三兄弟の系統樹   作:出来立て饅頭

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ゲイルの過去話と<エンブリオ>解説しますよ~


第六十話 ゲイルVS【螺旋機竜 スパイドロン】2

  ◇  ゲイル・アクアバレーについて

 

 

ゲイル・アクアバレーの<エンブリオ>である【双騎鎧 ポルックス】は第一形態の時点で矛盾を持っていた。

 

それはTYPE:アームズ・ガードナーであることだ。現在は第四形態になりウェポン・ガーディアンに変わっているが、第一形態時点で複合型は珍しい。

 

珍しいがメイデンやアポストルにボディのTYPEに比べれとまだ多い。しかし、そんな複合型でもアームズとガードナーの複合型は少ないのだ。

 

その理由はデンドロで一時期に流行ったカテゴリー別性格判断で説明すれば理解できる。

 

これは<エンブリオ>のTYPEでその<マスター>のある程度の性格を判断できる。<エンブリオ>は第零形態時に<マスター>を観察し、どのTYPEになるのかを判断する。

 

その為、<エンブリオ>を考察すればある程度の性格や人間性を判断できるのだ。もっとも、上級以上になるとオンリーワン要素が強くなるため、下級の時にしか使えないものだが。

 

TYPE:アームズを持つ<マスター>は勇気がある人、傷つくことを恐れない、猪突猛進、人情家など。

 

TYPE:ガードナーを持つ<マスター>は臆病、傷つくことを恐れる、優柔不断など。

 

これらを考えると全くの正反対なのだ。それゆえに、上級でどちらかが新たに追加されるのならともかく、最初の段階でこれらを持つのは矛盾でしかないのである。

 

しかし、ゲイル・アクアバレーについてはそうなった理由がある。

 

 

その理由はゲイル・アクアバレーのリアル水谷 高次が小学校時代のことだ。当時の高次は悪質ないじめにあっていた。

 

2040年代になってもいじめ問題は深刻な社会問題として根強く残っていたのだ。しかも、さらに悪質になって。

 

いじめの原因は別のクラスメイトがいじめにあっていたのを高次がかばったことで、その対象が高次に移ったのだ。

 

それからは汚水を浴びせられる、靴を切り刻まれる、果ては学校の裏サイトで恥ずかしい合成写真も晒された。

 

学校の教師たちはいじめを見て見ぬふりをし、積極的にかかわることをしなかった。それどころかいじめを目撃しても何もしなかったのだ。

 

更に高次にとって最悪なことにいじめをかばったクラスメイトすらいじめに加担したのだ。そのことが原因で当初小学三年生だった高次は不登校となり、引きこもりになった。

 

そんな状況の中、高次の家族親戚一同が立ち上がった。高次から事情を何とか聞き出し、両親が学校といじめをしていたクラスメイト全員を訴えたのだ。

 

しかも、親戚の法律に詳しい者や警察関係に顔が利く者たちがあの手この手でいじめの証拠をつかみ教育委員会に提出。

 

これにより学校側はいじめのことを隠し通せなくなり、とうとういじめの事実を認めた。いじめをしていたクラスメイトは両親含めて最後まで認めず裁判沙汰になったが、各証拠がある中では無駄な抵抗だった。

 

結局、いじめをしていたクラスメイトの両親らは賠償金を支払うことになった。その賠償金で高次らの家族は別の県へと引っ越し、高次も不登校児専門のカウンセラーや支援団体らの協力で引きこもりをやめて日常生活できるようになった。

 

そのままカウンセラーの勧めの中高一貫学校へと入学し、大学へも合格。現在は実家近くのマンションで一人暮らしをし、精神障害者も受け入れている運搬会社で働いている。

 

ただ、その経験のせいで他人の行動の意味を察知することが不得手になった。特にいじめを行っていた者たちに女の子が多く、いじめの原因である高次がかばった子も女の子でいじめに加担してしまったことから、特に女性のことが分からなくなった。

 

 

そのような経験をしたことで、高次には本人も自覚しないある思いが根付いたのだ。

 

それは――――「家族以外の裏切ることがない信頼できる誰かが欲しい」と。

 

第零形態の<エンブリオ>はその思いを読み取り、いじめを受けていたクラスメイトをかばった経験も加味してゲイル・アクアバレーのTYPEをアームズ・ガードナーになったのだ。

 

他者を助ける勇気を持ちながらその結果、心が傷ついてしまい臆病になったがそこから数多くの者の助けで立ち上がった。

 

そんな複雑な経験と本人も無自覚な心の思いも正確に読み取った結果、ゲイルの<エンブリオ>は【双人鎧 ポルックス】となったのだ。

 

 

 

 

  ◇  【重厚騎士(ソリッド・ナイト)】ゲイル・アクアバレー

 

 

【螺旋機竜】が奥の手らしきスキルを使ってからは俺が押され始めた。どうも相手のスキルにはステータスアップの効果があるらしく、ステータスの差がまた逆転したのだ。

 

とは言えステータスが上がっただけならば時間を稼げばこちらが有利になるのだが、それも難しい。相手は電撃を纏っているので電撃のダメージも受けるのだ。

 

俺のジョブには属性耐性系のパッシブスキルやアクティブスキルもあるが、スキル特化系のジョブに比べると効果が弱い。

 

それでもそれらを使用しながら、反撃している。その反撃しにして電撃を纏っているせいでダメージを受けてしまいこちらが不利だ。

 

こんな状況だからリオンは早々に【ジュエル】の中へ避難させた。そのせいで俺に攻撃が集中しているわけだが、リオンを失うわけにはいかない。

 

この状況をどうにかするためには俺が決断をしなければならない。それは現在使用している【ポルックス】の固有スキル《ダメージアブゾーブ・フォートレス》を使用し続けるか否か。

 

(この状況ではスキルのデメリットである他の固有スキルが使えないのが痛いな。かと言ってスキルを解除すれば、防御力が激減してさらにダメージが増える。それを他の固有スキルとジョブスキルで耐えられるか?)

 

《ダメージアブゾーブ・フォートレス》はスキル使用するために他の固有スキルを使用できないデメリットがある。まぁ、デメリットはそれだけなので長時間の使用に支障がないのだが。

 

とは言えそのスキルを使用している現状で状況が好転しない以上、それにこだわりすぎるのはどうかと考えるわけで・・・・

 

悩んだ末俺は決断することに。【螺旋機竜】が再度突撃するところに合わせて・・・

 

『《ヘビィアンカー》! 《ガード・ウォール》! 《シールド・バスター》!』

 

スキルを重ねて、相手を大きく吹き飛ばす盾の攻撃用アクティブスキルを使用。その結果、激突した【螺旋機竜】は体勢を崩し何メートルか後退してしまう。

 

その事実に驚いたのか、それとも無視できない(・・・・・)ことでもあるのか俺から距離を離れて再度走り回る。

 

その姿に疑問を持つが、俺は一旦疑問を棚上げして【ポルックス】を紋章に戻して、《瞬間装着》で俺が持っている全身鎧で最も性能がいい【BAA】を装着する。

 

それから続けて紋章から【ポルックス】をガーディアン運用するために呼び出す。【ポルックス】をガーディアン運用する理由としては、俺の被弾率を下げたいから。そうすることで回復できる回数も増えると考えたからだ。

 

そのまま俺は【ポルックス】用の武器として今持っている剣と大盾を渡す。俺の方はアイテムボックスから新しい武器としてメイスと盾を出す。

 

俺たちの準備が整うのを待っていたわけでもないだろうが、準備を終えた直後に、【螺旋機竜】が突撃してきた。

 

(・・・なんか変だな?)

 

一度棚上げした疑問と今の行動が何となくだが繋がっているようなそんな感覚を感じるが、とりあえずは行動しなくては。

 

俺は前に出て、【ポルックス】には俺が【螺旋機竜】の動きを止めたら攻撃するように指示。

 

『《ガード・オーラ》! 《プリズンウォール・バースト》! 《シールド・プリズン》!』

 

俺のスキルを重ねて最後に【大盾騎士】の奥義である《シールド・プリズン》を使用。このスキルは盾で受け止めた相手の攻撃に耐えた場合、相手を動けなくするスキルだ。攻撃に耐えることが大前提ではあるが問題ない。

 

突撃してきた【螺旋機竜】は俺が構えた盾に突撃。甲高い金属音を響かせながら、俺を押し後退させるが俺は耐えた。そのまま相手はスキル効果で動けなくなる。

 

「!!!」

 

自身が動けないことに焦るが、しばらくは何もできないぞ。そのまま相手の後ろに回った【ポルックス】は盾と剣で攻撃。アクティブスキルは使えないが、俺が使用したアクティブスキルの効果は【ポルックス】にも発揮してるし、パッシブスキルも効果は半減だが、確実に発揮している。

 

俺も攻撃用のアクティブスキルを使用しながら、【螺旋機竜】を攻撃。雷撃を纏っているので俺と【ポルックス】もダメージを受けるが、こちらの方が与えるダメージは多い

 

しばらくすると動けるようになった【螺旋機竜】は直進しその場を離れる。俺はその姿を見送ると唐突にすべてが繋がった。俺の周囲を走り回る。連続で攻撃せずにヒット&ウェイを繰り返すその戦法の答えは・・・

 

『そう言うことか!!』

 

それを確かめるためにも次の突撃が勝負だ。俺の周りを走り回った【螺旋機竜】は何度目かの突撃を仕掛ける。

 

『《ヘビィアンカー》! 《ガード・ウォール》! 《シールド・ガード》!』

 

スキルを重ねて発動し、突撃に備える。俺が狙っていることは一発勝負。再度の試みは厳しいだろう。緊張感が支配する場で何度目かの金属音が響くと同時に・・・・

 

『《シールド・パリィ》!』

 

相手を弾き飛ばすアクティブスキルを発動。そのスキルは【螺旋機竜】の回転角を真上に弾き飛ばして・・・

 

『《シールド・ブロー》!』

 

続けざまに盾の攻撃スキルを使用。それは【螺旋機竜】の懐に飛び込んで発動した結果、相手の顎を見事に跳ね上げた。

 

そのまま【螺旋機竜】は勢いよくひっくり返り背中を地面に叩きつけた。その後は横倒しになりじたばたと足を動かしている。時間があれば元通りに立ち上がるだろうが、今が好機だ。

 

『やはり、雷撃も弱まっている気がするな』

 

俺は【螺旋機竜】は走り回ることが前提のスキルを持っていると考えた。前提でありデメリットとして止まると上がっていたステータスがなくなるスキルを。

 

そう考えれば相手が走り回っていたことや止まったときに攻撃せずに再度走り回っていたことにも説明がつく。

 

最後に使用していた電撃を纏っていたスキルも走り回ることが前提のスキルに何かしらかかわっているんだろう。

 

いろいろ考えるが、とりあえず今できる最大の攻撃をぶつけよう。

 

俺は両腕に杭打機を装備して、【螺旋機竜】のお腹部分を攻撃できるように狙いを定めて装備スキルを発動。

 

『《パイル・ストライク》! 《ギガントクラッシャー》!』

 

そのスキルは肉を貫き、機械を壊したかのような音を響かせて俺はそのまま後ろへと吹き飛んだ。

 

「!?!?」

 

言葉にすら聞こえない叫び声を上げながら、それでもまだ生きている【螺旋機竜】だが、それもそう想定はしていた。念の為の準備も。

 

『【ポルックス】!』

 

俺の言葉に行動する【ポルックス】 その両手には長めのツーハンドソードが握られ俺が攻撃した箇所に突き刺す。その攻撃が止めになり、【螺旋機竜】は沈黙し光の粒子となる。

 

 

 【<UBM>【螺旋機竜 スパイドロン】が討伐されました】

 【MVPを選出します】

 【【ゲイル・アクアバレー】が選出されました】

 【【ゲイル・アクアバレー】にMVP特典【電駆旋槍 スパイドロン】を贈与します】

 

 

吹き飛んだダメージに頭を抱えながら、耳に聞こえたアナウンスを聞き、遠目にアキラが乗っているであろう【オーパーツ】を見て終わったことに安堵した。 




ゲイルとアキラが得たMVP特典の詳細は次回で。

ゲイルの過去話と<エンブリオ>については作者の解釈でもあるのでどこかおかしく感じてもこのままいく予定です。

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