三兄弟の系統樹   作:出来立て饅頭

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前半はちょっと悲しいお話です。


第九話 彼らの選択とその後の行動

 ◇  【騎士(ナイト)】ゲイル・アクアバレー

 

 

クロス兄貴の言った事を彼らはどう受け止めるのだろうか。俺達が倒した【ブラストファングタイガー】に子供が3匹も居た。これは間違いないだろう。

 

こんなモンスターが蔓延る世界で戦闘能力がない生まれたての子供たちだけがここに居たのが、その可能性を高めている。

 

「・・・・嘘ですよね?」

 

ただ、シルク君は信じられないといったふうに言葉を絞り出す。あるいは無意識に出た言葉かもしれない。

 

「残念だが・・・可能性は極めて高いだろう。そもそもこんな場所に子供たちだけで親が居ないのは不自然だ」

 

クロス兄貴はそんな彼女の言葉にも揺らがずに淡々と可能性を告げる。

 

「っ!」

「「「にゃ?」」」

 

シルク君は堪らず、三匹の子供の虎たちをいっぺんに抱きしめた。俺達のやったことは間違いでも残酷な事でもなんでもない。危険なモンスターを討伐したただそれだけだ。

 

しかし、無垢な子供たちの親を奪ったことも間違いのない事実なのだ。虎たちはそんな彼女の心情を理解してない・・・いや、理解できるはずはないか。虎たちはそんな彼女の頬を舐めたり、嬉しそうに鳴き声を上げるが・・・

 

「ごめんね・・・ごめんなさい!」

「「「にゃ~」」」

 

シルク君はか細い声で虎たちに謝っている・・・そんなシルク君の後ろでもどうしたらいいかわからずに呆然と立ち尽くすガルド君とタタン君が居た。

 

彼らもまた悩んでいるのだろう。そんな中タタン君が俺達に声を掛ける。

 

「・・・この子たちはどうすればいいですか?」

「・・・方法は3つある。1つ目はここで討伐すること」

「「「!?」」」

「断っておくが俺は何も残酷なことを言っているわけではないぞ?むしろここでこの子らを見逃せば、成長してティアンを襲うようになるだろう。それを阻止するための方法だ」

「「「あっ・・・」」」

 

そう、いくら可愛くてもこの子たちは虎であり、成長すればモンスターとして人を襲うようになる。クロス兄貴が言っているのはこのデンドロでは当然の考えだ。

 

「・・・残り2つは?」

「2つ目は従魔師ギルドに買い取ってもらうことだ」

 

【従魔師】はモンスターを自分の戦力として戦わせるジョブだ。そのジョブギルドではモンスターの売買も行っており、子供のモンスターの世話や一定Lvまで上げることも行っている。

 

「・・・最後はなんですか?」

「3つ目はこの場に居る誰かが【従魔師】になってテイムすることだ」

 

【従魔師】はモンスターを戦わせるジョブ。このジョブに就けば《テイム》と言うスキルを使えるようになる。このスキルは主に野性のモンスター相手に使い、仲間にして戦力を手に入れる。

 

「「「・・・」」」

 

三人は悩んでいる。おそらくは【従魔師】になってこの子たちを仲間にしたいと考えているだろう。だが、この子たちの親を奪ったと言う事実がそれでいいのかと不安をよぎらす。

 

「俺のおすすめは従魔師ギルドに買い取ってもらうことだ。歓迎されるだろうし臨時収入も期待できるからな。少なくともこれならその子たちが他のモンスターにやられることも飢え死にすることもない」

 

クロス兄貴のおすすめは理に適っている。何より亜竜クラスモンスターの子供だ。欲しいと考える【従魔師】の<マスター>は多いだろう。しかし・・・

 

「こ、この子たちは僕が引き取ります!【従魔師】に僕が就いて仲間にします!」

 

タタン君がそう言葉にした。クロス兄貴はそんなタタン君を見つめて・・・

 

「その決断は親を奪った責任感からか?」

「な、ないと言えばうそになると思います。で、でも責任感があるといけませんか?」

「ダメとは言えないさ。だが、そこまで君たちが重く考えているのなら・・・」

「重くも考えていません。確かにこの子たちの親を僕たちは討伐したかもしれません。それならこの子たちの今後を考える責任が僕たちにはあります。なら、誰か他人に頼むのではなく僕たちのうちの誰かがやるべきだと判断しました」

 

タタン君はこれまでの気弱な態度を引っ込めて自身の考えを言い切った。その態度と考えに俺達は・・・

 

「ならその子たちを頼むな!」

「何か困ったことがあれば相談に乗るからね?」

「俺達にも責任はあるしな」

 

彼の決意を支持した。

 

「は、はい!」

「タタンはすごいな・・・」

「ありがとう!タタン君」

「ふ、二人もこの子たちのお世話手伝ってね!」

「「もちろん!」」

「「「にゃ~!」」」

 

最後にとんでもないことになったが、彼らが決断したならそれを手伝うだけだ。いやな終わり方になるかと思ったが、後味悪くならなくってよかったよ。

 

その後、俺達は三匹の虎を連れて王都に帰還。北門の門番さんからその子たちが暴れたら責任を取ることを条件に王都へ入ることを許可された。

 

そのまま従魔師ギルドへ行き、タタン君が【従魔師】に就き虎たちを《テイム》した。《テイム》できるか心配だったが問題なく《テイム》が出来た。

 

従魔師ギルドの職員の話だとこれくらいの子供だと《テイム》難易度は低いとのこと。ちなみにこの虎たちの種族名は【ファングタイガー】であり、親よりも弱いモンスターだった。

 

これはモンスターの間では珍しくないんだとか。子供が親より弱く生まれてくるのは普通なんだと。むしろ、珍しいのは親よりも強い種族で生まれるパターンらしい。

 

無事に《テイム》してからは【従魔師】必須のアイテムである【ジュエル】を購入する。これは簡単に言えばアイテムボックスの生物版である。

 

ジュエルの中にモンスターを仕舞い内部時間が進まない設定にもできる。そんなものがないと<マスター>は【従魔師】になれないからな。

 

そんな訳で三匹の虎の子供が成長することも考えて、ちょっと高級なジュエルをタタン君は買った。この購入金額は俺達も出し合った。三人は恐縮していたが、俺達にも協力させてほしいと言って納得してくれた。

 

その後はクエスト完了の手続きをして、ドロップ品の買い取り額を全員で分け合って彼らと別れた。別れる前にフレンド登録も忘れずに行い。また会う約束をした。彼らはリアルで虎たちの名前を考えると言っていた。

 

彼らのログアウトを見送り、俺達も今日はここまでと相談してログアウトした。

 

 

 

 ◇  水谷 高次

 

 

それから次の土日までは、俺達は各自の時間がある日にログインしてデンドロを楽しんだ。主にやっていたのはジョブクエストやプレイヤースキルを上げるために同じジョブのティアンにお金を払い戦闘の動き方を教えてもらった。

 

俺達は戦闘では素人だからな。多少はゲームをやっていたおかげで知ってはいてもリアルに限りなく近いこのデンドロでは技術を学ぶのは無駄にならない。

 

ジョブクエストも同じジョブに就いた<マスター>たちと協力した。おかげで知り合いやフレンドも増えて久しぶりに充実した毎日を過ごしている。

 

Lvも44になりそろそろ最初のジョブもカンストになる。スキルも新しく《瞬間装備》、《鳥獣斬り》、《鉱物斬り》、《アンデット斬り》、《ドラゴン斬り》を覚えた。ただ、これは普通にLv上げで覚えたものでジョブクエストをして覚えたスキルはなかった。二人はいくつか覚えていたので、ちょっと悔しい。

 

閑話休題。

 

そろそろ次のジョブも考えないといけないので知り合いとフレンドのおすすめやネットでの情報収集の結果、騎士系統下級職の【盾騎士(シールドナイト)】か【重騎士(ヘビィーナイト)】が候補になった。

 

【盾騎士】は盾の扱いに特化した騎士で盾を使った攻撃スキルやダメージ軽減スキルを覚える。

 

【重騎士】は鎧に補正を与えるスキルや耐性スキルなど守りに特化したスキルを覚える。

 

二つとも俺の戦闘スタイルにマッチしているのでどちらとか言わずに両方に就くことも検討している。

 

俺のゲーム内の近況はこんなところだ。次は兄弟二人の近況を話そう。まずは二人もLvは40を超え、兄貴はLv42になっている。芳樹はLv43だ。

 

兄貴が覚えたスキルは《瞬間装備》、《魔法強化》、《マジック・スライサー》、《ファイヤーソード》、《ツイストスティンガー》をLvアップで。ジョブクエストを達成したことで《瞑想》、《詠唱》の二つを覚えた。

 

あと、兄貴は魔術師ギルドでティアンの【魔術師】から講義も受けていたらしく魔法属性の火、風、水、土の下級魔法を使えるようになった。ボール系と呼ばれるファンタジーゲームではお馴染みの魔法だ。

 

芳樹は《瞬間装備》、《マシンガンアロー》、《ワイドアロー》、《フォールアロー》をLvアップで。ジョブクエストで《照準》を。

 

全員が覚えた《瞬間装備》はアイテムボックスにある武器をすぐに装備できるもので、武器を使ってある程度戦っていれば自然と覚えるスキルらしい。

 

カンスト後のジョブに関しては兄貴はすでに就いている【剣士】と【魔術師】を上げると言っていた。芳樹はちょっと意外で【騎兵(ライダー)】に就くと言っていた。

 

本人によれば<エンブリオ>であるグリフとの相性を考えて選択したと言う。【騎兵】のスキルに《騎獣強化》と言うスキルが有り、このスキルでグリフを強化できるとのこと。

 

また騎兵系統には下級職に【弓騎兵(ボウ・ライダー)】その上級職【強弓騎兵(ヘビィ・ボウ・ライダー)】があってそれらに就けば【弓士】も無駄にならないと言っていた。よく情報収集している。

 

あと、シルク君にタタン君それとガルド君とも何度か一緒にパーティを組んだ。彼らは学生であるので俺達よりもログイン頻度は少ないが、それでも兄弟以外最初のフレンドだから交流は続いている。

 

あの時の虎たちも元気にしていた。子供なのでしつけに苦労している様だったが、それを含めて楽しそうだった。

 

なお、名前は虎鉄、赤斗、華子に決まったようだ。長男でやんちゃな虎鉄、次男で甘えん坊な赤斗。末っ子で紅一点好奇心旺盛な華子だ。ちなみにこの子たちはグリフに懐いていて、グリフの背中でダラ~ンと脱力するのがお気に入りである。

 

そんなこんなで次の土日になり、五日ぶりに兄弟であることをしようと話していたところだ。約束の時間はすぐだから早速ログインすることに。楽しみだ。

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