皆様、大変お久しぶりでございます。
色々事情が重なってしまい、思うように執筆が進みませんでした。すみません
あれからキャスターの案内で途方もなく歩き続けていたところ、大きな洞窟の様な場所の入口に着いた。
「着いたぜ、この奥に大聖杯がある。」
見たところ、普通の洞窟に見えるが、どことなく魔力?のようなものを感じ取ることが出来る。
「ここら辺はちぃとばかり入り組んでいるんで、はぐれないようにな。」
「天然の洞窟...でしょうか?これも元から冬木の街にあったものなんでしょうか?」
マシュが疑問の声を上げた。確かに、自分はここら辺に住んではいなかったが、ここまで大きな洞窟があるなんて話は聞いたことがなかった。
「でしょうね。これは半分天然、半分人工よ。長い月日をかけて、魔術師が拡げた地下工房です。」
なるほど、魔術師の拠点に使われていたのか。多分魔術で知られないように隠していたんだろう。やっぱりマリーさんは魔術に関しては一流みたいだ。
「それよりキャスターのサーヴァント。大事なことを確認していなかったのだけど、セイバーのサーヴァントの真名は知っているの?何度か戦っているような口ぶりだったけど。」
「ああ、知ってるとも。ヤツの宝具を食らえば誰だって真名.....その正体に突き当たるからな。他のサーヴァントが倒されたのも、ヤツの宝具があまりに強力だったからだ。」
誰でも知ってる宝具か。そもそもどんなものが宝具になってるか見当もつかないから、予想のしようがない気がするけども。
「強力な宝具....ですか。それはどういう?」
「私も気になる。セイバーっていうぐらいだから、剣に関わるモノだと思うんだけど。」
マシュや立香が質問すると、キャスターが静かに口を開いた。
「王を選定する岩の剣の二振り目。お前さんたちの時代において、もっとも有名な聖剣。」
選定する岩の剣と言ったら、もしかしなくてもあの剣だろう。中世の時代の騎士物語に出てくる最強の剣。
「
「誰ッ?!」
声のする方を向くと、いつの間にか影に包まれたサーヴァントがいた。おそらくセイバーの最後の配下であるアーチャーだろう。
「アーチャーのサーヴァント...!」
「おう、言ってるそばから信奉者の登場だ。相変わらず聖剣使いを守ってんのか、テメェは。」
どうやら、この二人も少なからず因縁がありそうだ。互いが好敵手のような存在なんだろうと感じた。
「...ふん。信奉者になった覚えはないがね。つまらん来客を追い返す程度の仕事はするさ。」
「ようは門番じゃねぇか。何からセイバーを守ってるかは知らねぇが、ここらで決着をつけようや。永遠に終わらないゲームなんざ退屈だろう?良きにつけ悪しきにつけ、駒を先に進ませないとな?」
「その口ぶりでは事のあらましは理解済みか。大局を知りながらも自らの欲望に熱中する...魔術師になってもその性根は変わらんと見える。文字通り、この剣で叩き直してやろう。」
アーチャーが二振りの剣を構えた。どうやらすぐにでも戦いを始めるみたいだ。沖田さんに目で合図を送り、気づかれないように後ろに回ってもらう。
「ハッ、弓兵が何を言いやがる。ってオイ、何ぼんやりしてんだお嬢ちゃん。」
唐突にキャスターがマシュに声をかける。
「相手はアーチャーだ。こっちにはピンクのセイバーはいるが、それでもアンタの盾がなきゃ、俺はまともに詠唱出来ねぇんだが。」
「あ...は、はい!すみません、何故か気が抜けていました。」
顔を横に何回か振り、気を引き締めるマシュ。それにつられて自分と立香も体に緊張が走る。
「問題ありません、行けます。ガードならお任せください!」
「一人で三人相手は流石に分が悪いか...三人?...なるほど」
突然アーチャーが高く飛び上がった。恐らく沖田さんがいないことに気づいたのだろう。
「おっと、そっちばっか気にしてていいのかい?!」
「そんな攻撃に当たるとでも?」
キャスターが放った光弾を、手に持ってる剣で切り裂きながら、こちらに近づいてくるアーチャー。そこに今まで隠れていた沖田さんが、後ろから奇襲を仕掛けた。しかし...
「...完璧な奇襲なはずでしたが、まさか防がれるとは。」
「いや、こちらがもう少し気づくのに遅かったら、首を取られてたよ。」
何食わぬ顔で沖田さんの突きを受け止めていた。そして、こちらからは目視できない程の速度で打ち合い始めた。いや、アンタアーチャーのくせに、何で近接戦闘できるのさ。
「あなた本当に弓兵ですか?私も本気ではないものの、ここまでやれるとは思いませんでした。」
「何、弓も剣も多少心得ているだけさ。ハァ!」
多少とは言っているものの、セイバーと打ち合える時点で相当の技量を持っていることがわかる。しかもキャスターの攻撃を避けつつの攻防だったことから、一筋縄にはいかないだろう。
「このままではこちらが不利か。ならば...!」
持久戦では不利だと悟ったアーチャーが、いつの間にか得物を弓に変えて、こちらに向かって攻撃してきた。
「こっちに撃ってきた!?」
「させません...!」
マシュが持っている盾で、アーチャーの射撃から守ってくれてた。ただ攻撃が激しく、マシュ一人では防ぎれないため、自衛できない立香をかばいながら、こちらに向かってくる矢を出来るだけ防いでいく。
「大丈夫ですか?!マスター、先輩!」
「うん、こっちは大丈夫だよ!」
「いいねぇ、なら、こっちはどんどん攻めるとしようか。そらぁ!」
アーチャーに狙撃させまいと、細かく早い光弾を放っていくキャスター。徐々にではあるが、捌ききれずに掠り始めてきた。すかさず沖田さんが間合いを詰めに行った。
「隙あり!」
「厄介だな、死角から攻めてくるというのは!」
先ほどとは違い、防戦一方のアーチャー。やはり複数人を相手にしているため、こちらよりも疲弊している。
「もう出し惜しみするわけにはいかないな。
何やら聞きなれない事を口にしながら距離を取ったアーチャー。手には弓と、巨大なドリルのような矢を持っており、これで決めると言わんばかりに魔力を溜め始めた。
「おっと、こいつはやばい。お嬢ちゃん!宝具の準備だ!」
「りょ、了解です!沖田さんもこちらに!」
どうやらマシュの宝具でアーチャーの攻撃を無力化するみたいだ。多分、手に持っている盾を使った防御型の宝具だろうと予測する。
沖田さんにいつでも動けるように指示をしておいて、アーチャーの攻撃に備える。....来る!
「宝具...展開します!」
「貫け、カラドボルグ!」
赤い衝撃波を纏いながら、一直線にこちらに向かってくる。マシュが展開した大きな盾に接触すると、魔力が吹き荒れる。
「ちぃ、奴さん前より確実に強くなってやがる...!踏ん張れよ、お嬢ちゃん」
「頑張って、マシュ...!」
アーチャーの攻撃を、マシュの宝具とキャスターの援護でなんとか防げてはいるものの、若干押され気味だ。こっちから手を打たないと追撃でやられるかもしれない。沖田さんに目を向けて、何か手はないかと聞く。
「...少しだけ時間をください。少しだけでいいです。」
この状況を打破できる何かがある様子の沖田さん。沖田さんを信じて、マシュの所に向かう。自分の魔力も使えばそれなりに時間は稼げるだろう。
「くぅ...!」
確実に盾の強度は上がっているはずだが、それでもやはり押され気味。そろそろマシュがやばい。
「おい、まだかセイバー?!こっちはそう長く持たないぞ!」
「...よし。マスター、離れててください。」
準備が終わった沖田さんが声をかけてきた。手にはあの黒い大太刀を持っており、その大太刀の刀身が赤く発光していた。
「すぅ..はぁ...―――――――――!」
いつもの平正眼の構えをとり、剣を前に突き出した。同時に自分の体から大量の魔力がなくなるのを感じた。その大量の魔力が、剣先からまるでビームの様に放出された。大量の魔力は矢を飲み込みながら、アーチャーに向かっていった。
「何!?」
次弾を打とうとしていたところに不意を突かれ、咄嗟に盾のようなものを出して防御したのが見えた。
「あまり長く持ちません...!キャスター!」
「ああ、わかってるさ。俺も全力で行かせてもらうぜ!」
沖田さんに言われ、キャスターが詠唱を始める。
「...焼き尽くせ...木々の巨人―――
詠唱が終わると、キャスターの下に展開された魔法陣から炎を纏った巨人が現れた。その巨人がアーチャーに向かって倒れこむようにして攻撃した。周りが振動し砂煙が舞う。
「...ふぅ。慣れない事はするものではありませんね。」
その場に倒れこむようにして座り込む沖田さん。立香がそばに駆け寄って具合はどうか聞いていた。その光景を後にしながら、キャスターとマシュと一緒にアーチャーの元に向かう。アーチャーはすでに体が透けていて、時期に消滅する寸前だった。
「ぐ...どうやらここまでみたいだな...」
「ああ、今回はテメェの負けだ。未練なく消えろ消えろ。聖剣攻略は俺らでやってやるよ。」
「フッ、相変わらずだな。...今のセイバーは強敵だ。油断した時点ですぐにやられるだろう。」
キャスターと短いやり取りを終えると、こちらに顔を向けて助言をしてくれたアーチャー。最初にあった時から感じてはいたが、根は優しい人なのではないか。
「何、先輩からのお節介さ。...しかし、花の魔術師も考えたな。その宝具にそんな使い方があったとは...」
そう言い残し、姿を消したアーチャー。その宝具って、マシュの持っている盾のことをなのだろうか?
「あの、キャスターさん。」
後ろにいたマシュがおずおずとキャスターに声をかけた。
「信頼していただけるのは嬉しいのですが、私に防げるのでしょうか...その、音に聞こえたアーサー王の聖剣が。私には過ぎた役割のようで、指が震えています。」
どうやら、さっきの戦闘で自分に自信が持てなくなってしまったのだろう。自分としては完璧ではないにしろ、アーチャーの全力の攻撃を防ぎ切ったから誇ってもいいと思うが、なかなかそうはいかないみたいだ。
「そこは
「いいか、聖剣に勝つなんて考えなくてもいい。アンタは、アンタのマスターを守る事だけ考えろ。得意だろう、そういうの?まあなんだ、セイバーを仕留めるのはオレやこっちのセイバーにまかせて、やりたい事をやれって話さ。」
キャスターがマシュに激励をしてくれた。それにしても、壊れない盾なら、使い方を熟知すれば無敵の壁になるんじゃ?そう考えると、マシュって凄い英霊に力を貸してもらったのではないか。
「ありがとうございます。そのアドバイスはとてもためになります。」
どうやらマシュも何か思うことがあったみたいで、少しだけ自信が付いたような顔をしていた。
「もう敵はいないわよね...?大丈夫よね?」
「大丈夫ですって。心配性なんですから、所長さんは。」
後ろから立香と、いつの間にか隠れていたマリーさんがやってきた。沖田さんも一緒みたいだ。
『とりあえず、周辺に適性反応はないみたい。お疲れ様、みんな。』
ロマンも戻ってきて、ひとまず危機は乗り越えたらしい。そのことに安堵する。