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伝説級<UBM>【鱗軍大将 リガゾルド】はかなりの強さを誇る<UBM>だ。能力はシンプルで軍団指揮と軍団比例防御力強化を持つ。
軍団指揮の能力関係はスキルを二つ持ち、名を【スケイル・タクティクス】と【スケイル・コマンド】
【スケイル・タクティクス】はモンスター名【スケイルリザード】限定で配下にでき、また彼らに対して無条件で忠誠を誓わせる強制力があるスキルだ。また、そのモンスター限定でパーティ枠の上限は三千にも及ぶ。
【スケイル・コマンド】は指揮能力に関係したスキルで、【スケイルリザード】限定でどんな作戦でも実行させることができる。自爆特攻なども疑問なく即座に実行する。また、小隊長などを任命しそのものに付き従う配下を与えることも可能。
最後にスキル【鱗軍堅城】は・・・かのモンスター最大のスキルであると同時に生命線。効果は軍団規模比例の自身と配下の防御力強化だ。
強化率は配下よりも自身の方が高いが、それでも軍団の数が多ければ多いほど生存率が増す。防御力が高いので各個撃破も大将首狙いの特攻も勝算が低い。
このように能力が高い【リガゾルド】だが、意外と<UBM>担当の管理AIであるジャバウォックの評価は低い。理由として本人はこうコメントしている・・・
「馬鹿正直すぎる」と・・・
◇ 【
カルチェラタン領の近くに居た【スケイルリザード・ソルジャー】の群れは囮であり、しかもその策を実行した首魁は<UBM>だと言う。これはとんでもない予想外だな。
実際報告を聞いたこの場のティアンの人たちはかなり驚いている。伯爵夫人も口を両手で隠して呆然としているようだ。とは言え、すぐに気を持ち直したようですぐに指示を出そうとする。
「その現れた群れはどのくらいの規模ですか?」
「正確な数はわかりませんが、それでも囮と思われる群れよりは多いかと・・・」
「そうですか・・・すぐに籠城戦の準備を! それと王都に緊急事態の報告を! 足自慢の方に緊急の依頼を出してください!」
「「わ、わかりました!」」
伯爵夫人の指示に騎士たちが、大慌てで動き出す。それを見届けた伯爵夫人は俺たちへと視線を向ける。
「すいませんが、ご協力をお願いします。先に出た討伐隊が戻るか、王都の応援が先か・・・そのための時間を稼がないといけません」
そう言って夫人は深く頭を下げる。さすがに女性にここまでされたら断るわけにはいかんな・・・二人の弟にも視線を向けると二人はしっかりと頷いてくれた。
「どうか、お顔をお上げください夫人。もとより何か役立つのであればと思いこの町に残ったのです。協力は惜しみません」
「僕もです」
俺がそう答えるとアークさんもそう言葉にした。
「あ、ありがとうございます」
「とりあえずは戦力集めて作戦会議をしましょう。時間稼ぎをするにしても現状の戦力把握はしないといけませんしね?」
「わかりました。すぐに手配しますわ」
そう言って伯爵夫人は執事さんとともに屋敷へと戻った。俺たちはそれを眺めてアークさんが口を開く。
「<UBM>か・・・噂には聞いてたけど、僕は初めて会うな。 勝算はあると思う?」
「相手の能力次第だな。とは言え、十中八九指揮系のスキルを持ってるだろう。それとプラスしてどんな能力があるかだが・・・」
「囮の群れが異様に硬いっていうのは能力に関係した物かな?」
「じゃあ、防御力強化系のスキルかな? それだけだといいけど」
相手の能力に関して現時点でわかっていることで考察する俺たち。そんな俺たちをアークさんは驚いた表情で見ている。
「どうかしましたか?」
「いや・・・三人とも手馴れているなぁと。もしかして討伐経験が?」
「今までで三体と遭遇してなんとか辛勝しました」
改めて言葉にするとこの遭遇率は異常だな? ティアンの話では討伐できる実力があっても出会うことなく一生を終える実力者の方が多いらしいが。
「それは心強いですね」
「とは言え、能力の相性とか相手の力量次第ですよ。正直な話<エンブリオ>能力によってはステータスが弱くても勝てる可能性があります」
ゲイルはそう答えるがかなり低い可能性だろうな。それでも勝てる可能性があるだけましだろうが。とにかく俺たちも屋敷に入り、伯爵夫人に呼ばれるのを待つとしよう。
◇ 【
それからしばらく経って、伯爵夫人から呼び出しがあった。呼び出された場所は町の中央広場でそこで防衛指揮を任されている騎士からその場に集まった戦闘経験者に状況が語られることに。
なお、この場にいる戦闘経験者は<マスター>が僕たち三人とアークさん合わせて11人。防衛に残っている騎士団が22人。さらに緊急時に協力することになっている元冒険者や元騎士のティアンが8人ほど。
そんな彼らだが、状況を語る上で<UBM>が群れを率いている情報が出た時にその様子は二つに分かれた。
まず、僕たちとアークさん以外の<マスター>の反応は端的に言えば歓喜だ。<UBM>はめったに出会えず、出現報告があれば討伐にティアンの超級職が動く。そのため<UBM>を倒して特典武具を手に入れるチャンスなどよほどの幸運と実力がなければゼロに等しい。
なのに現時点で喜んだとしても捕らぬ狸の皮算用だね。ゲーマーだから喜んでいるだけで実際に倒せるかどうかなんて相手の能力が不明な現時点では予測不能。二人の<マスター>は難しい顔をしているから理解しているみたいだ。
一方のティアンの人たちはと言えば絶望。ただその言葉のみだ。彼らは<UBM>がどれくらい厄介かと言うことを理解している。なかには崩れ落ちてもうすでに諦めた人までいる。それくらい浸透しているのだ。<UBM>の強さが。
ゆえにこちらから打って出ることはせずに討伐隊が帰ってくるまでか、王都に救援要請が伝わり騎士団が駆けつけてくるまで時間稼ぎすることを明かす。しかしそれに反対するのは<UBM>出現に歓喜した<マスター>たちだ。
「俺たちだけで打って出る!」
「危険すぎる! この町を危険にさらすことにもなる! 許可できない!」
「だからって、みすみす特典武具を逃すなんてもったいないぜ!」
「俺たちならやれるからよ!」
などと言って言い争い一歩手前の状態だ。防衛指揮を任されている騎士は安全策でこの場を乗り切ることに固執し、特典武具狙いの<マスター>たちは自分たちの事しか考えていない。このままだと話が終わらないな? そんな時に・・・
「騎士さん。いいからやらせてみたらいい」
ゲイル兄貴が唐突にそんなことを言い始めた。
「だから、危険だと言うのだ! そんなことをするくらいなら安全策で時間稼ぎを」
「だが、相手の能力は不明だ。籠城戦だけだと不足かもしれん。それに<マスター>の中には<エンブリオ>能力で籠城戦よりも打って出たほうが、最大限に能力を発揮できる奴もいるだろう。ちなみにだが俺も能力的に籠城戦は苦手だ」
「そ、それはそうだが・・・」
確かに籠城戦だとゲイル兄貴は能力が半分も出せないね? 遠距離攻撃は銃を持ってるけどそれがメインじゃないし。クロス兄貴は問題ないけど得意なわけでもないし。僕くらいかな? 籠城戦でも能力がフルで発揮できるのは。
「心配だって言うのなら、契約書に書いてもいいぞ? 町を見捨てて逃げない最後まで戦うってな」
「「「おま!」」」
ゲイル兄貴のこの言葉に慌てたのは特典武具狙いの<マスター>たちだ。あの人たちどうも無理なら逃げる気満々だったみたいだね?
「私は籠城戦向きの回復メインのビルドだ。協力は惜しまんし彼と同じく契約書に書いてもいい」
「アタシは遠距離攻撃メインのビルドだから籠城戦は賛成だね。契約書にもサインするよ?」
ここで今まで黙っていた<マスター>二人がゲイル兄貴の言葉に賛同した。あの二人は<UBM>が迫っているって聞いて難しい顔してた人たちだね。
「・・・・」
「今は大雑把でもいいから、各自の戦力を見極めてどうすればいいのか考えるのが先決じゃないか? 信用できないってんならさっきも言ったが契約書に書くぞ俺は。決めるのはあんただ」
「・・・わかった。諸君の覚悟に感謝する」
「決まりだな」
と言うわけでこの場に居るメンバーの大雑把な戦闘スタイルを言い合い最終的な作戦が決まった。ティアンの人たちは籠城戦で町の中での防衛。<マスター>では4人参加。
そして籠城戦では力を発揮できないと考えた<マスター>5人は町の外で待機して、【鱗軍大将 リガゾルド】に特攻を仕掛けることに決まった。なお、メンバーはゲイル兄貴にクロス兄貴と特典武具目当ての三人だ。
残りの<マスター>である僕とアークさんは遊撃。僕はグリフに乗って空から籠城戦のメンバーの援護。アークさんは戦闘スタイルが【従魔師】に酷似していて戦力を分けることができたので、防衛戦力と特攻戦力に分けた形だ。
ただ、アークさん自身は特攻隊に志願したんだよね? 戦力を維持するのなら籠城戦のために町の中にいる方がいいけど従属キャパシティーが足りないからパーティ枠使用のために特攻隊に志願したんだ。
指揮官である騎士の人も大丈夫か心配してたけど、アークさんが建物の陰で使う戦力を見せたら問題ないって意見を変えたんだよね。一体どんな戦力持ってるんだろう?
◇ 【
俺たち特攻隊は町を出て離れた場所で待機中だ。森とかないからこんな場所では相手に見つかると思ったが、<マスター>の一人に隠蔽能力の<エンブリオ>持ちが居てそれで隠れている。能力を使った時に「
彼の話では、自分を中心に6mくらいの範囲の結界を展開しており外から見つけるのは至難だと言う。まぁ、同じ<エンブリオ>なら索敵能力特化や結界察知系統のスキルでバレそうだけど。
それよりも俺とクロス兄貴にアークさんに対しての他の<マスター>三人の態度がイライラするわ。この場で結界を構築した彼らは俺たちに向けてこう言ったのだ。
「俺たちが<UBM>を倒すからお前たちは手を出すなよ」っと。
正直何様だよとか、緊急事態に何を言ってんだよとか、言いたいことが多いがそれを飲み込んで俺たちは彼らの言う通りに<UBM>を任せることにした。
特攻する以上は速く相手の頭を潰す必要がある。ここで言い合いになって仲間割れしている状況ではない。それに倒してくれるのなら問題ないしな。
問題なのは彼らが倒せずにずるずると時間がかかる場合だ。その時はこっちに素直に手を貸してくれって頼むか怪しいしな。さっさと倒すかそれとも
俺たちとアークさんは群れが現れるまで装備やアイテムなどをチェックしているが、あいつ等三人はのんきに談笑しているだけだ。それを見るだけでだめだなこいつらと思うよ。
『あ~ゲイル。あの三人どう思う?』
『お話にならん。<UBM>を従来のゲームのボス感覚で倒そうとしているな。これまで遭遇して戦ったことがないにしてもひどすぎる』
『そんなに厄介なんですか?』
俺たち二人とアークさんはアクセサリーの【テレパシーカフス】で会話をしている。このアクセサリーはフレンドリストに登録した同じアクセサリーを装備している者とテレパシーで会話できるという便利アイテムだ。
通話範囲はそれほど広くはないが、このように聞かせたくない会話をするときは重宝する。なお、これから乱戦になることも予想して問題の三人ともフレンド登録しようとしたが、する必要はないと言って断られた。
『少なくとも、油断なんかしてたら一瞬でやられるようなやつらばかりだな』
『能力にもよるけど、相性が悪い場合は一方的にやられるだろうな?』
『そ、それほどですか』
最初の【バルギグス】と次の【ディセンブル】で厄介さと強さは骨身にしみてるからな。【パラゾール】は相性が良かったから倒せたようなもんだし。
『そう考えると、今回の<UBM>も厄介そうだ』
『個々の能力が高い上に群れを率いてるからな。その関係上群れを強くするスキルは当然持ってるだろうし』
『勝のは難しいですか?』
『難しい。だが、だからと言って諦めるつもりもない。相手の能力を把握してできることは何でもやるさ』
『そうだな』
そう言って俺と兄貴は現時点で判明している情報で相手の能力についていくつか予想を立てた。無駄になるかもだが、この時間を少しでも有意義に使わんとな。
◇ 【???】アーク・ランブル
僕の目の前で障害を排除するために頑張っている人たちがいる。その障害は排除するのが相当に難しいことが分かったうえで何とかしようと足搔いている。
(僕には眩しいね・・・)
現実での障害に苦労し解決策もないままただボケっと突っ立っているだけの僕とは大違いだ。そんな僕の気分転換になればと友人たちがプレゼントしてくれたのがこの<Infinite Dendrogram>だ。
おかげで少しは前進できたけど・・・まだ解決には程遠い。でも・・・あの人たちとこの障害乗り越えることができたら・・・・
(僕は・・・また前進できるかな?・・・)
その為には僕ができることを出し惜しみするわけにはいかない。いろいろ準備が必要だったし今の子達を失うかもしれない。それはすごくつらいけど・・・それでも・・・僕は・・・
(迷いはある・・・でも・・・僕にだって・・・守りたいって気持ちがある)
決意を新たに目の前で障害に立ち向かう人たちの話に加わる。