ありふれた紳士は世界最強(?) 作:見た目は子供、素顔は厨二
知ってる人はいるかもしれませんが『ありふれた錬成士は最期のマスターと共に』の作者、見た目は子供、素顔は厨二です。
これは作者の悪ふざけ用作品です。
なのであまり批評しないでくれ!
あ、勿論まだありふれ×FGOの方も進めていきます。
ただ気分によって二つの作品の進行度が偏り、最悪どっちか消えます。
あと不定期更新です。
ヨロヨロ。
社会というものは人が互いに探り合い、己の利益を貪る形で成り立っている。それは言うまでもなく常識だ。それが表立ってでなく、人の面の裏側でひっそりと行われていると言うのも常識。
例えば今の状況もそうだろう。
「なあ、婆さん。テメェのガキのせいで俺のズボンがたこ焼きソースで塗れちまったじゃねーか? このズボンクソほど高かったんだぞ? どうしてくれんだ、オラ?」
「す、すみません。クリーニング代は払わせていただき──」
「20万よこせ」
「ええ!? で、ですがクリーニングではそんなには──」
「新品買うに決まってんだろ!? 寝ぼけてんのか! こんなソース付いちまったようなズボン、履けるわけねぇだろ!?」
「財布にも五万円ほどしか…」
「なら財布ごとだな」
原因はお婆さんの孫の不注意によって荒くれ者のズボンにたこ焼きをぶつけてしまったこと。それにより荒くれ者が弱そうな相手だと判断し、増長したことにより財布ごと奪おうとしていた。
荒くれ者は見るからに身長が高く、筋肉質。仲裁に入ったものならば気に入らないの一言で殴られるのは目に見えていた。
故に誰も動かずに周囲を見渡し、「お前が行け」「私には無理だ」と理由を付けて他人になすりつけようとしていた。要は己が傷つきたくないだけなのだが、それを正当化していたのだ。
だからこそ場面は邪魔されることなく、荒くれ者にとって都合良く進む。
「オラァッ!」
「ああっ」
お婆さんは抵抗していたが、遂に荒くれ者の手に財布が渡る。荒くれ者が財布を掴み取る勢いでお婆さんを吹き飛ばす。勿論、ひ弱な力ではそのまま地面に倒れ伏し、地面に叩きつけられる。
そんな周囲が抱いていた予想。
「少し失礼」
しかしお婆さんは空中でその衝撃をやんわりと吸収され、何の反動も受けることなく男の手中に収まった。肩と膝を両腕で支えられる、要は“お姫様抱っこ”という形である。
いつか来ると思っていた衝撃に備えていたようで、力強く閉じられていた瞳が開く。何が何か訳がわからない状況にお婆さんは慌てふためきながらも、視線を男の方へとやった。
「お怪我は御座いませんかな?」
「は、はい」
「それは何より。ああ、降ろさせて頂きますが宜しいでしょうか?」
「え、ええ。ありがとうございます」
「いえいえ、紳士たる者として当然のことをしたまでですとも」
その男は非常に変わっていた。何処にでもいるような日本人の模範解答のような見た目。されどヘアセットはバリバリワックスを用いられた痕跡があり、服は一切のシワがなくきちんとアイロン掛けされていることが明白だ。
見た所、未だ中学生。恐らくは高学年ではあるのだろうが、あまり高くもない身長で、髭も生えていないというのに渋い話し方。
そんな彼はお婆さんを丁寧に降ろし、ついでにお婆さんの服の埃を手で払うと今度は荒くれ者の方を見つめた。先程、お婆さんに対して向けていた目線の温かみはなく、軽蔑したかのような冷たいものであったが。
「其処の君。マナーがなってはいないな?」
「…なんだこのガキ? やる気か?」
「レディー・ファーストも知らないとは。小学校でも習うというのに…君の家は余程切羽詰まっていたと見える」
「…舐めてんのか? “比嘉高のヒデ”って聞いたことねぇのか?」
「ほう、まさか君は高校生かね? レディーから物を奪うような君が? あとそのような異名は聞いたことがないな。私は女性の名前ならばすぐに覚えられるのだが…野郎のはあまり興味がなくてね」
明らかに体格では荒くれ者の方が勝っている。故に荒くれ者は未だに己が優位にあると疑ってもいない。
一方で男は恐怖した様子もなく、ただ荒くれ者を一瞥しながら説教垂れた様子を見せる。あまりにも堂々とした姿に周囲さえも荒くれ者に対する恐怖を一時的に忘れていた。
「ハッ…説教どうも。こっちもなら一つ教えてやるよ」
「ほう。何かね? あまり男から物を受け取る趣味はないのだが」
今もなお余裕を見せる男。そんな様子が気に入らないのか荒くれ者が一歩、また一歩、男へと近づき、やがて拳を高々と掲げた。
「拳の痛みってヤツをなぁ!!」
下卑たに嗤いながら、男に拳に振り下ろそうとした。
しかし拳を振り下ろした先に人はおらず、結果空振りという結果に終わったのだが。
荒くれ者は目標を失ったことに困惑し、視線を彷徨わせる。すると彼はいた。ただし、
「可憐なる御婦人、取り敢えず財布をお返し致します」
「え!? あ、ありがとうございます」
「あとこの後、少しデートをして頂けませんかな?」
「はっ?」
いつのまにか荒くれ者が握っていた財布が取り返されている上に、お婆さんに対してナンパを行なっていた。本人としては真面目にデートのお誘いをしているのだろうが、先程まで一触触発という事態だったというのにサラッと男が無視していたのが荒くれ者としてはいけすかない。
「無視すんなぁあああ!!」
荒くれ者が再度拳を掲げ、男へと突っ込む。筋肉質の大の男が全身を使って拳を繰り出す。本来ならば危惧すべきことである。
だが男は溜息を吐くと、一言呟く。
「デートのお誘い中はお静かに。折角許諾が貰えそうだったというのに、ムードが台無しで御座います」
「え? いえ、デートするつもりは無いのですが…」
しかし男には聞こえない! 難聴体質も紳士の常備武器なのだ!
そして突っ込んでくる荒くれ者をしっかりと観察し、やがて男は動く。
軽やかにステップを踏み、華麗にターン。そしてフィンガースナップを鳴らすと、どこからともなく木製のJ字型の杖が現れる。…本気でどこから取り出したのだろうか?
「はっ!? 杖!?」
「紳士の嗜みにて御座います」
そうとだけ告げると再びターン。そして遠心力をたっぷりと乗せ、杖を荒くれ者の顎へとぶつけた。
顎を通して脳が揺らされ、平衡感覚を失う荒くれ者は思考を飛ばされ、一時的に思考を停止した。そこで男は杖の持ち手を持ち替え、荒くれ者の足に引っ掛けた。体の主導権を失っていた荒くれ者はあっさりと倒され、その場に倒れ臥す。
「…ふむ、若造が。婦人に手を出すなど…調子に乗りすぎでしょう?」
いや、お前中学生だろ? と空気を読んで声にこそしないものの、その場の全員が心の中で突っ込んだ。一種のユニゾンである。
取り敢えず、荒くれ者はこの後通報でもされていたのか警察に話を聞かされる結果となった。この時、男も怪しまれたがお婆さんや周りの証言により、正当防衛とされた。
「ああ、君は八重樫さんの裏の方の…」
「ええ、貴方もそういえば裏の方で…」
こんな会話が聞こえていたが、周囲の人は何も言えなかった。警察と中学生から『裏』などという物騒なワードが飛び交うのは何としてもスルーしたい案件だったのだ。
こうして荒くれ者は(謎の会話こそあったものの)警察へと連れていかれ、お婆さん達も無事にすんだわけである。
「本気なんだ、私は! この世界全ての女性が好きなのだ! 故に貴女のような素敵な女性をデートに誘わずにはいられないんだ!」
「え、え、ええ…」
「無理は承知だ! しかし…少しの合間でいい。貴女の素敵な顔を横で見つめさせて欲しいのだ!」
「なん、あれ? えぇ…」
代わりにある意味先程以上に厄介な男にお婆さんは絡まれたとも言えた。しかもセリフから割とゲスなセリフが出ていた。お婆さんは羞恥心からか、困惑からか、恐怖からか呂律も回らず慌てふためいている。
「ほんの少しだ! 五分でいい! 費用は私が──」
「いい加減に…しなさーいっ!!」
「グハァッ!?」
「ええええ!!?」
更に攻め寄ろうとした男に首への木刀による殴打が加えられ、男の言葉は強制キャンセル! 血も吹き出す有様にお婆さんは困惑せざるを得ない!
男の後方に現れ、木刀を握る少女は黒髪のポニーテールで、女性にしてはやけに身長が高い。切れ長の目ではあるのだが、何処か優しげで、「お姉様ぁ〜」と言わずにはいられないような雰囲気である。
そんな彼女が公衆の面前で木刀による出血沙汰。…ヤバくは無かろうか?
「痛いではないか! 雫嬢!」
「アンタはこんぐらいしないと止まらないでしょ! ハジメ! あと“嬢”付けしないでよ!
「木刀が首に刺さっているだろう!? 少しは手加減し給え!」
「アンタなら数秒で治るでしょう!」
「治るが! でも痛いのだ! あと私が女性方をデートに誘うとやけに対応が粗くはないかね!?」
「知らないわよ! そんな事! 早く帰るわよ! お爺ちゃんがアンタを待ってんのよ!」
「いだだだだだ! 耳を引っ張りながら連れていかないでくれ給え! 出来れば指と指を絡めるようにしてリードしてくれれば嬉しいのだがね!?」
「ただの恋人繋ぎでしょうが! 馬鹿!」
ピンピンだった。血も速攻で止まった。…彼は本当に人間だろうか?
そしてハジメと名乗った謎の紳士と、苦労しそうな雫という少女は去って行った。お婆さんはもう色々と混乱することしか出来ない。
そう! これは変態紳士となった南雲ハジメとツッコミ役の八重樫雫を中心としたありふれ二次創作コメディである!
次回! 雫のツッコミが更に乱れ飛ぶ!