフ】から【
グランはもともと地属性魔法の拘束系が得意だったけど、進化したことで地属性魔法の攻撃やゴーレム創造もできるようになった。体毛も薄茶色から赤茶色になり毛並みもモフモフ感が増した。
スオウは素のステータスが高くなり、気配を消してからの奇襲能力が上昇。さらに索敵もできるようになりダンジョンみたいな閉鎖空間はともかく、地上ではとても頼りになる。体毛は少し濃くなった態度で二人とも大きさも変わらない。
やがて用事も済ませたということでギデオンへと出発することになる。
◇ 【
ギデオンへと出発する前日に俺たちは世話になったザイマンたちと酒場で飲んでいる。こうなった理由は知り合った人たちに別れの挨拶をしていて、ザイマンたちにも伝えたら最後に飲まないかと誘われたのだ。
まぁ、別れを盛大に祝って酒を飲む理由にしたいのだろうが、そっちはついでで本当はアーシアの恋路の協力だろう。現にアーシアはゲイルの隣に座り世話を焼いている。
あちらは放っておこう。下手にちょっかいを出すと馬に蹴られかねない。俺はザイマンたち男衆と酒を飲みつまみを食べている。ウッドはリリと配下のモンスターたちに食べられるものを与えている。この店はテイムしたモンスターも出入りOKらしい。
「か~うめぇ! そういえばクロスたちは何を目的にしてるんだ?」
「あ、それは気になるな?」
「ですね。というより<マスター>全員の目的は気になりますね」
大きな樽ジョッキに入ったお酒を一気飲みしたハンスが唐突に口にした言葉にザイマンとネイソンも興味をもったらしいな。
「俺たちの目的は単純に兄弟で楽しく過ごせればいいからな? 今のところは各国を旅するのが楽しそうだからそれを目的にしてるよ」
「ほかの<マスター>も似たようなものでしょうか?」
「それは違うな。<マスター>がどういう理由で
最近は<マスター>を
世界派の<マスター>はこの世界で生きているティアンを人間扱いしてるし、ティアンには受け入れやすいだろう。例外はいるだろうが。一方の遊戯派はゲームとしてこの世界をエンジョイしている。遊戯派の中にはゲームだからとティアン相手に犯罪をしている輩も多いからこちらの連中はティアンには受け入れられないだろうな。
「結局は<マスター>だからと言って全員が同じだとは思わずに個人で判断したほうがいいぜ?」
「ふ~む・・・結局は俺たちと変わらんってことか」
「そうだな。俺たちティアンだって犯罪者は普通にいるしな」
「私たちのように自衛できるティアンはいいでしょうが、一般のティアンはそうもいかないでしょうね」
確かにな。<マスター>とティアンでは<エンブリオ>を持つ以外でも違いがありすぎるからな。ティアンから見たら三日間は戻ってこれないとはいえ死んでも生き返る不死。さらには就けるジョブビルドの差も無視はできんだろう。
「そこは今後の<マスター>との付き合い次第だろう? クロスたちみたいな<マスター>がいるならそこまで深く考える必要もないだろうよ」
「それに、ティアンだって実力があるのに犯罪をしている輩もいるんだ。こっちが文句言うのはお門違いだろう」
「それもそうですね・・・」
まだまだ、ティアンにも実力者は多いだろうし戦闘技術においてはティアンの方が上だからな。<マスター>がでかい顔できるのはよほど<エンブリオ>能力とジョブとのシナジーがないと難しいしな。
「湿っぽい話は終わりだ! とにかく飲もう!」
「「話のきっかけはお前だろうに」」
ハンスの言葉にザイマンとネルソンは突っ込んだが、深くは追求せずに俺たちは大いに騒ぎ楽しんだ。
翌日。俺たちはギデオンへと出発した。ザイマンたちも見送りに来てくれて別れを惜しんだ。ちなみにアーシアとゲイルは進展しなかったらしく、アーシアが真っ赤になりゲイルをポカポカ叩いていた。光景的には微笑ましいがね。
「ゲイルよ~昨晩は何かあったのか?」
「アーシアが手料理をご馳走したいからと家に誘われたんだよ」
「「え!?」」
あらやだ、だいたん・・・
「だが、さすがに男が女性の家にお邪魔するのはどうかと思ったので断った。足下がおぼつかなく家に送りはしたが、それだけだ」
「「てい!」」
その言葉を聞いて俺はゲイルの頭にチョップを入れ、ウッドは鳩尾をグーパンした。ゲイルのENDが高すぎてしれっとしていたが。
「何をする?」
「お前はもうちょい女性の行動の意味を知れ!」
ゲイルの言葉に俺はそう答えた。ウッドもうなずいている。仕方がないのはわかるが、もうちょい何とかならんかね~
お金に目がくらんで突発的に犯罪を犯す輩はろくなことになりませんってお話。
なお、【犯罪王】と《ゴブリン・ストリート》については書きましたが、《凶城》についてはまだそんなに有名じゃない設定です。
オーナーである人が理論派なので現在はいろいろ情報を集めてる段階。
ついでにゲイルの過去というか兄弟の過去については<エンブリオ>解説とともにいつか絶対書きます。