三兄弟の系統樹   作:出来立て饅頭

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遅くなりました。


第四十五話 【産形核命 ツクモガミ】

  ◇  ???

 

 

アーク・ランブルの持つ<エンブリオ>である【産形核命 ツクモガミ】はTYPE:キャッスルで神社に類似した建物であり、スキルを現時点では一つしか持たない一点特化のエンブリオだ。

 

一つしかないスキル名は《核命の誕生日(ライフ・バースデェイ)

 

その効果は簡単に言ってしまえばアイテムのモンスター化である。アーク・ランブルの所持するアイテムをモンスター種族エレメンタルの魔法生物に生まれ変わらせる・・・否、新たに誕生するのだ。

 

モンスターになったアイテムの戦闘力はそのアイテムの性能や効果で上下し、武具系のアイテムの場合は付与スキルのあるなしでも戦闘力に差がある。

 

ただし、このスキルを実行するには前準備が必要なうえ、いくつかの条件がある。

 

スキルを実行する前の前提条件として、キャッスル内にアイテムを入れる必要があるので【ツクモガミ】を展開可能な土地が必要なこと。これに関してはモンスターが出現する狩場で行えば問題ない。

 

安全面も町の近くで行えば衛兵が居るのでよほどの事態でもなければ対処可能だろう。

 

さらにもう一つアイテムをキャッスル内に入れるのにお賽銭が必要なこと。これに関してはなぜ必要なのかは詳しくは不明だ。お金の額でモンスターにした時の能力が上下しないことは検証した結果判明している。

 

とりあえず、アーク自身は100リルを毎回投げ入れている。本人曰く、「いちいちお金の額を変えるよりは統一したほうが何となくいい気がしたから」とのことだ。

 

次にスキル使用に必要な条件だが、まずはスキルを使用するにあたりアーク自身の最大MPの半分を消費する。この消費量は<エンブリオ>が進化したとしても減ることはない。逆に言えば増えることもないということだが。

 

さらにこのスキルは一日の使用回数を《核命の誕生日》のスキルレベルと連動しており、現在の【ツクモガミ】は第三形態でスキルレベルも3だ。そのため一日に使用できるのは三回までとなる。

 

しかもスキル対象のアイテムは一つしか【ツクモガミ】の中に入れることができない。モンスターを大量に誕生させることは現時点では不可能だ。進化に期待するしかない。

 

そんな<エンブリオ>を所有者であるアークがどんなプレイスタイルかと言えば・・・・

 

 

 

  ◇  【紅蓮術師(バイロマンサー)】クロス・アクアバレー

 

 

「・・・とまぁ、【ツクモガミ】の能力に関してはこんなところです」

 

現在、俺たち兄弟はカルチェラタン領の領主のお茶会に参加して、そこで知り合ったドライフ皇国の<マスター>アーク・ランブルさんから彼の<エンブリオ>の能力について聞いてい居るところだ。

 

「ふむ・・・戦闘力を持つ<エンブリオ>ではなく戦力造り出す・・・いや、戦力を誕生させる能力か?」

「そうですね。その認識で間違いないかと」

 

ゲイルが話を聞いた能力をあいつなりの言葉でまとめたみたいだが、特に彼から否定されなかったな。

 

「<エンブリオ>自体に戦闘力も生産作業を補助する能力もないんですか?」

「ええ。一点特化な能力ですから”僕が所持するアイテムのモンスター化”以外の能力は持っていませんね。今の【ツクモガミ】は第三形態なので上級に進化すればわかりませんが・・・」

 

随分と変わった能力だな? これまで俺たちが出会った<マスター>は戦闘力に関係した物がほとんどだったから、珍しいと思う。

 

まぁ、そもそもTYPE:キャッスルは<エンブリオ>では数が少ないらしいし、その分珍しい能力が多いってことなのかもな。

 

「戦闘力と言う点ではジョブを【従魔師】や【指揮官】系統で埋めたら強くなれそうだよな?」

「このゲームをやっているリアルの友人からもそう言われました。けど、僕はそのジョブには就いてません」

「そうなんですか?」

「いや、あのぬいぐるみたち見ればわかるだろう?」

 

あの大きなデフォルメのクマのぬいぐるみたちは間違いなく【裁縫屋】に就いて造った物だろう。態々あんな物を造る<ティアン>は居ないとは言わないが、間違いなくマイナーだろう。

 

ならば、アイテムとしての品質や能力を上げるのなら自分で造った方が確実だろう。

 

「お察しの通りです。あれは僕の就いているジョブの一つ【裁縫屋】をメインジョブにして造った物です」

「うん? それがメインジョブではないのか?」

 

彼の言葉に違和感を感じて、そう質問したが・・・

 

「すいませんが、メインジョブについては黙秘させていただきます。手の内を簡単には明かしませんよ?」

 

そう言ってにこやかだが、断固とした意志を感じるスマイルで彼は言い切った。

 

「それもそうか。すまない」

「いえいえ」

 

さすがに初対面に対して、突っ込んだ質問だったな・・・

 

「御客人方」

 

話し合いの途中で、俺たちを屋敷に案内してきた執事さんが近づいてきた。

 

「今日はありがとうございます。お客様方のおかげで子供たちも楽しく過ごしておられます。主も喜んでおられましたよ?」

「役に立ったのならよかったです」

「こちらこそ。いい気分転換になりました」

 

ゲイルとウッドの二人がリオンとグリフを見ながら答える。

 

「主も直接会ってお礼が言いたいと。ご案内いたしますのでどうかご足労を願います」

「それはいいんですが、こんな格好のままでいいんですか?」

 

俺たちの格好は戦闘を考えてのフル装備だ。さすがに貴族の方に会うのにな・・・アークさんは割としっかりした服を着ているので問題ないだろうが。

 

「問題ありませんよ」

「あ~さすがにヘルムは脱いでいるとは言っても全身鎧はまずいですから、別の装備にします」

 

この中で唯一金属鎧を装備していたゲイルは【BAA】から、モンスターの皮で造られたセット装備を瞬間装着した。

 

その後、執事さんの案内で俺たちは館の主に会うことに。

 

 

 

 

  ◇  【大盾騎士(タワーシールドナイト)】ゲイル・アクアバレー

 

 

「この度はお茶会に参加していただきありがとうございました」

 

そう言って俺たちに笑顔でお礼の言葉を口にする人のよさそうな貴婦人がカルチェラタン領の領主である伯爵夫人だと言う。

 

なぜ夫ではなく夫人が主なのかは、俺たちは王国所属だからある程度は事情を知っている。ここの情報収集しているときに小耳にはさんだのだ。

 

デンドロ内時間で約30年前に夫人の夫は、外交官の仕事でドライフ皇国へと旅立ったが、その道中に神話級<UBM>と遭遇に命を奪われたという。

 

そのままでは王国も皇国も危なかったが、旅を護衛していた王国最強格の超級職【聖焔騎(セイクリッド・ブレイザー)】に就いたティアンであるアスラン・ファルドリード。

 

さらにはアスランの親友であり好敵手でもある皇国の超級職【衝神(ザ・ラム)】ロナルド・バルバロスも友の危機に駆けつけて、協力して戦いを挑み神話級の強大な敵を撃破した。自分たちの命を対価として。

 

俺たちも<UBM>の恐ろしさは身をもってしているが、聞くところによると超級職とは戦闘力の桁が上級職とは違いすぎるらしいのに神話級やばすぎる。

 

「いえ。こちらこそお礼が言いたいです。こちらの従魔にいい気分転換になったでしょうし」

「僕としましても自分の作品で喜んでくれるのなら嬉しいですよ」

 

おっと、俺が考えている間にクロス兄貴にアークさんが答えている。それに続いて俺とウッドは頭を下げた。

 

「そう言っていただけるのは私もうれしいです。子供たちも楽しんでいるようですし」

 

そう言って伯爵夫人は子供たちの笑い声が響く窓に視線を向けた。その顔には笑みが浮かんでいる。

 

「今回のお願いを聞いてくださった対価は本当に宿泊金の肩代わりでいいのでしょうか?」

 

おや? 俺たちだけではなくアークさんの対価も宿泊金の肩代わりだったようだ。

 

「私たちは十分です。こちらにもいい経験をさせてもらいましたし」

「僕も同じです。それにこの町はいいところですからね。居るだけで心が和みます」

「・・・・ありがとうございます」

 

クロス兄貴とアークさんの言葉に伯爵夫人は深く頭を下げた。その後に執事さんとは別の方が俺たちを案内してくれた。俺たちに今回のことを頼んだ執事さんは伯爵夫人と何やら話し合っている。

 

「例のモンスターたちの調査結果ですが・・・」

「詳しく伺いましょう」

 

俺の耳に聞こえてきた単語になんとなくだが、嫌な予感がした。

 

それから俺たちとアークさんが泊まる宿屋へと案内されたのだが、伯爵邸を離れる段階で子供たちの何人かが別れを嫌がり、クマのぬいぐるみたちにしがみついている。

 

メイドさんたちも困っていたら、アークさんが今日一日は一緒に居ていいと口にすると喜んだ。そのまま子供たちもクマさんたちと一緒に孤児院へと帰っていった。

 

その後に案内された宿屋は、町はずれにある温泉が自慢の宿屋だった。宿屋のおかみさんと執事さんが話している間に、宿屋を手伝っている一人娘のシャーリーに部屋まで案内された。

 

俺たち三人は一緒の大部屋でアークさんはその隣の一人部屋だ。

 

「伯爵夫人のお客様なら一人一部屋にした方がいいんですが、今回<マスター>のお客が多いので申し訳ありません」

「別に問題ないよ」

 

リアルでは諸事情で旅館での宿泊なんて、修学旅行くらいしか経験なかったしな。兄弟一部屋で泊まるのはいい経験だろう。

 

「ところで<マスター>の宿泊客が多いって話だけど、何か理由があるのかい?」

 

それよりも先ほどの言葉で気になることを言っていたな? ウッドも同じ疑問を持ったようで質問している。

 

「何でも最近になってここら辺では見かけないモンスターの目撃が相次いでいて、その調査と討伐が冒険者ギルドから依頼されているらしくて」

「なに?」

「報酬がいいって話が何人かの<マスター>さんたちに広がったらしくて、ここだけじゃなくて町中の宿屋も結構な人たちが泊まっているみたいですよ?」

 

なるほど・・・ではさっきの執事さんと伯爵夫人の話で聞こえた単語はそのことか・・・

 

「では、私はこれで。夕飯は新鮮なお野菜が手に入ったので楽しみにしていてください!」

 

そう言ってシャーリーは部屋を出て行った。アークさんは早々に自分の部屋へ行って休んでいる。

 

「どう思う? さっきの話」

「あまりいい予感はしないね」

「確かにな」

 

俺は二人に先ほどの話を聞いて、どう思ったか問うた。二人は俺と同じ考えのようだ。

 

「予定変更するか?」

「そこまで心配する必要はないだろう。今でも戦力は十分だろうし、予定通り滞在して何かあれば行動すればいい」

「まぁ、大事になるかはまだわからないみたいだしね?」

 

クロス兄貴とウッドの言葉に俺はそれもそうかと考えを改めた。今までの経験で厄介ごとかと考えたのは早計だったかな? 二人の言う通りにするとしよう。では今日はさっさとログアウトするかね?




作中での変わり種<エンブリオ>登場。正直な話TYPE:キャッスルは原作でも変わり種そのうち出てきそうな予感はする。

フランクリン? あれはキャッスルとしては正統派と考えています。
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