◇ 【
兄弟の<エンブリオ>を把握してから、俺達は<イースター平原>でLv上げをするためにモンスターを探している最中だ。しかし、改めてこの<Infinite Dendrogram>・・・長いからデンドロいいか。デンドロのリアルさには驚かされる。
風が肌に当たる感覚や草と土の匂い。本当にリアルとの違いなんてないと断言できるほどだ。などと考えていると前方からモンスターが迫ってきた。二足歩行の緑色の鬼みたいな奴らだ。姿を確認した直後に頭上に【リトルゴブリン】と出た。
「一匹だけだな」
「ウッド。弓の練習したらどうだ?」
「そうだね。やってみるよ」
「クル!」
ウッドの<エンブリオ>であるヒッポグリフのグリフが頑張れ!っと言うように鳴き声を上げた。その声に答えるためにウッドは弓を構え、矢を番えって弦を引き矢を放った。矢は中々のスピードで【リトルゴブリン】に向かってゆき、右肩にヒット。続けて放った矢も当たり3本目の矢が頭に当たるとそのまま倒れて光の粒子になった
「当たるもんだな~VRMMOの漫画や小説だと弓は不遇扱いだが」
「ある程度DEXがあれば簡単な弓なら扱えるらしいからね」
「まぁ、なんにせよ十分戦えそうだな」
実はちょっとだけ心配だったんだよ。弓でちゃんと戦えるのか。しかし、その心配は杞憂だった。心配の種が無くなったしLv上げを頑張るか!
その後。俺達は<イースター平原>を歩きながら現れる【リトルゴブリン】や【パシラビット】と戦いLvは全員が4まで上がった。
あとは俺以外のゲイルとウッドの<エンブリオ>も活躍して、能力の高さを改めて確認できた。一応俺の<エンブリオ>も紋章から出したんだが、俺の周囲に浮いているだけで何もしてない。どうもこの【ガルドラボーク】は特殊装備品と言う形らしく、ステータス画面ではその装備欄が埋まっていた。
まずはゲイルの【ポルックス】だが、やはり防具の性能が高いのでここで出てくるモンスター程度ではダメージを与えられない。そのおかげでゲイルは攻撃に集中できモンスターを蹂躙している。
さらに使ったことで【ポルックス】の性能も把握できた言っていた。まず機械式甲冑タイプでフルフェイスのヘルムも被っているが、視界は邪魔されないらしい。むしろロボットゲーのコックピットのように自身のステータスであるHP、MP、SPが表示されて敵の攻撃もアラームとどこから攻撃されるのか知らせてくれるらしい。
ついでにガードナーとしても確かめるために戦わせてみた。それでわかった事は、ガードナーとして戦わせるためには一度紋章に戻して出す必要があるようだ。その逆で防具として使用したいならやはり一度紋章に戻す必要がある。
ガードナー運用している最中に防具として装着は出来ず、その逆もできない。まぁ、ある意味当然のデメリットと言えるだろう。ガードナーとしての戦闘は正直イマイチだった。防具としての性能は高いのでダメージは無いのだが、攻撃手段が格闘戦しかないのとステータスの低さが原因だろうな。
ガードナー運用するためにはステータスと攻撃手段の問題を解決しないとダメだな。あと、フルヘルムのせいだろうが、声が反響して聞こえるな?
次はウッドの【ヒッポグリフ】のグリフだ。グリフの場合は騎乗するための装備である鞍、鐙、手綱はなかったのでガードナーとして戦いに参加した。
結論から言うとかなり強い。飛んでからの急降下攻撃でここのモンスターは一撃で瀕死。さらには攻撃スキルである<ウィンドブレス>が強力だ。威力は高くないが不可視の攻撃で相手を吹き飛ばしたり、追い打ちや先制攻撃に役立っている。
とは言え、今のグリフでは3回使用するとしばらくは使えなくなるがね。クールタイムとかは短い様だが、MP消費が多い様だな。
<エンブリオ>に関してはこんなところだな。次は俺達のジョブに関してだ。Lv3になった時に全員がスキルを一つだけ覚えた。ゲイルは《野獣斬り》 モンスター種族:魔獣に対してダメージ増の種族特攻な攻撃スキルだ。
【騎士】の攻撃スキルはこういった種族特攻な攻撃スキルであり、上級職になるとそれから派生して各上級職のスタイルに合わせた攻撃スキルを覚えるらしい。
ウッドは《ウィングアロー》 飛距離と威力が高い攻撃スキルだと言う。
俺は《マナ・ブレード》 このスキルを簡単に言えばMP消費の遠距離攻撃スキルだ。MPを消費して剣を振るうと青い三日月状の物がなかなかの速さで進み、敵にダメージを与える。この攻撃はMP消費なので魔法攻撃扱いなんだとさ。
戦闘に関しては順調なのだが、正直弱い者いじめだな。敵は多くても1匹しか現れない。そりゃあ戦闘をしていると集まってくることもあるが、それでもこちらとの戦闘力の差は歴然だ。
「なぁ、提案なんだが」
「どうかした?クロス兄貴」
「他の狩場に行かないか?ここだとどうも苦戦なんてしそうにないし」
『そうだな・・・あまり簡単だと<エンブリオ>の次の進化にも影響するか・・・』
「あ~それは問題だね」
「そういうことだ。異論はないな」
二人は頷き、俺達は王都へと戻ることに。<エンブリオ>は羽化した後も<マスター>の経験を蓄積し次の進化の形を決める。楽な戦いばかりだといい進化はしないだろう。と言うわけで今までのモンスターのドロップ品を売ってから次の狩場に行こう!
◇ 【
クロス兄貴の提案に従い、俺達は王都へ帰還している最中だ。もちろんその道中にもモンスターは現れるので戦っている。しかし、俺達は王都への帰還を優先しているので、モンスターが現れても周りに居る他の<マスター>によって倒される。
俺たち以外にもここでLv上げを行っている<マスター>は多い。装備などはチュートリアルのカタログで目にした初心者装備だから、始めたばかりだろう。
ただ、<マスター>だからなかなか個性豊かな<エンブリオ>らしき物を使い戦っている。
ある者は双剣。モンスターと戦っていると不意打ちを仕掛けたモンスターの攻撃を回避すると陽炎の様な残影を残して、その残影はモンスターを切り捨てると消えた。
ある者は結界。<マスター>が緑色の結界を構築するとその結界内では土の塊が柱のように盛り上がりモンスターを攻撃している。
ある者はバギー。四輪駆動の小型バギーがモンスターの周りを走り回り、頭上に設置されている銃が自動でモンスターに攻撃していた。
あれらが全て<エンブリオ>なのは明白だろう。双剣はアームズ。結界はテリトリー。バギーはチャリオッツだな。
「いろいろな<エンブリオ>があるよな~」
「本当に千差万別なんですね~」
『眺めているだけでも面白いな』
一人一人に全く能力が異なるオンリーワンの物があるってのは本当にすごい。しかも、これからより強力になるのだから楽しみでしょうがない。
などと話していると、前方から三人の<マスター>らしき人たちがやってきた。左手に紋章があるから間違いないだろう。装備は初心者装備よりも一目で違いが分る物だったが、<イースター平原>の先へ行く人たちかな?
俺達がその人たちとすれ違いそのまま過ぎ去ろうとした時、俺の【ポルックス】が真後ろからの攻撃を知らせるアラームが鳴り響いた。
『!!』
俺はそのアラームを信じて後ろを振り返り、盾を構えた。盾に二度の衝撃と甲高い音を響かせて奇襲を仕掛けてきた相手は一度後退して離れた。攻撃してきた相手はモンスターではなく・・・・
「ちっ!気付かれたか・・・<エンブリオ>に危機察知能力があるのか?」
先ほどすれ違った<マスター>の一人だった。
◇ 【
いきなり後ろから甲高い音・・・まるで金属同士がぶつかった様な音が響いたのを僕とクロス兄貴は何事かと思い振り返ると、先ほどすれ違った<マスター>の一人が大きな爪を両腕に装備して盾を構えているゲイル兄貴に攻撃していた。
しかもゲイル兄貴のHPが減っている。兄貴の<エンブリオ>は防具としての能力が高いはずなのに。それにゲイル兄貴のジョブ【騎士】はENDのステータスも高めだ。それなのに・・・
「ちっ!気付かれたか・・・<エンブリオ>に危機察知能力があるのか?」
攻撃してきた<マスター>は一度離れてそんなことを口にした。
「おいおい、お前の<エンブリオ>は奇襲時にはダメージが増えるんだろう?気付かれちゃ意味ないだろう」
「ははは、笑える・・・」
「やかましいぞ!気付かれちまったものはしょうがねえだろうが!正面から殺せばいいんだよ!」
そう言って僕たちの目の前にいる<マスター>たちは、戦闘準備を始めた。最初にゲイル兄貴に攻撃した<マスター>はいつでも飛び掛かれるように構え、残りの<マスター>は紋章から<エンブリオ>を出して構える。大斧と杖だ。
「お前らPKだな?」
「それ以外の何に見えるんだよ?」
クロス兄貴が俺の前に出て剣を構えながら、断言するように言葉を放った。その言葉に答えたのは爪を装備した男だ。
「初心者を狙ったPK。ずいぶんかっこ悪いことしてるんだな?」
「何とでも言え。モンスターを倒すより<マスター>やNPCを狙った方がLvアップしやすいんだよ」
どうやら彼らは<マスター>だけでなくNPC・・・ティアンも襲った事がある強盗プレイヤーの様だ。
「そうかい。でもこっちだってタダでは負けないぞ?」
「初心者が何言ってやがる。それに・・・もうお前らの負けだ」
彼らがそう言うと前衛である大斧と爪を装備した<マスター>二人が後退して、杖を持つ<マスター>が前面に出て持っていた杖を頭上に掲げて・・・・
「燃やし尽くせ、業火の嵐!《ファイヤストーム》!」
その瞬間、俺達に向かって炎が放たれた・・・