異世界の結界魔法によって特定の人物以外の往来を禁じられたテーマパーク、ヘンダーランド。
その正面ゲートから数えて2つ目のエリアである、ヘンダータウン。
達也たちは現在その場所で、このテーマパークのマスコットキャラによる魔法での襲撃を受けていた。
『●▲■★◆▼~!』
意味のある言葉には聞き取れない声を叫びながら、キャラクター達が次々と魔法を繰り出していく。ヘンダーくんは掌から炎を吹き出し、ヘンナちゃんは
1つ1つの魔法はさほど強力なものではなく、達也や深雪にとって対応は容易だ。分解魔法で魔法そのものを無効にもできるし、発動までの隙を突いて強力な魔法でカウンターを見舞うこともできる。
だが、数が容易ではなかった。前述のキャラだけでなく街中に住む数十体のキャラが動員されているせいで魔法の攻撃が絶えず、達也たちがいくら反撃しても次から次へと湧いて出てくる。
しかし、そんな状況でも気づいたことがある。
「お兄様! これって――」
「あぁ……。奴らが使う魔法は、俺達のそれと同じ“現代魔法”だ……!」
達也が奴らの攻撃に分解魔法で対応できるのは、その攻撃に魔法を発生させる根源である“魔法式”が存在していたからだ。高速道路でス・ノーマンと戦ったときには見られなかったそれは、達也の言葉通り、奴らの魔法が自分達の世界由来であることの証左である。
「それはつまり、奴らもエリカの兄君と同じく……!?」
「そういうことだろうな……!」
トッペマの魂が取り憑いていたミアが第一高校にやって来てから、マカオとジョマ達の活動が表に出てこない代わりに魔法師の行方不明者が相次ぐ時期があった。そのときは吸血鬼の餌食になったのだろうと思っていたが、おそらくそれだけでなくこの人形達の“素材”になった者達もいたのだろう。
だとすると、エリカの兄と同じようにどこかに閉じ込められている可能性もある。とはいえ今の状況でその者達を捜索する余裕も無く、達也と深雪は迫り来るマスコットキャラを迎撃しながらエリアを離れようと奔走するしかない。
と、深雪がふと辺りを見渡して、ハッと目を見開いて達也へと顔を向けた。
「お兄様! ――ほのかがどこにも見当たりません!」
「何っ――!?」
「どうしよう……。みんなとはぐれちゃった……」
達也と深雪から数本ほど離れた通路にて、ほのかが1人、周りに怖々と視線を遣りながら小走りをしていた。
マスコットキャラ達による攻撃は、1つ1つの威力は弱くとも密度の濃いものだった。それへの対処に夢中になるあまり、他の仲間達とはぐれてしまったのだろう。もしかしたら敵側も、それを狙った襲撃だったのかもしれない。現にほのかを追い掛けるマスコットキャラはおらず、他の仲間への襲撃に集中しているようだ。
そしてほのかもそれを分かっているからこそ、なるべく早く他の仲間と合流しようと足を進めていた。しかし募っていく焦りに反して、彼女の視界が仲間の姿を捉える様子は無い。
こんな状況を、彼女は最近ネット配信のホラー映画で観たことがある。
リゾート地に紛れ込んだ殺人鬼によってパニックに陥る人々。そんな中、1人はぐれて森の中をさ迷っていた女性が殺人鬼に見つかり、そういった類の映画特有の過剰演出により無惨に殺されてしまうという、まさしく“様式美”に則った内容だ。
しかしどれほど非現実的な内容であろうと、今の自分の状況に照らし合わせると途端に現実味を帯びてくる。
「おやぁ、どうしたのお嬢ちゃん? お仲間とはぐれちゃったのかい?」
「――――!」
特に、自分達を狙う敵がまさにすぐ背後にいる状況ともなれば。
ほのかが恐る恐る後ろを振り返ると、絵本の中から飛び出したかのような、まさしく“生きた雪ダルマ”としか表現できない外見をしたス・ノーマン・パーがそこにいた。眉の角度くらいしか動かせる箇所が無いにも拘わらず、今の彼(便宜上そのように呼称する)は自分を嘲笑っているのだろうと不思議なほどによく分かった。
「人間の魔法使いなんざ幾ら集めても使えねぇだろって思ってたが、こうしてお嬢ちゃんを孤立させるくらいの仕事はできるもんなんだなぁ」
「……わ、私をどうするの? こ、殺すとか……?」
「まぁまぁ、そう慌てなさんな。どうせアイツらのことだ、お嬢ちゃんを人質にでも取れば大人しく姿を見せるだろうよ。殺すかどうかは、それから決めさせてもらうさ」
ス・ノーマンが1歩近づく度に、ほのかが1歩後退る。小刻みに体を震わせる彼女の姿は、いくら一高でトップクラスの成績を修めようと普通の少女と大差無いものだった。
「だから城まで運ぶのに、ちょいとばかし眠ってもらうぜ」
ス・ノーマンはそう言って、空中に氷の
そうして作られた氷の礫が、ほのかへ向かってまっすぐ飛んでいく。
顔を真っ青に染め上げて目を見開き、恐怖のあまり1歩も動けないほのか。
そうして氷の礫は、まったく何の抵抗も無く、ほのかの体を擦り抜けていった。
「――――あん?」
ス・ノーマンが素っ頓狂な声をあげるのとほぼ同時、突然彼の体から炎が上がり、真っ赤に燃え上がった。
「アヂャヂャヂャヂャヂャ――!」
大慌てで手足をバタつかせるス・ノーマンだったが、彼の体に纏わりつく炎はその間にもみるみる勢いを弱め、そしてすぐに鎮火した。
人体自然発火現象は前世紀から様々な場所で報告例が挙げられているが、当然ス・ノーマンはこれが自然現象によるものだとは考えていない。即座に目の前にいるほのかへと顔を向けようとするが、彼女はつい先程までいた場所から忽然と姿を消していた。
そして代わりに、そこから数メートルほど横にズレた場所でブリオネイクとは別に持っていたCADを構えるリーナの姿があった。
「成程、今のはテメェの魔法か……!」
「まんまと釣れるとは思わなかったわ、雪ダルマさん」
系統外魔法、“
この魔法は自分の姿を別人に見せるだけでなく、自分が今いる場所をも偽装することができる。その偽装は情報次元にも及び、達也の眼を欺いて逃げおおせたのもこの魔法によるものだ。
そして普段は架空の人物に仮装するところを、今回はほのかの姿に偽装して仲間からはぐれたように見せ掛けたのである。ちなみに姿はほのかでも声はリーナのままだったのだが、ほのかのことをよく知らないス・ノーマンはまんまと騙されてしまったというわけだ。
「舐めた真似してくれるじゃないの……! 覚悟はできてんだろうなぁ……!」
怒り心頭のス・ノーマンを眼前に、リーナは不敵な笑みを携えてブリオネイクを構えた。
「ひぃっ! な、何かさっきよりも更に増えてない!?」
「これはこれは、100年前よりも種類が豊富になってますなぁ」
『本当ね、一覧表が欲しいくらいだわ』
一方その頃、本物のほのかはしんのすけとピクシーと共に、数十体にも及ぶマスコットキャラクターの群れに追い掛けられていた。
緑色のキャラが炎を吐き出し、桃色のキャラが水鉄砲を放つ。
黒色のキャラが強風を巻き起こし、銀色のキャラが地面を隆起させる。
そんな感じで各々が好きなように魔法を使うものだから、周りの建物や石畳の通路はその流れ弾を受けて大惨事となっている。しんのすけは持ち前の身体能力でアクロバティックに避けているが、ほのかはピクシーの防御魔法による補助を受けながら懸命に走るだけで精一杯だ。
「“アクション・キーック”!」
炎を避けながら建物へと駆けていき、壁を蹴ってジャンプしながら発動した“アクション・キック”によって推進力を得たしんのすけの脚が、マスコットキャラの1体の腹に突き刺さった。そのキャラは「■◆▲●★~!」と意味不明な悲鳴をあげ、その後ろから追い掛けていた他のキャラ数体を巻き込んで吹っ飛んでいった。
『ナイス、しんちゃん! この調子でさっさと次のエリアに――』
「ちょっと待って! 前からも何か来てない!?」
グッと拳を握るピクシーの横でほのかがそう言って指差した先には、現在自分達を追い掛けているのと同じくらいの数のマスコットキャラがこちらに向かってくるのが見えた。ちなみにここは両端に建物が並んだ一直線の通路であり、逃げ場などどこにも存在しない。
「どどど、どうすんのしんちゃん!? このままじゃ――」
「いやぁ、参りましたなぁ」
慌てふためくほのかに、相変わらず呑気なしんのすけ。
そして何やら魔力を溜めている様子のピクシー。
そうして前と後ろからマスコットキャラの大群に挟まれる、まさにその直前、
「3人共! その場から動かないで!」
どこからかそんな声が聞こえてきた次の瞬間、何も無い空中から突然現れた“何か”が次々とマスコットキャラ達に襲い掛かった。様々な場所から様々な方向へと同時に“何か”が飛び交うその光景は、まるで彼らの周りにだけ雨が降っているかのようである。
正体不明の攻撃にマスコットキャラ達は一斉に(表情こそ笑顔のままだったが)慌てふためき、意味を成さない悲鳴をあげながら散り散りにその場から逃げていった。前と後ろからやって来た彼らが即座に後ろと前に逃げていく様に、ほのかがキョトンと目を丸くしている。
ピクシーも訝しげにそれを見つめていたが、足元に転がった“何か”を見つけてそれを拾い上げた。触れた瞬間にピクッと肩を跳ね上げて驚いた様子だったが、即座に持ち直して眼前にそれを持って来る。
「――ドライアイス?」
「良かった。みんな、無事のようね」
ピクシーが声をあげるのと同時、しんのすけ達に呼び掛けながら通路脇の建物の屋根から姿を表したのは、まさしく遊園地に遊びに来たような私服姿の真由美だった。
重力軽減の魔法を掛けながら通路に降り立つ彼女に、しんのすけとほのかが駆け寄っていく。
「真由美ちゃん! 土偶ですなぁ」
「それを言うなら“奇遇”ね、しんちゃん」
「七草先輩、どうしてここに……!? 結界があって入れないんじゃ――」
「あぁ、やっぱり結界に囲まれてたのね。何となく外に出る気になれなかったから、そんなことじゃないかと思ってたわ。――私
真由美の説明に、ほのかが納得したように頷いた。
「それで、状況は?」
『結界を維持しているヘンダー城を破壊するために、できるだけそこに近づこうとしてたところ』
「了解。だったら私も一緒に行くわ」
「ほ、本当ですか!? ぜひともお願いします!」
ほのかが真由美の両手を握り締めて、そのままブンブンと勢いよく縦に振る。あまりの勢いに、同年代と比べても小柄な真由美の体が持っていかれそうなほどだ。
「よ、よろしくね、光井さん……」
「やれやれ、困ったものですなぁ」
そんなほのかに真由美は苦笑いを浮かべ、しんのすけは呆れたように首を横に振った。
* * *
しんのすけ達がマスコットキャラの大群に襲われていた頃、最初のエリアである“おとぎの森”では、エリカ達が複数体の“修次の姿をした人形”に次々と襲われているところだった。
最初は森の中に紛れて逃げる案も考えられたが、何の目印も無い森の中を、しかも敵の攻撃を掻い潜りながら抜けるというのは、たとえ訓練された兵士といえども至難の業だ。よってエリカ達4人は線路によって若干開けている場所を移動しながら、互いに背中合わせになる形で人形達からの攻撃に対処していた。
「ちっ……! さすがにヤベェか……?」
とはいえ、状況は徐々に劣勢へと傾いていた。たとえ修次本人が積んできた技術が無くとも、その剣から放たれる魔法は間違いなく修次のものであり、更には数の利も相まって4人は徐々に追い込まれていた。人形にスタミナの概念が存在しないことも、その要因の1つであったに違いない。
今はまだ目立った怪我は負っていないものの、それも時間の問題だろう。表面上は不敵な笑みを浮かべるレオだが、それについては悔しいが理解せざるを得なかった。
「おい幹比古……、あとどれくらい行けんだ?」
「どうだろうね……。正直、残りの呪符も心許ないよ」
「こうなったらイチかバチか、森の中に逃げ込んでみるか……?」
ジリジリと距離を詰めようとする人形の修次からは目を離さず、レオは丁度自身の真後ろに位置するエリカへと問い掛けた。
しかし、彼女からの返事はなかなか無い。
「……おいエリカ、聞いてんのか?」
「あっ、ゴメン。聞いてなかったわ」
「おい!」
「だからゴメンって。――まぁ、大丈夫でしょ」
直情的なようで戦闘時には頭の回転が早い彼女らしからぬ楽観的な返事に、レオは一瞬だけその表情に怒りを覗かせるが、すぐさま何かに気づいたようにそれを改めた。
「……何か策があんのか?」
「とりあえず、アタシが向いてる方の人形を全力で潰すことだけ考えて」
視線を固定させたまま、レオも幹比古も彼女の指す方へと意識を向ける。直接的な戦闘能力が無い美月も、いつでも動けるように心構えだけは済ませておく。
エリカが地面を蹴って前へと飛び出したのは、それから数秒ほどのことだった。
「――――!」
武装デバイスを通して発動した魔法で一気に加速し、驚きを表すように目を丸くする修次の人形へと詰め寄っていく。剣の柄を握り締める右腕が迎撃に動くが、エリカの優れた動体視力はそれが間に合わないことを瞬時に判断した。こういったところからも、目の前の人形があくまでも偽物でしかないことがよく分かる。
エリカが人形を斬り伏せるのと同時に、レオと幹比古と美月が彼女の後を追う。美月はとにかく走ることに神経を集中、レオと幹比古が他の人形への動向に注視する。
彼らを取り囲む檻の一部が瓦解したことで、4人は脱出に成功した。とはいえ人形達も即座に4人を追い掛け始め、中には魔法を発動しようとする者もいる。
そんな中、4人の先頭を走るエリカが、正面の空間に向かって大声で叫ぶ。
「お手数をお掛けします! ――十文字先輩!」
その瞬間、大柄な体からは想像もつかない機敏な動きで姿を表したのは、まさしく遊園地に遊びに来たような私服姿の克人だった。
エリカ達と擦れ違い、こちらに向かってくる人形達へスッと右手を伸ばす。
その瞬間、自分とエリカ達を取り囲む魔法障壁が現れた。対物障壁自体は実戦魔法師として平均的な技能を持つ者なら普通に使いこなせる代物だが、“鉄壁”の異名を持つ十文字家の当主代理・克人の手に掛かればその強度も段違いとなる。
当然、こちらに向かっていた人形達の足はそこで止まり、擬似的に伸ばした刃渡りで力任せに振り抜いた攻撃も障壁に阻まれてこちらまで届かない。
「感謝します、十文字先輩!」
そして克人の横から、呪符を構えた幹比古が障壁の内側から魔法を発動した。味方が障壁に守られているのを良いことに、空中に発生した電撃の球から放たれた雷には一切の容赦が無く、秒速10万キロメートルの電撃が人形達に一斉に襲い掛かった。
それにより人形達の動きは鈍ったが、残念ながらそれで倒れることは無く未だに2本足で立ったままだ。人間ならば間違いなく致命傷になるが、生物としての生命器官を持たない人形ではそう上手くはいかないということか。
「サンキュー、幹比古!」
とはいえ、それはレオ達も織り込み済みだ。克人の障壁は指向性を持つため、外からの攻撃は防ぐが中からの攻撃は邪魔しない。障壁に一切進路を阻まれずに飛び出したレオとエリカが、電撃を受けて動けなくなった人形達を次々と殴りつけ、斬り伏せていく。
更には克人による、障壁で対象物を叩き潰す魔法“ファランクス”による援護も手伝って、程なくして現在姿を表している人形全てが戦闘不能となった。
周りの気配を探って当面の安全は確保したことを確認してから、4人は克人へと向き直った。
「すみません、十文字先輩。おかげで助かりました」
「いや、構わない。それよりも状況の説明を頼む。コイツらは普通の人間ではないのか?」
「えっと、私の兄が敵に捕らえられまして、異世界の魔法によってその能力がコピーされた人形だそうです。首の後ろにチップがあって、それを外すことによって完全に元の人形に戻ります」
「成程、不思議なものだな」
なかなかのトンデモ技術をその一言で済ませた克人が、地面に倒れる人形の1体に近づき、首の後ろに貼られたチップを剥がした。シュルシュルと体が縮み、片手で持てる大きさのデッサン人形らしき外見になったときには僅かに目を丸くしていたが、特に声をあげることもなくその様子を眺めていた。
そうしてエリカ・レオ・幹比古の3人も人形を元に戻そうと動き出したそのとき、
「あっ、ちょっと待ってほしいんだけど……」
他ならぬ美月が、3人を呼び止めた。3人だけでなく、克人も動きを止めて彼女を見遣る。
「どうしたの、美月?」
「えっと、さっき戦ってたときは見間違いかなって思ったんだけど、その人形から
「プシオン? 紐みたいって――」
「柴田さん! それは本当かい!?」
幹比古が血相を変えて美月に詰め寄り、それに対して美月が顔を真っ赤に染め上げる。そしてその反応で我に返った幹比古が同じく顔を真っ赤にして体を仰け反らせ、そして互いに気まずそうに目を逸らし――
「はいはい、ラブコメは後でやる! それでミキ、何に気づいたの!?」
「ラブコメって――え、えっと、トッペマの説明で『オリジナルと人形の間に魔法的な繋がりがあって、それを通して能力が発動している』って説明があっただろう?」
「そういうことか! つまり美月が見てるその光がまさに“魔法的な繋がり”ってヤツで、それを辿って行けばエリカの兄ちゃんがいる場所に辿り着くって寸法だな!」
「やったじゃない、美月! お手柄よ!」
破顔して抱きついてくるエリカを、美月は仰け反って倒れそうになりながらギリギリのところで受け止めた。いくら気丈に振る舞っていても身内の安否が気掛かりだったのだろう、ホッとした様子のエリカに美月も嬉しそうだった。
「それじゃ柴田は案内を頼む。千葉と西城は彼女の護衛、吉田は俺と周囲の警戒だ」
「はいっ!」
さすが最上級生というべきか、それとも克人だからこそ成せる
* * *
「あったあった、あれがヘンダー城だゾ」
「へぇ……! 夜だからかな、凄く綺麗だね……!」
正面ゲートから2つ目のエリアである“ヘンダータウン”を抜けた先、3つ目の“プレイランド”とを繋ぐ橋の上に到着したしんのすけ・ほのか・真由美・ピクシーの4人(3人と1体)は、湖面に設置された照明でカラフルに彩られたヘンダー城を眺めていた。橋の欄干に身を乗り出すしんのすけはともかく、ほのかもテーマパークのシンボルを目の前に先程までの緊張感を緩ませて景色に夢中になっている。
一方、真由美とピクシーは2人ほど油断しておらず、真由美は周囲の警戒を、ピクシーは真剣な顔つきでヘンダー城をつぶさに観察している。
「どう、トッペマさん?」
『やっぱり、相当頑丈な結界で守られてるわ。ちょっとやそっとの魔法じゃビクともしないでしょうね』
「つまりそれは、魔法自体を無効にするような効果じゃないってことね?」
『確かにそれは救いだったけど、本当に強力な魔法じゃなきゃ無理よ?』
「大丈夫! リーナさんの戦略級魔法があれば、きっとその結界もぶち破れるわ!」
力強く言い放つ真由美に対し、ピクシーはどうにも信じ切れないといった表情だった。
そんな彼女の反応に真由美も一抹の不安を抱くが、けっしてそれを表に出すことは無かった。
「しんちゃん、そろそろ下りなさい」
「ほいほ~い」
もっとも、未だに景色に夢中なしんのすけに注意するという、一種の現実逃避と思われても仕方ない行動をしてしまったこともまた事実だった。
「あらあら、しんちゃんもトッペマも、随分と印象が変わったじゃない」
白い長髪にチョキを象った髪飾りを身につけ、褐色肌で豊満の体を惜しみなく見せつける露出の多い黄色い衣服に身を包む美女が、そんな4人を上空から眺めていた。