◇ 【
何日かしてイベント当日になる。俺たちは速い時間にドライフ首都のセーブポイントに集合していた。今日を迎えるまでの狩りで俺たちもとうとうカンストになり、上級者と言ってもいいだろう。
狩りで消費した回復アイテムなどを補充して、現在はイベント開始時間を待っている。周りを見ると少ないが何やら準備万端な様子で何かを待っているパーティや個人がいる。
「少ないがイベント参加者らしき<マスター>がいるな?」
「結構大規模なのかな? 今回のイベント」
『だとすると内容次第だが大変そうだな・・・・』
ゲイルの発言に俺も頷く。イベント内容は転送されてから明かされるようだが、宝探しだから戦いを強制するようなものではないはずだ。などと考えていたらイベント時刻となり、俺たちは転送された。
転送された直後の俺の視界に映ったのは目に優しい白い空間だった。俺たち以外にも次々と転送されている。
「ここがイベントの場所なのか?」
「さすがに違うんじゃない?」
『ただの説明場所かもな。イベントの説明をしてから別の場所に転送って流じゃないか?』
ゲイルの言葉に納得する。確かにその方が段取り的に難しくなさそうだ。そんな会話をしていると全員転送されたらしく、辺りが薄暗くなり一か所にスポットライトが照らされる。
「は~い。イベント参加者全員の転送を確認いたしました~。これより今回のイベントの説明を始めたいと思います~」
なんて声が響いた瞬間、スポットライトが照らされた場所に二足歩行のベストを着ている猫が現れた。あれってゲイルから聞いたチェシャって名前の管理AIか?
「なお~今回のイベントの説明をさせていただきます管理AI13号のチェシャと言います~ほとんどの方はお会いしていますが、初めての方もいますのでまずは自己紹介~。よろしく~」
そう言って軽い感じて器用に前足?を振っているチェシャ。その姿に何人かの<マスター>がスクショを撮っているようだ。
「さて。これからイベントの説明をしますので~静粛にお願いします~」
そう言うとさきほどまでのスクショのシャッター音が止む。一幕待ってチェシャは笑顔を浮かべて語りだす。
「まずー今回のイベントはー宝探しですー。なので戦闘を必ずするわけではありませんー」
最初の一言に何人かの<マスター>がガッツポーズをしたり、露骨にほっとしている。戦闘には自信がない生産職や支援職の人かね?
「それを前提としましてーこちらの映像に注目ー」
チェシャが前足?を振るとその頭上にホログラムの映像が映し出された。そこに映っていたのは結構広めの島で山あり森あり海岸ありとなかなか探索し甲斐がありそうだ。
「こちらが今回のイベント会場となりまーす。島の上空600メテル、島から30メテルが範囲とさせてもらいまーす。その範囲外は封鎖しておりますので、出られませーん」
ふむ? 範囲外から出たら失格と言うわけではないと。一昔前の対戦ゲームの画面端みたいな感じなのかね。
「その範囲内にたくさんの【宝櫃】が隠されてありまーす。また、今回のイベント用にモンスターも特別に用意してありますので、かなりレアなアイテムが手に入る【宝櫃】が落ちる仕様でーす」
その言葉に何人かの<マスター>の気配が変わる。これは戦闘に自信がある<マスター>だろう。
「そしてこれからの説明がイベントの本題! これらの【宝櫃】にはランクがありまーす。具体的に言えば銅級、銀級、金級にイベント内に3つしかない伝説級。前者はわかりやすい色をしており、伝説級は虹色でーす」
「これらの【宝櫃】はポイントがありまして、イベント終了時間である零時を迎えた時にもっともポイントが多い上位三人には別のアイテムが贈与されまーす」
ほうほう? なかなか大盤振る舞いだな。とは言えここまではいい話しかないからそろそろデメリットの話だろう。
「ここからはイベントの注意事項ー! 最後のランキングは個人でのポイントですのでパーティを組んでいてもポイント共有されませーん」
この説明に落胆するのはパーティで参加している<マスター>たち。俺たちは個人で競う話が出れば恨みっこなしだと事前に話している。まぁ、話を聞いた限りパーティを組んでも問題ないようだが。
「それと、このイベント中にデスペナになってもペナルティは発生しませーん。ただしー! 倒された人はその時点でイベント終了でーす。 ポイントはなくなりませんから安心してくださーい。 倒した人にポイントがプラスされることもありませーん」
それなら一安心なんてことはない。ポイントは変動しなくても倒した人はその瞬間に終わりだと最後のランキングにもろに影響するだろう。極端な話一人だけ残れば確実にレアなアイテムが手に入るのだから。
「最後にイベントが開始したら全員がランダムな島の場所に転送しまーす。他の人とは離れて転送されるので転送直後に目の前に<マスター>がいることはありませーん」
つまりモンスターが居ることはあるんだな。
「これにて説明は以上でーす。では五分後に転送を開始しまーす。それまでに準備してねー」
そう言ってチェシャは消えて、代わりにカウントダウンの映像が流れる。周囲の明るさも戻る。
「どうする? 個人で頑張る? それともパーティでやる?」
「別にパーティでやっても問題ないだろう。誰がレアなアイテム手に入れても俺たちにデメリットなんてないしな」
『まぁ、手に入れるアイテムにもよるだろうが、使えないなら売ればいいしな』
それに俺たちはパーティ組んで頑張ってたわけだしな。今更個人で何とかしようとしてもいい結果になるとは思えん。
「じゃあ、転送したらまずは合流を目指す?」
『それがいいだろうな』
「合流場所はそうだな・・・島の中心に近い山の頂上でいいか?」
俺の言葉に全員が頷く。その後は持ち物を点検しカウントダウンが零になり、俺たちは転送される。
◇ 【
転送された俺の目に移ったのは海岸だった。どうやら島の外側に転送されたようだ。
『とりあえず・・・《
足下が砂場ではなかったので俺の相棒であるリオンを呼びだす。
『BURU!』
『ひとまずは合流地点を目指すか』
呼び出したリオンを軽く撫でた後に騎乗し、騎乗時のメインウェポンである【スパイドロン】と一般的な普通の盾を装備する。盾の方は防御力が高いだけのものだ。
そのまま俺とリオンは島の中心部の山に向かう。途中で【宝櫃】を探そうとも考えたが、それよりも合流を優先しようと思いなおした。
幸い中心部の山はこの島で一番高い。<マスター>とモンスターに出会わなければすぐに辿り着けるだろう。
『なんてことはさすがに望み薄だろうな!』
俺はリオンに方向転換を指示し、リオンはすぐに従ってくれた。その直後にもともとの進路上を何かが高速で通り過ぎる
『GAAAA!』
通り過ぎたのはワイバーンに酷似した飛竜だ。接近には俺の《気配察知》スキルが反応していたので分かった。そのワイバーンの名称は【ブラスト・ワイバーン】
『早速か・・・リオンやれるな?』
『BURU!』
俺の言葉にリオンはしっかりと頷く。そんな俺たちの後ろの上空をしっかりと追跡する【ワイバーン】 そんな奴に方向転換した俺とリオンは正面から戦いを挑む!
『GA!』
その姿に頭に来たのか【ワイバーン】は速度を上げて俺たちへと突撃してくる。それを確認した俺はスキルを発動する。
『《アーマー・チャージ》!』
スキルを発動した瞬間、リオンのスピードが一段上がり急加速した。さらに【スパイドロン】のスキル効果で俺たちを纏う電光も輝きを増す。
その加速に対応できなくて、【ワイバーン】は跡形もなく吹き飛んだ。
《アーマー・チャージ》は【重騎士】で覚える騎乗時用のアクティブスキル。スキル内容は「防御力の半分を最終速度に上乗せする」シンプルなスキル。だが、俺の防御力は結構高いので案外馬鹿にできない。
それが【スパイドロン】のパッシブスキルである《ハイスピード・サンダーブレイク》とのコンボで結構な攻撃力を発揮する。俺は戦利品である銀色の【宝櫃】を回収して考える。
(銀色の【宝櫃】を持っているモンスターでこのレベルか。金色と虹色のレベルが隔絶しているのかでモンスターを探すか、隠された【宝櫃】を探すかに分かれそうだな)
多分だが、虹色である伝説級はもしかしたら<UBM>クラスの可能性がある。下手したら本当に<UBM>かもしれないが。
(あるいは虹色を手に入れるためには<UBM>を倒す必要ありとか? 何にせよ合流が優先か)
などと考えているとリオンが何やら反応し、とある岩陰を気にしだした。またモンスターかと身構えたが・・・
「うう~らしゅかる~どこ~」
そんな下っ足らずな言葉をつぶやいたのは赤いフリフリのドレスを着ている幼女が岩陰から現れた。