◇ 【
翌日。俺達はリアルの朝早くからデンドロにログインしていた。いや~昨日は戦闘をしたことで思った以上に精神的疲労が溜まっていたようでログアウトした直後はすごくだるかった。
他の二人も同様だったらしく、無理をして仕事に差し支えるとまずいので昨日はそのままログインせずに夕食を食い、風呂に入り就寝した。
リアルでは朝早い時間だが、デンドロ内では日が高い。とりあえず最初にすることは・・・・
「まずは、昨日のボスからドロップした【宝櫃】を開けようぜ?」
「そうだな」
「何が出るかな・・・」
ウッドに預けていた3つの【宝櫃】を3人で分けて同時に開ける。出てきたのは・・・
【【巨大森林熊の皮鎧】を獲得しました】
【【アリテウム】を2個獲得しました】
【【巨大森林熊の全身毛皮】を獲得しました】
【【巨大森林熊の爪】を獲得しました】
【【巨大森林熊の牙】を獲得しました】
【【巨大森林熊の皮装備一式】を獲得しました】
【【クルゴルム】を獲得しました】
順番に俺、ゲイル、ウッドが獲得したアイテムだ。俺の手には濃い緑家尾の毛皮の皮鎧と小さな赤い宝石のような物が。
ゲイルはまるで貴族の館にあるような熊の全身毛皮と爪と牙が。ウッドは俺の皮鎧と皮手袋、皮靴、緑色の皮ズボン、さらに熊の頭をそのまま利用した頭巾の様な頭装備に黒水晶のような物。
「これを見るとウッドが一番あたりか?」
「俺のは完全に素材系だしな・・・」
「そうなのかな?」
「ちなみにその防具の性能はどんな感じだ?」
ゲイルに聞かれたのでこの防具の性能を見てみよう。
【巨大森林熊の皮鎧】
<ノズ森林>に生息する【ビッグフォレストベアー】の毛皮を使用した皮鎧。
【狩人】などに人気の品。
・装備補正
防御力+60
・装備スキル
《森林隠密》Lv3
《筋力強化》Lv1
※装備制限:合計Lv15以上
《森林隠密》Lv3
場所が森林の場合、《認識阻害》の効果を装備者に付与する
《筋力強化》Lv1
STRが10アップ。
ふむ中々いいな? 能力的には申し分ない。ただ残念、俺の趣味じゃない。これを売って別の防具を買うかね?
俺の方は趣味が合わないが、ウッドの方は気に入っているらしく早速装備している。緑色の毛皮装備の弟が誕生した。これって・・・元祖狩りゲーに似たようなモンスター居たな? あれなんて名前だっけ?
「ウッドは売らずに装備するのか?」
「はい。能力もそうですが、この装備一式を装備するとSTRとDEXが30アップする効果もあるから」
「ああ、それはお前にピッタリだ」
まあ、確かに有用ではあるだろうが・・・なんだか熊に背中から食われているようにしか見えんな・・・
「僕はこの装備を貰いますから、ドロップ品の買い取り金額は兄貴二人で分けていいよ」
ウッドがそう言うので遠慮なく貰うことに。ではドロップ品を売りに行くとするかね!
◇ 【
ボスモンスターのドロップ品である【宝櫃】を開けてから、俺達はドロップ品を売りに武具屋へと来ていた。ウッドは【宝櫃】から出た装備一式を自分の物にしたからドロップ品の買い取り金額は要らないと言っていた。
まぁ、そう言うならお言葉に甘えるが金額が多いならその時に再度相談すればいいしな。
そう考えて近くの武具屋に入り、ドロップ品を見てもらうと全部で4万6千リルの買い取りとなった。特に換金アイテムだった【アリテウム】と【クルゴルム】に【全身毛皮】が高かった。
丁度いいので兄貴と俺は2万リルを受け取り、残りをウッドに渡す。ウッドは頑なに受け取ろうとしなかったが、そこは兄貴として強引に受け取らせた。
所持金が10万リル近くになったので、俺と兄貴の装備を探すことに。兄貴は防具を俺は盾と剣を見定める。しばらくして兄貴は【スフィアシリーズ】と呼ばれる青色の面当て、軽鎧、篭手にズボンとブーツのセット防具を購入した。
【スフィアシリーズ】
青色の面当て、軽鎧、篭手、ズボン、ブーツがセットの防具シリーズ。
すべて装備するとセットボーナスとして《筋力強化》Lv2と《俊敏強化》Lv2の
効果を付与する
・装備補正
防御力+90(全装備の合計)
・装備スキル
《筋力強化》Lv2(セットボーナス限定)
《俊敏強化》Lv2(セットボーナス限定)
※装備制限:合計Lv17
兄貴は下級職3つに就いているから合計Lvは18だ。ゆえにこの防具も装備できてしまう。お値段は5万リルと結構高めだ。
俺の方は今の装備している物より攻撃力と防御力が高い剣と盾を選んだ。アルター王国は騎士系統職業が人気のジョブらしく剣と盾の種類は豊富だったが、今の俺では金銭問題や要求Lvが高かったりして大半が選べなかった。
「準備は整ったし、狩りに行くか!」
「そうだね」
「ちょっと待った」
再び<ノズ森林>へと向かおうとする二人を俺は呼び止めた。
「なんだよ?何か忘れものか?」
「忘れ物と言えばそうだな。俺達のLvも上がったしそろそろジョブクエストを受けてみないか?」
ジョブクエスト。それはジョブギルドで受けられるジョブ専門のクエストだ。冒険者ギルドのように討伐系や素材集め系のクエストもあれば、そのジョブでしか受けられないようなクエストがある。
例えば、俺の【騎士】の場合は【《野獣斬り》スキルで獣型モンスターの一定数討伐】や【《乗馬》にて指定距離踏破】などだな。
これらのクエストはスキルLv上げに使われるし、ジョブクエストはクリアすると経験値が貰えるのだ。更にジョブクエストをこなすことで覚えるスキルや、ジョブクエストをいくつ達成したかが騎士系統職業の転職条件になっている場合がある。
最初にジョブギルドに行った時は、まだ<エンブリオ>も羽化していなかったし戦えるかどうかも不安だったからジョブクエストは受けていなかった。
しかし、今ならLvも上がり戦いも経験済みだから受けてもいいのではないかと考えたんだ。
「あ~確かにそろそろ受けた方がいいかもな?」
「うん。僕も賛成」
「じゃあ、<ノズ森林>に行く前にジョブクエストを見に行くか」
そうと決まれば、早速行ってみよう。そして、順番に回りいくつかのジョブクエストを受けた。
まず俺は3つのクエストを受け、内容は【【ティールウルフ】5頭を《野獣斬り》で止めを刺す】と【獣型モンスター5頭を《野獣斬り》で倒す】に【【ビッグフォレストベア】の討伐】
クロス兄貴は2つで【《マナ・ブレード》を使いモンスター5匹討伐】に【《マナ・バレット》を使い5匹のモンスターにダメージを与える】
ウッドの受けたクエストは少々難しい物を3つ受けた。【一定距離に居るモンスターに五回ダメージを与える】と【五回モンスターの頭に矢を当てる】で最後は【ボスモンスターの【宝櫃】一個納品】だ。
ウッドのクエストは技術的な要素もあり、俺達が受けたクエストでは一番厄介かもしれないな?
「他のクエストでもよかったんじゃないか?」
「僕もそうは思うけど、これくらいできないようじゃ【弓士】はやっていけないって言われてちょっとムキになってね・・・」
まぁ、確かにその通りかもしれないか? とにかく準備は整ったので<ノズ森林>に向かおう。
◇ 【
<ノズ森林>へ向かいそろそろ門が見えてきたところで、北門近くで何やら揉めている声が聞こえてきた。更に近づくとそこには中学生くらいの男女の<マスター>がなにやら言い争っていた。
「だーかーら!大丈夫だって!俺らなら倒せるからよ!」
「む、無茶だよ~」
「そうよ。<エンブリオ>があるからってうまくいくとは思えないわ。考え直しなさい!」
戦士風な装備の男子に、魔法使いのようなロープと杖持ちの男子と、シスターの様な格好の女子が何やら揉めている。
多分だけど僕たちと同じ始めたばかりの初心者だろう。気にはなるが、僕たちは通り過ぎて<ノズ森林>へ入ろうとした。すると・・・
「すいません!そこの三人組の<マスター>の方!よければ一緒にパーティを組みませんか!?」
唐突にシスターのような恰好の女子がそんなことを言ってきた。代表してクロス兄貴が応対しようとするが・・・
「おいシルク! 何勝手なことをしてんだ!」
「あんたにだけは言われたくないわ! 勝手に難易度の高いクエストを受けて私たちの意見を無視してるじゃない!」
「大丈夫だって言ってるだろう!」
「信用できないって言ってるのよ!」
「なんだと!」
そう言って二人はまたも言い争いを始めた。代わりに魔術師風な男子がクロス兄貴に話しかけた。
「す、すいません。引き留めてしまって」
「それは構わんが、あの二人は放っておいていいのか?」
「い、いつものことです」
どうやらあの言い争いはこの子たちにとっては日常茶飯事らしい。
「シルクちゃんが言っていた通り僕達とパーティを組んでください」
「その前に事情を説明してもらえるか?出ないとこちらは判断のしようがない」
「そ、それもそうですね。その・・・実は・・・」
彼の話だとあそこで言い争っている男子が、勝手に難易度の高いクエストを冒険者ギルドで受けてしまい、それについて意見の食い違いで揉めていたと言う。
男子は自分達だけでクリアできると言い張り、女子と男子の二人は無理だと言って諦めさせたいがなかなか言うことを聞いてくれない。そこで女子の方はフルパーティで挑むことに意見を変え、俺達に話を振ったと言うことらしい。
もっとも、クエストを受けた男子はそれでも納得が出来なかったらしいが。
「ちなみになんだが、その受けたクエストはどんな物だ?」
「え~っと・・・それが<ノズ森林>に生息している亜竜クラスモンスターの【ブラストファングタイガー】討伐なんです」
「おいおい・・・それは三人では無茶だろう?」
ゲイル兄貴が思わずと言った感じで言葉を漏らす。正直なところ僕も同意見だ。亜竜クラスモンスターとは一定以上の強さを獲得したモンスターだ。
このクラスのモンスターを倒すには、下級職に就いた一パーティ分の戦力か上級職一人分の戦闘力が必要とされるとネットの情報として見た覚えがある。
この例えはティアンの場合で考えているので<マスター>にも適用されるかはわからないが、それでも基準にはなる。少なくとも始めたばかりと思われる初心者が受けるクエストではないよね?
「正直な話、僕も無理だと思います。でも・・・ガルドは一度決めたら頑固なので」
「ふむ・・・悪いが俺達の方でも相談したい。その間にあの二人を落ち着かせておいてくれ」
「わ、わかりました!」
そう言って魔術師風の男子は二人の方へ駆けて行った。僕たちはその間に相談だけど・・・
「クロス兄貴、僕はあの子たちに協力したい」
「俺もだな。ここで知らん顔するのは違うだろう」
「まぁ、俺も同意見だが・・・お前たち意見を言うのが速すぎだ!」
クロス兄貴の言葉に僕とゲイル兄貴は苦笑するしかなかった。仕方ないじゃないか、見捨てるのは可愛そうだしフルパーティ戦も経験したいからね。それから向こうが落ち着くまで待ち、言い争いも収まりこちらに近づいてきた。
「こちらもこの頑固者に納得させました。それでそちらの意見は?」
「ああ、パーティのお誘い受けさせてもらう。しばらくの間よろしく頼むな」
「は、はい。ありがとうございます!」
「よ、よろしくお願いします」
「とりあえずはよろしく・・・」
クエストを受けた原因の男子は不満があるようだが、一応は納得してるよね?
「とりあえず、こちらの自己紹介だな。俺は【
「俺は【
「僕は【
目の前の三人は兄弟と言う部分で驚いている様だ。
「私は【
「ぼ、僕は【
「俺は【
彼らと共に僕達は初めてのフルパーティ戦をすることになった。