森の中の道を、ともえ達は歩き続けた。道の向こうには深い霧が立ち込めており目の前の道しか確認することが出来ず、距離の感覚はなかった
唯一はっきりしているのは、この道がかなり急な下り坂であるということだけだった
案内役のデグーがいなければ、かなり不安な道のりだった。しかしイエイヌが持ち前の嗅覚で、違和感に気付いた
「クンクン・・・そういえば、なんだか、しょっぱいにおいがします。これは・・・海?」
「そう! この道を進めば、海に付くんですよォ!」
「ちょっと待てよー、住処はどうしたんだよ」
「フフフ、行けばわかりますってェ!」
ともえ達は、霧の向こうに続く坂道を下り続けた。イエイヌでなくとも感じ取れる潮のにおいが立ち込め始め、確実に海に向かっていることを予感させた
一行は、さらに下り続けた。木々の向こうまで立ち込める霧の、そのまた向こうから、うっすら昼下がりの空が覗いていた。そして完全に森を抜けると・・・
ザァーーーーーー・・・
ザッパーーン・・・
「マジで海に付いちまったぜ・・・」
波が打ち寄せる浜辺が、右から左までずっと続いていた。立ち込める霧で水平線が隠れてしまっていたが、完全に、陸地が消え、海になっていた
デグーは水平線のある一点を指差した
「見てください! あれがわたし達の住処ですゥ!」
霧の中で黒く浮かび上がる、巨大な建造物があった。ひときわ異様だったのは建造物の上方にはまり込むように、大きな「魚」が形取られていたことだった
海にそびえ立つ黒い大きな影は、恐ろし気な、異様な雰囲気を放っていた
「・・・すげーとこ住んでんだな」
「クゥン・・・わたし、なんだか怖くなってきました」
「たまたま、霧が濃くて、怖く見えるかもしれないけど、全然そんなことないですよォ!」
「でも、でも、なんで海の上にあんな建物があるんでしょう?」
「・・・イエイヌちゃん、ロードランナーちゃん、地面を見てみて・・・アスファルトの舗装が、海の中まで入っていってる・・・昔はこの先も陸地で、道が続いてたんだよ・・・でも、何で海に沈んじゃったんだろう? ラモリさん、何かわかる?」
【カイテイカザン ノ フンカ ト ヒンパツ スル ジシン・・・オソラク、ソレラ ノ エイキョウ デ チケイ ガ ムカシ ト カワッテ シマッタ ノ ダロウ】
「へぇ・・・じゃあ、昔と今で、そんなに環境が変わっているんだね・・・そしたらやっぱり、あの丘は昔白い花畑だったのかも・・・」
「そ、それよりよー、あそこまでどうやって行くんだ? 泳いで行けってーのか? オレ様は飛べるけど・・・あの距離はきつそうだわ」
「そんなわけないじゃないですかァ・・・ほら、あれ・・・」
デグーは少し行った所の浜辺を指差した。なだらかな形の物体が浜辺に乗り上げていた
「わふっ! あ、あんなところに船がありますね。」
「あれは、デグーさんの船なの?」
「わたしの物ってわけではないんですけどォ、あれ、おっかしィなァ・・・」
デグーの手招きで、一行は船に近寄った。質素な木造の船で、船体後部にオールが備え付けられており、手動で動かせるものだった。デグーは、船の上によじ登ると何者かに向かって話しかけた
「ちょっとォ! サボりですかァ?」
「デグーさん、そこに誰かいるの?」
「むにゃむにゃ・・・あ、デグーだ・・・ふわ~~~~~~~~っ」
舟床に寝そべっていたフレンズが、気だるげに体を起こした。涼し気な青い上着を
身にまとった海生哺乳類のフレンズだ
「だってー、ビースト騒ぎと、この深い霧で・・・お客さんなんか、来ないもん・・・」
「お客様なら、わたしが連れてきましたよォ! ほら、こちらの三人を見てください!」
「へっ!? あ、あ、い、いらっしゃいませ! ジャパリホテルのご利用ありがとうございます! わたしは船頭のマイルカです!」
「はじめましてマイルカさん・・・えーと、ジャパリホテルって? 何のこと?」
「えっ?」
「あァ、お客様って言ってもォ~、ホテルのじゃなくてェ、博士のお客様なんですよォ」
「あ~、はいはいはい・・・最近は、そっち関係のお客様ばっかり来るね、まあお客様には違いないけど・・・それでは、どうぞ~! 船に乗ってください! ホテルへご案内します!」
「待てよー、ホテルだのお客だのってーのはどーいうことだー?」
「ふふ、向こうについたら説明しますねェ。」
「えぇ? なんだかわからないけど、お邪魔します」
「ともえさん、揺れますから、慎重に、慎重に・・・」
「そういやー、船なんかに乗るの、はじめてだぜー」
ともえ達を乗せたマイルカの船は、悠々と海面を進み「ジャパリホテル」に近づいていった。近づけば近づくほどに、海面からそびえたつ建物は、異様な巨大さを感じさせた。
ほどなくして、建物のすぐそこまでたどり着いた。目の前には、これもまた、海の下まで続いていると思しき、石作りの大きな階段が海面から姿を見せていた。
「着きましたよお客さま! どうぞ階段を上っていってください!」
「へぇ、すごいな~、海の下からこんな階段が続いているだなんて嘘みたい」
「ふふ、この先に行くと、もっと驚きますよォ!」
ともえ達は波に揺れる船を降り、階段を上り始めた。デグーは導くように先頭を進んでいた
そして階段を上り切ると・・・
「いらっしゃいませ! ジャパリホテルへ、ようこそお越しくださいました!」
「へっ?」
階段を登った矢先、深々と頭を下げ、明るい声で歓迎するフレンズが姿を見せた。そこはある程度の広さがある中庭であり、潮風に晒されているとは思えないほど清潔に手入れされていた
「わたくし、当ホテル支配人のオオミミギツネでございます。」
「あ、こ、こんにちは」
「へー、やっぱ、マジにホテルなんだなー、ここ」
「支配人、この三人はねェ、博士とフクロウさん達の客人なんですよォ。博士たちはもう、ここに帰ってきてるはずですよォ、ビーストを捕まえて、ここに戻ってきたんですゥ!」
「まぁ! そうだったの!? もう、ハツカネズミさんたら、いつも何も言ってくれないんだもの。今回のことだって、わたくしは蚊帳の外だったんだから・・・」
「博士は、支配人には、迷惑をかけたくないって言ってましたよォ、だから何も言わなかったんじゃないですかねェ・・・とりあえず、こちらの三人を案内してくださいィ~」
「そ、そうだったわね。それでは、お客様! どうぞこちらへお越しください」
「うん、お邪魔します」
「クゥン・・・こんな海の中に入ったら、溺れちゃうんじゃないですか?」
「ご安心を! 当ホテルは海の中でも、陸の上みたいに快適に過ごせますのよ」
「へぇ、楽しみ」
ともえ達がホテルの内部に入ると、さらに驚かされた。海に沈んだホテルは、ガラス張りの窓から海の中の風景を鮮明に映し出していた
「うわ~、海の中ってこんな風になってたんだね・・・あ、あれは何ですか? あの綺麗な木みたいなもの・・・」
「あれは珊瑚でございますよ」
ロビーでは、哺乳類、鳥類、海生生物など多種多用なフレンズが客としてくつろいでいた。盛況と呼べるほどではないが、決して閑散としているわけではなかった
「へー、結構いいとこじゃねーの」
「あれ、お客さんが全然来ないって、マイルカさんが言ってたけど・・・」
「今いらっしゃるお客様は、以前から滞在していただいている方々ですわ。ビーストや霧のせいで新しいお客様はこのちほーに来なくなってしまいました。逆に、以前からいらっしゃるお客様は、ここを発つことが出来ないでいる状況なんですの」
海に沈んでいることの他にも、このホテルには異様な点があった。人工物が外界とは比べ物にならないぐらい多く存在することだ。台の上で玉を打って遊ぶ遊具や、電気の力で動く体をもみほぐす椅子など、使い方がわかりやすく図で示され、使用に興じるフレンズたちが見かけられた。
「こんなにたくさんの、ヒトの時代の機械が残っている場所があるなんて・・・」
「これらの機械はすべて、ハツカネズミさんが修理したものなんですのよ」
「えっそうなの? どういうこと? ハツカネズミさんも、このホテルで働いているってこと?」
「マジかよ、あんなネクラっぽい人が客商売なんて、とーてい無理そうじゃねーか?」
「もォ~、オオミチバシリさんったらァ、思ったことそのまま言う人なんですねェ」
「うふふ、当ホテルが繁盛するまでに、色々ありましたのよ」
ホテルの支配人オオミミギツネは、今までの経緯を語った。オオミミギツネと、その仲間のフレンズであるハブとブタがこのホテルを見つけ、立ち上げた頃は、建物の半分が海に沈んでいることもあって、ほとんど客の入らない場所だったという。そして、このホテルにたくさん残っていた「ヒトの機械」も、何なのかよくわからないまま、ただ埃をかぶっていた
ある日オオミミギツネは、外のちほーから流れてきたハツカネズミと出会い、宿を提供することになった。ハツカネズミは自分が何者なのかもわからず、他に行くところもなかったという
オオミミギツネは、ハツカネズミをホテルの従業員として住まわせることにした。ハツカネズミは不器用で陰気なため、接客や雑用などの仕事は、どれもろくに出来なかった
しかしある時、ハツカネズミはホテルの隅で埃をかぶっていた機械を触りはじめた。そしてその機械を完璧に修理してみせたのだった。それはハツカネズミの天性の特技だった。ホテルにある物でハツカネズミに修理できない物はなかった
アイデアマンのハブが、修理した機械を見世物にすることを思いついた。そしてそれは大当たりし、かつてのさびれ具合からは想像も出来ないほどに、ホテルを繁盛させることに成功した
事業の拡大に伴い、ホテルのスタッフのフレンズや、海からホテルまで客を送迎する海生生物のフレンズを何人も雇い、ハツカネズミのお手伝いとしてデグーもスタッフの一員となった
ハツカネズミは、自分の特技でホテルに貢献できることを喜び、さらに機械や道具を修理することに精を出した。そしてハツカネズミの名前も知れ渡り、いつの間にか博士などと周りから呼ばれるようになった
「ハツカネズミさん、ホテルのために頑張ってくれているのはわかるんだけど、最近はわたくし達に顔も見せないで、一日中自分の仕事場に籠り切りなんですのよ。今回だって、外のエリアから来たフクロウの皆さん達と、何やら色々相談してるみたいだけど、わたくしやハブさん、ブタさんには、ビーストのことは自分が何とかするからって、それだけなんですの・・・。ホテルやお客様のためと言うなら、わたくし達全員の問題なのに・・・」
ともえ達は、オオミミギツネが熱心に語る様子を、じっと聞いていた・・・。
「あ、ご、ごめんなさい。お客様を相手に喋り過ぎてしまったようですわね」
「ううん・・・ここの皆さん、とっても仲が良いんだね!」
「・・・こ、こほん・・・。ところで、お客様方は、これからどうなさいますか? すぐに、ハツカネズミさん達に会われますか? お休みになられる場合は、お部屋とお食事の用意をすぐにいたしますが。」
「・・・どうします? ともえさん・・・疲れてるなら、もう休みますか?」
「とりあえず話だけでも聞いておかねーか? 大事なよーじは、すぐに片づけるに限るぜ」
「そうだね、二人さえ良ければ、オオコノハズクさん達に、会いに行こうよ」
「了解いたしました・・・では、ご案内いたしますわ」
オオミミギツネが一行を案内しようとしたその時
≪しはいに~~~ん、お客様対応お願いします~、わたし手が離せなくて~≫
「あら、ブタさんの声だわ。どうしましょう」
「大丈夫! ともえさん達はァ、わたしが案内しますよォ! 支配人は、お仕事に戻って下さァい! 元々わたしが、博士に言いつけられた仕事ですからァ」
「そう? じゃあお願いするわねデグー。それと、ハツカネズミさんに言っておいて。”あんまり無理しすぎないように”って・・・」
オオミミギツネと別れたともえ達は、再びデグーに案内され、ホテルの通路を進んだ。通路は段々薄暗くなり、やがて客の気配も全くしない静かな一角にたどり着いた。他の場所とはおよそ雰囲気が違った。その通路の突き当りには、物々しい金属の扉があった。デグーは、金属の扉の横にあるボタンを押した。
ウィィィィン・・・キューン・・・
ボタンを押してから何秒か経って、金属の扉が、自然の中ではおよそ聞けないような音を立てて開いた。扉の開いた先には、部屋とはおよそ言えない、フレンズが10人くらい入れる程度の無機質な空間があった
「えーっ、今どうやって開けたんだよー、その扉」
「ともえさん、なんだか似てますね・・・その・・・」
「うん、あたしが目を覚ました建物に、そっくりな感じがする」
「さァ、この先に博士とフクロウの皆さんがいますよ、後、ビーストも・・・」
「この小さな部屋、なんもねーじゃねーか」
「大丈夫だよロードランナーちゃん。この小さな部屋が、あたし達を違う所に運んでくれるの。これはその・・・乗り物の一種だよ」
「そーなのか? 本当、ともえと旅してると、次から次へと珍しいモンが見れるよなー。オレ様、ひょっとして田舎者?」
「クゥン・・・田舎とかはあんまり、あんまり、関係ないと思いますよ」
ともえ達4人が入った「小さな部屋」の扉が、部屋の中にあったボタンを押すことで再び閉じられた。密室になった部屋が、音を立てはじめた。そしてともえ達の体に響く振動と体の中の血液が上のほうへ引っ張られるような、妙な感覚・・・
「マジに動いてんだなー、この部屋はよー」
「うん、下に向かって行ってるよ、つまり、深い海の底に向かってるんだよ・・・」
「うへー・・・」
【・・・・・・トモエ、キケ】と、先ほどからしばらく黙って着いてきていたラモリが口を開いた
「うん、どうしたの、ラモリさん」
【オーブ ノ ハンノウ ガ キュウ ニ トテモ ツヨク ナッテ キタ。マチガイナク コノ チカク ニ オーブ ガ アル】
「・・・! つまり、ハツカネズミさん達の所に、オーブがあるの?」
【ワカラナイ、ウミ ノ ソコ ニ アル ノ カモ シレナイ】
「そっか・・・あ、デグーさん、ちょっと教えて欲しいんだけど、なんか最近、玉のような物を見かけたことはない? これくらいで・・・急に光ったりするの・・・色は白で・・・あ、白じゃないかもしれないけど」
「いやいやいや・・・そんな漠然としたこと言われてもォ~わかりませんよォ! でも、光る玉なんて、そんな珍しい物があったら、すぐにわかりそうなものですけどねェ・・・」
「どうしよう、海の底にあるものなんて、手に入れようがないですよ、ともえさん」
「つーかよー! この小さな部屋はまだ止まらないのかよー! 一体どこまで下に降りてるんだよ! めっちゃこえーよ! 早く出たいよー! プロングホーンさまー!」
・・・・・・チーン! キューン・・・
小さな部屋はようやく動きを止め、扉が開かれた。その先は、無機質な灰色の壁と床、天井に辺り一面が覆われていた。天井に最低限の灯りが備えつけられ、前方が確認できる程度の道が、姿を現した。小さな部屋を出た先に、薄暗い狭い道・・・
ロードランナーは、床にへたり込んだ
「オレ様、もうここやだ・・・」
「わふっ、ロードランナーさん、大丈夫? 大丈夫? 肩、貸しますよ」
「オオミチバシリさんはァ、狭い所がとっても苦手みたいですねェ、ちなみにわたしは落ち着くんですが、まァ、フレンズって千差万別なんですねェ」
ともえ達は、灰色の薄暗い道を進んだ。やがて道は行き止まりになり、突き当りには周りと大差ない壁が存在するように思えた。しかしデグーが壁に近寄ると、壁が勝手にスライドし、奥にある空間につながった。デグーは小走りで先へ進んだ
「博士ェ! フクロウの皆さん! いますかァ!? ともえさん達をお連れしましたァ!」
「フフ、来ましたのです」
「博士、思ったのですが、博士と呼ばれるフレンズが二人いたのでは、ややこしいのです。博士は、生物学、地史学の博士・・・ハツカネズミ博士は、工学、理学の博士ですから、専門領域が全然違うのです・・・そもそもブツブツ・・・」
「ここは・・・」
ともえ達が訪れたその部屋に、オオコノハズク博士達が待っていた。そこは、上のホテルよりもさらに人工的な、白く直線的な空間があった。調度品は、ガラスのような、プラスチックのような半透明の物質で作られていた。透ける本棚には、隙間なく本が並べられていた。
しかし、テーブルには書類や、食べかけのジャパリまんや、空のコップが乱雑に置いてあった。床には、急遽運び込んだであろう寝袋が、無造作に敷いてあった。数人のフレンズがここで生活している様子がありありと感じられた。
ロードランナーは、広さのある空間に着いて、ようやく落ち着きを取り戻した。
「ともえさんとやら、急いでここに来たようですね、関心なのです」
「あの、オオコノハズクさん、ワシミミズクさん・・・ビーストは、どうなったの?」
「この先を行ったところに、ビーストを閉じ込めています。そして、私・・・助手・・・ハツカネズミ博士の三人で交替で見張ることにしましたです。学生たちにも、順番に私達の供をさせます。デグー、おまえもそれに加わってもらいますのです。」
「はいィ、了解しましたァ!」
「ハツカネズミ博士達からつい先ほど定時連絡が入りましたが、まだ「ますいやく」の効果で眠りから覚めていないようなのです。何かあればすぐまた連絡が入るでしょう。」
「さて、では、ともえさん、あなたが聞きたかった話ですが・・・、これ、学生諸君」
オオコノハズクは、傍にいる学生たちに声をかけた。フクロウの学生は三人いた。残りの一人は、どうやらハツカネズミに付いているらしい。学生たちは話の場を大急ぎで設け始めた
「どどどどうぞ! ここここちらに座ってください!」 ストンッ! ストンッ!
「お二人が、ジャパリパーク最高峰の頭脳と見識を披露される・・・刮目せよ・・・それはまさに芸術の領域なのだ・・・・・・。あ、これどうぞ、のど渇いたでしょ?」 スッ、トクトクトク・・・
「アアアアオバズクさんも、ててて手伝ってください!」
「ZZZ・・・」
フクロウの学生たちが用意した椅子に、ともえ達は座った。渡されたプラスチック製の
コップには、冷たい水が注がれていた
「わ、わふっ、これはご丁寧に、ありがとうございます。ありがとうございます。」
「なんか、上のホテルみてーなノリを引きずってねーか? ゴクッゴクップハッ あー水うめー」
「さて、ヒトのフレンズの話ですが・・・そもそも、あなた達は、我々フレンズがどうやって生まれるか知っていますですか?」
「え、えーと・・・サンドスターっていうのと、動物が融合して、フレンズになるんだよね?」
「それだけでは、だいぶ情報として不十分なのです。サンドスターが融合するのは、なにも生きている動物である必要はないのですよ。」
オオコノハズク達は語り始めた。サンドスターと呼ばれる謎の物質は、体毛などの遺物さえあれば、そこからフレンズを誕生させてしまうことが出来るのだという
そのため、古い世界では絶滅してしまった動物であっても、この世界でフレンズとして見かけることは珍しくないのだという
「私達が知る、ヒトのフレンズ・・・彼もそんな経緯で生まれたフレンズの一人なのです。彼は、大昔のヒトの髪の毛にサンドスターが融合して生まれた存在なのです。」
「髪の毛・・・」
「もう一つ・・・フレンズとは、そもそもどのように定義される生物だと思いますか?」
「それは、えーと、ヒトの姿をした、動物・・・?」
「そこの所を整理するのです。フレンズは、ヒトのように二足歩行を行い、会話で意思疎通を行い、他の個体と自由意志で群れを作って暮らしています。一方で、元となった動物の性質を受け継いでいます。」
「たとえばイエイヌ、おまえは鋭敏な嗅覚を持ち、寒さに強いのです・・・そしてオオミチバシリ、おまえは速く走れる一方で、飛ぶことはあまり得意ではない。乾燥したちほーを好む、などがありますですね・・・」
「言われてみりゃー、そこら辺のことは、当たり前のことだよなー?」
「わふっ、ヒトの特徴はなんですか? なんですか?」
「ヒトの最大の特徴は、道具を作り、使うこと・・・このジャパリホテルのような巨大な建造物さえ、ヒトはすべて一から作り上げてしまうのです」
「やっぱり! ともえさんも、色んな道具の使い方を良く知っているんですよ。」
「何か危険なことあっても、変なことひらめいて、道具を使って何とかしちまうもんなー」
「いや、何とか出来るのは、二人が協力してくれるからだよ・・・」
コクッ・・・コクッ・・・
オオコノハズク博士は、ゆっくりとコップの水を飲み干すと、ともえを静かに見据えた。ともえは緊張した面持ちで博士たちの話に耳を傾けた
「さて・・・と、ここまでは前置きで、ここからが肝要なのです。フレンズは元となった動物の性質は受け継ぎますが・・・動物だった頃の「記憶」は引き継がないのです。」
「つまり、良いですか? 元が何の動物であろうと、フレンズとしてどう生きるかということには関係がないのです。」
「何が好きか、何がしたいかっていうのは、後天的な経験で決まっていくのです。我々は、知識を究めたい・・・上のホテルで働くフレンズ達は、ホテルという場で客を持て成したい、というふうに・・・フレンズは皆、生きていく途中で「生き甲斐」を見つけるのです。」
「生き甲斐・・・」
「ですが、我々が知るヒトのフレンズは、そうではありませんでした。最初に「彼」と出会った頃、我々は彼が「ヒト」であることを教えたのです。しかし彼は、その後もヒトの痕跡を追い求め続けた。他のフレンズは、自分が何者かわかった時点で満足し、自分らしく、フレンズとしての人生を生きはじめるのですが・・・彼は、自分の居場所や、自分が生まれてきた理由に固執し続けました。まるで、そうしなければ自分という存在が保てないかのように・・・それを探すことが、最初から定められているかのように・・・」
「ともえ、あなたはどうなのです? 多分、今話した「彼」と同じような気持ちでしょう? これからも、ヒトの痕跡を追い続けるつもりでしょう?」
「あの・・・・・・うん。あたしはやっぱり、あたし以外のヒトを、探したい・・・」
「やはり、そうなのですね。これは、ヒトに共通の特徴なのですかね。ヒトにとって、自分以外のヒトに会うことは、生まれ持った根源的願望なのですかね・・・あるいは、何か、もっと深い理由があるのかもしれませんが・・・」
「・・・あの、その「ヒトのフレンズ」は、その後どうなったの? ヒトの痕跡を探し続けてそれを見つけられたの?」
「・・・わかりません。我々が、最後に彼に会ってから、もうずいぶん経ちますです。今もまだ、探し続けているのかも・・・あなたも彼と同じようにヒトを探し続けるのだとしたら、いつかどこかで彼と出会えるのかもしれませんね」
「つまり我々が言いたいのは、自分以外のヒトを探し続ける以外にも、あなたには違う生き方もあるということなのです。そこの仲間たちと一緒に、どこかで楽しく暮らすとかね。」
「あまり、ためになる話ではありませんでしたかね? あなたは多分、具体的なヒトの手がかりが欲しかったのでしょうが、そういう話は、我々は知らないのです。」
「・・・・・・ううん、ありがとう、オオコノハズクさん、ワシミミズクさん。とてもためになった」
「ともえさん・・・」
「それは良かったのです。我々が話せるのは、それぐらいですね・・・。もう上に戻って、休むがいいです。」
「待って、あたし達、もうひとつ用事があってきたの・・・。ビーストに会わせてもらうことって出来ないかな?」
≪え、今なんて・・・≫
ともえがその言葉を発した瞬間、博士たちフクロウは途端にざわついた。ともえは構わず説明を続けた
草と岩の丘で、ビーストに言葉が通じたように見えたこと。会話が出来れば、ビーストと和解できる可能性があるかもしれないこと
「ビーストと、和解する・・・? あなたはそんなこと考えているですか? 理解不能なのです」
「ビーストって呼ばれてるけど、見た目はフレンズと同じに見えるの。フレンズとビーストは違う生き物なの?」
「いえ、おそらくビーストだってフレンズと変わりありません。サンドスターと融合した元動物だと思うのです。それが何かのきっかけで、目の前のものを無差別に襲う凶暴な怪物に変化したのです。原因が何なのか・・・今からそれを突き止める研究を始めます。・・・そこに部外者を入れるのは、無理な相談なのです。」
「あうう、そこをなんとか・・・」
“・・・・・・皆さん・・・報告があります・・・”
突如、どこからか声が聞こえた。ビーストを見張っているはずのハツカネズミの声だ。
何かの機械を使って、離れた所から、オオコノハズク達に連絡をよこしていた。
“・・・・・・ビーストが、目を覚ましました・・・”
≪・・・!≫
「ハツカネズミ博士、ビーストの様子は? 暴れ出しそうな気配はありますですか?」
“・・・・・・いえ、そんな様子はまったく・・・開眼し、体を起こしはしましたが・・・身動きひとつ取る様子はありません・・・オオコノハズク博士たちも、ひとまずこちらに来ていただけますか? この後どうするか、話し合いましょう・・・”
「わかりましたのです、助手。行きましょう」
「行くのです」
部屋の奥へと振り返り、歩き始めた二人に、ともえはまた声をかけた。
「あの・・・・・・」
「あなた達まだ居たのですか! 何度頼まれても無理なものは無理なのです!」
「ビーストを離れて見るだけでもダメかな・・・?」
「・・・しつこい人なのです・・・そうですね、じゃあこういうのはどうですか? 我々を感動させるような料理をあなた達が振る舞ってくれたら、考えてあげてもいいのです。・・・今朝食べた、あのレストランのような・・・・・・まあ無理でしょうが」
「わふっ! それ! 多分できます!」
「え、出来るって言いましたですか? あのレストラン並の料理ですよ」
「はいっ!」
「イエイヌちゃん!?」
イエイヌはともえに近づき、ショルダーバッグを開けて中をまさぐると、小さな巾着袋を取り出した。
「わふっ、この袋には、白トリュフが入ってます。今朝リャマさんにいただいた物です。それにわたし、あの料理のお手伝いをして、作り方は覚えてます・・・調理場があれば、この料理と同じものをきっと作ってみせます・・・・・・だから、だから、ともえさんのお願いを聞いてください!」
「ちょ、ちょっと、見せるのです」
オオコノハズクは、イエイヌの手にある巾着をひったくり、そっと開いた。ワシミミズクと顔を見合わせ、もう一度巾着の中を見つめた。二人の梟は、普段の様子からは想像も出来ないほど、動揺した表情を見せた。大きな目が、普段より一回り以上大きくなっていた
「いえ、お、おまえが料理をする必要はないのです・・・」
「こ、この食材を、我々に譲るのです・・・」
「おいおい、タダで譲れってーのかー?」
「ああもう、わかりました! 我々に付いてきたければ、勝手に付いてくればいいです!」
「(これ、公私混同ってやつじゃねーか? この人ら、それなりに偉い人なんだよなー? それでいーのかよ・・・)」
・・・ウィィィィン・・・
部屋の奥の扉がスライドし、さらに細長い廊下が、姿を現した。梟の二人組が、奥へと
進み始めた。ともえ達もそれに続くように歩き出した
「やった、ともえさん! ビーストに会えますよ!」
「う、うん。イエイヌちゃんの機転で、助かったよ!」
「機転・・・?」
「多分、イエイヌは全部本気だと思うぜ」
「あなた達! 付いてくるんだったら、さっさと来るのです!」
「はぁ~~~い」
ともえは、細長い廊下を進みながら、先ほど聞いた話を反芻した。
「フレンズはみんな、生きていく途中で生き甲斐を見つける」その言葉が、一番印象に残った。ヒトにとっての生き甲斐は、やはり、自分以外のヒトがいなければ成り立たないのだろうか。そして、ビーストにも生き甲斐があるのだろうか?
ともえは、とても大事な話を聞いたと思った。しかし今のともえには、その大事な話を、自分にどう当てはめればいいのかさえ、わからないのであった
今はただ、目の前の出来事に向かい合うだけで精いっぱいだった
to be continued・・・
_______________Cast________________
哺乳綱・ネコ目・イヌ科・イヌ属
「イエイヌ(雑種)」
鳥綱・カッコウ目・カッコウ科・ミチバシリ属
「英名G・ロードランナー 和名オオミチバシリ」
鳥綱・フクロウ目・フクロウ科・コノハズク属
「アフリカオオコノハズク」
鳥綱・フクロウ目・フクロウ科・ワシミミズク属
「ワシミミズク」
哺乳綱・ネコ目・イヌ科・オオミミギツネ属
「オオミミギツネ」
哺乳綱・げっ歯目・ネズミ科・ハツカネズミ属
「ハツカネズミ」
哺乳綱・げっ歯目・デグー科・デグー属
「デグー」
鳥綱・フクロウ目・フクロウ科・コキンメフクロウ属
「アナホリフクロウ」
鳥綱・フクロウ目・フクロウ科・メンフクロウ属
「メンフクロウ」
鳥綱・フクロウ目・フクロウ科・アオバズク属
「アオバズク」
哺乳綱・クジラ偶蹄目・マイルカ科・マイルカ属
「マイルカ」
自立行動型ジャパリパークガイドロボット
「ラッキービーストR‐TYPE-01 通称ラモリ」
?????????????????????
「通称ともえ」
_______________Materials________________
花虫綱・イシサンゴ目・ミドリイシ科・アワサンゴ属
「ニホンアワサンゴ」
用途:人・物を乗せて水上を渡航する 素材:木材・金属など 発明時期:紀元前四千年頃
「船」
用途:宿泊・飲食の提供・物流など 素材:さまざま 発明時期:西暦700年頃
「宿泊施設」
用途:人・貨物の上下・水平方向への運搬 素材:木材・金属など 発明時期:西暦1889年
「電動機式エレベータ」
_______________Story inspired by________________
“けものフレンズ” “けものフレンズ2”
byけものフレンズプロジェクト
“けものフレンズR”
by呪詛兄貴