繰り返す白百合
私の他に時の干渉者がいる。
それを感じ取ったのは、私がみーちゃんにかなちゃんへの恋心を告白した次の日でした。
前回同じ選択肢で物語を進めたときは、みーちゃんはお兄さんに頭を撫でてもらったと言っていました。
しかし、どういうわけか今回は同じ選択肢を選んでも違う結果が世界にあらわれています。
……あっ、そういえば読者の皆さんにも私が四次元的な存在であることって、話してなかったんでしたっけ?
申し遅れました、私は藤沼美咲ちゃんの親友、白峰小百合です。
私は……えーっと、なんて言うんでしょう……簡潔に言うと、この世界の時間に干渉できる存在です。驚きましたか?
行動を選択して望む未来を手に入れるまで、きっと何度も時間を巻き戻すことができる四次元的存在、それが私です。
例えるなら……そう、美少女ゲームのセーブをしておいて何度も選択肢を変えてやり直す……みたいな感じですね。
ただ条件があって……。
時間を戻せる地点は幼稚園で私とかなちゃんとみーちゃんが初めて出会ったときに限られますし、この世界の人々の記憶を消して時間をループすることは出来ません。
つまり、本当はみーちゃんもかなちゃんも、この世界の全員がこの時間を何度も繰り返していることに気づいているんです。
……では、なんでみんなその事を気にしていないのか。
それには、私に備わったもう一つの能力が関係しています。
まず前提として、私たちの意識が二つに分かれていることとします。
一つは、私たちが普段生活する上で普通に使っている記憶……つまり、普通の意識です。
しかし、その意識とか記憶って、頻繁に使っていないと頭の奥にある引き出しにしまわれてしまいますよね?
そう、そのあまり使わなくなった意識が個人的無意識なんです。
そこで私は、ループする前の人類の「意識」を全て「個人的無意識」に閉じ込めます。
わかりやすく言うと私は、世界の記憶を全て頭の引き出しに閉じ込めることでループの記憶を思い出しにくくさせているんです。
感覚的にはそうですね……。
夢の中の記憶って、たまにしか思い出せないじゃないですか。
それに、思い出した夢の記憶だってすぐに忘れてしまいますよね?
これだって同じことなんです。
夢から覚めたときに私たちが夢の世界から急に距離を置くように、世界がループされると人々は前の世界について興味を持たなくなるんです。
そして、それと同時に遡った過去にぴったり合った記憶が付与されます。
……例えば私たちの世界が五分前に出来ていて、過去の記憶を持った私たちがそのときに生成されていたとしても人々は気づかないでしょう。それと似たことを私はやっているんです。
今回のループでは、私はみーちゃんよりも先にかなちゃんから恋愛相談を受けていましたが、その事を隠してみーちゃんに近付きました。そうすることでみーちゃんに誰にも相談できない期間ができます。そこでその期間に私はかなちゃんとみーちゃんと三人で下校することを提案。そして二人になったところでかなちゃんの背中を押して、お兄さんの高校へ行かせたんです。
……それというのも、全ては私の「望む未来」のため。
初めて私の行動を耳にした人は皆何故そんなことをするのか気味悪がりそうですが、これにはループする前の世界で起きたことを回避するという壮大な目標があるんです。
ループする前の世界、つまり基準となった時間では……みーちゃんが、かなちゃんを殺しました。
これは、お兄さんへの愛情からヤンデレへと変貌していく過程を見守りたいと思ってしまった私が原因なのですが……、かなちゃんが死んでしまうのは私は嫌です。
実は私が愛しているのはかなちゃんと、みーちゃん。両方の女の子なんです。
いえ、その中でも「ヤンデレみーちゃん」には膨大な愛情を感じているわけですが……。
だ、だからですね、私はこのループした世界で「かなちゃんが死なない未来」「みーちゃんが闇堕ちする未来」を手に入れようとしてるんです。そしてあわよくば、かなちゃんが思いを寄せているお兄さんについてもどうにかしたいところで。
そのために最適な解は……。
「闇堕ちしたみーちゃんがかなちゃんの代わりにお兄さんを殺すこと……っ」
それを達成するためにも、私は今回の違和感を殲滅しなければなりません。
私と同じ、四次元存在の人間を見つけて。
続く。