けものフレンズ二次創作のである『けものフレンズR』をもととした三次創作です。けものフレンズプロジェクトの関連商品、関連人物を傷つける意図はありません。
作品色としては、「シリアス寄り、独自設定が多い、SF要素が強い」です。逆に、動物の生態をほのぼのと描くというスタンスからは、離れてしまっています。
1期、2期含め、アニメに登場したフレンズと、オリジナルのフレンズが混在して登場します。
つたない文章ですが、読んでくだされば幸いです。
現代編1 「はなばたけ」
前回までのあらすじ
ともえ達は「セントラルエリア」への道を開くと言われる、四つの「オーブ」を求めていた。
そして、四つのオーブの一つである「白銀のオーブ」を、緑豊かな森と川を臨む「けいこくちほー」にて見つけることができた。
しかし、白銀のオーブを手に入れようとした矢先、以前から幾度となく、ともえ達の行く手に姿を現していた恐ろしい怪物「ビースト」に遭遇した。
ビーストの追撃を振り切ることにはなんとか成功したが、そのさなか、白銀のオーブもどこかにいってしまった。
失意のともえ達は、道すがら、森の中に小さな家を見つけた。そこは「リャマ」というフレンズが営むレストランだった。
リャマは何かに悩んでいる様子で、ともえ達は一夜の宿を提供してもらう代わりに、悩みの解決に協力することになった。
リャマの悩みを無事解決したともえ達は、家に上げてもらい、静かに眠りについた。
__________はなばたけ__________________
「・・・すぅ」
ともえは夢を見ていた。今よりだいぶ幼いともえが、背の高い人間におぶわれていた。
ともえは、その人の、お日様のにおいのする大きな背中が愛しいと感じた。
しかしやがて、自分の足で歩きたいと思ったともえは、その人の背中を降りて駆け出し、自分と同じ年ぐらいの子供たちに声をかけて回った。
みんな笑顔で答え、ともえを遊びに誘ってくれた。夢中で遊んでいる時、ふと背中を
振り返ると、お日様のにおいのあの人が、自分を見て笑っていた。
・・・もう少ししたら、あの人の所へ帰ろう。そしてまた明日、ここにいるみんなと遊ぼう。ともえは、そんな幸せな時間が永遠に続くと感じた。
友達の一人がボールを蹴った。ともえは、明後日の方向に転がっていったボールを追いかけた。
ボールはいっこうに見つからなかった。ともえは、友達に相談しようと振り返った。しかし、今まで近くにいたはずの友達は、一人もいなくなっていた。ともえは声を上げて
みんなを探した。だんだん怖くなってきたともえは、今度は「あの人」のことを探した。
しかし見つからなかった。
ともえは泣き出した。誰かに見つけてほしかった。だけど、誰もいなかった。
自分の泣き声だけがいつまでもこだましていた。
「・・・!!」
「(はぁ・・・はぁ・・・夢、夢か・・・また、ヒトがたくさん出てくる夢だったな・・・この前見たのとは、また違う夢・・・よくわからないけど、とても寂しくて、怖かった・・・なんて嫌な目覚めなんだろう)」
ともえは気分転換に、家の外に出た。そこは森の中でありながら、木々の生え方にむらがあり、隙間の大きい所に立つと、眩しい朝日が木々の輪郭に縁取られながら、ともえを照らした。
「(気持ちのいい朝だ・・・嫌な夢のことなんて、忘れよう・・・オーブを手に入れられなかったのは残念だけど・・・また一から情報を集めよう)」
【・・・トモエ、ドケ・・・ソコ ニ タタレルト タイヨウコウ ガ ジュウブン ニ アタラナイ】
「・・・えっ? ・・・わあ! ラモリさん! どうしたの? なんか色が変だよ!」
ラモリと呼ばれた声の主は、ともえの膝丈ほどの大きさだった。ともえが見知っているラモリの姿は鮮やかなマゼンタカラーの体色だった。しかし、今のラモリは、隙間なく真っ黒な姿で、ところどころ光を反射して、ガラスのようにチカチカと光を放っていた。
【タイヨウコウ デ ジュウデン ヲ シテイル。タイヒョウ ヲ ソーラーパネルモード ニ ヘンカ サセ タイヨウコウハツデン ヲ オコナッテ イル 】
「じゅう、でん? 」
【・・・コレ ガ オレ ノ ショクジ ダ】
「そうなんだ、ラモリさんって、やっぱりすごいね、色々・・・」
【ソレヨリ トモエ、オーブ ノ テガカリ ヲ ミツケタ ゾ
「えっ、本当?」
【オーブ ハ コユウ ノ パターン ヲ モツ デンジハ ヲ ハナッテイル。オレ ノ センサー デモ ソレ ガ タンチ デキル】
「そ、それでオーブはどこにあるの?」
【ザンネン ナガラ セイカク ナ イチ ハ ワカラナイ。ワカルノハ オーブ ガ アル ダイタイ ノ ホウガク・・・ニシ ダ・・・ニシ カラ オーブ ト オボシキ デンジハ ガ ケンシュツ サレテイル】
「わたし達が、手に入れられなかった、あの白いオーブかな?」
【ソレ ハ ワカラナイガ・・・ オーブ ハ ゼンブ デ 4コ アル・・・マタ チガウ オーブ カモ シレナイ】
「・・・ありがとうラモリさん。どんな手掛かりでも、今はすごくありがたいよ」
【トモエ、ナニカ アッタ カ?】
「う、うん・・・また、変な夢を見たの・・・たくさんのヒトがいて、あたしも、その中で楽しく暮らしてた。・・・でも、突然、みんないなくなって、あたしはひとりぼっちになってた。夢の中のあたし、すごく、寂しかった」
【ソウカ・・・】
「変だよね。あたし、今、別に寂しくないもん。イエイヌちゃんもロードランナーちゃん
も、ラモリさんもいてくれるし。行く先々で、色んなフレンズに会えるし・・・でも・・・セントラルエリアに行けば、あたし以外のヒトに会えるっていうなら・・・やっぱり・・・会ってみたいなって」
【・・・・・・】
≪ともえさ~~~~ん!≫
≪おーい、ともえー!≫
ともえを呼ぶ二人の声の主は、旅の仲間、イエイヌとロードランナーだった。
「あ、おはよう! 二人とも、起きてたの?」
「ともえが一番ねぼすけだぞー」
「起こしに行ってみたら、いないんで、心配しましたよ。」
「えへへへ・・・ごめん」
「みんなぁ~~~あ 朝ごはん出来てるよぅ~~~う! 早くおいでぇ~~~え」
「はーい! 行きましょう、ともえさん!」
レストランの主であるリャマに招かれ、朝食の席についた。食卓に並ぶのは、バスケットに盛られた、鮮やかな色とりどりのジャパリまん。イエイヌが用意した紅茶
そして小皿に盛られた、見慣れない、クリーム色の物体・・・
「こ、これはもしかして・・・」
「そうだよぅ~う・・・昨日、みんなが探してくれた、「白トリュフ」だよぅ~う」
「もんのすげぇーいいにおいがするぜー!」
「イエイヌちゃんも手伝ってくれて、塩加減や、付け合わせのソースやら今考えられる、一番いい具合に仕上がってるよぅ~う。わたしも鼻は利くほうだけどイエイヌちゃんには敵わないものぉ~お」
「へー、イエイヌちゃんも手伝ったの?」
「はい、すごくおいしそうなにおいがするから、ぜひ、ともえさんに食べてもらいたいって思って」
「ありがとう! いただきます!」
「パクッ!」
「う、うンめぇーーー! 口の中に天国を感じるぜー! 天使が大合唱してるぜー! パクッ! パクッ! パクッ! サイコォーーー! おかわりーーー!」
「・・・おかわりはないよぅ~う、白トリュフは、貴重だものぉ~お・・・おかずばっかりじゃなくて、主食も食べてにぇ~え、ほら、ジャパリまんも美味しいよぉ~お」
「えー!? もっと白トリュフくれよー!」
「もぐもぐ・・・ごくん・・・」
「ともえさん・・・どうですか? どうですか?」
「・・・うわー、ちょっとこれ、本当に美味しいね・・・食べるのが、もったいなくなっちゃう」
「紅茶は・・・どうですか?」
「コクッ・・・果物みたいな甘い香りがする・・・いつものと全然違うけど、とっても美味しいよ」
「そう! そう! わかりますか? リャマさんに教えてもらったんですよ。いつも使っている葉っぱに、このあたりで取れた果物の皮を混ぜて、紅茶を淹れてみたんです」
「イエイヌちゃんは本当にセンスがいいにぇ~え! うちで働いてほしいぐらいだよぉ~お」
____バタンッ!
ともえ達が、和やかに朝食を楽しんでいると、突如勢いよく、レストランの扉が開かれた
「あれまぁ~あ、いらっしゃい~」
「はぁ、はぁ・・・あなたが店主なのですか?」
「そうですよぉ~お」
「・・・すごく良いにおいがするので、気になって降りてきてしまいました・・・」
「店主! あなたは何を作っていたのですか! 今すぐわたし達に振る舞うのです!」
「わ、わかりましたぁ~あ。それでは、ただいま調理するんでぇ、待っててにぇ~ぇ」
「(おー、おー、こりゃまた変な奴らが来たなー)」
「(ちょっとロードランナーちゃん、聞こえるよ)」
リャマの店に押しかけてきたのは、翼の色がそれぞれ白と茶であることを除けばそっくりな見た目をした、二人の鳥のフレンズだった。
「はい、どうぞぉ~お、どうぞぉ~お」
「パクッ! モグモグ・・・」
「ほう・・・ほう・・・においが重厚かつ華やかですが・・・この味は、キノコ類の一種でしょうか」
「博士、このソースもなかなか見事なものなのです。このソース、数種類の野菜を煮詰めてペーストにしたものでしょうか? オリーブをベースに、カブ、パプリカ、タマネギ・・・」
「辛みの後に、上品な甘みが尾を引きます。食材が持つ旨味を引き出しているです!」
「博士、わたし達が得意としている香辛料で、この素材に合わせるならどうでしょうか?」
「(すごいなぁ、この人達、何言ってるのかわからないけど、すごく料理が好きなんだろうな)」
その後も、二人組の鳥のフレンズは、一口食べるごとに、感想をもらし、考察を深めながら、ゆっくりとリャマの白トリュフ料理を食べ終えた。
「わたしの料理にぃ、こんなに深い考察をした人、はじめてぇだよぉ~お・・・もしかして、あんた達も料理人かにぇ~え? 」
「ふふふふ、まあ、そうですね・・・その界隈では、一流にいる自負はあるのです。あなたは、かなりの腕のようですが、それでも、あなたに負けない自信はありますのです。」
「店主、この食材は何なのですか?」
「これは、白トリュフって言ってにぇ~・・・土に埋まってる変わったキノコなんだぁ~あ」
「ほう・・・どこで採れたものですか?」
「場所は教えられないよぉ~お、企業秘密だものぉ~」
「も、もったいぶらずに教えるのです!」
「ええ~、そんにゃこと言われてもぉ~お・・・」
「博士、落ち着くのです。今は料理のことに没頭している場合ではないのです。もう行かなくては・・・」
「・・・そうでしたね、助手。わたし達には大いなる使命がある・・・料理は好きですがあくまでも余暇活動なのです。店主、ごちそうさまでしたのです・・・これは、代金なのです。」
ドサッ
二人の鳥のフレンズは、どこからか、こぶし大の麻袋を取り出し、テーブルに置いた
「・・・ええ! こんにゃにぃ~い!? 申し訳ないよぉ~お!」
「構いません・・・あなたの腕前を正当に評価したまでのことなのです。こんな辺境の地に、わたし達に匹敵する腕前の料理人がいたとは・・・」
「・・・それでは失礼」
「あ、ありがとう! また来てにぇ~え!」
___ガチャン! チリン・・・チリン・・・
「なんか、個性のキョーレツな二人組だったなー。大体、代金っつっても、なんだこの袋、何が入ってんだよー。代金っつったらよー、ジャパリまんだろーよ」
「これは胡椒だよぉ~お! こんなにいっぱい、スゴイよぉ~!」
「こしょう? って何?」
「うん、これを見てにぇ~」
リャマは、後ろから皿を一枚取り出すと、先ほどもらった麻袋の留め紐をほどき、小さじで袋の中身をすくい、少量を皿に乗せた
「黒くて小さな木の実?」
「ゴマにしては大きいなー?」
「ゴマとは違うよぉ~お、これはにぇ、魔法の実なんだよぉ~。胡椒はにぇ、どんな食べ物にも合うのよぉ~、もちろん、この料理にも使ってるよぉ~、でもにぇ、一番すごいのは・・・この粉をかけておくと、時間が経っても食べ物が腐らないのよぉ~お! ジャパリまん以外の食べ物・・・野菜やキノコは時間が経つと腐っちゃうから料理人たちの頭を悩ませていたのにぇ~え。でも、胡椒があれば、その心配がなくなるにょ~!」
「食べ物の保存か・・・あたし、料理のことはよくわからないけど・・・毎日料理をする人達にとっては、食べ物が腐りにくくなるっていうのは、すごく便利なことだね!」
「紅茶の葉っぱみたいに、お日様に干してカラカラにする方法以外に、食べ物を保存する
方法があるなんて、知らなかったです・・・」
「しかも、ジャパリまんみたいに、代金に使えるんだよね。それって本当にみんなが胡椒の価値を認めてるってことだよね」
「まあ、代金に使えるのは、料理人の間でだけ、だけどにぇ~え・・・えへへ、もう白トリュフも手に入って、胡椒もたくさん手に入って、幸せ~!」
「へぇー、この黒い木の実、そんなに美味しいのかよー? ・・・はむっ・・・ぱりっ、ぽりっ」
ロードランナーは、皿の上に散らばった胡椒を何粒かつまみ、口に含んだ
「あっ! ちょっとぉ~!」
「・・・ぐえっ! んがががっ! なんじゃこりゃー! 口の中が、痛い! むせる! けほっ! けほっ!」
「ロードランナーちゃん、だ、大丈夫?」
「胡椒は、そのままじゃ食べられないよぉ~、すり潰して粉にしてから、他の食べ物に振り掛けるんだよぉ~!」
ともえ達は、朝食の後片付けをしていた。ともえは、今日の予定のことを考えた。ラモリが示した方角は具体的にどこに向かっているのか、今のうちに何か情報が手に入らないかと漠然と考えていると、店の壁に貼られた絵画の一枚に目が行った。
灰色の雲に覆われた薄暗い空、それとは対照的に、明るくきらびやかに輝く大地・・・その絵画には、地平線の向こうまで続く白い花畑が描かれていた。
「わぁ~、きれいな絵だな・・・どこの風景だろう? リャマさん、これ、どこの風景か、わかる?」
「う~ん・・・そうだにぇ・・・・・・この絵、白い花の間からぽつぽつ、岩が突き出てるにぇ。この森を抜けると、こんな感じの、岩がまばらに生えてる草原にでるよぉ~お」
「えっ!? ・・・この絵の場所って、ここから近いの?」
「でも、そこには、白い花なんかないよぉ~、岩の他には、草ばっかり生えててぇ・・・だからぁ~あ、きっと違う場所だよぉ」
「そうなんだ・・・その場所の、方向ってわかる?」
「・・・西だよぉ~、森の出口からお日様が出てぇ、草原の向こう側に沈んでいくよぉ」
「ありがとうリャマさん! ねえみんな、今日はとりあえずそこに行ってみようよ!」
「はい!」
「なんか、あてがあんのかー?」
「うん・・・ラモリさんもね、西のほうにオーブがありそうって言ってた」
「ともえさん! もう荷造りは済んでますよ、いつでも行けます」
ともえ達三人は、今すぐにでも出発しようという空気でまとまった。しかし、リャマが口を挟んだ。
「待ってよぉ~お、あそこに行くのは危険だよぉ~」
「わふっ・・・危険っていうと・・・セルリアンですか?」
「いやぁ~・・・セルリアンは、この辺は少ないよぉ~・・・危ないのは、ビーストだよぉ」
「・・・ビーストだとー!?」
「つい2、3月ぐらい前からなんだけど、あの草原を縄張りにしているんだよぉ~」
「いつも、いつも、そこにビーストがいるってことですか?」
「一日の内で、あの草原にいることは少ないけど・・・休む時は必ず、あそこに戻ってってるって話をきくよぉ~~。だから、最近のあの草原は、ビーストの縄張りって知られてて・・・みんなそれを怖がって、あの草原には近寄らなくなっちゃったぁ~あ。おかげで、お客さんも、さっきのお二人さんみたいな、空を飛べる鳥のフレンズしか来なくなっちゃったにょ・・・」
「(おい、ともえ・・・これって・・・)」
「(うん、辻褄が合うよ・・・最近よく出くわすのは、ビーストがこの近くを住処にしてたからなんだね・・・)」
「危ないところに行くのはやめて・・・違う道を行きなよぉ~」
「そうした方が・・・いいのかな・・・」
ともえの気持ちが揺らいだ。ビーストは恐ろしい存在だった。今まで偶然出くわして無事に済んでいたのが奇跡的だと思っていた。
正直、会わずに済むなら会わないに越したことはない。自分一人だったらいい。自分には危険を冒してまで、オーブを求める理由がある。しかし、仲間は善意で自分に付いてきてくれているのだ。
危険だとわかっているところに仲間を連れていくのはどうなのか。自分の都合で、仲間達をも危険に巻き込むのは身勝手ではないのか。
「行きましょう、ともえさん。」
「イエイヌちゃん?」
「わたしに遠慮は、いらないですからね。わたしは、ともえさんのやりたいことを手伝いたいんです。ともえさんが、ヒトの仲間に会うために・・・そのために、オーブを探しているんだから・・・その目的を、一番大事にするべきだと思うんです」
「もちろんオレ様も行くぜ。多少の危険なんかでビビってられるかってーの。オレ様はもっと色んな所に行って、色んなことを知りたいんだ。だからともえに付いていくんだからなー」
「二人とも・・・」
「なんだかよくわからないけど、決意が固いんだにぇ・・・行っちゃうんだにぇ~え・・・」
「心配してくれてありがとう、リャマさん」
「ううん、こっちこそ、三人が来てくれて、とても助かったよぉ~・・・目的を果たせるといいにぇ・・・そして、よければ、またここに来てよぉ~」
「うん、絶対に来るよ」
「ここの料理、プロングホーン様やチーターさんにも食べてもらいてーなー・・・」
「リャマさん、また、お料理や紅茶のことを教えてください!」
「了解だよぉ~」
「うふふふ、それと、これ、持ってってぇ~」
「これは・・・」
リャマは、手の平に隠れるサイズの小さな巾着をふたつ、ともえに手渡した
「ひとつは、白トリュフ、もうひとつは胡椒だよぉ~」
「うぉぉ! 太っ腹じゃねーか!」
「悪いよ、泊めてくれて、ごちそうまでしてくれただけで十分だよ」
「白トリュフは、みんなの取り分だよぉ~、みんなが見つけてくれたんだからにぇ~え。胡椒はね、本当に便利だからぁ、料理が出来るイエイヌちゃんに使ってもらえると嬉しいなぁって。使いやすいように、すり潰して粉にしてあるよぉ~お」
「ありがとー! 大事に、大事に使います!」
リャマのレストランを出発したともえ達は、太陽が空の真ん中に登る頃には、森を抜けていた。
森を抜けた先には、フレンズの背丈ほどの岩がそこかしこに点在する、まさにリャマが言っていた通りの草原が広がっていた。風がゆっくりと、しかし片時も途切れずにそよぎ、草を揺らしていた。
「静かな場所だ・・・ラモリさん・・・オーブの位置はどう?」
【ホウガク ハ アッテイル・・・シカシ マダ ハンノウ ガ ビジャク ダ。コノ エリア ヲ ススンダラ マタ ナニカ ワカルカモ シレナイ】
「・・・みんな、気を付けてください。やはり、いるようです・・・この丘のどこかに・・・。風から、ビーストのにおいが流れてきます」
「・・・まさか、こっちもすでに見つかっているってことはないよなー?」
「大丈夫、こっちが風下に立っています、こちらのにおいは・・・ビーストにはわかりません。岩に身を隠して、風下に回り続ければ、きっと見つからないですよ・・・」
「でも、なんかおかしいな・・・」
「え、何がー? 」
「ここ、荒らされた形跡なんてない。リャマさんの話だと、2,3か月も前からビーストが目撃されてるっていうのに・・・綺麗なままだ・・・」
「そーか、あんなに暴れる奴がいたら、周りの様子ですぐにわかるよなー」
「ビーストは、常に暴れているってわけじゃないのかも・・・」
「気を付けて、ビーストも少しずつ場所を変えています・・・!」
ともえ達一行は、辺りに細心の注意を払い、岩から岩へと移動した。日は高く、天候が
安定しており、風の向きが変わることもなかった。
一行は、この辺りで一番高い丘の上に来ていた。においだけでなく、ビーストを視認できればと思い、いったんそこに身を落ち着けた。
「においはあっちから流れてきてます・・・ビースト、いますか?」
「うん、見てみるよ。えっと・・・あれ、おかしいな、ここに入れといたのに」
「おー、借りてんぜ」
「あー! ロードランナーちゃんが持ってたの?」
「これ面白いよなー、双眼鏡・・・って、おい・・・ビースト・・・いたぜ、結構近くだ」
「あ、あたしにも見せて!」
三人は岩陰から頭を出し、辺りの様子を双眼鏡で探った。距離にして2、300メートルほど離れた、双眼鏡がなくても十分視認できる場所に、ビーストらしき姿を見つけた。
草と岩しかない、見晴らしのいいこの場で、鮮やかな橙色の体を持つビーストは、視認性がとても高かった。
「ビースト・・・何をしてるんだろう?」
ビーストは、下を向いてゆっくりと歩いていた。両手を合わせて、大事そうに何かを
持っていた。
やがてビーストは、足を止めた。静かに膝を折ると、合わせた両手を下へと傾けた。
パチャパチャパチャ・・・
水だ。ビーストは、手に溜めた水を、下にこぼしていた。水が零れ落ちる先には白い花がたった一輪、草原の中に咲いていた。
「お花に、水をあげている・・・? 白い花、リャマさんの店にあった絵と、同じかな?」
「・・・本当ですね・・・あんな所に、一輪だけ、花が咲いてますね」
「あの絵では丘一面に花畑が広がっていたけど・・・ここにはあの一輪だけなのかな? ビーストは、あの一輪を枯らさないように、世話をしているの?」
「フレンズもセルリアンも見境なく襲う奴が、花の世話ねぇ・・・よくわかんねーな」
「うん・・・思えば、ビーストのことを、あたし達は何も知らない。」
ともえは今まで、ビーストは見境なく暴れる怪物という認識しかなかった。しかし花の世話をする姿を見て、ビーストとは何者なのだろうという疑問を覚えた。
ここでたった一人、何をしているのか、何を思い生きているのか、今まで何があったのか。
ビーストはしばらく白い花の前に立ち尽くしていた。やがてその場で横になり、そのまま眠りについた。
「ビースト、なんだかとても疲れているみたいですね」
「無理もないよね、昨日、ビーストは川に落ちているんだもの。川に落ちたオーブを追いかけて、どれくらい流されたのかわからないけど、川に落ちて体が冷えたら体力なんてろくに残らないよ。」
「好都合じゃねーか、奴が寝てる隙に、ここを抜けられそうだな」
「そうですね。これならきっと安全に通れますよ」
≪きゃーー! 誰か助けてェーー! ビーストですゥ!≫
ともえ達が道中の安全を確信し、移動を再開しはじめようとした瞬間、何者かの悲鳴が聞こえた。
「えっ!? 何!?」
ふたたび、双眼鏡で周囲を観察すると、深緑色の小柄なフレンズが、ビーストから数十メートルほど離れた地点にいるのを見つけた。
≪ビーストに、食べられちゃいますゥーーー!!≫
深緑色のフレンズの悲鳴が、ビーストを覚醒させた。ビーストは、不意に上半身を起こすと、声のする方、深緑色のフレンズをゆっくりと見据えた。風がそよぐ静かな草原に、不穏な空気が立ち込めはじめた。
「あのままじゃ、あのフレンズが危ない・・・!」
「あのフレンズ、何やってんだよ・・・大声なんて出したら、ビーストが起きちまうだろーに」
「・・・ともえさん、どうしましょう?」
「どーするったって、選択肢は二つしかないよなー。ひとつ目は・・・オレ様達がビーストを引きつけて、あのフレンズを逃がす・・・もうひとつは・・・知らんぷりして通り過ぎることも出来るぜ・・・なんせ、こっちはまだ奴に見つかってないからな」
「・・・・・・そんなの、やだ! あのフレンズを助けたい!」
「だよな!・・・ともえはそー言うと思ったぜ、じゃー助けよーぜ!」
「もう、ロードランナーさんったら! ともえさんをからかってるんですか!」
「へへっ わりー、で、どーする?」
「うん、イエイヌちゃん・・・お願いがあるの」
「はい、言ってください。ともえさん」
≪(さあ、ビースト! こっちに来るのですォ!)≫
悲鳴を上げていた深緑色のフレンズは、ビーストの様子をうかがった。ビーストは体を起こしながらも、ゆっくりとこちらに注意を向け始めていた。すべては予定通りに運んでいる・・・と深緑色のフレンズは思った。
しかし、その時
・・・アオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン・・・
途切れのない、高く大きな声が辺り一面に轟いた。
≪な、なんなのですかァ~~~!? 何者なのです、あの三人、一体どういうつもりで・・・≫
声は真東の方向、ちょうど、この辺りで一番高い丘、そこの頂点に生えている岩の傍に三つの人影があった。
_____ウゥゥ・・・
ビーストは小高い丘の上の三人を観察した。天を向き遠吠えを張り上げる者。両手を
振り上げて挑発するような動きをする者。静かに、こちらを見つめて来る者・・・。そうだ、この三人には、つい昨日会ったばかりだ。
ビーストと呼ばれるフレンズ、アムールトラの表情がゆっくりと、歪み、殺気に満ちていった。立ち上がり、丘の上の遠吠えに呼応するように、咆哮を返した
_____ウゥゥゥッッ・・・ガアアアアアアッ!
「・・・ビーストがオレ様たちを見てるぜ! すぐにこっちに来る!」
「あのフレンズが逃げる時間を稼いで・・・その後、あたし達が逃げる方法を考えなきゃ! えーと、えーと・・・」
「ともえ、とりあえず火をつけよーぜ! あいつ、火が苦手だったよな!」
「うん、わかった!」
_____シュッ・・・ボウッ・・・
ともえはショルダーバッグから松明とマッチを取り出し、左手に松明とマッチ箱を持ち、右手で手早くマッチの一本を取り出すと、擦り付けて松明に火を灯した。
「よし、火が付いた・・・後は・・・・・・」
松明の火があれば、ビーストはともえ達に肉薄するのを躊躇するはず・・・しかし、それだけでは安全に逃げ切るのには、とてもじゃないが不十分だと、ともえは感じた。
【トモエ、ヒトツ ダケ カクジツ ニ タスカル ホウホウ ガ アル】
「え!? どうしたらいいの?」
【ソノ タイマツ デ ソウゲン ニ ヒ ヲ ハナテ】
「火を放つ・・・?」
【オレタチ ハ カザシモ ニ イル。ホノオ ハ オレ タチ ノ ホウ ニ モエ ヒロガル。ソノママ コウタイ スレバ ホノオ ガ オレタチ ヲ マモッテ クレル・・・ビースト ガ ホノオ ヲ ノリコエテ オレタチ ニ チカヅク コトハ デキナイ カラ ナ】
ともえは確かに、ラモリの言うことが、今一番現実的な、防衛手段だと思った。
しかし・・・
「ごめん、ラモリさん・・・あたし、それはやりたくないよ。」
【・・・シカシ、ホカ ニ アンゼン ヲ カクホ スル ホウホウ ハ ナイ ゾ】
「ラモリさん、火の他に、何かビーストの弱点ってあるかな?」
【アノ カラダ ニ コウゲキ ガ ツウジル バショ ガ アル ト シタラ・・・ソレ ハ 「メ」ヤ 「ハナ」 ナド ノ カンカクキ ダ カンカクキ ニ ナニカ ツヨイ シゲキ ヲ アタエラレレバ・・・】
「目や、鼻に、強い刺激かぁ・・・うん・・・ありがとうラモリさん・・・それで行こう」
_____ウォォォォッ!!
ビーストは、丘の上を目指して駆け出していた。その速度たるや、十数秒後にはともえ達のところへ到達する勢いだった。
「ともえさん、もうビーストが来ます! 」
「イエイヌちゃん! ロードランナーちゃん! 聞いて! あたしが、松明でビーストの注意を引くから、二人はビーストの死角に回り込んで・・・(ゴショゴショ)」
「ほ、ほー、そーいう作戦で行くのか」
「・・・はい、じゃ、これ、お願い!」
「わ・・・わふ!」
「やるしかねーか!」
ダァァンッ・・・
_____ドシィィィンッ!!
ビーストはゆうに数十メートルはジャンプすると、丘の上のともえ達のすぐ近くに着地した。着地の衝撃で砂埃を巻き起こした。砂埃の中から、金色に輝く光を二つ、ともえ達は見た。
つい昨日ぶりの、恐ろしい敵との相対だった。
「ウゥゥゥッ・・・」
「・・・あ、あたしが相手だ!」
ともえは、松明を両手で前方に掲げながら、ビーストに対峙した。そのままゆっくりと円を描くように距離を取って歩いた。
ビーストの目線は完全に松明に向いており、ともえと反対方向に回ったイエイヌとロードランナーにはまったく注意が向いていないようだった。
「ウゥ・・・」
「(イエイヌ、作戦通り、先に体当たりして、ビーストの体勢を崩してくれ、そしたらオレ様が、こいつを使って奴を・・・)」
「(はい! もうすぐ、完全にビーストの後ろに回れます!)」
イエイヌとロードランナーは、今にも飛び込まんと、ビーストの隙を伺っていた。ともえが掲げる松明に注意を引かれ、他のことに気を回せないビーストを見て、こちらがつけ入る隙は十分にあると思った
「(位置はこれで十分です、もう、仕掛けますか!?)」
「(・・・いや、待て! あいつなんかする気だぞ!)」
「ウォォッ!」
ブォン! ジャリィッ!
ビーストは、突如、体を翻して一回転させながら後ろ回し蹴りを放った。蹴りはただ放たれただけでなく、地面から土と草を削り取っていた。
バサバサバサッッ!
「わあっ! あっ・・・」
シュゥゥ・・・
虎の剛脚に削り飛ばされた土と草が、猛烈な勢いでともえに降り注いできた。
突然のことに思わず瞳を閉じたともえが再び前を見た時、覆い被さった土と草によって眼前に掲げた松明の炎は、いとも簡単にかき消された。
「ま、まずい・・・」
「ウゥゥッ・・・」
ダダッ!
見るだけで注意を乱される、鬱陶しい赤い光が消え去ったことを確認すると、ビーストの神経は再び研ぎ澄まされ、目の前の獲物への集中力を取り戻した
「ウァァッッ!!」
「きゃあっ!」
ビーストはあっという間にともえとの間合いを詰め、その爪牙を射程に収めた。
「や、やべーぞ!」
「ともえさん!」
「ガァッ!! ・・・ウッ?」
ガシィッ
かぎ爪を打ち下ろさんと踏み込んだビーストの片足を、突如草むらに隠れた何者かが掴んだ。ビーストが足元を見やると、赤い機械の腕がビーストの足首を押さえているのを
見つけた
【・・・ニゲロ!】
「ラモリさん!?」
「今しかない! 行きましょうロードランナーさん!」
「わーった!」
ビーストの動きが止まったのを、二人のフレンズは逃さなかった。
「ガウウウッッ! ともえさんは絶対に、絶対に、傷付けさせない!」
「・・・ガァッ!!」
イエイヌは、全速力でビーストに走り寄った、しかしビーストはそれを察知し、振り返りざまに右足を蹴り出した。ラモリの腕を遠心力で振りほどき、そのままイエイヌに向かって弾き飛ばした
ドガァッ!
「ぐふっ!」
ラモリの体が、イエイヌの腹部に直撃した。強い衝撃でイエイヌは昏倒した。しかしビーストは、イエイヌの後ろに控えていたもう一人の姿がないことに気付いた
「(オレ様はここだぜ! くらいな!)」
ブワァァァ・・・
ロードランナーは、イエイヌが作った一瞬の隙をついて飛び上がり、ビーストの真上を取ることに成功していた。そして、下にいるビーストめがけ、ともえから渡された巾着袋を開け放ち、中身を振りまいた。黒い煙が重力に従って舞い落ちていった。
「胡椒で目と鼻を潰す作戦だ! ・・・って、あれ・・・?」
しかし、黒い煙が舞い落ちる先に、すでにビーストはいなかった
「・・・へっ? ちょっと・・・まさか・・・」
「・・・ガァッ!」
後ろから刺すような殺気を感じ、ロードランナーは振り返った。殺気をみなぎらせた表情のビーストが、ロードランナーの後ろに回り込んでいた。コショウが下に落ちるまでのわずかな間に、ビーストはロードランナーのいる高さまで、跳躍していた
「(しくったぜ・・・目の前まで近づかなきゃ、こいつはかわしちまうのかよー! ・・・上から胡椒をばら撒いて浴びせよーって思ったが・・・考えが甘かったぜ!)」
ブゥンッ! ベッシィィッ!!
「ぎゃああああっ!!」
宙に浮いていたロードランナーはビーストの一撃を受け、丘の下まで吹き飛ばされた
「ロードランナーちゃん! ・・・あっ」
「ウゥゥゥッ・・・」
邪魔者をすべて排除したアムールトラは、ともえに向き直り、迫った。ともえ達の連携も、ビーストの異常なまでの戦闘能力に、いとも簡単に打ち破られた。ともえはもはや万策尽きたことを悟った。
イエイヌは痛む体をやっと起こすと、少し離れた所から、追い詰められた仲間の姿を見た。
「うう・・・ともえさん・・・逃げて・・・逃げて・・・」
ビーストは、無防備なともえの喉元に、鋭いかぎ爪を添えた。ひとたびビーストが手を握りこめば、ともえの喉は容易に裂かれてしまうだろう。もはや逃げることは不可能だった。
ともえは心臓が凍るような恐怖を感じた。しかし、それを払拭するぐらい、頭にこびりついて離れなかった疑問を、口にした。
「あ、あなた・・・本当はこんなことしたくないんじゃないの? 」
「・・・ウゥ?」
ビーストは、伸ばした腕のすぐそこにある顔を見た。生殺与奪を握られてなお、自分と対話しようとする、その瞳を見た。敵意や恐怖以外の感情を向けられたのは、一体いつぶりだっただろう
「あなたが・・・暴れたくて、暴れているなんて、どうしても・・・思えないの・・・花を愛する優しいあなたが、どうしてこんなに暴れてしまうの?」
「・・・・・・ッ」
ビーストは、ともえの左右異なる光を湛える双眸を見ていると、不思議な気持ちになった。自分の長い人生の、遠い記憶をずっと遡った過去にある、懐かしさを感じた。懐かしさの正体が何なのか、言葉にすることは出来なかった
「教えて・・・あなたは誰なの?」
「・・・アッ・・・グッ・・・?」
ビーストの表情から力が抜けていった。瞳から放たれ続けていた、金色の殺意の光が急速に失せていった。
スッ
「え・・・?」
ビーストは、ともえの喉にかけていた手を外した。両手を落として立ち尽くし、完全に戦闘態勢が解かれたように見えたその時
ヒュン! カンッ
どこからか飛んできた小石が、ビーストの頭に当たった
「・・・ウゥ?」
≪・・・こっちだーーービーストーーー! こっち来いやーーー!≫
「ロ、ロードランナーちゃん!?」
「ウゥゥゥ・・・」
先ほど吹き飛ばされたロードランナーが、丘の下から大声で叫んでいた。その声を聞き、ビーストはゆっくりと後ろを振り返る。瞳には再び野生解放の光が宿り始めロードランナーを注視した。
(ギロリッ)
「(・・・やっべぇーーー! こんなの、マジでビビるじゃねーか! だが、やるしかねー!)」
「ガァァァッッ!!」
アムールトラは、丘の下のロードランナー目掛けて突進を開始した。それを確認してからロードランナーも、背を向けて身をかがめると、全力で駆け出した
_____ドドドドドド!!
______シュタタタタ!!
ロードランナーは、自慢の俊足を使い、ひたすらに駆けた。道はなだらかな下り坂であり、平地以上の速さが出ていた。しかし、獲物を仕留めにかかるビーストの足には敵わず、その差は縮まる一方だった。
「(無茶だ・・・! ・・・ロードランナーちゃんの足でも、ビーストは振り切れない!)」
二人の距離はさらに縮まり続け、ビーストは、飛び掛かればロードランナーを仕留められる位置にまで近づこうとしていた。飛び掛かる直前のビーストの走るスピードは、まさに最高速度にまで達していた。
「・・・かかったなー!」
今にも追いつかれる瞬間、ロードランナーは、走り幅跳びの要領で、地面から大きく飛び上がった。そしてそのまま翼をはばたかせ飛行状態に移行した。
「(ロードランナーちゃん、何をする気・・・? あ、あれは・・・?)」
ロードランナーとすれ違うようにして、草むらの下から、2人の鳥のフレンズが草むらから飛び出した。
フレンズたちは手に捕獲網を持っており、数メートルの間隔を空けて飛び、空中に網を広げた。
さらにもう2人、これも鳥のフレンズが、空中に広がる網を、地面から引っ張って支えていた。
「・・・ウガァッッ!?」
今までビーストは、ロードランナーを追跡せんと、下り坂をひた走っていた。坂でついた勢いを減速出来ないまま、猛烈な速度で捕獲網へと突っ込んだ。そのまま手足が網に絡め取られながら、転倒した。
「・・・グゥッ・・・?」
≪・・・・・・上手く網にかかりました。しかしここからが本番です・・・・・・皆さん! 打合せ
通りにお願いします!≫
岩陰から現れた白い体色のフレンズが、網を持った鳥のフレンズ四人に指示をだしていた。
鳥のフレンズ達は、向かい合った二人が、低空飛行しながらすれ違い、網を互い違いの方向へと引っ張った。網はビーストの体を包むように収束し、四人分の飛ぶ力がビーストの体を一層強く締め付けた。
「ウゥゥゥッ・・・」
ビーストは全身にかかる圧力と同時に、周囲に渦巻く敵意と恐怖を感じ取った。その感情に呼応するように、ビーストの内側から、どす黒い、理性を覆い隠す殺意が沸き立ってきた。
(こいつらは敵だ・・・私の前に立つ者は・・・みんな敵だ・・・)
殺意が具現化したように、紫色の禍々しいオーラが炎のようにビーストの全身から立ち上った。絡め取られ、自由を奪われた手と足に、再び力が漲っていくのを感じた。
キシッ・・・キシッ・・・
≪・・・・・・皆さん! いざという時は逃げる準備をしてください・・・≫
「お、お、おい、マジかよー!」
≪・・・・・・この網を力任せに破ることは不可能なはずなのです・・・・・・大昔、ヒトが「クジラ」を捕えるために使った網なのだから・・・・・・しかし、あのビースト相手に甘い想定は命取りです・・・!≫
「ウアアァァァッッ・・・!」
ビーストは、さらに止めどなくあふれ出る殺意に塗りつぶされていった。もう少しすれば、一切の理性が消滅していくように思えた。
しかし、その時
・・・もう、やめるのだ・・・
「・・・ウ、ウゥッ!?」
ビーストは、突如、自分の中から語り掛けてくる、自分ではない声を聞いた。その異変が、急激にビーストの理性を現実へと引き戻した。
・・・今のお前は、本当のお前ではない・・・
(な、なんだこの声は・・・)
・・・思い出すのだ、お前が何を大切にしてきたのか・・・
・・・お前がかつて何者であったのか・・・
・・・何のためにその力を身に着けたのか・・・
・・・何のためにその力を発揮してきたのか・・・
「ウ、ウ、ウ・・・」
謎の声は、繰り返し、ビーストの中から語り掛けてきた。その声を無視して力を籠めようとしても、もう、ろくに力が入らなかった
≪・・・・・・ビーストから感じる圧力が、急激に落ちた? なぜ? ・・・・・・いえ、理由はどうでもいい・・・・・・フクロウの皆さんは、全力で網を引っ張り続けてください! ・・・・・・デグー、オオミチバシリさん、ビーストを押さえてください!≫
≪はいですゥ!≫
「まかしとけー!」
ついさっき、ビーストの傍で大声を上げていた深緑色の小柄なフレンズが、返事をした。ロードランナーもそれに続いた。
「ウッ・・・ウアア・・・」
深緑色のフレンズと、ロードランナーは、ビーストに馬乗りになると、ビーストの右腕を網の上から押さえつけた。
目の前の状況よりも、自分の内側からの声に翻弄されていたビーストは二人分の体重を振りほどくことも出来ず、右腕を地面にほぼ固定されてしまった。
≪・・・・・・ありがとう、そのまま・・・≫
白いフレンズは、ダボダボの上着の内ポケットの中から、「小さな透明の容器が付いた細い針」を取り出すと、毛に覆われたビーストの右腕の上にそれを刺し、容器の中の液体を注入した。液体を一本分注入し終わるとさらにもう一本取り出して、液体の注入を続けた。
「な、何・・・何が起こってるの・・・? あの人達、誰?」
ともえは、丘の下で起こっている出来事を呆然と眺めた。
「何か、ロードランナーちゃんもごく自然な感じで混ざってるし・・・」
「ともえさん・・・大丈夫!? 大丈夫!?」
「わたしは、何ともないよ、イエイヌちゃんこそ・・・」
「へ、平気ですよ、これくらい・・・それより、ともえさん、下の様子が気になりますね」
「うん、行ってみよう」
ともえとイエイヌは、丘の下に集まったフレンズたちの元に駆け寄った。
「すいませーん、あの、これは一体?」
≪いやーーー、皆さんも無事でよかったですねェ!≫
深緑色の小柄なフレンズが、ともえ達に駆け寄ってきた。
「あ、あなたはさっきの・・・」
「はい! わたし、デグーと申しますゥ! あちらのハツカネズミ博士の助手ですゥ!」
プツッ・・・
デグーに手で示された、ダボダボの上着を着た白いフレンズは、ビーストの右腕から注射針を引き抜くと、向き直ってともえ達に挨拶した。
「・・・・・・はじめまして・・・ハツカネズミという者です」
ハツカネズミと名乗るフレンズは礼儀正しかったが、陰気で底知れない空気をまとっていた。
周りのフレンズたちが、ビーストを前に浮足立っているのとは対照的にハツカネズミはまったく物静かな表情をしていた。ハツカネズミの右目は黒目だったが、左目は血が透き通ったかのような赤だった。
「は、はじめまして、わたし、イエイヌです」
「ともえです。はじめまして・・・。あの・・・皆さんはここで何をしているの?」
「・・・・・・わたし達は、ビーストを捕獲するために・・・ここで罠を張っていたのです・・・・・・ビーストがいることで、このちほーに暮らすフレンズたちが、皆不安になっていましたからね・・・」
「そこに偶然通りがかったアナタたちと、出くわしたってわけですゥ! そして、こちらのオオミチバシリさんに、協力していただきましたァ!」
「そっちの名前で呼ばれるの久しぶりで、どうにも慣れねーな・・・まあ、さっきオレ様がビーストにぶっ飛ばされた時、デグーから協力するように言われたんだよー。この、捕獲作戦にな」
「そうだったんだ・・・」
「・・・・・・オオミチバシリさんの協力で・・・想定以上に上手く行きました・・・・・・走ることと飛ぶことを・・・両方こなす稀有な特性・・・・・・そして土壇場で一歩も引かない胆力・・・お見事でした・・・」
「ホントホント! 最初はわたしがおびき寄せるつもりでしたけど、やっぱりビーストは怖いですからァ!」
「へへっ、もっと褒めていーぜ! あと、タンリョクって何だー?」
「ところでェ! 皆さんも、ビーストを捕まえるつもりだったのですかァ?」
「クゥン・・・いえ・・・わたし達はただここを通りたかっただけです」
「デグー、あんたが襲われそうだと思って、助けよーとしたんだからなー」
「えェ! そうだったんですかァ! 悪いことしちゃいましたねェ。でも、たった3人でビーストを相手にしようとするなんて、皆さんとっても勇敢ですねェ!」
「・・・グゥ・・・ウグ・・・」
網の中でうずくまっているビーストを、ともえは見た。動きは次第に緩慢になり、瞳は少しずつ閉じられ、その意識は消失しようとしていた。ともえは思わず尋ねた。
「・・・あの、ビーストはどうなったの? これから、どうするつもりなの?」
「・・・・・・薬で眠らせました・・・寝ている間に、わたしの住処に運びこもうと思います。・・・・・・空を飛べる友人たちに・・・速やかに運んでもらう予定です・・・・・・ほら」
_____フワ~~ッ
______スタッ スタッ
ハツカネズミが空を指差すと、太陽に照らされた二つのシルエットが、寸分違わぬ動きをしながら舞い降りてきた。お互いにそっくりな見た目をした、二人の鳥のフレンズだった。その姿は、見覚えのある・・・というか、つい先ほど見たような・・・
「さすが「ヒトの道具は何でも修理できる」と評判の、ハツカネズミ博士です。私達の注文通り「注射器」を見事に修理しましたですね。」
「おかげでなんとかビーストの捕獲に成功しましたのです。あなたに任せて正解だったのです。」
「・・・・・・いえ・・・あなた達が上から指揮してくれたおかげです。・・・・・・そして、手を貸してくれた・・・優秀なお弟子さん達のね・・・」
「あなた達、よく頑張りましたですね! 鼻が高いのです!」
ハツカネズミの後ろに控えていた、4人の鳥のフレンズは、空から降りてきた二人を見て、一様に安心した表情になった。白い鳥のフレンズに声をかけられて、それぞれの反応を返した。
≪ やべーw博士に褒められちゃったしww ≫(メガネフクロウ)
≪ とととと、とっても怖かったです!! ≫(アナホリフクロウ)
≪ 今日の課外活動は、学問史に名を残す偉業になるでしょう・・・ ≫(メンフクロウ)
≪ しんどい・・・ゼミ生の活動が、こんなに、体を張るものだったとは・・・ ≫(アオバズク)
「あっ、ねえ、あなた達は・・・ついさっき、リャマさんのレストランにいたよね!?」
「・・・・・・もしかして、すでにお知り合いですか?」
「いやー、知り合いではないんだけれどよー・・・」
「ん? そういえば、朝餉をしに立ち寄ったレストランに、先客がいたような・・・料理に夢中で、気にも留めませんでしたが、あなた達もあのレストランにいたのですか?」
「うん、そうなの! 短い間にまた会うなんて!」
「こっちはよーく覚えてるぜ、なんせ、あんたらはインパクト強いからな」
「そんなに褒められると照れるのです」
「褒めてねーし」
「・・・・・・ふむ・・・では、こちらのお二人を紹介しましょうか・・・・・・オオコノハズク博士と・・・ワシミミズク助手です・・・・・・南の大陸の「オサ」と言われている・・・高名なお二人です」
「わふっ? ・・・オサってなんですか? お二人は一流の料理人って言ってましたよね?」
「ふっふっふ、その両方ですよ。我々は、多方面の才能を持つので・・・」
「ハツカネズミ博士・・・こちらの皆さんは?」
「・・・・・・こちらの三人は、偶然出会ったのですが、ビーストの捕獲に協力してくれた方々です・・・」
「ほう、私達のほうからも、お礼を言わなくちゃですね。」
「ありがとうございますのです。」
「あっ、あっ・・・いや・・・」
ジーッ・・・
会釈した頭を上げると、二人の梟は、ともえの顔を大きな瞳でしげしげと眺めた。ともえは自分のすべてを見透かされたような気分になり、気おくれした。
「あ、あの・・・どうしてそんなにあたしを見るの?」
「これは失礼。よく見るとあなた、ずいぶん個性的な見た目ですね。興味深いのです。良ければ教えていただけますですか? あなたが何のけものなのか」
「あの、あたしは、多分、ヒトじゃないかなって思ってるんだけど・・・」
「ほう、ヒトですか」
「・・・でも何も確信が持てなくて、だから・・・自分のことを知るために、旅をしているの」
「旅というと、何か目的地があるのですか?」
「はい、あたし、セントラルエリアっていうところを目指していて・・・そこにいけば、あたし以外にもヒトがいるらしいの。」
「(聞きましたか、博士・・・)」
「(・・・ふむ・・・)・・・セントラルエリア・・・行ったことはありませんが。そこにヒトがいる
なんて、そんな話は、聞いたことがありません」
「えっ・・・?」
「あなたは、その話を、どうやって知ったのです?」
「ラモリさんが、そう言ってて・・・あ、ラモリさんっていうのは、あたし達の仲間なんだけど・・・」
「らもり? ヤモリの一種ですか?」
「あっ! ともえさん! そういえばラモリさんがいません!さっきわたしとぶつかって、壊れちゃったのでしょうか? どうしよう! どうしよう!」
「本当だ! ラモリさ~ん! 返事して~!」
【トモエ ヨンダ カ?】
≪ わあああ! ≫
ともえ達のすぐ目の前で、何の前触れもなく、マゼンタカラーの小さなボディが草むらから顔を出した。
「もう! ラモリさんって、いつも前触れなく登場するんだから!」
「こ、これはラッキービースト! しかし、こんな色や出で立ちをしたラッキービーストは始めて見たのです!」
「ラモリさん、やっぱり珍しいのかな? 確かに他のラッキーさんと色が違うけど・・・」
「あなた達は、ラッキービーストも連れて歩いてるのですか?」
「・・・連れて歩いているというか、あたし達が連れられているというか・・・」
「やはりあなたたちは、興味深いのです・・・」
「博士、あの話を、聞かせてあげるのはどうですか?」
「そうですね・・・ビースト捕獲に協力してくれた礼です。」
「えっ! 話って何!?」
「ヒトに関する情報ですよ。」
「・・・わたし達、昔、ヒトのフレンズに会ったことがありますのです。」
「えっ、えっ、えっ・・・・・・えーーーーーーーーーーーーっっ!!」
「ともえー、落ち着けって! でも、本当なら、すげーなこのお二人さん」
「クゥン・・・(確かにこの二人、いろんなことを知ってそうな感じがする・・・只者じゃない)」
「聞きたいですか? 」
「うん! ぜひ、聞かせて!」
「・・・・・・お待ちを・・・・・・今は時間がありません・・・・・・今行うべきは、ビーストが目を覚まさないうちに・・・私の「ラボ」に搬送することです・・・・・・積もる話は、またの機会に・・・」
「あ、そうだね・・・ごめんなさい」
「そうですね・・・みんな、ごくろうでした、そしてもう一仕事、お願いしますのです」
≪ ちーすwビースト運ぶっす ≫
≪ いいい急がなくちゃ! ビビビビーストが目を覚ましちゃう! ≫
≪ 仕留めた獲物をその手に、大空の凱旋・・・これはまさにワルキューレの騎行 ≫
≪ ああ、まだ休めないなんて、ゼミ生をこき使いすぎ・・・ ≫
4人のフクロウたちは、二手に分かれ、網の端と端を掴み、意識を失ったビーストの体を括り上げた。ビーストが目を覚ます気配はなく、網に囚われた体はそのまま宙に浮いた。
ハツカネズミは、オオコノハズクとワシミミズクに体を預けた。
「さて、あなた、ともえさんと言いましたね。さっき言った通り、後ほど、私達が知り得る、ヒトの話を聞かせてあげるのです。」
「うん! お願いします!」
「・・・・・・では皆さん、改めてお伝えしますが、わたし達は、ビーストをわたし達の住処へ移送します・・・一刻を争うので、すぐにここを去ります。・・・・・・皆さんは後から付いてきてください・・・・・・デグー・・・皆さんを案内してください」
「はーい博士ェ! 任せてください!」
バサッ バサッ・・・
ビーストを捕えたハツカネズミとフクロウたちは、空の向こうへ飛び立っていった。騒動が去った後の草と岩の丘には、静かな風がそよいでいた。
「ともえさん! 旅の手がかりが見つかりましたね! やった! やった!」
「ありがとう! 楽しみだよ!」
「ビーストもいなくなったし、目的地も決まったし、万事OKだなー! ところで、デグーちゃんよー、その住処ってーのは、近いのか?」
「近くはないですねェ、ですが、遠いって程でもないですゥ!」
「えー? まーいーや・・・行くか」
ともえ達は、足取りを立て直し、草と岩に覆われた丘を歩いた。歩き始めてすぐ目の前に、先ほど見た物をともえは見付けた。
白い一輪の花だった。ついさっきまでビーストが寄り添っていたそれは、ただぽつんと、そよ風に揺れていた。
「あ・・・」
「なんだよともえ、さっきのテンションはどこ行った?」
「ともえさん、何か気になることがあるんですか?」
「うん・・・ビーストが、ちょっとかわいそうって思って、ビーストは、ただ、ここで休んでいただけなのに、こっちから刺激して、捕まえる必要があったのかな」
「何言ってんだよ、ともえ・・・今まで、何回もビーストに襲われてるじゃんか」
「うん、だから、向こうから襲ってきたら、身を守るために戦うけど、こっちから手を出す必要があるのかなって思ったの。」
「・・・ハツカネズミ博士も、自分たちから戦いを仕掛けるようなことはしたくないって言ってましたァ・・・だけど、ビーストがいたら、このちほーに暮らす皆が安心できないから捕まえるしかないって」
「それに関しちゃ、オレ様もそのとーりだと思うぜ」
「うん、デグーさん達は正しいよ。正しいって思うけど・・・でも、ビーストとは本当に争い合うことしかできないのかな?」
「なんで、そー思う?」
「聞いて、さっきのビースト、様子が変だったの・・・」
ともえは、ビーストが、自分の言葉に反応して、一瞬正気に戻ったように見えたことを話した。あの時ビーストは、自分を襲うことを、やめたように見えた。
「ビーストにこっちの言葉が通じたってーのか?」
「にわかには信じがたいですねェ・・・」
「イエイヌちゃんは、傍で見てたよね? ビーストの様子を見てどう思った?」
「わ、わたしは、ともえさんが危ない目に遭うのは絶対に嫌です・・・だから、ビーストはいないほうが安心です」
「だろー?」
「・・・でも、でも、あの時のビーストとは、お話が出来るのかもって思いました・・・。」
「うん、そうだよね、イエイヌちゃん・・・・・・あ、そうだ! ビーストとお話してみようよ! ビーストの考えや事情が分かれば、他のみんなと仲良く暮らせるようになるかもしれない! デグーさん、ハツカネズミさんの住処で、ビーストとお話、出来ないかな!?」
「ええ!? それはァ、博士に相談してみない事には・・・後、フクロウのお二人さんにもォ。」
「よし・・・何とかお願いしてみよう! みんな、ごめんね! 足を止めたりして」
「良いですけど・・・じゃあ、行きましょうかァ?」
「ともえ、ヒトのフレンズの話と、ビーストと、どっちに興味があるんだよー?」
「クゥン・・・(ビーストと、お話が出来る・・・? わたし、何を言っているの? ・・・ビーストに近づいたら、また、ともえさんが危ない目に遭うかもしれないのに・・・ともえさんを守ることが、一番、一番、大事なのに・・・何であんなことを言ったの・・・?)」
ともえ達はひたすらに、草と岩だけの、風邪がそよぐ静かな丘を進んだ。視界が開けた丘は、進むごとに、背の高い木が多くなり、やがてひと際大きな丘を越えると、
眼下には森林が広がっていた。
森の向こうには深い霧が立ち込めており、視認できる範囲は、入口の周辺の限られた範囲だけだった。
「わふっ、何かいきなり景色が変わりましたね」
「うへー、森に入るのか、なーんか霧も出ちゃってるし」
「あ、でも見て。ここ、ちゃんとした道だよ」
ともえは、地面を見ると、草や落ち葉の隙間から、アスファルトがのぞいていることに気付いた。それは遠い昔、舗装された道であることを示す証拠だった。
「そうですゥ! ここからは、この道なりに歩いていけば、わたし達の住処に着きますよォ! しかも後は下り道だけだから、楽ですしィ!」
「おっ、そーか!」
「・・・」
ともえは、今まで歩いてきた丘を振り返った。
「(あの白い花・・・結局、あの一輪しかなかったな・・・ここが昔、花畑だったとしたら・・・あの白い花は、その最後の一輪なのかな? あの一輪が枯れたら、昔、ここにたくさんの白い花が咲いていたことなんて、最初からなかったことみたいになっちゃうのかな・・・ビーストとあの花、どっちも、一人ぼっちなんだな・・・ビーストは、あの花に自分のことを重ねてたのかな・・・?)」
太陽は空の真上から少し西に傾き、今は午後だった。リャマのレストランで目覚めてから、まだ5~6時間程度しか経っていなかった。にも関わらず・・・
ヒトのフレンズを知っているという、オオコノハズク博士たち、ビーストと和解できるかもしれないという可能性・・・この数時間で手に入れた情報が多すぎて、ともえの頭の中はいっぱいになっていた。今はまだ、わからないことだらけ・・・しかし、行く先にはきっと自分が求める真実が待っていてくれる・・・そんな、希望をともえは感じていた。
一行は、森の中の道に足を踏み入れていった。
to be continued・・・
_______________Cast________________
哺乳綱・ネコ目・イヌ科・イヌ属
「イエイヌ(雑種)」
鳥綱・カッコウ目・カッコウ科・ミチバシリ属
「英名G・ロードランナー 和名オオミチバシリ」
哺乳綱・ネコ目・ネコ科・ヒョウ属トラ亜種
「アムールトラ」
鳥綱・フクロウ目・フクロウ科・コノハズク属
「アフリカオオコノハズク」
鳥綱・フクロウ目・フクロウ科・ワシミミズク属
「ワシミミズク」
哺乳綱・クジラ偶蹄目・ラクダ科・リャマ属
「リャマ」
哺乳綱・げっ歯目・ネズミ科・ハツカネズミ属
「ハツカネズミ」
哺乳綱・げっ歯目・デグー科・デグー属
「デグー」
鳥綱・フクロウ目・フクロウ科・メガネフクロウ属
「メガネフクロウ」
鳥綱・フクロウ目・フクロウ科・コキンメフクロウ属
「アナホリフクロウ」
鳥綱・フクロウ目・フクロウ科・メンフクロウ属
「メンフクロウ」
鳥綱・フクロウ目・フクロウ科・アオバズク属
「アオバズク」
自立行動型ジャパリパークガイドロボット
「ラッキービーストR-TYPEー01 通称ラモリ」
?????????????????????
「通称ともえ」
_______________Materials________________
チャワンタケ網・チャワンタケ目・セイヨウショウロ科・セイヨウショウロ属
「英名トリュフ 和名セイヨウショウロ」
双子葉植物綱・コショウ目・コショウ科・コショウ属
「コショウ」
単子葉植物綱・ユリ亜綱・ユリ目・ユリ科・オオアマナ属
「オオアマナ」
用途:灯り、神事など 素材:スギ、ヒノキ、松脂、枯れ草など 発明時期:紀元前十万年以上前
「松明」
用途:容器、または生物の捕獲 素材:天然繊維または合成繊維 発明時期:紀元前一万年頃
「網」
_______________Story inspired by________________
“けものフレンズ” “けものフレンズ2”
byけものフレンズプロジェクト
“けものフレンズR”
by呪詛兄貴