三兄弟の系統樹   作:出来立て饅頭

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第五十一話 バルバロス領到着

  ◇  【紅蓮術師(バイロマンサー)】クロス・アクアバレー

 

 

カルチェラタン領での<UBM>関連のトラブルを何とか解決し、俺たちは当初の予定通り北にあるドライフ皇国へと向っている。

 

ドライフ皇国は西方三国の中で北側の寒い地域にあり、生産系のジョブが豊富な国だ。特に機械関係のジョブはチュートリアルで選ぶことができる国の中では知識と有用性ともにトップだ。

 

他ではカルディナやグランバロアでも機械関係のジョブに就くことができるらしいが、カルディナはそもそも機械系のアイテムがかなりの値段で取引されていて運用が難しく、グランバロアは船関係に特化しすぎていてそれ以外の知識や運用方法がないとの話だ。

 

これ以外にリアルのネットで調べた限りでは、モンスターは地竜の生息地域である【厳冬山脈】が近くにあるため、そこから腹を空かした地竜が降りてくるのでその対策は必須と言うくらいだな。

 

それ以上は現地に行くのだから自身の目と耳で確かめればいいと考えて調べるのをやめた。

 

「さてさて。他国の町はどんなところかね?」

「特に真新しいところじゃないっぽいよ」

「首都とかならともかく、今から向かうバルバロス領は皇国では珍しい武人の家柄が治めているらしいからな。その為武具の生産も盛んだから俺は楽しみだけど」

 

どうやら弟二人は俺よりもちゃんと調べていたらしいな? しかし、武人の家柄か・・・ちょっとあこがれるのは漢であれば仕方がない。

 

などと話し合っていると、町を覆う防壁が見えてきた。門には人もまばらに並んでいたので特に問題なく入ることができた。そんな楽しみにしていた他国の町並みはと言えば・・・

 

「特に変わったところがない・・・」

「そうだね」

 

王国とは特に違いがないレンガ造りの町並みだった。楽しみにしていただけにちょっと残念感があるが、勝手に期待していただけだし文句を言うのは違う。

 

「でも武器とかは王国では見ないものがあるね?」

「ああ、王国はファンタジーの世界観だったから余計に目につくな」

 

二人の言う通り武具を扱っている店では、遠目に見てもアサルトライフルやサブマシンガンにスナイパーライフルっぽいものがあるな? 遠くて確かなことが言えないし、俺はそう言うのに詳しくないから断言はできんが。

 

通りかかった串焼きの屋台のおばちゃんに話を聞いてみるとどうやらここの町が皇国では珍しいと言う。他は大なり小なり機械の技術が使われている建造物があるとのこと。

 

ここは治めるバルバルス家の人が武に精通し、特に槍に関しては皇国一の腕を持つ武人を何代にわたって輩出してきた関係上機械系の技術からは縁がなかったらしい。

 

武具に関してはそうでもないらしいが、逆に言えば武具以外では触れる機会がなかったと言うことだよな?

 

「そんなんだから、皇国でも腕自慢の武人が集まってきてね? 自然とこんな感じの町になったっていう話だよ。バルバロス家のある街なんかは決闘施設もあるから、ここよりは機械技術があるけどそれでも皇国からしたら少ない方だね」

「へぇ~」

「なるほどね」

「面白い話だな? 話の礼に串焼きを二本追加でお代わりを頼む」

「お! お兄ちゃん分かってるね! ちょっと待っててよ!」

 

そう言って串焼きを焼き始めるおばちゃん。代金を払ってゲイルは串焼き二本を食べながら馬車に戻る。情報を手に入れるのなら屋台や酒場で聞くのが定番であり、いいことを聞いたならお礼に追加で商品を頼むのもお約束だな。

 

その後は今日の宿屋を探して俺はログアウトすることに。ゲイルは珍しい武具がないか探しに行き、ウッドは近場で狩りをすると言っていた。俺も次にログインしたら店巡りでもするかね?

 

 

 

 

  ◇  【大盾騎士(タワーシールドナイト)】ゲイル・アクアバレー

 

 

新たな国であるドライフ皇国のバルバロス領に着いた俺たち。早速俺は武具でいいものがないか探しに出かけたが、最初から当てが外れた形だ。

 

「う~ん・・・銃以外は槍が多いな?」

 

ドライフ皇国は機械関係の生産職ジョブが多く、それ以外のジョブも生産職が多くあるお国柄だ。その為なのか、置いてある武具も銃に偏っている。バルバロス領の場合は領主のおかげなのか槍も豊富らしいが。

 

ただ、銃に関しては俺のジョブLvにふさわしい武器がない。今使っている銃よりは強いが、どうせ買うなら今のLvに合った銃が欲しい。

 

とりあえずはいくつか武具屋を回り、掘り出し物がないか探してみるか。最悪はアークさんに会いに行くついでにドライフの首都で探せばいいしな。

 

そんなわけで武具を探しているわけだが、四軒回っても収穫なし。さすがに精神的に疲れ始めたので二、三軒回ったら終わりにしようか。そんなことを考えながら大通りの脇道にあるところに古びた武器の看板を掲げた店に立ち入る。

 

「ん??」

 

その店に入ると目立つ物体が真正面の壁に飾ってあった。大型のとがった杭が何やら洗練されて機械部品に埋め込まれており、持ち手部分には大きめの引き金がつけられた。

 

ロボットゲームの武器種としては変わり種であり浪漫武器、あるいは不遇扱いされる類の武器である杭打機(パイルバンカー)と呼ばれるものだ。

 

「ずいぶん珍しいものが飾ってあるんだな?」

「おや、お客さんかい?」

 

俺のつぶやきが聞こえたのか客が来ることが分かったのかどちらかはわからないが、店の奥からご年配の女性が出てきた。

 

「一つ尋ねるが、あれは売り物なのか?」

「ん? ああ、これかね? 売り物だよ。もっとも今じゃあ誰も買わないけどね」

「ならなぜ、飾ってあるんだ?」

「まぁ、思い出の品だからだね。年寄りの昔話だけど聞くかい?」

 

興味があったので頷いた。女性によればこの武器は女性の夫である【高位技師】が造った物で、約30年前にはお得意様がいたそうだ。なんとそのお得意様と言うのがかつての超級職【衝神】ロナウド・バルバロスというのだ。

 

ロナウドは槍の武人の家系でありながら、パイルバンカーを好んで使いそのまま突き特化超級職【衝神(ザ・ラム)】に就いてしまった天才であり異端児。

 

そんな彼に当初から付き合いパイルバンカーを造っていたのが、武器生作者としては変り者として有名だった女性の夫。数々の戦功を上げ、とある<UBM>から特典武具のパイルバンカーを手に入れてからも予備の武器として造り続けたそうだ。

 

しかし、そんな日々も唐突に終わりを迎えることになった。彼が【神話級】の<UBM>を命を対価に討伐したからだ。

 

もともと使い手が彼以外いない武器であるパイルバンカー。ロナウドがいなくなってから彼に続こうとした者はいたがほとんど途中で諦めた。それは今も変わらない。

 

「まぁ、今は夫がとあるクランに技術を教えに行って、その仕送りで何とかなっている状況さね。今飾ってあるのは夫がロナウド様に造った物で渡せなかったのさ」

「それは・・・」

「ごくたまに<マスター>が買っていくが、数日たつと売りに来るのさね。やはり使いずらいんだろうね・・・」

「・・・ちなみにこの武器の性能は?」

 

そう尋ねると女性は懐から紙を取り出して俺に見せた。そこに書いてあったのは・・・・

 

 

 

 【PVGバスターグロウ】

 

 【高位技師】が造った杭打機。シンプルな作りで安定性に優れる。

 

 ・装備補正

 

  攻撃力+1000

  DEX+200

 

 ・装備スキル

 

  《パイル・ストライク》

 

 

 ※ 装備制限:合計Lv300以上

 

 

  《パイル・ストライク》 アクティブスキル

 

  スキル使用時に装備補正を倍加。さらにDEXを20%アップ。

  ただし、スキル使用後30分は装備補正が半分に下がり、スキル使用不能。

 

 

 

攻撃力は俺が見た中ではこれまでで最大だ。ただ、スキルがかなり癖がある仕様のようだ。おそらくはこのスキルを使用することで杭を敵に打ち込むのだろう。確かにこれでは使い手を選ぶな。

 

「杭打機にはスキルと装備補正の差はあれど、大体がこんな感じの性能だよ。一撃に賭けるのはロマンがあるなんて言っていた子たちも居たがね? 結局は使いにくいって返品に来たよ」

「ふむ・・・」

「悪いことは言わんから、あんたもやめときな」

「いや、買うよ」

「・・・話を聞いてたのかい?」

「むしろ、だからこそ買いたくなったが?」

 

この武器の性能は俺の戦闘スタイル的に噛み合う気がするしな。何より、俺の弱点である攻撃力不足も解決する気がする。騎士が扱う武器ではないが、それは些細な問題だしな。

 

「・・・はぁ~物好きめ。まぁ、こちらも商売だ。買いたいと言うなら売るさね。ただし、これを修理する旦那が今いないから返品はお断りだよ!」

「ああ、契約書に書いてもいいぞ?」

「言ったね? 後悔しても知らないよ!」

 

そう言うと店の奥から契約書を持ってきてその場で俺は返品しない契約を交わした。なお、お値段は整備する旦那さんがいないのと何年も売れ残っていた物だからと12万リルで買い取った。

 

よし、早速試しにモンスター相手に打ち込んでみようかね。外でウッドと合流だな。

 

 

 

 

  ◇  【剛弓士(ストロング・アーチャー)】ウッド・アクアバレー

 

 

さてと、町の外に出た僕は狩りの前にグリフと従魔二人を出して食事をとることに。<エンブリオ>であるグリフは別に食べなくてもいいらしいんだけど、仲間外れはかわいそうだからね?

 

それにグリフはそこら辺を分かって気を使っているらしく、小食の僕と同じくらいしか食べないんだ。グリフはいい子だよね?

 

ちなみにグランとスオウはお肉が好きだ。グランはじっくりと焼いて肉汁が滴ったお肉が好みでスオウはつくねのような団子状のお肉を好む。

 

「食べ終わったら狩りに行こうね?」

「グル!」

「UON」

「HOU」

 

料理を買った屋台の人たちから最近皇国では食糧不足が目立っているらしい。モンスターからのドロップ品はともかく規模が小さな村や町では作物が育ちにくくなっているとのこと。

 

ここバルバロス領は国土豊かな王国と近いこともあってそれほど深刻化してはいないようだけど、そのせいで一部の商人たちが利益優先の買い占めを行おうとしたとか。

 

先手を打ったバルバロス家の領主が制限を設けたことによって免れたらしいけどね。まぁ、それはともかくそんな状況だから食料になる物は高値で売れるんだとか。

 

実際、僕たちが今食べている場所ではチラチラと<マスター>やティアンがモンスター相手に戦っている。ここは王国側に近い場所だから、魔獣型のモンスターが居るからね。

 

考えていたら三人が食事を食べきるところだったから、僕も残っている料理を平らげる。さてと、あまり町から離れないところで狩りをするとしますか。

 

 

そう言うわけで始めた狩りだけど、地上に居る魔獣のモンスターはすぐに他の<マスター>やティアンに討伐されるのでなかなか戦えない。時折、怪鳥種が空から奇襲してくるがスオウが牽制し、僕が矢で翼を貫いてバランスを崩したところでグリフがとどめを刺している。

 

しかし、このままだとグランの戦闘経験が積めないなぁ。少し町から離れるとしよう。町が見えるぎりぎりまで離れているとゲイル兄貴から【テレパシーカフス】から連絡が来た。新しい武具を買ったので試すために合流したいらしい。

 

僕はスオウにゲイル兄貴を迎えに行かせ、ここらで待つことに。そんな時近くで戦闘音が聞こえた。なかなか派手な音が聞こえ、気になったので見に行ってみると・・・

 

「うわぁ~」

 

思わず声が漏れたが致し方なし。なんせそこで戦っていたのは人型ロボットと巨大な牛のモンスターだったからだ。

 

人型ロボットは三階建ての家くらいの大きさで、結構ながっちりとした重厚な見た目だ。ただなんというか、以前兄貴たちと見たアニメの勇者シリーズ系のロボットに似ている。あれがアニメに出てきても違和感がないくらいには。

 

そんなロボットと相対している牛のモンスターは頭上に【タイラント・ビックバイソン】という名称が浮かんでいた。ロボットが組みあえるほどの大きな牛だ。

 

とりあえず戦い始めてまだそんなに時間が経っていないのかな? とかなんとか思っていると、牛が角を跳ね上げて人型ロボットを押し返した。

 

これは援護したほうがいいと判断して、グリフとグランに合図を送り駆け出した。

 

「援護が必要ですか!?」

『頼みたい! ドロップ品の買い取り額を半分渡すので頼む!』

 

声を上げて人型ロボットに言葉を掛けるとそのような返答が。多分TYPE:チャリオッツの<エンブリオ>かな? いらないと言われなくてよかったと思いつつ、モンスターに向けて弓を構える。




なお、パイルバンカーの装備スキルは作者のオリジナルです。原作で誰かパイルバンカー手に入れて使ってくれないかな?
作者もパイルバンカーにはロマンを感じます。影響を与えたのはス〇ロボ大戦ですw
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