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大きな爆発が鳴り響いた直後に【スケイルリザード】たちは、まるで目が覚めた直後に戦場に放り出されたかのように混乱していた。戦っている途中で【スケイルリザード】が<UBM>に支配されているのは薄々気が付いていた。
だから、この状況は<UBM>が討伐されたことを意味したんだと疲れた頭で理解するのに数秒かかった。さらに王都方面から援軍である近衛騎士団がやってきて形勢はこちらに完全に傾いた。
群れのボスである<UBM>を失った【スケイルリザード】たちにはすでに戦う理由も強さも士気もなく、蜘蛛の子を散らすようにがむしゃらに逃げ出した。
近衛騎士団の半数は逃げ出した群れの追撃戦に駆け出し、残りは町の防衛に残ってくれた。しかも近衛騎士団を率いていたのはアルター王国の実力者である【天騎士】ラングレイ・グランドリア。国でも一二を争う実力者が駆けつけてくれたのだ。
あとで町の住人が話していたのを聞いたところ、カルチェラタン夫人は王家からも信頼厚く、血縁関係でもあるらしい。その為【天騎士】であるラングレイ氏が援軍としてやってきたのだと知らない町の住人に得意げに話しているおじいさんが居た。
ちなみに町を防衛していた僕たちもラングレイ氏自らお礼を言われた。ラングレイ氏は渋めな中年男性で鎧越しでもわかるほどの鍛えた肉体をしていた。お礼の言葉は堅苦しい敬語であったが、何となくこの人の本性は体育会系ではないかと思う。
兄貴たち特攻隊も帰ってきた。<UBM>討伐目的の三人はデスペナになったようで、帰ってきたのは兄貴たちとアークさんだけだったが。それよりもアークさんの様子がおかしい。アークさんの後ろにいる機械甲冑は動いているところを見るとクマのぬいぐるみたちと同類だと思うけど・・・
さすがにアークさん本人に声を掛けるのを躊躇していると、ゲイル兄貴が説明してくれた。なんでもアークさんの子達がその身を犠牲にした自爆特攻で<UBM>を倒してくれたと言うのだ。
しかも、自らの意思で行動したと言う。それを聞いた直後はなんと言っていいのかわからずにアークさんを見つめてしまった。そんな僕に対してアークさんは・・・・
「正直今は気持ちの整理が付かないです。でも僕はあの子たちに出会えたことに感謝したいです。それと同時にもっと一緒に居たかったのも偽りのない気持ちなので、本当にいろいろな感情が渦巻いていて一旦ログアウトしてきますね・・・」
そう言いアークさんはログアウトした。特典武具は間違いなくアークさんの物になっているだろう。デスペナした奴らが何か言ってこないといいけど。
アークさんに続いて他の防衛に参加した<マスター>たちも次々とログアウトしていった。さすがに精神的疲労が限界に近いのでリアルで寝ると言っていた。
カルチェラタン夫人からもお礼とお疲れでしょうから報酬については後日にと言ってくれたので、僕たち兄弟もログアウトして休むことに。僕とゲイル兄貴はグリフややグランにスオウ、リオンにお礼とねぎらいの言葉を掛けてからだけど。こういうことはしっかりとやっておかないとね?
その後どうなったかと言うと・・・僕たちがログアウトしてから数分後に囮の群れを壊滅させた討伐隊も帰ってきたらしい。彼らの報酬は冒険者ギルドが責任をもって出すことに。
それから数日間近衛騎士団が町の防衛に残り、警戒していたが五日間異常がなかったので六日目には王都へと帰還した。その時にちょうどログインしていた僕たち兄弟は改めてラングレイ氏にお礼を言われた。
「君たちのような<マスター>がいてくれて本当によかった。今後とも良き隣人でいてくれることを願う」
そう言って機械の馬に乗り、王都へと向かった。
それだけならいい話で終わりなんだけど、少々ごたごたも起きた。特典武具狙いの<マスター>三人が報酬にもっと色を付けろとごねたのだ。
特典武具を逃したので、その補填として報酬のつり上げを考えたらしい。だが、ゲイル兄貴とクロス兄貴が・・・
『その三人は全く役に立たなかった』
「速攻で<UBM>に倒されてたからな。むしろ報酬をもらうほど仕事してないぞ」
などと発言したことでティアンの人たちから疑惑の目で見られた。三人は否定したけど誰にも信じてもらえなかった。あの三人は【契約書】に署名しなかったので信用がないのだ。
結局、三人は文句を言いながら町を出て行った。ドライフ方面に行ったのでまた会うことになるのかな? そんな再会は御免被るけど。
あと、アークさんも近衛騎士団が去ってからログインしてくれた。気持ちの整理は何とかついたようで僕たちとも普通に会話してくれた。時折悲しそうな顔をするのでまだ吹っ切れてはいないようだけど。
あとはアークさんが獲得した特典武具も見せてもらったが、それは五メートル越えの巨大な物体だった。形としては兄貴たち曰く<UBM>である【リガゾルド】に瓜二つらしい。こんなにデカくはなかったようだけど。
特典武具の名は【巨体遺骸 リガゾルド】 以前に僕たちが手に入れた完全遺骸の特典武具のようだ。アークさんにアジャストした結果、生産素材で大きくなったらしい。その分完全遺骸よりはアイテムとしては格落ちするようだが、特典武具だからもともとのアイテムとしての格が高いので十分レアだ。
なお、アークさんはこの特典武具で新たなロボットを作るつもりのようだ。ロボットの正式名称は【マーシャルⅡ】でアークさんのリアルフレが何人も所属している【叡智の三角】と言うクランがゼロから作ったアイテムらしい。
早速、ログアウトしてフレンドに連絡してみたところ、なんと一日で町にやってきて「「「特典武具素材はどこだ!?」」」っとかなり興奮状態だった。
アークさんは苦笑しながら特典武具を見せて、多少は落ち着かせることに成功した。だが、その後・・・
「なに? これで【マーシャルⅡ】を作ってほしい? 任せろ!」
「制作会議を開くから、速攻で戻るぞ!」
「クランで暇な奴も誘って、データ取りしながら制作だな! 腕が鳴るぞ!!」
と言うようにものすごくやる気をみなぎらせて、アークさんを連れて装甲車のような物に乗って帰っていった。アークさんは慣れているらしく、僕たちにお礼を言っていた。なお、生産素材系の特典武具は他の人に生産を任せることができるらしい。
ドライフの首都に【叡智の三角】の本拠地があるらしいので、行ったら尋ねることにしよう。
俺たちもドライフに向けて旅経つことに。お世話になった人たちにあいさつ回りをしたら町を守ったことに対してお礼と食料や回復アイテムなどをもらってしまったよ。こんなことしかできないと渡した人たちは言ってたけど、こういうのは数で買うと結構な出費だから地味にありがたいよね。
カルチェラタン夫人からも改めてあいさつに行った。丁度町で出会った執事さんに是非にと言われて向ったのだ。
「この度は本当にありがとうございました。あなた方やご尽力してくださった<マスター>も皆様がいてくれなかったらどうなっていたことか・・・」
「あ~夫人。どうかお顔をお上げください」
「お礼なら十分もらいましたし、こちらとしては何とかなってよかったですから」
「そうですよ」
さすがにお礼を言われまくってるから、困惑しちゃうよ。ティアンからしたら絶体絶命の状況をひっくり返したっていうようなものだから当然かもしれないけど。
ちなみに、今回の防衛での報酬は一人当たり五十万リルももらったよ。これだけもらってお礼を言われまくれば困惑しちゃうのは当然だよね?
その後は簡単な会話や夫人から身の上話として、三十年前に行方知れずとなった息子さんのことを聞いたが、残念ながらティアンで夫人と同じオッドアイの人には会っていない。
これから旅をする過程で会うことがあるかもしれないから、覚えておこう。
夫人と別れて僕たちはリオンが引く馬車でカルチェラタンから旅立った。見送りとして孤児院の子供たちが防壁の上から手を振っている。大きなクマのぬいぐるみをいくつかモフモフしながら。カルチェラタン夫人がアークさんから買い取った物を寄付したのだ。
「守れてよかったね?」
「そうだな」
「ああ」
あの光景を見ると心からそう思うよ。さてドライフ皇国へ行く上で最初に到着するのはバルバロス領だね? 道中は<UBM>や厄介なモンスターが出ないといいな~。<UBM>はめったに出会わないようだけど僕たちの遭遇率は異常だからね。
ところ変わってここはどこか不思議な空間。暗いのか明るいのかすら定かではないそんな空間に三人の人物がいた。
いや・・・人物と言っていいのかは疑問が残るところだろう。なぜならその三人は明らかに普通の人ではないからだ。
一人はいくつもの生物の特徴がキメラのごとく体に見られる者。正体は管理AI4号であるジャバウォック
二人目はライオンのような鬣が特徴で体のラインから女性だと推測される者。彼女は管理AI3号であるクィーン
三人目は三人組の中で最も小さいが、最も特徴が分かりやすい二足歩行の猫。管理AI13号であるチェシャである。
「ジャバウォックーそろそろ僕たちを呼んだ理由を聞いてもいいかいー? まぁ、クィーンも呼ばれたからモンスター関連だとは思うけどー」
ここに集まった三人は<Infinite Dendrogram>のゲーム管理の関係上役割がかぶっているのだ。ジャバウォックは<UBM>の管理に認定。クィーンはモンスター管理に繁殖。
チェシャだけは雑用でいくつもの管理AI作業を手伝っているため決まった役職はないが、だからこそいくつもの管理の相談もされる。
「うむ。13号の予想通りモンスター関連だ。もっと正確に言えばある<UBM>たちを討伐した<マスター>たちに関連したことで意見を聞きたい」
「ふむ? 珍しいな。お前が自分で結論付けずに私たちに意見を聞くなど」
ジャバウォックの管理は半ば彼の趣味であるため、ほとんど自分で結論を出す。そのことを知っているのでクィーンは興味を持った。
「本来ならそうするのだが、私だけの考えで結論づけるのは得策ではないと判断した。早速本題だが、このデータを見てくれ」
そう言って二人の目の前にジャバウォックがまとめたデータが映像と共に映し出される。そこに映っているのはとある三人の<マスター>の<UBM>討伐記録と映像データだ。
その三人とはアクアバレー三兄弟のことで、データは三兄弟がこれまで倒した<UBM>関連の物だ。
「あーこの三人なら僕がチュートリアルをしたよー。へぇー! これまで四体の<UBM>に出会って、三体は討伐してるんだー」
チェシャは見覚えのある人物の偉業を素直に称賛する。一方クィーンはと言うと・・・
「むー」
「どうしたのさークィーン? 難しい顔と声出してー」
「この<UBM>は私が作り出したモンスターが元になっている。数少ない私お手製の<UBM>が討伐されるのはどうもな・・・」
「あー」
クィーンはモンスター管理をする関係上、普通のボスモンスターなども造り出す。それらがジャバウォックのお眼鏡にかない<UBM>化されるのは実はめったにない。ここの映し出されている<UBM>は数少ない実例なのだ。
「割り切れ3号。作られたモンスターはいつか倒される。むしろ強いモンスターを苦労して倒そうとするのなら新たな<超級>が生まれる可能性がある。我々の目的達成のための礎だ」
「・・・そうだな」
「今の間はなんだ?」
「気にするな」
「はぁーやれやれー」
仕事が趣味で今を楽しく過ごしている者には同僚の女心は理解できないらしい。そんな堅物にチェシャは溜息を吐いた。
「ところでジャバウォックー? このデータがどうしたのー? 普通に戦って特典武具をゲットしただけでしょー? 特に問題はないけどー」
「そうだな。あまりにも普通であることを覗けばな」
「どういうことだ?」
チェシャの疑問に対してジャバウォックの返答はクィーンには理解できなかった。
「この三人は<エンブリオ>も含めてごく普通の<マスター>だ。正直なところ<UBM>に遭遇しても勝つことが到底できるような能力はない」
ジャバウォックの言葉にクィーンとチェシャは納得した。データや映像で見る限り確かにこの三人は何か特出した能力があるわけではないのは明白だった。
「これは非常にまれなケースだ。<マスター>では初と言っていい。
今、ジャバウォックの言葉で出たジョブは他の管理AIがいろいろな理由で注目している<マスター>が就いているジョブだ。そして彼らの共通点はいずれも何かしら突出した能力を持ち、<UBM>を何体かあるいは何体も討伐しているのだ。
「私としてはこのようなケースに至った理由が知りたい。その為にモンスター関連のデータ管理をしたことがある二人に意見が聞きたく呼び出したのだ」
「ふーん、まぁー呼んだ理由はわかったよー」
「なるほどな。私としても興味深い。データ上では確かに能力的には<UBM>の方が強いからな」
ジャバウォックの説明でチェシャは納得しクィーンは興味を持った。
「と言ってもー理由なんてもうわかってるけどねー」
「なに?」
「ほう? それを説明してもらいたい」
ことも何気にチェシャは断言した。その言葉にクィーンは同僚を見つめ、ジャバウォックは目を細め説明を要求した。
「簡単なことだよーこの三人は協力する能力が高いんだよー。何も他者との能力のシナジーで強力になるのはスキルや<エンブリオ>だけじゃないって話ー。 そりゃ<マスター>では珍しいけどーティアンとか他者と協力することで各上を倒したケースはあるでしょー。 それと一緒だよー」
確かに人間は協力関係を築き、困難を乗り越えてきた生き物だ。それは歴史が証明している。個々の特出した能力が目立つが、そんなものはごく少数で協力して事に当たるのが人間の基本戦術だ。
「特にティアンは戦闘の場合は命懸けだからねー。 協力することで各上を撃破するのは至極当然だよー。 グランバロアはそう言うことを国を挙げてやってるようなもんだしー」
海から<UBM>が強襲してくるのが日常茶飯事なグランバロアにとって、同族同士で対立していては海での生活などできない。実にわかりやすい今回のケースの証明といえよう。
「なるほど。協力することに長けた<マスター>か・・・」
「納得できたー」
「少なくとも疑問の解消にはなった。礼を言う」
「お安い御用さー」
チェシャとジャバウォックはそう言葉を交わしてこの話は終わりかと思われたが・・・
「ジャバウォック」
「なんだ?」
「次の話はなんだ? これで終わりではないだろう?」
ここで話が終わることはないとクィーンは確信していた。そしてそれは正しい。
「ああ、13号の話が正しいのか確かめるために私がデザインまたは認定した<UBM>をこの三人にぶつけようと考えている」
「・・・まぁーきみならそうするだろうねー」
「予想通りだな。ちなみにどんな<UBM>をぶつけるつもりだ?」
「候補としてはこれらだな」
そう言ってジャバウォックは二人に自分が選んだ<UBM>を見せたが・・・
「「・・・・・」」
それを見た二人はなんとも言えない顔になった。困惑や驚愕にまさかと言うような感情が変な形で融合したようなそんな顔に。
「・・・ジャバウォックー? 本気ー?」
「至極真面目だが?」
「何を考えてる! 第六形態に進化した<エンブリオ>持ちの<マスター>ならともかく! たかが第四止まりの三人に
思考が停止していたクィーンが叫ぶ。チェシャもこれはどうかと思うよーみたいな顔と目をしている。
「だからこそ見たいのだ。彼らが神話のごとく強大な敵を前にしていかなる英雄譚を見せてくれるのかを」
「ほぼ貴様の趣味じゃないか! しかも他の<UBM>しても古代伝説級の
その後の話は彼らの目的もかんがみて、これらの<UBM>をぶつけるのは見送られた。一言で言えばもったいないから。ジャバウォックは不満そうだったが。
しかし、妥協案として彼らが注目する価値のある<マスター>であるのはクィーンも認めたのでジャバウォックがデザインまたは認定した<UBM>で古代伝説級の下位クラスか伝説級の最上位クラスくらいならぶつけることになった。
彼等三兄弟の受難が確定した瞬間だった・・・
クィーンのキャラは原作での登場回数も少なくよくわかってないので、想像で書いています。
あと、アークが手に入れた特典武具で新しいロボットが登場です。まぁ、予想していた読者が大半でしょうけどw
名前は現時点では【リガゾルド〇〇】って感じになる予定ですが、何かいい名前が浮かんだ人は感想で書いてくれると嬉しいです。参考にしたり、もしかしたら採用するかも?