三兄弟の系統樹   作:出来立て饅頭

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明けましたおめでとう!


第四十二話 《墓標迷宮》再び

  ◇  【紅蓮術師(パイロマンサー)】クロス・アクアバレー

 

 

俺たちは予定通り王都アルテアに行き、回復アイテムを補充して《墓標迷宮》に挑んだ。最初は一階層から五階層を繰り返し、今のメインジョブのレベル上げとスキルレベルを上げて六階層に行くための特殊ジェムである【エレベータージェム】をストックする意味もある。

 

そのために五階層で出てくるボスを何度か倒したのはいいのだが、二回ほど【スカルレス・セブンハンド・カットラス】以外のボスが出た時は焦ったぜ。どうやら、ボスは用意されたボスモンスターの中からランダムで出てくるようだ。

 

出てきたボスは【骨格亜竜(スケルトンデミドラゴン)】に【スケルトン・スネークドラゴン】と言う骨でできた地竜に骨の蛇のドラゴンだった。

 

【骨格亜竜】の方はSTRとENDが高めの亜竜級のモンスターだったので俺たちにとっては戦いやすかった。苦戦したのは【スケルトン・スネークドラゴン】の方だ。

 

こいつはAGIが高めでしかも骨格にやすりのような突起物がいくつもあり、自身のスピードで相手に体当たりして削るのだ。正直うざかった。

 

最終的にはゲイルとグランが創ったゴーレムで受け止めて動きを封じてもらい、俺の魔法とグリフの物理攻撃で撃破した。

 

予想外のボスに苦戦したが、ドロップとボス撃破の報酬で収支的にはプラスだったのが救いか。【エレベータージェム】も6個はストックしたからそろそろ六階層に挑むことにした。そして現在、俺たちは準備を終えて《墓標迷宮》の六階層に来ている。

 

『ここからは徘徊しているモンスターでもドロップは価値がある物を落とすんだったよな?』

「むしろ《墓標迷宮》は六階層からが本番だって話だよ」

「ここから罠も確認されてるからな。慎重に進むぞ」

 

ここ《墓標迷宮》の六階層から十階層で出現するモンスターは植物系のエレメンタルだ。【トレント】やリアルにある食虫植物のようなモンスターがうようよいるらしい。

 

だが、一階層から五階層までのアンデットと違い個々のモンスターたちのドロップ品は需要がある。トレント系が落とす枝や木材は【木工職人】や【大工】がいい値段で買い取ってくれる。

 

食虫植物にしても毒草や薬草を落とすので【薬師】が買い取ってくれる。まぁ、需要の高いものをドロップするから罠などもあるのだろうがな。

 

迷宮自体は上の階層と大して変わらない。二十五階層以降は森だったり、雪原地帯に火山地帯など探索するだけでもある程度の装備が必要になってくるらしいが。

 

ともかく迷宮を進みだした俺たちだが、早速前方からモンスターが現れた。【リトルトレント】が三体に【ウィザードトレント】が一体か。

 

相手は俺たちに気付くと【リトルトレント】は俺たちに突貫し、【ウィザードトレント】は氷属性魔法のつららを放ってきた。

 

「久しぶりに使うな。《マジック・アブソープション》展開」

 

だが、魔法攻撃なら俺の【ガルドラボーグ】のカモだ。久しぶりに使うスキルを展開して、相手のつららが結界内に入ると溶けて消える。

 

「とりあえずこのまま結界を維持するぞ。全員物理攻撃で戦えよ」

『「了解」』

 

その後の戦闘ははっきり言って俺たちの蹂躙劇だ。【リトルトレント】の攻撃は枝や根っこを伸ばして攻撃するだけだったので俺は軽く回避して、ゲイルは正面から受け止めた。ウッドは近づかれる前に仕留めた。

 

そいつらを撃破した後は、攻撃手段が魔法しかないらしい【ウィザードトレント】をリオンとグランにスオウが物理攻撃で仕留めた。彼らも探索に参加してレベルを上げようと考えているのだ。

 

ドロップ品も回収して、俺たちは探索を再開した

 

 

 

  ◇  【剛弓士(ストロング・アーチャー)】ウッド・アクアバレー

 

 

《墓標迷宮》の六階層を探索し始めて出てくるモンスターと戦っているけど、五階層のアンデットとは違い厄介なモンスターが多い。【トレント】系は問題ないんだけど、食虫植物に似たモンスターが搦手を使ってくるんだよね。

 

ウツボカズラに似たモンスターの【アシッド・プラント】は溶解液を吐き出してこちらの武具の耐久値を減らすし、ラフレシアに似た【フェロモン・ビッグフラワー】は動かないけど、HPとENDが高くてHPが減るとどんどんモンスターが寄ってくる。

 

ハエトリソウに似た【リーフ・ファング】は物理系だったけど、本体が根っこの部分で根っこを倒さない限り体が再生し続けるってやつだった。それに気づくまでに何度も再生した奴と戦っちゃったよ。

 

まぁ、対処法さえわかれば僕たちにとってはおいしい敵なんだけどね? ほとんどの敵はクロス兄貴の火属性魔法で対処できるし。

 

現在は、行き止まりだった部屋で小休止をしている最中だ。

 

「上層とは違う厄介さがあるな植物モンスター」

『モンスター種族としてはエレメンタルらしいけどな』

「罠があるせいで進めない場所もあったしね」

 

僕たちは罠自体を察知するスキルはないけど、《危険察知》が大きく反応した場所は回避している。反応が弱めな場所では罠を解除しているよ?

 

と言っても罠を解除するスキルなんてないから、ゲイル兄貴が罠をわざと発動させて物理で耐える漢解除をしているだけだけど。

 

ゲイル兄貴はENDが今の段階で四千を超えているから、ただ槍が飛び出す罠や大きな岩が転がってくる罠なんかは問題なし。槍はゲイル兄貴に当たったら折れ曲がるし、岩も正面から受け止めるかアクティブスキルで粉砕できるし。

 

厄介なのは毒ガスなどの異常状態を発生させる罠だ。それに罹ったゲイル兄貴を回復させるために結構な数の回復アイテムを消費したよ。

 

「アイテムは消費したが、ドロップ品のおかげで収入はプラスだな」

『ダンジョンだから仕方がないが、ファンタジーしてるって実感するよな』

「だね」

 

ダンジョンで苦労してこうやってダンジョン内で休憩するのは現実ではあり得ないしね。

 

「とりあえず今日は時間がかかってもいいから十階層のボスまで行くぞ」

『初めてだからランダムボスも出現率が高い【バイオレンス・プラント】がいいよな』

「それは行ってみないとわかんないよ? ゲイル兄貴」

 

【バイオレンス・プラント】はネットで情報を調べたところ、ツタが絡まり集合した群体型のモンスターらしく、ツタ一つ一つがモンスターらしい。

 

再生力が高く、生半可な攻撃ではすぐに回復されてしまいHPが少なくなると傷口から花が咲き、毒ガスを噴出してくるとか。

 

情報が出そろっていたから、最初からこちらは全力全開で攻撃すれば問題ないと考えている。とにかくは初めてだしまずは戦ってみないとね?

 

休憩を終え探索を再開し順調に進んでいる。現在は八階層を進んでいる最中だ。そんな道中でまたモンスターに遭遇した。

 

「今度は【ウッド・ゴーレム】か・・・?」

『なんか・・・ネットで書かれた情報とは少し違いがあるな?』

「そうだね・・・少なくともあんなにぼこぼこしてないはずだよね?」

 

【ウッド・ゴーレム】は六階層から十階層で出現するレアモンスターだ。外見的には大木が大きな人型を形成していて、能力は物理ステータスが高く再生能力持ち。遠距離攻撃として枝を生やして撃ち出してくる厄介な敵だ。

 

ただ、僕たちの目の前に現れた【ウッド・ゴーレム】は外見に大きな瘤ようなものが目立っている。正面だけでも四つはあるね?

 

「油断するなよ? なんか嫌な予感がするしな」

「そうだね」

『了解』

 

相手を視認した時点でゲイル兄貴は僕たちより前に出て盾を構えている。【ウッド・ゴーレム】も僕らに気付き、一瞬でゲイル兄貴の眼前に迫り、腕を振り上げていた。

 

『「何!?」』

 

AGIが低いゲイル兄貴と僕は反応ができなかった。僕たち側で反応ができたのは・・・

 

「せい!」

「グルー!」

 

クロス兄貴とグリフの二人だ。クロス兄貴は右側に回り込んで、【ディセンブル】のスキルで突きに特化した形状の刃で【ウッド・ゴーレム】の下半身を狙う。

 

グリフはダンジョンの閉鎖空間でも器用に飛んで、空中から相手の頭に右足を叩き込もうとしていた。結果は・・・

 

ギン!

「硬!?」

 

クロス兄貴の攻撃は相手の防御力に負けた。現在の兄貴のメインジョブは【紅蓮術師】 いくら【ディセンブル】が破格の性能でも今の兄貴は剣関係の攻撃力や性能を上げる類のスキルは使用不能。地力で負けた形だ。

 

ガン!

「グル~」

 

グリフの攻撃は振り上げていた腕でガードされていた。グリフは深追いはせずにいったん離れて、左側の地面に着地。【ウッド・ゴーレム】はグリフを警戒しているらしく、体をグリフに向けていた。

 

『《シールド・バスター》!』

 

目の前で無視するなと言わんばかりにゲイル兄貴が【大盾騎士】で覚えたアクティブスキルを使用する。このスキルは【盾騎士】のスキルである《シールド・アタック》の上位互換スキルだ。

 

自身のENDで攻撃力を計算して相手の防御力が高いほど威力が上がる。最初の攻撃に反応しなかった相手だから油断したのか横っ腹にゲイル兄貴の盾がクリーンヒット!

 

「!?!?」

 

無防備な状態でアクティブスキルと各種スキルの補正が入ったゲイル兄貴の一撃は、【ウッド・ゴーレム】を吹き飛ばした。

 

一メートルほど空中に浮いて着地の段階でごたついているようだが、追撃はしなかった。というよりゲイル兄貴の攻撃の傷も吹き飛んでいる間に再生している。

 

「なんだこいつは!? 【ウッド・ゴーレム】じゃないのか!?」

『いや・・・《看破》で確認したが間違いないぞ。こいつは【ウッド・ゴーレム】だ。ハイもハイエンドもない』

「じゃあ、何かからくりがあるっぽいね?」

 

怪しいのはあの瘤みたいなふくらみだね? ともかく、せっかく出会ったんだし倒したいな。

 

 

 

 

  ◇  【大盾騎士(タワーシールド・ナイト)】ゲイル・アクアバレー

 

 

いきなり予想外の速さで先制攻撃をした【ウッド・ゴーレム】は俺に吹っ飛ばされてから俺を厄介な相手と認識したらしく、攻撃が集中している。

 

まぁ、タンク役である俺に攻撃が来るのはありがたいが。AGIは俺より高いが、相手のSTRと俺のENDには差がそんなにないらしいな。それなら武具で底上げしているこっちが有利だ。

 

さすがに無傷というわけではないが、これくらいなら相手を吹っ飛ばしたあとの隙に回復アイテムを飲んで回復できる範囲だ。

 

俺はそんな感じで他のメンバーは、クロス兄貴は魔法攻撃を駆使して戦っている。だが、相手に魔法耐性か属性耐性が高いのか今までよりダメージを稼げていない。

 

ウッドはグリフと連携して攻撃している。ただ、ウッドの攻撃はアクティブスキルを使ってもあまりダメージになっていない。唯一状態異常のアクティブスキルが有効なのが救いか。

 

グリフは俺たちの中で俺以上にダメージを稼いでいる。地味にウッドの状態異常攻撃で動きを封じて、渾身の一撃を喰らわせているのが最もダメージ効率がいい。

 

なお、リオンにグランとスオウは援護に徹している。リオンは発動と攻撃速度が高い魔法で相手を牽制し、グランとスオウはヒット&ウェイでかく乱というか嫌がらせをしている。

 

最初の奇襲ではこちらが後れを取ったが、戦闘が開始されてしばらく経つとこちらが有利になっている。やはり数の差は無視できないようだ。それともう一つの要因として・・・・

 

「シッ!」

「!!」

 

ウッドの矢が相手の瘤のようなふくらみを狙い、当たりそうになると相手はそれを何が何でも阻止しようとするのだ。特に、右肩の瘤はここに秘密があると言わんばかりの反応だ。

 

そんな反応じゃあ、そこは弱点だと言っているようなもんだぞ? どうやらこいつは戦闘経験があまり多くないようだ。

 

『《ガード・オーラ》!《シールド・バスター》!』

 

相手の大きな隙に俺は再度アクティブスキルを使用。今度はENDを上げるアクティブスキルを使用するおまけつきだ。これが相手の無防備な腹にヒットしてまたしても吹き飛ぶ。

 

「今だ! 右肩に攻撃を集中させるぞ! 《ヒート・ランス》!」

「グルー!」

「BURU!」

「UON!」

 

クロス兄貴が声を出して魔法を使用。それに続いて、グリフは風の矢を。リオンは光の矢にグランは岩の矢を放つ。

 

全員の攻撃を喰らい爆発した【ウッド・ゴーレム】は、爆炎に包まれた。俺たちは油断せずに構えていて煙が晴れるとそこには・・・

 

「「『はぁ!?』」」

 

干からびている【ウッド・ゴーレム】が倒れる途中だった。そのまま光の粒子となり、戦闘は終わった。あとにはドロップ品である大木が転がっている。

 

「最後のは何だったんだ?」

『干からびていたがなんか釈然としないな・・・』

「そうだね・・・? グリフどうしたの?」

「グル~」

 

最後の干からびていた状態に何か納得がいかない俺たちだったが、グリフだけは何やらあたりを警戒している。そして次の瞬間に・・・

 

「グル!」

 

急に飛び上がり壁を前足で叩きつけた。どうしたんだと疑問を浮かべていると・・・

 

 

 

 【<UBM>【寄生吸種 パラゾール】が討伐されました】

 【MVPを選出します】

 【【ウッド・アクアバレー】がMVPに選出されました】

 【【ウッド・アクアバレー】にMVP特典【植種強弓 パラゾール】を贈与します】

 

 

何やら聞き覚えのあるアナウンスが聞こえてきた・・・・




はい、これにて三兄弟全員が特典武具持ちですね。特典武具と元となった<UBM>の詳細は次回のあとがきで。

次回更新したらアルター王国編は終わりです。その後は作中オリジナルキャラや<エンブリオ>と<UBM>の一覧を更新してから、ドライフ皇国編です。

お楽しみに~

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