三兄弟の系統樹   作:出来立て饅頭

6 / 69
第六話 <ノズ森林>での狩り

 ◇  水谷 流

 

 

俺は昼飯用に買っておいたおにぎり二個とインスタントの味噌汁を食べながら先ほどのことについて考えていた。

 

PKたちに襲われた突発的な対人戦闘のことだ。あの戦いは相手がこちらの<エンブリオ>の能力を調べなかったことと格下だと侮っていたから勝てた。ゲイル・・・高次ならこのことに気付いているだろうな。芳樹はどうだろうな?

 

あの戦いではっきりしたが、<マスター>にとって<エンブリオ>の能力は戦闘を左右する鬼札だ。Lv差があっても<エンブリオ>の能力次第では遥か格上でも倒すことができるな・・・

 

<マスター>同士の戦いでは<エンブリオ>の能力が勝敗を左右する。あとはジョブとのシナジーも大切だろうな。いくら強力な<エンブリオ>でもジョブと相性が悪かったり、全く意味が無かったりする場合は脅威度が下がるだろうな。

 

それらを踏まえて俺達のジョブとのシナジーを考えてみよう。まずは俺自身だが、これは相性はいい方だろう。スキルの《マジック・アブソープション》は魔法を吸収する。PKに勝てたのはこれのおかげだと断言できるしな。

 

敵味方区別しないのは困ったものだが、考えようによっては悪くないだろう。2つ目のスキルである《オーバー・マジック》のために自分の魔法攻撃でMPを溜めることができるのだし。

 

それにこの《オーバー・マジック》は俺にとっては切り札となりえる。PKに止めを刺した《マナ・ブレード》はこのスキルで威力を底上げしたからな。

 

《マジック・アブソープション》も俺は【魔法剣士】なんだし、この結界スキルを展開しながら魔法攻撃が主体の<マスター>及びモンスターと接近戦をすれば、相手は魔法を一切使えなくなるしな。

 

次にゲイルの場合を考えてみよう。ゲイルの場合は俺よりも相性がいいだろう。【騎士】はHPとSTRとENDのステータス補正があるジョブで相性抜群だ。ただ、今のところガードナー運用できない点が気になるところだが・・・

 

「そもそも、なんでゲイルの【ポルックス】はTYPE:アームズ・ガードナーなんだ?」

 

正直なところ普通に防具性能とステータス補正特化なアームズだけでいいような気がする。気になって調べてみたら、【ポルックス】と言うのは双子座の星の中で最も明るい星なんだと。

 

防具と自立行動・・・二つの特性があるのはふたご座だからか? これに関してはゲイルと進化次第かね?

 

ウッドの場合も相性はいいだろうな。相性の良さは全然発揮してないけどな。まぁ、騎乗するための道具がないのだしこれは仕方ない。PK戦で所持金は増えたから次の狩りでは揃えられるだろうしな。

 

考え事をしながらお昼を食べきり、俺はニュース番組を見ながら休憩してからデンドロにログインした。

 

 

 

 ◇  【弓士(アーチャー)】ウッド・アクアバレー

 

 

僕はお昼を早々に食べて、軽く休憩してからデンドロにログインした。ログイン場所はセープポイントである中央噴水広場だ。またしても僕が最初に来てしまったようでグリフを紋章から出して構いながら待つことにしよう。

 

「クルル~♪」

「よしよし。PKとの戦いではお疲れ様だったね」

「クル!」

 

グリフは先ほどの戦いのことを労う僕に任せて!と言うように胸を張りどこか誇らしげだ。PKとの戦いで所持金が増えたし、グリフに騎乗できる様に装備も買ってから次の狩場に行こうかな?

 

「でも・・・PKか・・・」

「クル?」

 

僕の呟きにグリフは首を傾げるが僕が頭を撫でてあげるとすぐに機嫌がよくなる。こんなリアルなデンドロでもPKが居るのは当たり前なんだけど、ティアンまで襲っているのは僕にとっては信じられない。

 

ティアンは僕たち<マスター>と違い死んだらそれまでだ。しかもモンスターと違い死体が残る。モンスターも消えてなくなるまでは、グロいし内臓なんかも見えたりするけどそれでもいつかは消える。

 

僕たちが倒したPKはティアン殺害まではやっていなかったそうだけど、かなりのティアンに重傷を負わせて指名手配されていたみたい。

 

「僕には理解できそうにないな・・・」

 

兄貴たち二人からしたら理解する必要はないって断言しそうだけど。まぁ、いつまでも悩むことはないかな? 丁度兄貴たち二人が同時にログインしてきたし、このデンドロを楽しむためにも悩むのはこれで終わりにしよう。

 

「また、待たせてしまったか?」

「大丈夫だよ。グリフも居たしね」

「クル」

「じゃあ、グリフに騎乗するための装備を買ったら<ノズ森林>ってとこに行くか!」

 

クロス兄貴の言葉に僕とゲイル兄貴は頷き、グリフも翼を広げてやる気満々だ。僕たちはまずは騎兵ギルドへ向かいグリフの鞍、鐙、手綱を売っているところを訪ねた。幸い騎兵ギルドでも売っていたので少々お高い装備を購入した。

 

購入した装備には【サイズ自動調整】のスキルが有り、騎獣が成長しても問題なく装備できる物だ。お値段はセットで1万3千リルだが、グリフが進化して急成長した場合を考えて購入した。

 

準備ができたので次の狩場である北の<ノズ森林>へと向かう。

 

 

<ノズ森林>に到着し、僕たちは戦闘準備を整えた。クロス兄貴はサーベルを鞘から抜き、ゲイル兄貴は【ポルックス】を装着して盾を左手に直剣を右手に持った。

 

僕もグリスに初騎乗する。本来はモンスターに騎乗するなら《騎乗》スキルが必要らしいんだけど、<エンブリオ>に騎乗する場合は必要と言うわけではないらしい。どういう理屈か疑問に思うけど、お得だと思っておこう。

 

準備は整ったので早速<ノズ森林>へと入る。<ノズ森林>は背の高い木々が生えていて視界が限定される。グリフに騎乗したけどここではあまり高くは飛べないかな?

 

などと考えていると前方から三匹の狼がこちらに向かってきた頭上には【ティールウルフ】と表示されている。狼だからか、かなりの速さで移動している。戦闘準備はしていたので前衛戦闘職である二人が前に出て、僕はグリフに飛ぶように指示。

 

グリフが飛んだ瞬間に【ティールウルフ】三匹と兄貴たちが戦闘になった。クロス兄貴が一匹を担当して、残りをゲイル兄貴が相手している。戦闘前の移動スピードからAGIが高いであろう狼たちはクロス兄貴は問題なく立ち回っているが、ゲイル兄貴はやり難そうだ。

 

ゲイル兄貴のAGIは僕よりも低いし、二匹を相手にしているのでどちらか一方に噛みつかれたり爪で攻撃されている。それでもENDが高いので僅かしかダメージを受けていないのはさすがだ。

 

援護するならゲイル兄貴だと思い、一旦離れた狼に狙いを定めて僕は矢を放つ。放った矢は狼の胴体に刺さり、僕は追撃としてグリフに《ウィンドブレス》を頭の中で指示。

 

<エンブリオ>は口で言葉にせずとも、頭の中でやってほしいことやスキル発動を思えばその通りのことをやってくれる。特に僕のようなガードナーにはそのアドバンテージはかなり高い。

 

《ウィンドブレス》を受けた狼はそのまま吹き飛び、木に激突して光の粒子となりドロップ品を落とした。

 

一匹倒したことでゲイル兄貴は戦いやすくなり、狼が攻撃した瞬間に剣による攻撃や盾で殴ったりしていた。

 

『《野獣斬り》!』

 

止めとして覚えたスキルを使い、狼を切り裂いた。そのまま光の粒子になる【ティールウルフ】。一方のクロス兄貴は・・・

 

「《クロス・ブレード》!」

 

二連撃の攻撃スキルで【ティールウルフ】倒したところだ。<ノズ森林>でも狩りは出来そうだね?

 

 

 

 ◇  【騎士(ナイト)】ゲイル・アクアバレー

 

 

 

最初の戦闘からしばらく経ち、俺達は現在<ノズ森林>の奥でボスモンスターである熊・・・【ビックフォレストベアー】と戦っている。

 

こいつは3m越えの濃い緑色をした体毛を生やした熊だ。ボスなだけはあり俺達が何度も攻撃しているが、まだ倒れない。俺の《野獣斬り》や兄貴の《マナ・ブレード》にウッドの《ツインアロー》などを何度か当てているが、HPが何割か削れるだけだ。

 

熊だしHPとENDは高めなんだろうな。AGIも低いわけではないようだし。とは言え俺達に不安や倒されると言った考えは浮かんでいない。

 

むしろ今が楽しくて仕方がない! 巨大なモンスター相手に仲間と協力して戦う・・・これこそこのデンドロで求めていた物だ! 兄貴やウッドも顔に笑みを浮かべているから、俺とほぼ同じ考えだろう。

 

戦闘状況は俺が熊の真正面に立ち攻撃をしながら、熊の攻撃を俺に集中させている。さすがにボスなだけはあり、上手く盾で受けないと大ダメージを受けてしまう。

 

クロス兄貴は左右正面に回り込んで、攻撃を繰り返しては離れるヒット&ウェイをしている。俺達の中では一番AGIは高いので攻撃役に徹している。

 

ウッドはグリフに騎乗して空中から援護している。地味に通常攻撃のダメージが多いのがウッドだ。グリフも《ウィンドブレス》を使って援護してくれているのでなかなか頼もしいコンビだ。

 

あと、どうもグリフは現段階で騎乗時は4mくらいの高さが飛行限界のようだ。グリフだけの場合は5m以上飛んでいたようだが。これに関しては進化で解決を願うしかないか?

 

「GAAAA!」

 

そろそろこの熊も倒せるか? 頭には何本も矢が刺さり、体も俺や兄貴が付けた切り傷が無数にある。最後まで気を抜かずに行こうか!

 

 

それからすぐに熊は倒れて、光の粒子となり消えた。ドロップ品として【巨大森林熊の宝櫃】が落ちていた。このデンドロではボスモンスターを倒せば【宝櫃】と呼ばれる物をドロップし、それを開けるとボスモンスター由来のアイテムが一つとボスモンスターのLv帯に応じたアイテムが複数手に入る場合があるとか。

 

とりあえず、この【宝櫃】は一番デスペナする可能性が低いウッドが持つことになった。

 

「いや~リアルで多少の恐怖はあったが楽しかったな!」

「緊張の連続だったけど、確かに楽しかった」

「クル!」

『俺もだな。真正面はさすがに怖かったが・・・』

 

熊の息遣いと臭さまで再現するのはどうかと思うぞ? 運営よ・・・・

 

『かなりLvは上がったが、まだまだ時間はあるしLv上げ続けるか?』

「「もちろん!」」

 

二人は俺の言葉に力強く頷いた。俺自身もまだまだ行けるし続けるかね?

 

その後の狩りを続けて成果は【ビッグフォレストベアー】を3匹と【ティールウルフ】13匹、【ブレイズウルフ】5匹を倒した。

 

Lvも全員が16に到達した。新たなスキルも獲得して旨味の多い狩場だったな。

 

俺が覚えたスキルは《乗馬》に《盾技能》だ。《乗馬》は馬や馬型モンスターに乗れるようになり、Lvが上がれば巧みに操れるようになるセンススキル。《騎乗》と似通っているが《乗馬》は馬に特化しているスキルで《騎乗》はいろんなモンスターに乗れるスキルと言う風に区別されている。

 

《盾技能》は盾の防御力が上がり、扱いやすくなるセンススキルだ。防御力が上がるのはありがたい。

 

クロス兄貴は《剣技能》に《マナ・バレット》を。《剣技能》は剣の攻撃力が上がり、扱いやすくなるセンススキル。《マナ・バレット》は簡単に言えば魔力弾を発射する魔法攻撃スキル。なんかどこぞの髪が黄色くなる戦闘民族を思い出す。

 

ウッドは《スパイラルアロー》と《風読み》を。《スパイラルアロー》は貫通力を強化した矢を放つ攻撃スキルだ。《風読み》は風がどこから吹くのかどれくらいの風速なのかが分かりやすくなるセンススキルだ。スキルはともかく通常攻撃は風の影響をもろに受けるから地味にありがたいスキルだろう。

 

そろそろデンドロの内部は夜になるので休憩もかねて一旦ログアウトすることに。ドロップ品の精算も次にログインしてから行うことに決めて俺達はログアウトした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。