「全く、何でアンタみたいな魔術と縁がない一般人が...」
あれから少しして色々あーだこーだ言われつつ南雲さんの研究室のような場所に移動してきた。マリーさんも一緒に付いてきていて、さっきからこちらとセイバーを交互に見つつ頭を抱え続けている。
「いや~、まさかここにきて成功するとは思わなかったよ!今まで何人か実験してるけど、全部ハズレでさ。もう諦めてたところだったんだよ!」
まだ興奮しているようで、いつもよりハイテンションで体を揺さぶってくる南雲さんをなだめつつ、俺はセイバーの方に目を向ける。「おぉー?」とか「わぁー!」なんて呟きながら周りの機械や飾り物を鑑賞していた。本当に見れば見るほど英雄とは思えないんだけど、そういうものなのか?
そういえば、サーヴァントを召喚させた理由って結局何だったのだろうか。聖杯戦争は関係ないって言ってたけど...
「そうだね。無事サーヴァントも召喚できたことだし、これまでのことを順番に説明していくよ。」
簡単にまとめると
・まず国連が承認している国際機関「人理継続保障機関フィニス・カルデア」通称「カルデア」と呼ばれる施設が存在する。何でも人類の未来を見ることができるとかできないとか。なにそれ凄い。
・そのカルデアで、「2016年を最後に人類は絶滅する」という予言じみた研究結果が証明された。
・カルデアにある「近未来観測レンズ・シバ」と呼ばれるシステムが、過去のとある場所での異常を感知し、ここが絶滅の原因と考えた。
・そこで優秀な魔術師を集め、異常を感知した過去に行き、それを正すことで人理を継続させようとした。
・そして今自分がいる所では独自の召喚システムを研究していて、こちらの方からマスターとサーヴァントをカルデアに送り、サポートしようと考えていた。
という感じかな。てか未来を見るだとか過去に行くだとか驚くことがいっぱいだけど、一番は人類滅亡するって話だ。マジで言ってるんすか?
「そうよ。カルデアの研究結果では、あらゆる可能性を考えて検証したものの、結局2016年以降の歴史を発見することができなかったそうよ。」
開いた口が塞がらないって今みたいな状況を指すんだろう。ただ、創作の世界でしか聞いたことのない人類滅亡という単語。それが今自分の生きている世界で起きようとしてることに実感が湧かない。
「そういうことだから、貴方にはまだまだ協力してもらうわ。具体的には、まずカルデアに来ること」
そういえばカルデアをサポートするべくここで実験してたんだっけか。ちなみに断ったりすると?
「どんな手を使ってでも連れていく、とだけ言っておくわ。」
まあ拒否権はないですよね。もちろんここまで来たんだし断る理由もないんだけど。
「悔しいけど、実際にサーヴァントを召喚して見せてるのだから連れていかない理由がないわ。光栄に思いなさい!貴方は何も努力することなくカルデアに行くことができるのだから!」
本当に上から目線の人だなぁと心の中で思いつつ、いつ頃行くのか尋ねた。
「そうだねぇ、多分手続とか色々込みで大体1週間後くらいかな?それまではここにまだ居てもらうよっと...」
「話はまとまったわね。なら私はレフに連絡しくるわ。」
と言って少し急ぎ気味で部屋マリーさんは部屋を後にした。南雲さんも自分の机に向かって作業を始めてしまった。とりあえず今話すことはもうないって感じかな?
「あ、お話終わりました?」
こちらの視線に気づきニコニコとこ駆け寄ってくるセイバー。会話に参加してなかったけど何してたんだろうか。
とりあえず何もすることがないため、セイバーを連れて自室に戻ることにした。心なしか、いつもよ歩く速度が遅い感じがした。
「ここがマスターのお部屋ですか!...面白そうなのは何も置いてなさそうですね」
部屋に入るなりセイバーが一言。そりゃここに来てまだ数日だし、検査やら説明やらで忙しかったからね。
ちょっと残念そうな顔をしているセイバー。何も考えずベットにダイブする。何だか今までにないぐらい疲れた。もう動きたくないぐらいだ。
「...何だか大変なことに巻き込まれましたね?マスター。」
うつ伏せになっている俺の横で腰を掛けつてセイバーが静かに口を開く。
あれ?もしかしてさっきの会話聞いてた?
「同じ部屋に居たんですもの、聞こえないわけないじゃないですか。」
「聖杯戦争に参加する気満々で気合入れてきたのに、いざ召喚されてみると人類の危機とかなんとか。要は世界を救えって言ってるようなもですよね?人に頼むにしたって規模が大き過ぎません?」
確かに。いきなり世界救ってと言われても、何言ってるんだって感じになるだろうね。俺も今実際なってるし。
「とういうか聖杯戦争関係なら、別に真名隠さなくてもいいんじゃないですか?そうですよね!」
と自問自答し、勢いよく立ち上がるセイバー。とりあえず自分も体を起こしてセイバーに体を向ける。
「えー、改めまして...サーヴァント・セイバー。真名は沖田総司。召喚されたからには、最後までついていきますよ、マスター!」
...沖田総司?沖田総司ってあの新撰組の?
「そうですよ!気軽に沖田さんって呼んでくれてもいいんですよ?」
おおぅ...沖田総司といえば、幕末の京都で活躍していた新撰組の1番隊長で周りからは天才剣士、恐れられてた人だったはずだ。でも沖田総司って確か男だったんじゃ?
「そのことですか。女だと色々文句言われたりしますので、当時は男装をしてたんですよ。」
男装って...いや、えぇ?
色々言いたいこととかあるけど置いておく。なんにせよ天才剣士と謳われた剣士が味方なのは心強い。
でも沖田総司といえば、確か病気だって有名じゃなかったっけ。
「そうなんですよ。実際今の私は病弱で、たまに喀血してしまいますよ!」
いやそれ元気に言うことじゃないでしょうに...
うーん、ちょっと不安になってきたかも。
「む、なんですかその顔。さては沖田さんの実力疑ってますね?」
そんなことはないよ?ただ大事な時に倒れると色々危ないなと思ったわけで。
「大丈夫ですよ!その時は倒れる前に敵を倒しますから!」
ホントニダイジョウブ? ダイジョウブデスヨ!
なんて会話をしつつこの日は色々考えて疲れてたため、すぐ寝てしまった。
次の日、南雲さんからシュミレーションルームがあるから、今のうちにそこで戦闘に慣れておいた方がいいんじゃない?と言われた。そういえば、これから先自分はもしかしたら戦闘することになるかもしれないのか。でも魔術なんて何もできないんだけど...?
「おっと?もしや沖田さんの実力をお見せするいい機会なのでは?」
こちらの天才剣士様は戦闘と聞いて既に殺る気Maxみたいですね。実際に沖田さんの腕前はどれほどのものなのか自分も興味があったため、言われた通りシュミレーションルームに向かった。
セッティングは部屋に居た人にやってもらって、とりあえず自分はモニターの前で沖田さんの戦闘風景を見守ることにした。だってまだ怖いですし。
「イエーイ!マスターしっかり見てますかー?」
中にいる沖田さんはいつもの明るい感じで待機していた。シュミレーションとはいえ、緊張感がなさすぎでは?
まあそこが沖田さんのいいところなんだろうけどね。
――それじゃあ始めますね――
開始のアナウンスと同時に沖田さんがいた無機質な部屋が、辺り一面草原しかない綺麗な場所に変貌した。
シュミレーションていうよりかは、VR世界に入り込んだ感じかな。まるでどこかのゲームのようだ。
「すごいですね、これ。風の感じや草の匂いが本物そっくりです!」
これには沖田さんも驚いたようで、子供のようにはじゃいでる。
少しすると沖田さんの周りに何かが出現した。見た目は羽織に袴、頭には笠をかぶっていて、さながら一般的にイメージする侍のような格好の人が5人。刀もしっかり構えている。
「ふむ...場所は普段と違いますが、得物が刀でしたら、こちらも気合が入るというもの」
沖田さんの纏っている空気が変わった。敵を認識した瞬間、今まであった明るい感じはなくなり、どこか冷たい雰囲気を纏い刀を構えた。
静寂が周りを支配する。一分、二分、それ以上か。どちらも動かずにいる。間合いをとってるのだろう。
見ているこちらも緊張してきた。
痺れを切らしたのか、相手の一人が刀を振り上げ、沖田さんに斬りかかった。
1歩。沖田さんが踏み込む。一瞬だった。気が付くと、相手は腹を斬られていた。何が起きたのか自分と隣でモニタリングしている職員は理解できなかった。刹那という言葉が相応しいかもしれない。それぐらいの早さだった。
一人が倒れたのが合図となり、残りの4人も沖田さんに突っ込んでいった。一人、二人、三人と、流れるように斬っていった。しかも相手に刀を振らせまいと言うかのように自分から踏み込んで。最後の一人は、刀を左に受け流した後、居合切りの様な構えから斬り伏せた。誰が見ても圧勝だった。
「ふぅ...マスター、見てました?沖田さん大勝利ですよ!」
フィールドから沖田さんが嬉々として戻ってきた。心なしか、肌がきれいになってるような気がするがきのせいだろう。
というか幕末の人達ってこんな感じで動いてるの?ほとんど目で追えなかったんだけど。
「いえ、これは半分くらいはサーヴァントになった影響ですね。生前はもう少し遅かったですよ?」
少しってことはこれに近い動きを生前やってたと?幕末って怖い。
とにもかくにも、これなら戦力として問題ないどころかお釣りが出るほどじゃないか?流石は天才剣士様だ。
「おだて過ぎですよマスター!」
と満更でもなさそうに笑っていた彼女だったが、少しすると表情が暗くなったように見えた。
「そうだ!マスター、私何かおいしいものを食べたいです!」
ただ暗い表情は一瞬だけで、すぐに何事もなかったのようにいつもの明るい感じに戻った。まあ言わないってことは大したことじゃなかったんだろう。
というかサーヴァントってお腹空くの?もう実際に生きてないんだし、いらないと思うんだけど...
「サーヴァントだって、人並みに空きますし、食べますよー?ほらほら、早く行きましょう!」
グイグイとで沖田さんに押されながらシュミレーションルームを後にする。
食堂に向かう途中、沖田さんの背中にある大きい太刀が目に留まった。
「んー?マスターもこれが気になります?」
もってことは、沖田さんも何か気になることが?
「はい、そうなんですよ。生前、ここまで大きな刀は扱ってなかったはずなんですけど、何故か今回の召喚ではもってきてまして。私にも何が何だかさっぱりでして。」
沖田さん本人にもわからないもの?もしかして召喚されるときに何かバグでもあったのかな?というか前にも召喚されたことがあるんだね。
「召喚されたのはこれで2回目なんですよ。でも前の話は長くなるのでまた今度で。それより、ここが食堂ですね?」
目をキラキラ輝かせながら入口にあるメニュー表に突撃していく沖田さん。こういうところだけ見てると本当に俺達と変わらないんだなと感じる。
今日はカツ丼でも食べようかな。隣の沖田さん見てみると、なかなか決まらないようで、犬のようにう~と唸りながらメニューを睨んでいる。
長くなりそうだから先に席取っとくよ、決まったらあそこのおばあちゃんに注文してね、と言い先に注文しに行く。
入口からすぐ目に着く正面の席に座り、先にカツ丼をいただく。ここの料理ってどんなものですぐにでてくるんだよね。しかもできたてで。どんな原理で出てくるのか非常に興味があるんだけど。
「あ、いたいた。マスター発見です!」
割とくだらない事を考えていると、沖田さんが遅れてやってきた。手に持ってるのはおでんだった。...おでん?
「はい、おでんですよ。何か?」
いや、冬だったらまだしも、今は春になったばっかりだし、珍しいなぁって。
「何故かおでんを見た瞬間無性に食べたくなってしまいまして。何でですかね?まあいいや、いただきまーす!」
熱いのは意外と平気なのか、湯気がもくもくと出てるちくわぶを一気に頬張る沖田さん。可愛い
そういえば、沖田さんって剣術の指南ってやったことあるのだろうか。
「はむはむ。剣の指南ですか?やったことはありますよ。もしかして...習いたいんですか?!」
突然沖田さんが声を張り上げた。正直びっくりした。
「そういうことはもっと早く言ってくださいよ!ならさっそく明日から稽古ですね」
そういうと、沖田さんは立ち上がった。というかもうおでん食べ切ったのか。先に食ってた俺より早いじゃん。
というかもうやる前提で話進んでいません事?
「どうしたんですかー?早く行きましょうよー?」
かなりご機嫌になってる様子。ここでやらないと言って水を差すわけにいかず、しかたなくカツ丼を頬張り、沖田さんに追いつく。
それからカルデアに行くまでの数日間...
「もっと早く動いてください!」「刀は腕だけじゃなく体全体を使って振る!」「このくらいで疲れてるんですか?根性が足りませんよ、マスター!」
こんな感じで一日中ずっと剣を振るうための特訓をしてました。沖田さん、実はものすごい熱血キャラでスパルタでした。
連日筋肉痛で死ぬかと思ったけど、お陰様でシュミレーションの敵程度なら何とか倒せるレベルまで刀を扱えるようになりました。流石天才剣士様です。
ただ、沖田さんからは今後剣術は教わらないようにしようと誓った今日この頃です。
ちゃんと投稿できているかどうか不安です。
さっそくお気に入り登録してくださった方、
感想を書いてくれた方、ありがとうございます!
こんなにも早くしてくださるとは...( ゚Д゚)
皆様の期待に答えられる作品を作れるよう努力していきますので
何卒暖かく見守っててくれると嬉しいです。