◇ 【
次の日にログインすると、ゲイルとウッドが知り合ったマスターがパーティに入れてくれないかと持ちかけたそうだ。二人は反対しないが俺の意見も聞かないとと言ってこの話は後日としたらしい。
「二人が反対しないなら俺も反対しないだがな?」
「そうは思ったけどこれはけじめだから」
『うむ。やはりちゃんと意見は聞かんとな』
まぁ、円満な関係を築く上では重要だけどな? そんな俺たちは今は町の冒険者ギルドで依頼のカタログのようなものを見ながらその人物を待っている。
「なんだか付近の狩場の調査依頼が多いな?」
『俺たちの情報が原因だな』
「時間が経てば距離が離れた狩場も調査するかな?」
二人が知り合ったマスターと遭遇したモンスター関連の懸念事項も聞いている。生息地域を追われただけであればいいが・・・
「最悪は<UBM>が出現して暴れてる場合か・・・」
「ティアンの人たちには脅威だよね・・・」
『反対にマスターからしたら突発的なイベントだな』
本当にな。実際に周囲のマスターにはこの事態をチャンスだと考えている輩がいるだろう。耳をすませばそれっぽい会話が聞こえてくるし。
「ここに居るかね?」
「どこでもいいさ。俺たちならAGIを高さでしらみつぶしにできる」
「まずは発見、その後は尾行だ。他のクランに後れを取るわけにはいかん」
こんな感じでな? そういう奴らは遊戯派なんだろうが、俺たちからしたらあまり気分のいい会話じゃないんだよなぁ・・・
ちなみに世界派と呼ばれるマスターは町の警護の強化を手伝っていたり、この町周辺の村々に知らせたりしているらしい。
周囲の聞こえてくる会話になんとも言えない感情が渦巻く中、ゲイルとウッドが何かに気付いたように立ち上がった。二人の視線を追うと冒険者ギルドの入り口付近のイケメンがこちらに手を振りながら近づいてくる。
「すまん! 遅くなった! 野良パーティを組んでたんだが、トラブルがあってな」
「大丈夫ですよ? そもそも待ち合わせがしにくいですからデンドロは」
『フレンドに連絡する手段がほぼないしな。【テレパシーカフス】は距離の問題があるし・・・』
確かにこのデンドロではゲーム内で離れた相手との連絡手段がほぼないと言っていい。【テレパシーカフス】は範囲内のフレンド限定だし、正直な話そう言う能力の<エンブリオ>くらいじゃないか?
まぁ、考えるのは後にして友人になるかもしれないイケメン君に挨拶をするか。あちらも俺に気付いてこちらへと歩いてきてるし。
「そちらがゲイルとウッドのパーティメンバーかな?」
「ああ、そうだ。ついでに言うと俺たち三人は兄弟だな」
「おお、兄弟でデンドロやってるのか! 俺はリアルの知り合いでやってるやつがいないから羨ましい」
ん~話した感じ裏表がない青年って印象だな? まぁ、パーティに入れるのならこういう性格の方がトラブルにならないだろう。
「とりあえず、弟二人が問題ないと判断したのなら俺は特に反対はしないが、念のため今日はお試しと言うことで一緒に狩りに行かないか?」
「おう! こっちとしても問題ないぞ」
と言うわけで、適当な討伐クエストを受けて4人で町を出ることに。
その後は何度か戦闘をこなして、アキラの<エンブリオ>である【オーパーツ】がゲイルと一緒にタンク役をしてくれるのでゲイルの負担も減り、効率が上がった。
全く問題がないわけではないけどな。まずはアキラの【オーパーツ】が大きすぎて援護がしにくいこと。相手のモンスターが【オーパーツ】と同じくらいか大きければ問題ないが、小さい場合は俺やウッドの攻撃が狙いにくい。
デンドロにはパーティメンバーにもフレンドリーファイアの危険があるから、援護するためにはモンスターの背後に回り込むしかないのだが、これだって確実性はないしな・・・
後は【オーパーツ】の攻撃手段の少なさ。現在【オーパーツ】は第三形態で攻撃手段が格闘戦と第三に進化した時に覚えた攻撃スキル《バースト・ジェット》以外ない。
この問題に関しては【オーパーツ】に装備スロットがないこともあり、進化に期待するしかないのが現状とのこと。
「多分だが変形特性のデメリットだと思う。同じ変形特性のチャリオッツやガードナーはドライフでは割とあるんだが、ほとんどが装備スロットがないんだ。もともとの武装以外で武器や攻撃手段は進化に期待するしかないんだよな」
俺の疑問にアキラはそう答えた。現在の【オーパーツ】は第三形態らしいので上級に進化すれば改善されるのかね?
とりあえずは攻撃手段は俺たちがカバーすればいいし、援護にしても俺はAGIが高くウッドも空を飛べるグリフに騎乗しているから、なんとかできるだろう。
◇ 【
休憩を挟みながら街の周辺で狩りをしている僕らは、ちょうど地竜種である鱗や爪が鋭利な刃物となっている【ブレード・スケイルドラゴン】3体と戦闘中。
1体をゲイル兄貴とアキラさんが対応して、残る1体を僕とクロス兄貴が攻撃中。どうもこのドラゴンたち親子らしく、さっきから2体の圧がすごいんだよね。
でも、こいつらはアキラさん曰く結構狂暴な個体らしく見つけたらギルドに報告か撃破が好ましいとのこと。そう言うわけなので手加減はしない。
そんなことを考えていると、クロス兄貴が相手の地竜の左手の爪を叩き折った。
「GAA!?」
その事態に地竜はバックステップで後退し、四肢に力を込めて鋭利な鱗をすべてクロス兄貴に向けると・・・
「GAA!!」
その鱗が一斉にクロス兄貴に撃ちだされた。あとでアキラさんに聞いたところこの攻撃は【ブレード・スケイルドラゴン】の奥の手スキル《弾丸鱗射》と言う物で、見た通り鱗を弾丸のごとく発射するスキルだ。
奥の手であるので威力はかなり高いのだが、致命的な欠点がある。それは使用後のENDとSTRの低下だ。自身の攻撃手段と防具的な役割でもある鱗を発射するため再度生えてくるまでステータスが大幅に低下する。
AGIは多少増えるらしいが、二つのステータスの低下を補えるほどではないらしい。
などと考えている間にも鋭利な鱗はクロス兄貴に向かってくる。しかし、クロス兄貴は冷静に対処する。
「暴風よ! 地の底から吹き荒れろ! 《オーバーマジック》!《サイクロンゲイザー》!」
《詠唱》で魔力を余分に消費させ威力を底上げ。さらには【ガルドラボーク】の固有スキル《オーバーマジック》でさらに魔力追加。
《サイクロンゲイザー》は【風術師】で覚えるスキルで、地面から強風を発生させる。攻撃手段と言うよりは相手の妨害が主の魔法だ。地面から発生するので出が早くSTRやENDが低い相手はバランスを崩す。
本来ならそれらが低い後衛や斥候などを狙うのだが、クロス兄貴の《オーバーマジック》で強化すると・・・
相手の鱗が地面から発生した強風と言うより暴風と言うべき風に上空へ方向を変えた。
「GA!?」
自身の切り札をあっさりと破られた相手は呆然と上空へと視線を向ける。その隙を逃がさず僕はグリフへ指示を出し、瞬時に相手の懐へと飛び込んだ。
「グル!!」
そのままグリフは前足を勢い良く叩きつけ、地面へ相手をめり込ませた。そのまま光の粒子となりあとに残ったのは【剣鱗竜の宝櫃】だけ。
「「GAAA!!!」」
子供がやられたことに腹を立てた両親がさらに圧を増して相手しているゲイル兄貴とアキラさんに攻撃を浴びせる。
『流石に子が倒されれば怒るよな・・・けどな? こっちもお前らに誰かを殺させるわけにはいかないんでな!』
地竜の攻撃を装甲で受けながらアキラさんの【オーパーツ】は的確に相手の急所を殴り、確実にダメージを与えてる。
『そう言うことだ。こっちにはあんたらを生かす理由はないんだ』
ゲイル兄貴は大盾を使い攻撃を防ぎながら、大型のメイスで相手の鋭利な鱗や爪を砕いている。それを見た僕とクロス兄貴は二人を援護するために加勢しに向かう。それからすぐに二体の地竜も宝櫃へと変わるのに時間はかからなかった。
【ブレード・スケイルドラゴン】3体を倒した僕たちは小休止をするために見晴らしのいい場所で軽く食事をしていた。
「やはり生態系がおかしなことになってるな? あの地竜種は本来は山岳地帯に生息しているモンスターだ」
「そうなのか?」
「もともとドライフは<厳冬山脈>と隣り合わせになっているせいで地竜種や怪鳥種が多い。その山から下りてくる奴らも居て何体かは討伐してたそうだが、生き残りが新たな住処を得て住み着いた例もある」
アキラさんの説明は僕たちの事前の情報収集でも知りえた情報だ。
「そんな奴らが慣れた住処を離れる理由なんて追い出されたか、生きるために自ら出て行ったくらいだろう。いよいよきな臭さが増してきたな・・・」
そう言って難しい顔をするアキラさん。こうなると僕らも予定変更するべきかな?
「気になるのなら調査依頼も受けるか?」
「ありがたい提案だが、無理はしないさ。<UBM>目当てのマスターが多いし俺は町に万が一のために残るさ」
「そっちの方がいいだろうな。俺たちも手を貸すぞ?」
クロス兄貴がアキラさんに提案するが、アキラさんの考えは町の防衛の方を重視しているようだ。ゲイル兄貴もそれに同意し協力を提案する。僕とクロス兄貴も反対意見はないのでそれにうなずく。
「ありがたい。あてにさせてもらうが、予定はいいのか?」
「それほど急ぐ旅じゃないし、今は急ぎの用事もないよ。それにこれを無視したら気になっちゃうよ」
僕はそう言ってアキラさんに対して気にしないように伝える。
その後は狩りを再開し、何戦かした後に町へと帰った。それから四日間同じように町周辺で狩りをするのだった。
◇ 【
それからの四日間は特に何か問題も起こることなく戦闘をこなした。しかし、アキラさん曰く戦ったモンスターの何割かは本来は町周辺で戦闘するようなやつらではなかった。
マスターが調査を進めているのが、モンスターの本来の生息地域にところどころの大きなモンスターが戦闘した後や居た痕跡が残っているらしいのだが、肝心のモンスターは見つかっていない。もしかしたら見つけたマスターの集団が特典武具欲しさに隠しているかもしれないが、それとてもしかしたらの話だ。
「なかなか事態は進まないな・・・」
「こうも静かだとある意味不気味だな」
なかなか解決しないこの件に対して俺たちだけでなく、町全体で不安な雰囲気が漂っている。
「まぁ、いずれは解決するさ。たとえ最悪の事態になったとしても今なら町を守ろうとするマスターも増えたしな」
アキラさんがそう言う理由はこの事態に対してドライフの首都から有名クランや個人ランカーが数人事態解決のためにこの町へやってきたことだ。
「皇国第二位クラン<フルメタルウルヴス>のオーナーにして討伐三位でもある【魔砲王】ヘルダイン・ロックザッパー 彼らはティアンともいい関係を築いている世界派のマスター集団だ。頼りになる」
「他に俺が聞いた話では“悪食”っていう人が原因であるモンスター探してるらしいな」
俺がそう言うとアキラさんはなんというか苦虫を噛み潰したようなそんな何とも言えないような複雑な顔をした。
「問題ある人物なのか?」
「いや、まぁ・・・ティアンに何かするっていうタイプではないんだが・・・彼はかなり特殊でな? 詳しくは説明したくない。すまないが察してくれ」
「OK。それを聞いたら無理には聞けんよ」
何やら事情がありそうなのでクロス兄貴が早々に話を切り上げた。
「町の防衛に大丈夫そうなら、そろそろドライフの首都にでも行くか?」
「そうだね。有名クランが防衛してくれるのなら僕たちが居ても連携面で邪魔になるだけだろうし・・・」
俺も無理に話を聞かないために早々に違う話題を振る。それにウッドがのっかった。
「それらな俺も同行していいか? こっちの友人で今首都に居る奴が珍しい物を造るから見に来ないかと誘われたんだ」
そう言ってアキラさんも一緒に期待と言ってきた。
「こっちは問題ないよ。むしろ心強い」
これまでの戦闘でずいぶん連携も慣れてきたし、町周辺がきな臭い今戦力が増えるのはありがたいね。
「ちなみにその友人が作っている珍しい物って何ですか?」
「ああ、何でも<UBM>の特典武具の生産素材を手に入れたらしくてな? 今トップクランの<叡智の三角>に居るリアルフレと新しいマジンギアを作っているらしいんだ」
・・・あれ? 何やらどっかで聞いた話だな?
「あの・・・もしかしてその友人はアーク・ランブルさんじゃあないですか?」
「え? 知ってるのか?」
ウッドがもしかしてと思ったのかアークの名前を出して確認すると、どうやら想像した通りだったようだ。世間が狭いと言うのを実感した瞬間だった。
詳しく聞くとアキラさんとアークはほぼ同時期にデンドロを始めて、首都で知り合っていこう交流を続けていたと言う。時々はアークさんと狩りにも行ったとか。
「いや~まさか三人がアークが言ってた新しい友人だったとはな」
「こっちだって驚いたよ」
クロス兄貴の言葉に俺とウッドも頷く。
「はっはっは! 確かにそうだろうな。 だがそれらな一緒に行って案内もできるし改めて同行してもいいかな?」
「問題ないぞ」
「歓迎します」
「よろしくな」
「おう! こちらこそな? あと名前も呼び捨てにしてくれ。そっちの方がこっちとしても助かる。さん付けで呼ばれるのは慣れてないんだよ」
アキラがそう言うのでこれからはさん付けはなしで呼ぶとしよう。
「この町での用事は済んだんだよな?」
「ああ、本来の目的である銃も手に入れたし、さらには杭打機も余分に購入した」
アキラに合った最初の戦闘の後に杭打機を買った店に向かい、他の杭打機を購入したからな。時間も経たずに現れた俺に対して店主のばあさんに誤解されそうになったが。
誤解を解いて店に残っていた別の杭打機を2個購入した。
【ZVGギガンテック・アンカー】
【高位技師】が造った杭打機。威力重視で一撃は重いが扱いずらさが増した
・装備補正
攻撃力+1600
防御力+400
・装備スキル
《ギガントクラッシャー》
※ 装備制限:合計Lv400以上
《ギガントクラッシャー》 アクティブスキル
スキル使用時に攻撃力を3倍加。
ただし、スキル再使用に12時間必要で装備攻撃力0に防御力半減。
【SVGソニック・ランス】
【高位技師】が造った杭打機。連続3回杭を一気に打ち込む。
・装備補正
攻撃力+1200
防御力+150
・装備スキル
《リボルテック・ランス》
※ 装備制限:合計Lv380以上
《リボルテック・ランス》 アクティブスキル
スキル使用時に攻撃力を1.5倍加。連続で3回杭を打ち込む
ただし、スキル再使用に3時間必要で装備補正が0に。
これらを買った。さらに銃も買おうと相談したところ売れ残りを購入したお礼に銃専門に扱う高級武具店の紹介状を書いてくれた。
そこへ行き、銃をいろいろ物色したところショットガンとサブマシンガンに大口径リボルバーを購入。これらは杭打機ほど特徴的でもなく装備スキルもない。
ショットガンは俺がタンクだから相性の良さで購入。サブマシンガンは中距離用として。大口径リボルバーは中距離の威力重視として購入。
店の人からはアサルトライフルを勧められたが、片手で扱いずらくなんとなく気に入らなかった。俺は盾を持つし片手で扱える銃の方がいいしな。なお、ショットガンも本来なら両手で扱うが片手で扱えるものがあったのでそれを購入。
用事も済んだし、その後の話し合いで他の用意が済み次第ドライフ首都を目指すことになった。
《サイクロンゲイザー》
オリジナル風魔法。イメージは間欠泉。本記に記したとおり本来は敵後衛や前衛ステータスが低い【斥候】や【弓士】などを邪魔するだけの魔法。
余談ではあるが、この魔法を使いスカート捲りをするマスターがいるとかいないとか・・・別名【男の小さな夢をかなえた魔法】