________ドスンッ
死の淵そのもののような暗闇の世界を抜け、再び重力が支配する現実世界へと舞い戻る。
両腕に抱えていたクズリさんとカルナヴァルもろとも、地面へと無様に倒れ込んでいた。
僕にとっては最初で最後の”影潜り”だ。スパイダーさんのように上手く出来るはずもない。地上に帰還できただけで上出来と言うべきだろう。
辺りを見回してみる。
空が広い。すぐ真下を霧が漂っている。岩肌に吹き付ける風は凍えそうなほどに冷たい。
ここはバトーイェ山脈の中でもかなり標高が高い切り立った山嶺だ。さっきまでいた峡谷前の低地とは一目でまったく違うとわかる。
・・・・・・どうやら狙い通りの場所に降り立つことが出来たようだ。
スパイダーさんに影潜りを託された僕には、彼女と同じく異空間にいながら現実世界の様子を探る超感覚がもたらされた。
そして僕はあれこれ考えた末に、山を下るのではなく、再び登ることを選んだ。
遠くに逃げるために異空間に長時間とどまるのは得策ではないと思った。アムールトラが再び謎の力を使って僕らを引き寄せようとする可能性があるからだ。
そして火山の噴火も未だ収まっていない。核爆発の衝撃波でいったん表層のマグマが薙ぎ払われただけに過ぎない。
新たに火口から吹き出した溶岩流がじきに辺りを埋め尽くすのは想像に難くないだろう。
ふたつの危機から逃げ切るには、溶岩が流れて来ないような高所へと避難するしかないだろうと思った。
だが全て上手く行ったとは言い難い。地形を吟味する暇が無かったために、かなり険しい場所に抜け出てしまった。
まともに立っていられる場所すら限られているほどだ。
ここから下に降りようと思うなら、三角に切り立った尾根をどこまでも進むしかない。足を踏み外せば転落死は免れないだろう。
「ふっ、ぐっ、うううっ・・・・・・」
どうしたらこの場から生き延びることが出来るか、そのことだけを冷静に考えようとしていた。
だがそんな僕の意志とは無関係に、目の奥から勝手に涙があふれ出てきて止まらなかった。
窮地を脱したことで緊張の糸が切れたからだろうか?
受け止めきれない悲しみが思考を押し潰していく。
やがて耐えられなくなって、仰向けに倒れたまま、暗雲立ち込める空を見上げてむせび泣いた。
スパイダーさんが助かる道はなかったのだろうか。彼女を死なせないために僕に出来ることは無かったのか。
ディンゴだけでなく、スパイダーさんまで僕を庇って死んでしまうとは思わなかった。
僕と同じく彼女に命を救われたクズリさんとカルナヴァルに視線を投げかけてみる。
カルナヴァルは悲鳴を発しながら巨体を丸めて怯えている。呑気なものだ。自分が誰に助けられたのかも理解していないのであろう。
・・・・・・そして、クズリさんは息をしていないように見えた。
まだ動物の姿には戻っていないにせよ、もはや生きていることさえ信じられない有り様のように見えた。
一度は確かに目覚めたはずだった。あの異空間の中で、無二の親友スパイダーさんから別れの言葉を聞かされた時には。
このままクズリさんが本当に死んでしまったのなら、一体何のためにスパイダーさんは・・・・・・と、考えることさえ許されないような言葉が頭をもたげた。
最後に僕は、地平線の向こうへと視線を移した。
天に届かんばかりの巨大なキノコ雲が依然として大空に張り付いたように形を保っていた。
核がプレトリアに落とされてから多少の時間しか経っていない証拠だ。
「・・・・・・くそっ」
あのキノコ雲はまるでヴェスパー親子の悪意を具現化した存在であるかのようだ。
うねり広がる雲の筋のひとつひとつが、奴らがほくそ笑む表情を描いているように思えてくる。
あの親子には良心の呵責などない。何千何万もの部下の命と引き換えに核実験を成功させたことに歓喜すらしているはずだ。
スパイダーさんのような善なる者が死んでいく一方で、奴らという悪魔がほくそ笑んでいられる狂った世界。
いったいどこに正しさや安らぎがあるというのだろう。
(頑張ったところで、どうせ僕らが報われる日なんて来ないんだ)
・・・・・・茫然とキノコ雲を眺めていると、諦念のような嘆きが胸元から際限なく湧いて出て来るのだった。
あきらめずに前に進め、とスパイダーさんに言われたのに、彼女の死を無駄にするわけには絶対にいかないのに、もはや体が言うことを聞いてくれない。
(あ、あれは何だ?)
________ゴゴゴゴ・・・・・・ゴゴゴゴ・・・・・・
絶望しかけていた僕の瞳に、新たな異様が映し出された。
正体不明の何かが、キノコ雲の根元で禍々しく立ち上がり始めたのだ。
その光景は余りにも現実離れし過ぎていて、最初は夢か幻の類だとしか思えなかった。
恐ろしく大きな植物の根・・・・・・それが僕が感じた第一印象だった。
核の落下地点から数十キロほども離れているここバトーイェ山脈からも容易に観測し得るほどの大きさだ。
天に向かって四方八方に伸び散らかる根っこの成長スピードは、あたかも何千、何万倍速のビデオカメラで撮影している映像を見ているかのようだった。
巨大植物は瞬く間に成長し、大地と空とを隔てる稜線を埋め尽くしつつある・・・・・・それはまさに、暴走する生命エネルギーそのものだった。
僕はきょう一日で、すでに二度も仰天するような物を見ている。
そしてこれが三度目だ。
いま目の前で起きていることは、火山の噴火や核爆発にも引けを取らない・・・・・・あるいはそれらよりも恐ろしいことのように思える。
そして僕は謎の巨大植物の正体を察した。
・・・・・・あれはセルリアンの女王だ。核爆発を呼び水に、地下深くにある卵管から生まれ出てきたのだ。
あれこそがまさしく戦争を引き起こした元凶だ。
女王を生み出さんとするヴェスパー親子と、それを阻止せんとしたジャパリ。
何人ものフレンズやヒトの命と引き換えに、あのおぞましい化け物は誕生を果たした。
だが、奴らが欲していたのはセルリアンの女王だけじゃない。
イヴ・ヴェスパーは言っていた。支配をより完璧なものとするために、女王に拮抗し得る力がもうひとつ必要だと。
・・・・・・そう、進化態へと到達したフレンズだ。
結果として進化を成し得たのはクズリさんでも僕でもなく、敵勢力ジャパリに所属するアムールトラだった。
きっとクズリさんとアムールトラが戦うことは、あらかじめヴェスパー親子によって仕組まれていたんだ。
結果としてすべて奴らの思惑通りに事が運んだ。
スパイダーさんたちの死もすべて、奴らに利用され踊らされた結果に過ぎないのだ・・・・・・そう思うと俄かに胸の中に熱い物がほとばしってくる。
「・・・・・・ふざけるなアアァァッッ!!!」
天に向かって両手を振り上げ、激情にまかせるまま吠えた。
爆発しそうなほどに激しい怒りと憎しみとが、すべてを諦めそうになっていた僕を再び立ち上がらせた。
僕にはスパイダーさんのような偉大な精神性はない。
だから負の感情を糧にするより他に、絶望を跳ね返す術がないのだ。
「クズリさん!」
僕もアムールトラみたいに怪物と化して暴れられたらどんなに気が晴れるだろうか。
だが僕は奴と違って未熟者だ。進化することなんて出来るはずがない・・・・・・だがそれでもいい。
今の自分自身のまま、この気持ちを何かにぶつけてやる。それより他に出来ることなんてない。
そう決意した僕は、ゆいいつ僕の傍に残った大切な仲間へと必死に声をかけた。
「いい加減に起きてください! 奴らに利用されっぱなしで悔しくないんですか!? この恨みを晴らさなくて良いんですか!?」
「・・・・・・」
「起きろぉッッ! アンタは無敵の野生ウルヴァリンだろうが!」
僕がどんなに呼びかけてもクズリさんが答えることはない。
まだ動物の姿には戻っていないにしろ、生きているのが不思議なぐらいの重傷をアムールトラに負わされたことには変わりないのだ。
(くそっ! 何とかならないのか!)
頭をもたげる最悪の可能性を振り払うようにして思考を張り巡らせる。
・・・・・・そもそも納得がいかないのは、アムールトラが進化出来たのに、なぜクズリさんは出来なかったのかということだ。
核が落ちる直前までは、2人は互角の戦いを繰り広げていた。
それは間近で見ていた僕が誰よりも知っている・・・・・・あの時僕は、2人は別格のフレンズであり、共に進化を遂げる運命にあると直感で思っていた。
クズリさんは強さも経験もアムールトラと同等のはず・・・・・・だとすれば彼女にはいったい何が欠けていたのだろう。
(はっ!)
まるで神がかった何かが降りて来たかのように、とつじょ脳裏に電流が走った。
もしかすればクズリさんの命を救うことが出来るかもしれない手立てを思いついたのだ。
そう・・・・・・進化出来なかったのなら、これから進化すればいいのだと言うことを。
________スッ
生唾を飲み込みながら、懐にしまっていた鈍く光る銀色の筒を取り出して見つめる。
僕はこれまで何やかんやと勿体付けて、この劇薬を使うことを躊躇してきた。今こそと思える決定的なタイミングを見つけられなかったからだ。
・・・・・・だがようやく確信した。今が”その時”だ。
進化促進薬の効果はすでにその目で見た。
フレンズの体に流れるサンドスターの循環速度を爆発的に速める。それによって限界を超えた能力を発揮させる。
その謳い文句は確かに嘘偽りのない物だ。
あの戦いが不得手だったスパイダーさんを、一時的とはいえ進化したアムールトラを退けるほどに強化したのだから。
結局スパイダーさんは進化に失敗したという話だったが、クズリさんならばどうだ?
と言うのも、フレンズの能力は個体による差がかなり激しい。
クズリさんの負傷は、並のフレンズならばとうに死んでいてもおかしくないレベルだ。
それでもかろうじて生きていられるのは、彼女が他に及ぶ者がいない程に強靭な生命力を持っている証拠に他ならない。
同じフレンズなのに、こうもクズリさんが並外れているのは何故なのか・・・・・・単に才能とか遺伝子とか、そう言った個人因子では説明が付かない。
何故ならば彼女だって生き物には間違いないんだから、死ぬときは死ぬしかないはずだ。
何か明確に他のフレンズとは異なる点があるとしか思えない。
そう考えた時、ひとつだけ思い当たることがあった。
それはサンドスターだ・・・・・・フレンズを超常の生命体たらしめる謎に満ちたエネルギー。他の要因では説明が付かない事象であっても、サンドスターならば成立させてしまうかも知れない。
もし仮に、クズリさんの体内に流れるサンドスターが、他のフレンズ達とは違う特別な物だったとしたら?
それによって別格の戦闘力と生命力を持つに至っているのだとしたら?
進化促進薬の作用もまた、他のフレンズとは異なる結果をもたらすはずだ。
クズリさんは促進薬によって進化を成し遂げる。それによって戦闘力だけでなく生命力をも爆発的に回復させ、一命を取り留めるだろう。
根拠は何もないが、僕はそう信じることにした。
そうさ・・・・・・アムールトラに出来たことが彼女に出来ないはずがない。万にひとつだってそんなことはあり得ない。
「・・・・・・さあ、行きますよ!」
クズリさんの体に馬乗りに覆いかぶさると、早鐘のように跳ねる心臓といっしょに進化促進薬を頭上にかかげた。
この注射器の使い方はすでにレクチャーされている。医療知識がない者でも簡単に扱える機械式静脈注射だ。
________ドシッ!
円柱形のシリンダーをクズリさんの血まみれの首筋に押し付ける。
すると内蔵されていた針が勝手に飛び出して、彼女の強靭な皮膚を突き破って血管に到達した。
同時にシリンダーの側面に付いたランプが赤く点灯する。使用準備が整った証拠だ。
「うおおおおっっ! 生き返れぇぇぇ!」
ランプの光を確認し様に、柄頭から張り出したトリガーを親指で強く押し込んだ。それによって内容液が少しずつ注入されていく。
トリガーは途轍もなく硬くて重かった。フレンズの握力でもって目いっぱい力を込めなければ押せない。ヒト用には設計されていないのは明らかだ。
懇願するように絶叫しながらトリガーを握りしめていると、ほどなくしてランプが消灯し、内容量がゼロになったことが示された。
・・・・・・これでまちがいなくクズリさんの体内に促進薬が行き渡った。
クズリさんが再び立ち上がった時のことを想像してみる。
アムールトラ同様に黒い炎を纏い、両手が鋭い鉤爪と化した魔獣の姿と化すのだろうか。正気を失ってしまい、目の前にいる僕に襲いかかってくるだろうか?
・・・・・・それでもいい。クズリさんを救うための手立てが他にないのなら、僕は喜んで命を差しだせる。
それはスパイダーさんのような尊い自己犠牲の精神ではなく、僕が元来持っていた、倒錯した”被食願望”にもとづくものだ。
僕はクズリさんのことをずっと、僕を殺した思い出の中のオオカミに重ねてきた・・・・・・憧れの相手にもう一度殺されることもまた、僕にとっての幸せの形なのだ。
進化を成し遂げたクズリさんには破壊の限りを尽くし、僕の分まで怒りと憎しみを撒きちらしてくれることを願う。
ヴェスパー親子でもなく、セルリアンの女王でもなく、そしてアムールトラでもなく・・・・・・僕の憧れである彼女にこそ、この狂った世界を破壊する存在であって欲しい。
「・・・・・・」
だが、僕の甘美な妄想にクズリさんが答えてくれることはなかった。
さっきまでと何ら様子に変わりはない。横たわる血まみれの体は、力なく冷たくて欠片ほどの生気も感じさせない。
動物の姿には戻っていないものの、再び起き上がってくるとはとても思えない有り様だった。
「ああそうか・・・・・・薬が効いて来るのには少し時間がかかるのか」
手元に残った空っぽのシリンダーを谷底に投げ捨てると、クズリさんが目覚めない理由を無理やり解釈し、自分自身に言い聞かせるように口に出した。
僕もたいがい正気を失ってきているようだ・・・・・・いちいち泣いたり喚いたりするような領域はとうに踏み越えた。
心を意図的に麻痺させた僕は、物言わぬクズリさんを抱き上げて歩き出した。
彼女の腕にはめられていた鎖で連結された腕輪が、地面に落ちて鬱陶しい金属音を立てた。
両方の腕に付いていたはずの物が、今や片方の腕にしか付いていない。
・・・・・・当たり前だろう。クズリさんはアムールトラとの戦いで右腕を吹き飛ばされたからだ。
絶対的な拘束具といわれる鎖の腕輪も、はめる腕自体が無くなってしまったんじゃ取り付けようがない。
火山の噴火はいずれ収まるはずだ。そうしたら山を下りよう。
あの巨大植物に戦いを挑むんだ。その途中で邪魔してくるニンゲンやセルリアンが現れたのなら、返り討ちにしてやる。
・・・・・・だが僕が戦うよりも、進化したクズリさんの方が、より多くの気に食わない奴らを血祭りに上げてくれるだろう。だから彼女を連れていく。それだけだ。
彼女がこのまま死んでしまうかもしれない可能性のことなんて、もはや知ったことじゃない。
「ま、待ってくれ! ワシを置いて行かないでくれ!」
急峻な山道を下ろうとした瞬間、恥知らずのカルナヴァルが後ろから声をかけてきた。
「・・・・・・生きたいなら自分の足で歩けばいいだろ。それすら出来ないなら・・・・・・まあ、死ぬしかないんじゃないか?」
僕は振り返りもせずボソリと答えた。
もうコイツのような小物には構っている余裕は無い。この先の戦いのことで頭がいっぱいだ。
「・・・・・・お前らフレンズはどうしてそんなに強靭なのだ?」と、カルナヴァルが呆気に取られた口調で訊いて来たので「それは違う」と返してやった。
「フレンズだってニンゲンとそう変わりはないはずだ。たったひとつの命を必死に生きようとしているだけだ・・・・・・僕らを犠牲にして当然と思っているお前らにはわからないだろうがな」
「そ、それは」
返す言葉を無くしたカルナヴァルが黙り込む。
今度こそ奴に構わず尾根を下ろうとしたが、奴はまたもしつこく「待ってくれ」と後ろから制止してきた。
・・・・・・だが今度は様子が違った。その声色には僕への懇願ではなく、驚愕と困惑とが入り混じっていた。
「メリノヒツジ・・・・・・あ、あれを!」
「チッ! 今度は何だ!」
「あれを見るのだ!」
そう言ってカルナヴァルは暗雲が立ち込める空を指し示した。
遥かな頭上から迫ってくるのは、宙に浮いていることが信じられない程に巨大な飛翔体だった。
「あれは・・・・・・Cフォースの爆撃機!?」
一目見ただけで正体を看破することが出来た。
Cフォースが莫大な資金に物を言わせて、アメリカ空軍から調達したとかいう機体だ。
左右に長い翼を持つ二等辺三角形のボディも、おおよそ突起らしいものが見当たらない滑らかな表面も、他の航空機とはあまりにも一線を画する異彩を放っていた。
「おーーーいっ! ワシはここだ! 早く助けてくれ!」
爆撃機を見るなりカルナヴァルは立ちあがり、手を振って野太い声で呼びかけた。
僕らを助けにやってきたと根拠もなく信じているのだろう。
・・・・・・だがそんな事はあり得ないはずだ。
味方もろとも核で大地を焼き払ったヴェスパー親子が、いまさら僕らなんかのために救援を寄越すはずがないし、万が一そうだったとしても、あんな爆撃機をチョイスするはずはない。
何か別の意図が・・・・・・?
そう思いながら怪訝に見上げていると、爆撃機はやはり僕らの真上を横切って、機体を急速に下降させた。
________ヒュウウウッッ・・・・・・ドンドンドォンッッ!
そして漆黒の三角形の滑らかな腹部が開くと、霧が広がる眼下に向かって無数の爆弾をばら撒きはじめたのだ。
瞬く間に山肌に着弾し爆炎を噴き上げている。
派手な絨毯爆撃だったが、いったい何を攻撃しているのかと思わざるを得ない様相だ。
遥か稜線の向こうにいるセルリアンの女王に向けてのものではない事だけは確かだろう。
そしてここバトーイェ山脈での戦闘は終了している。シャヘルとジャパリの両陣営とも、戦闘員はあらかた死ぬか逃げるかした後だ。
「な、あれはっ!?」
________バチイイイイッッ!!
空爆を続ける巨大な機体をあっけに取られて見上げていると、さらに度胆を抜くような光景が飛び込んできた。
謎の閃光が谷底で閃いたのだ。
紫色の稲妻のような細く長い光が、まるで空爆に対する反撃であるかのごとく、天空を薙ぎ払うように照射されたのだった。
________ドッガアアアンッッ!!
稲妻は射線上に存在する爆撃機を貫き、紙屑のようにいとも容易く真っ二つにしてしまった。
あれほどの巨大な機体がたったの一撃で撃墜されてしまったのだ。
人知を超えた、遠目で見ていても戦慄してしまうほどの破壊力だ。
紫色の稲妻を良く見てみると、中心部には黒く禍々しい帯状の炎が通っていた。目に覚えのある漆黒の炎を見たことで、光線を発射したのが何者なのかを簡単に察することが出来た。
「化け物が・・・・・・」
アムールトラはやはり生きていた。
峡谷前の地形に残った奴は、スパイダーさんを影の世界から引っ張り出した後、彼女を殺害したことだろう。
その後ほどなくして溶岩流に飲まれることになったはず・・・・・・しかし奴は溶岩の中でも余裕で生存していただけでなく、ダメ押しで止めを刺しにきた爆撃機を一撃で返り討ちにしてみせたのだ。
今のアムールトラは最強の肉体を持っているだけでなく、あのような遠距離攻撃すらも行えてしまうようだ。
・・・・・・奴はこれからどう動くつもりだ? 稜線の向こうにいるセルリアンの女王と、化け物どうし一騎打ちでも繰り広げるのだろうか。
ヴェスパー親子は、望み通りにふたつの最強の力を誕生させたわけだが、どうやってこの状況に収拾を付けるつもりなのだろう?
________ゴゴゴゴ・・・・・・
真っ二つになった爆撃機が空中で左右に分解され、いきおいよく谷底へ墜落していった。
あれほどの大きさの機体が地面に激突するんだ。さぞかし派手な爆炎を巻き上げるだろう。
・・・・・・しかし、またしてもここで予想を裏切る事態が起こった。
墜落した機体から噴き上がったのは爆炎ではなく、雪のように真っ白な煙だった。
白煙は一瞬で壁のように高く広く肥大化し、眼下の風景を覆い尽くしてしまった。
「つ、冷たい?」
どこまでも広まり続ける白煙が、遥か高所の尾根に立っている僕らにも迫って来ていた。
視界が白み曇っていくなかで最初に感じたのは異常なまでの寒気だった。
ここは元々寒い場所ではあったが、それをはるかに上回るほどの、全身が凍り付いてしまうんじゃないかと感じるほどの冷たさだ。
「く、くそ! なんだこの煙は!」
まずはこの正体不明の冷気から逃れないとまずい。これが収まらない限りは下に降りることすらままならない。
そう思い、クズリさんを抱きかかえながら踵を返して尾根を登ろうとした瞬間だった。
≪・・・・・・このまま登頂でもする気かね≫
耳に覚えのある声がどこからか聞こえた。
辺りを見回して声がする位置を探っていると、一機のナビゲーションユニットが駆動音を放ちながら頭上に降りて来るのが見えた。
≪現時点をもって作戦の全行程を終了とする。ごくろうであった≫
その声は間違いなくグレン・ヴェスパーのものだった。
機械的と言えるほどに事務的な声色は、きょう一日で引き起こされた死や破壊に対して何ら感情を抱いていないことを思わせるものだった。
「ぐ、グレン様ぁぁあっっ」
ご主人様の突然の登場に驚いたカルナヴァルが飛び出し僕を押しのけると、宙に浮かぶナビゲーションユニットに対してうやうやしく跪いた。
「なにとぞワシをお救いください! 救援機を寄越してください! ワシは長年あなた様に仕えてきた忠実な部下です・・・・・・今後もあなた様の下で!」
≪案ずるなカルナヴァルよ。もちろんお前のことも考えてある≫
望ましい返事を聞いて、カルナヴァルは歓喜と共に顔を上げユニットに一礼した。
コイツは忘れてしまったのだろうか? グレン・ヴェスパーが、シャヘルの部隊がいるのを承知で核を落としたことを。
グレンの蛮行のおかげでコイツの体は被爆を受けたはずだ。
しかしコイツはそのことを責めもしなければ顔色に出すことさえしない・・・・・・飼い慣らされるっていうのはつくづく恐ろしいものだ。
≪たった今、お前の脳内にある”自壊装置”に向けて信号を送った≫
「・・・・・・なっ! 今なんて!」
自壊装置。その単語を聞くやいなや、カルナヴァルが驚き青ざめた。
________ゴパァァァッッ
次の瞬間には、喉を押さえながら巨体を弓なりに逸らせ、口から滝のような勢いで大量に吐血したのだった。
まるで劇毒でも服用したような有り様だ。自壊装置とやらの効果だろうか?
「なんで・・・・・・がはぁぁッッ!」
≪放射線後遺症で苦しんで死ぬよりそちらの方が良かろう≫
「わ、ワシは・・・・・・あなたに・・・・・・」
吐き散らかした血の海の上に巨体を投げ出すと、カルナヴァルはそのまま息絶えてしまった。
元はパークの幹部でありながら、カコ・クリュウやリクタス・ヒルズへの妬みに囚われた結果、グレンの内通者として暗躍する道を選んだ卑劣漢。
ご主人様の威光を笠に着て、僕らフレンズにもやりたい放題の暴力を振るった鬼畜。
まるで自分がしてきたことが跳ね返ってきたかのような最期だった。
・・・・・しかし意外なことに、その死にざまを見て「ざまあみろ」とかそういう気持ちはいっさい湧いて来なかった。
上司の命令を聞くしか能がなかった犬人間がゴミのように殺された末路は、ただただ憐れだとしか思えなかった。
≪そこそこ役に立つ男だった。私からのせめてもの温情だ。安らかに眠るが良い・・・・・・≫
冷血な悪魔そのもののグレンは、あたかも善行を成したかのような声色で、自ら抹殺した飼い犬へと黙とうをささげた。
≪さて≫
そして何秒かの沈黙の後、ナビゲーションユニットのカメラアイを動かして、立ち尽くす僕を上から見下ろしてきた。
「・・・・・・僕らのことはどうするつもりだ?」
怒りと恐怖が入り混じった感情を押さえつけ、出来るだけ冷静に応対した。
殺したい程に憎い相手でも、本体は遥か成層圏のスターオブシャヘルにいるんだ。僕には手の出しようがない。
≪メリノシープ・・・・・・そしてウルヴァリン。お前たちにはまだ利用価値がある。いったん戻ってきてもらおうか≫
________ステイ・トゥー。
(やはりそうきたか・・・・・・!)
呪文のごとき不気味な文言がユニットごしに僕の耳を震わせると、作動した鎖の腕輪が、僕の四肢を痺れさせ一瞬で動きを封じてきた。
文言は「トゥー」だけだ。「ワン」はない。
今のクズリさんには必要ないと思ったのか、それとも片腕が外れてしまった腕輪では作動が出来ないのか、それはわからない。
ともかく僕は、抱きかかえていた物言わぬクズリさんと一緒に、その場にもつれ合うように倒れ込んだ。
「ち、ちくしょう・・・・・・!」
先ほどから立ち込めている超低温の白煙が僕らを包み込みつつあった。
ヴェスパー親子への怒りも憎しみも、奴らに対して何ら反撃することすら出来ないことへの悔しさも・・・・・・あらゆる激しい感情が冷気によって凍結されていく。
そして僕は意識を失った。
◇
気絶させられ、どこかに運ばれてから目覚める・・・・・・それはもはや僕にとって、定番とも呼べる展開だった。
半透明の床や天井、そして壁。その中に走る複雑な基盤は毛細血管を思わせる。
考えるまでもない。見慣れたスターオブシャヘルの風景だ。いつ見ても巨大な生き物の体内にいるみたいで気持ちが悪い。
しかしここは僕が来たこともないような部屋だった。
ヒトが数十人集まってもスムーズに動き回れるほどの広々とした空間を、天井にある花びらのような形の照明があまねく照らし出している。
部屋のあちこちからモニターがぶら下げられている。大小さまざまな白い台車には複雑そうな計器や器具が備え付けられていた。
部屋の中央には大掛かりな機械仕掛けのベッドが、無数の物体にぐるりと取り囲まれるようにして存在していた。
・・・・・・ベッドの上にはクズリさんが寝かされている。
相も変わらず生気のない鉄のような冷たさを感じさせる四肢を投げ出していた。
「こ、ここはどこだ! 僕らをどうするって言うんだ!」
僕はと言うと、部屋の隅にある、背もたれ付きの半透明な椅子に座らせられているだけだった。
もちろん鎖の腕輪で拘束されているために一切の身動きがとれない。
≪・・・・・・ようやく目覚めたか≫
と、困惑して慌てふためく僕を呼びかける声が聞こえたかと思うと、部屋の中にあったモニターのひとつが突然に点灯した。
≪ここは第2解剖室だ≫と、モニターの中に映るグレン・ヴェスパーが告げる。
モノクルによって隠されていない側の目つきは、声色からイメージするよりもずっとニヤついていて、歓喜の色が隠せていない。
実に憎たらしい悪魔の顔だった。
・・・・・・まあ浮かれもするだろうさ。すべて思い通りに行ったのだから。
≪先ほどウルヴァリンの心肺停止が確認された。もう間もなく完全に死亡し、動物の姿に戻るであろう・・・・・・だがウルヴァリンの肉体を無駄には出来ぬ。体組織が完全に崩壊する前に解剖して検体にかけなくてはな。
そしてメリノシープよ。我が娘の肝いりで状況に介入させてやったはいいものの、お前は特に目立った成果をあげなかったな・・・・・・まあ、引き続きモルモットとして生かしておいてやろう≫
進化促進薬をもってしてもクズリさんを救うことは出来なかった。
彼女は死してなお、そして僕は生きたまま、グレン・ヴェスパーの意のままに利用され続ける結末に終わった。
≪シベリアン・タイガーとウルヴァリンのどちらが進化を遂げる存在であるのかは、私を持ってしても予測が不可能だった。そのため両者を実際に戦わせてみる他はないと思ったのだ≫
既に知っている。他でもないグレンこそが、クズリさんを射出可能なVR装置に入れて、アムールトラ目掛けて投下した張本人だ。
最強と目される2人のうち、戦って勝った方こそが進化を遂げるとコイツは確信していた。
そして勝ったのはアムールトラの方だった。
「・・・・・・ひとつだけ教えてくれ」
≪何だ?≫
「アムールトラは進化できたのに、どうしてクズリさんは出来なかったんだ!?」
藪から棒に疑問を発した僕に対して≪面白い≫と笑みを浮かべたグレンが、我が意を得たりと言った様子で興味の視線を投げかけてきた。
≪・・・・・・その様子から察するに、お前は我が狙いに気付いていたというわけか≫
「2人が途中までまったく互角に戦っていたのを僕は見た! いったいどこで差が付いたのかわからないんだ!」
≪ふむ、実力も経験も互角というのなら、残る差異は精神的な部分ではないのかね≫
その指摘を聞いて、2人が戦っていた時のことを鮮明に思い出す。
アムールトラの表情は苦悶そのものだった。戦いを憂い、敵に対する怒りと憎しみに囚われた顔をしていた。
対するクズリさんは満面の笑みを浮かべていた。恋焦がれたライバルとの一騎打ちは、彼女にとって人生最大の喜びだったことだろう。
・・・・・・実力は互角であっても、戦いに対する捉え方だけはまったく真逆の2人だった。
憎悪と歓喜、対照的なふたつの感情のうち、どうやらフレンズの進化に結びつくのは憎悪の方であるらしい。
アムールトラは核が落ちたのを見た瞬間、怒り狂って絶叫をあげ、そのまま進化を遂げたのだ。核爆発を目撃したことこそが、奴にとって決定的な進化の引き金であったとみて違いないだろう。
いっぽうのクズリさんは純粋なまでに戦いを愛する戦闘狂だ。戦うためにのみ戦う己の在り方を曲げることはない。
その先天的な気質がゆえに、たとえどれだけ強くなろうとも、負の感情をトリガーとする進化態には達することが出来なかったのかもしれない・・・・・・。
≪メリノシープよ、お前はなぜ進化促進薬を使わなかった? 我が娘からは、実力はともかく、戦いのモチベーションだけはウルヴァリンに並んで高い、と聞かされていたが≫
「そ、それは・・・・・・」
≪当ててやろう。お前はウルヴァリンに進化促進薬を投与したのであろう。命の危険が伴う戦場にいたにもかかわらず、敢えて自分自身には使わず温存していたのだろう?≫
グレンがズバリと当ててきた。
進化促進薬を打ったならば体に何かしらの変化が起きるはず。何の変化もない僕を見て、薬を打っていないと思うのは当然だ。
そして今しがたの僕の物言いによって確信を得たのだろう。
≪せっかくの切り札を自分にではなく、死体同然の仲間に使って無駄にしてしまうとは・・・・・・まったく面白い奴だ。畜生の分際で予想の付かない行動を取りおる。
よかろう。お前のような変わり者には、たわむれに我が計画を聞かせてやるのも一興かもしれん。まずはお前たちの偉大なるリーダーであるスパイダーモンキーがどうなったかを教えてやるとしよう・・・・・・!≫
そう言って上機嫌のグレン・ヴェスパーは嬉々として語り始めた。
コイツは進化態と化したアムールトラの姿をずっとモニターしていたのだという。
だから知っているのだ。僕が直接見ることがかなわず、推測することしかできなかったスパイダーさんの最期の姿を。
≪シベリアンタイガーが進化したことを確認した私は、次に促進薬によって強化したスパイダーモンキーを送り込むことにした。進化態の戦闘データを取るためのスパーリング相手としてな≫
グレンが元々は非力なスパイダーさんを選んだ理由・・・・・・それは彼女が”先にある力”の扱いの上手さにおいては右に出る者がいない程に優れていたからだという。
戦闘に向いていなかっただけで、実際にはスパイダーさんのポテンシャルはクズリさんにも匹敵するものだったらしい。だからこそ、進化促進薬によって一時的とはいえアムールトラに迫るほどの戦闘能力を得られたのだ。
スパイダーさんは自ら望んで進化促進薬の投与を受けたという。僕らを救うにはそれしか方法がなかったからだ。
促進薬がもたらす力によってアムールトラを一時退けて、僕らを影の世界へと逃がしてくれた。
しかしアムールトラは謎の能力を使って、なおも僕らを地上へと引っ張り出そうとしてきた。
スパイダーさんは敢えて一人で奴のもとへ舞い戻り、僕らを逃がす時間稼ぎをするために決死の戦いを挑んだ。
そして・・・・・・やはり彼女が助かることはなかったという。
進化促進薬の副作用によって限界を迎えていた彼女は、アムールトラにまともに対抗することも出来ず、漆黒の爪牙による一撃を受け、あっけなく命を散らしたのだと。
「あ、ああ」
受け入れたくなかった事実を認識するやいなや、頭の中がグラグラと揺れ始め。目の前が真っ暗になっていった。
怒りを燃やすことでギリギリのところで耐え忍んでいた精神を、絶望という名の鈍器が打ち砕いた音が聴こえたような気がした。
スパイダーさんが命がけで救ってくれたのに、僕もクズリさんも結局グレンの手に落ちてしまった・・・・・・彼女の尊い犠牲を無駄にしてしまった。
≪どうした? しっかりするのだ。フレンズ部隊で生き残ったのはお前だけなのだぞ? 何が起こったのか、事の顛末だけでも聞き届けておくべきだろう? シベリアンタイガーがその後どうしたか気にならないか?≫
「ど、どうって・・・・・・」
≪クククッ、スパイダーモンキーの死体を、ボリボリと美味しそうに貪り食ったのだ。骨だけを残して、肉は欠片すら残さない・・・・・・じつに行儀のいい食べっぷりだった≫
フレンズがフレンズを食う・・・・・・?
とても信じられない気持ちと、吐き気とが込み上げて来る。
僕自身は、アムールトラのような強者になら食われても構わないと思っている。過去の経験に起因する倒錯した被食願望があるからだ。
・・・・・・だがそれはあくまで独りよがりな妄想だ。僕以外には当てはめてはいけないものだ。
まともに考えれば、フレンズが同じ知性と感情を持ったフレンズを捕食するなんてことは、到底許しがたい狂った行いだと断言できる。
ただ殺されるだけならともかく、スパイダーさんがそんなにひどい最期を迎えていたなんて想像すら出来なかった。
≪肉食動物は肉を喰らう。シベリアンタイガーは進化と同時に野生に戻ったのだ・・・・・・だが、とても飢えていたのだろう。奴の食事はスパイダーモンキーだけでは終わらなかった≫
アムールトラはその後、溶岩の上を歩きながら峡谷の中に入っていったのだという。
それはあらたな食事にありつくためだった。
すべての兵士が峡谷を通ってバトーイェ山脈から脱出できたわけではなかった。シャヘルとジャパリ、両陣営ともに溶岩流から逃げ遅れた兵士が何人かいたらしい。
敵同士だった彼らは一時手を取り合って、峡谷をよじ登って高所に避難をしている最中だったようだ。
だが彼らは、突如現れたアムールトラによって1人残らず捕食されてしまったらしい。
アムールトラは圧倒的な腕力で兵士たちをグチャグチャの肉塊へと変え、舌鼓を打ちながら喉に流し込んだのだと。
・・・・・・そんなことをグレン・ヴェスパーは、子供のような笑顔で嬉しそうに語った。
「あ、アムールトラはどうした? 野放しか?」
≪そんなハズはないだろう。どうやらお前は、我が娘から聞いていたよりも頭が悪いのだな≫
吐き気を堪えるためにはグレンと会話を続けるしかないと思って訊いた。そんな僕を一笑に付しながら奴が答える。
疑問に対する答えは、アムールトラによって撃墜された爆撃機だ。
墜落と同時に謎の冷気を撒きちらしたことだけはわかっている。
≪教えてやろう。あの機体の内部にはざっと40トンほどの”超低温爆薬”が搭載されていたのだ。この兵器のことを聞いたことがあるかな?≫
核冷却システムを応用して作られた超低温爆薬は、炸裂したが最後、効果範囲の温度を摂氏マイナス210度にまで下げてしまうらしい。物体も空気をもすべてを瞬時に凍り付かせるほどの低温とのことだ。
もともとはこの世界にセルリアンが現れた初期の頃に、奴らに対抗するために開発された超兵器のひとつだったそうだ。
・・・・・・だが生物の範疇を超えた存在であるセルリアンは、たとえ自身の体が凍り付こうとも活動を停止しなかったらしい。
つまり、超低温爆薬は長いあいだ役立たずとして忘れ去られていた欠陥品でしかなかった。
・・・・・・しかしグレン・ヴェスパーは目ざとくこれを保管していた。
セルリアンには効かなくても、元々が動物であるフレンズならば効果を発揮し得るだろうと思ったのだと。
フレンズを己の私兵として長年操ってきたグレンからしてみれば当然の備えだったのだろう。
だがアムールトラほどの怪物を確実に凍りつかせるには、通常弾頭に搭載できる程度の量では、とてもじゃないが成功確率が低いと思ったらしい。
だから爆撃機そのものを爆弾として使うことにしたのだと・・・・・・つまり、最初からアムールトラめがけて墜落させるつもりだったらしい。
奴が稲妻光線を放って機体をあっけなく撃墜してくれたから、かえって手間が省けたぐらいだというのだ。
思惑通りに炸裂した大量の超低温爆薬は、墜落地点から遠く離れていた僕らすら凍てつかせるほどの効果範囲を発揮し、アムールトラを周囲のマグマごと完全に冷凍し無力化させるに至った。
その後とどこおりなく奴は回収され、スターオブシャヘル内部のとある一室に保管されるに至ったようだ。
・・・・・・後は冷凍状態のまま、血液や体細胞、遺伝情報にいたるまで、思うぞんぶん研究材料として利用する予定らしい。
アムールトラから得られるデータは、今ある進化促進薬の薬効をより確実なものとするようだ。
確か前にイヴから聞いた話によれば、究極の遺伝子を持った”ハイブリッド”と呼ばれるフレンズが、進化促進薬のレシピエントとなるということだった。
ヴェスパー親子はついに進化態のフレンズを安定して生み出す術を獲得したようだ。
≪セルリアンの女王と進化態フレンズ。核を超える二つの力を私は発明した。私という絶対的支配者が、核抑止によって平和が成り立っていた時代を終わらせる時が来たのだ。
・・・・・・素晴らしい。かつて私ほどの偉人が歴史上にいただろうか? いや、いない≫
グレンが今までで一番上機嫌の表情でほくそ笑む。
己が絶対的支配者とやらになった時の様子を思い描いているのだろう。
「・・・・・・じ、女王はどうなった? アムールトラと同じようにはいかないはずだ!」
はたと気になったことを口にする。
覚えている限り、セルリアンの女王は、核が落ちたキノコ雲の真下で蠢き続けていたはずだ。
瞬く間に天空に到達せん巨大さにまで成長し、その勢いはなお衰えることがなかった。
あらゆる通常兵器での攻撃が効かず、超冷凍爆薬で凍らせることも出来ない。唯一比肩し得る進化態フレンズも、今の時点では戦力として配備できていない。
・・・・・・であるならば打つ手なしのはずだろう。とてもじゃないが捕まえることなど出来ない。
≪クククッ、ははははっ! 女王を捕まえる必要など最初からなかったのだよ!≫
「どういうことだ!?」
予想だにしない答えが返ってきた。
あの恐ろしい巨体も、誕生から数時間後には、体組織が石のように硬化して動かなくなったという。そしてほどなくして崩壊し土に帰ったという話だ。
そのことを承知の上で計画は進められていたのだ。
≪あの女王は”未完全態”だったのだ。生まれた所で長くは生きられない体だった。我々の手で研究し、完全態へと改良しなければ使い物にはならない≫
女王は名の通り他のセルリアンすべてを従える能力があると言われているが、もう一つだけ特殊な性質があるらしい。
それは生命エネルギーを暴走させながら無制限に成長することだ。
成長をするためにはさらに周囲のエネルギーを吸収するしかない。天高く根っこを張り巡らせていたのはその為の行動だという。
あの女王が未完全態である理由とは、どこにいけばエサにありつけるのかという判断も付かない赤ん坊に等しい存在だったからだ。
そして、あまりにも急速に成長した結果、持って生まれた核というエネルギーをあっという間に使い切ってしまったのだと。
グレンは当然それも見越して、体組織や核などの必要な部位だけを速やかに回収させたらしい。
エサの取り方やエネルギーのセーブ方法を後付けで学習させ、しかる後に完全態として再び生み出すというのが当初からの計画だ。
≪私にとって唯一誤算だったのは、ジャパリが火山を噴火させたことだ。汚らわしいテロ組織の分際で、小癪な真似をしてくれたものだ≫
核は当初、Cフォースの記念式典の最中に投下される計画だった。
それはグレンの政治的なプロバガンダのためだ。
式典の映像は世界各国に同時中継で生放送される予定だった。つまり、核によって誕生する女王の映像が世界中に流されるはずだったのだ。
映像を見て世界中が混乱におちいることが予想される中で、グレンは一芝居打つつもりだったというのだ。
未完全態の女王が停止するタイミングもあらかじめわかっていた。
あたかも自らの手で女王を停止させたように見せかけることで、己の制御下にあることをアピールするつもりだったのだと。
それこそが世界中を手っ取り早く牛耳る最良の手段だったという。
ところがジャパリ側がサンドスター・ボムによって火山を噴火させ、核ミサイル誘導システムに影響を与えたことで、核の投下を一日前倒しにするしかなくなった。
つまりプロバガンダのために用意していた舞台を台無しにされてしまったのだ。
それはグレンにとって少なくない打撃だったという。
≪まあ、女王も進化態も手中に収めた今となっては、実力行使に打って出ても構わんのだがな≫
「・・・・・・じ、実力行使?」
≪むろん、アメリカや中国といった覇権国家に戦争を仕掛けることだ。私に逆らおうと思う者がいなくなるまで徹底的に蹂躙してくれよう≫
世界を支配している大国と戦争・・・・・・聞いているだけでは理解することが難しいほどの途方もないスケールの話だ。
だが今のコイツにはおそらく可能だ。女王の能力でセルリアンの大群を操れば、街ひとつを焼野原にすることも出来るだろうし、進化態のフレンズの戦闘力ならば、単身で軍事施設を壊滅させられるだろう。
一体あと何人ヒトを殺す気だろう? フレンズを、動物を殺す気だろう?
コイツの欲望を満たすまで永久に誰かが犠牲になり続ける。もしくはその前に地球そのものが滅んでしまうかもしれない。
≪さてメリノシープよ。すべてを教えてやったわけだけが、感想はいかがかな?≫
「・・・・・・」
≪やれやれ、言葉すら失うとは情けない・・・・・・まあよい、唯一の生き残りとして、今後とも私の役に立ってもらうぞ≫
僕はグレンに返事を返すことすら出来ず、動けない体を椅子にもたせ掛けたまま、ぼんやりと宙に視線を泳がせていた。
言語化できない無力感と絶望感に、まともに物を考える気力すら奪われていった。
(・・・・・・自殺しよう)
どうやらそれが唯一僕に残された希望だと気付いた。
首から上は動かせるから、舌を噛んで死ぬことは出来るはずだ。
死ねばこれ以上いやな物を見なくて済む。
おそらく僕が死体になった所で、グレンの研究に利用されてしまうのは変わりないのだろうが・・・・・・それはもう仕方がない事と思うことにした。
________ガリッ
舌を唇から出し、上下の歯でガッチリと挟んだ。
このまま舌を噛み切れば、舌根が丸まって気道を塞ぎ窒息死するだろう・・・・・・それまでの時間を死への恐怖と孤独に耐えれば、苦しみのない無へと辿り着くことが出来る。
(・・・・・・戦って死にたかった)
最後にそう独り言ち、目を閉じて顎に力を込めようとしたその時。
________ウィィン
突然に壁の一部が溶け、現れた扉から数名のニンゲンたちが押し入ってきたことで、自殺することへの集中が削がれてしまった。
全身を白いゴム状の貫頭衣で覆い、バケツをひっくり返したような防毒マスクで素顔を隠した者たちだ。
武器の類を一切下げていないことから兵士ではないことは明らかだ
その者たちはきびきびとした足取りで、それぞれに決まった位置についた。何やらこれから一仕事始めようという雰囲気だ。
何人かはモニターの前に立って計器の操作に取り掛かり、残りの何人かは部屋の中央にある手術台を取り囲むように立ち、横たわるクズリさんの亡骸を見下ろした。
≪始めよ。ウルヴァリンを速やかに解剖するのだ≫
画面の向こうのグレンが白づくめの男たちへと、薄ら笑いを浮かべながら号令をかける。
それを聞くやいなや、手術台の傍にいる一人が傍の棚から何かを取り出した。
それはメスなどという生易しい物ではなかった。金属を切断する時に使うような、本格的な作りの丸ノコだった・・・・・・あんな物でも使わなければヒトの腕力でフレンズの皮膚を切り開くことは出来ないということか。
________ギュイイインッ!
丸ノコが甲高い駆動音を立てて回転しながら、クズリさんの頭の上に掲げられる。
両手でしっかりと握りしめ、ゆっくりと狙った所に向かって下ろしていくのだった。
≪さあとくと見ろメリノシープ! 至高のショーだ!≫
悪夢に等しい景色と、愉快でたまらないといったグレンの嬌声とが、僕の精神にさらなる激痛をもたらした。
グレンがわざわざ僕をクズリさんと同じ部屋に運び込ませた理由が分かった。
解剖されていくクズリさんの姿を目の前で目撃させたかったのだ。
この男の悪意には限界がない、そして理由すらもない・・・・・・この男の人生にとって、他者に苦痛を与えることは、水や酸素と同等に無くてはならない物なのかもしれない。
「・・・・・・うわああああっっっ!! ぶっ殺す! お前らを絶対にぶっ殺してやるぅぅぅッッ!」
目を血走らせて発狂したように叫んだ。
そして自分でもわけがわからずに頭をガクガクと小刻みに震わせた。何とか体を動かして目の前の奴らに復讐したい衝動がそうさせているのだ。
だが鎖の腕輪に拘束されているせいで、僕の足掻きはすべて意味をなさなかった。
怒鳴ることしか出来ない僕をグレンはニヤつきながら眺め、白づくめの男たちは見向きもせず黙殺した。
見ると今にも丸ノコの刃がクズリさんの額にくっ付きそうになっている。
________ガシッ・・・・・・
しかし、丸ノコは寸前で止まった。
すでに心肺停止していたはずのクズリさんの左手が持ち上がり、丸ノコを持つ男の手を握り受け止めていたからだ。
その瞬間、何が起こったのかわからないという風に部屋中の空気がざわついた。
グレン・ヴェスパーでさえもニヤけるのを止めて真顔になっていた。
________ザギュギュギュギュッッ
「あぎゃあああああっっ!!」
丸ノコがそのまま上へと押しもどされ、持っていた男の額へと当てられた。
切れ味鋭い回転刃が、防毒マスクごと頭蓋骨を真っ二つに切り裂き、頭部にすっぽりと押し込まれると、男は天井や床を塗ったくるような量の鮮血をまき散らして倒れた。
・・・・・・クズリさんは血まみれの体を横たえたまま、電気ショックを流されているようにビクビクと痙攣していた。
まさかクズリさんが生き返ってくれた? 本当にそうであるなら喜ばしいことだ・・・・・・だが僕は今の自分の感覚に自信が持てない。
精神が崩壊してしまった僕が、脳内に思い描いていた妄想を、たんに幻覚として見ているだけなのかもしれない。
≪何故だ! 死体が生き返ることなどありえない!≫
惨劇を目の当たりした白づくめ達が絶叫しながら逃げ出していく。
直後にグレンが平静を装うのがやっとの表情で声を荒げた。
奴の声を聞いて僕はやっと、目の前の出来事が現実に起きたことだと信じることが出来た。
________ボウッ・・・・・・
クズリさんの体から、アムールトラのそれと同じ漆黒の炎があふれ出す。
・・・・・・と、同時に信じられない現象が起こった。炎に包まれたクズリさんの体が瞬く間に治癒し始めたのだ。
流れ出た血液やこぼれた内蔵が、あたかも時間を巻き戻したごとく体内に戻されていく。
ついには手術台の上で、ゆらゆらと幽鬼のように立ち上がってみせた。
アムールトラにへし折られた背骨が元通りくっ付いた証拠だ。
________ビチビチビチッッ
・・・・・・そして最後に、肘から下が消失していたクズリさんの右腕が新しく生え出てきた。
剥き出しの筋繊維が、まるで心臓のように脈動を続けながら、黒光りする腕らしき形を形成していっている。
はち切れんばかりにパンパンに張りつめたそれは、まるで金属のような鋭さと重量感があった。
健在な左腕と比べて一回り以上も肥大化した手のひらから、アムールトラにも劣らぬ鋭い鉤爪が飛び出した。
尋常ではない禍々しさと力強さを感じさせる剛腕だった。
≪ステイ・ワン!≫
慌ててグレンが束縛の文言を放つ・・・・・・しかしクズリさんには効果がないようだ。
やはり片方が外れてしまっている状態では、腕輪はまともに効力を発揮しないようだ。
≪・・・・・・小癪な! だったらもう一度肉塊に戻してやるまでだ!≫
グレンの一声で、白づくめ達が消えた扉から、何人もの兵士がなだれ込んでくる。
そして距離を取りながら扇形にクズリさんを包囲するや否や、虹色の軌跡を描くSSアモを雨あられと撃ち込んだ。
ぼんやりと立ち尽くす彼女の体がそれを受けてガクガクと震えた。
「く、クズリさん!」
「・・・・・・」
________ズドドドドッッ・・・・・・
しかし、とうに蜂の巣になってもおかしくない程の銃弾を浴びながらも彼女が倒れることはなかった。
それどころかSSアモを受け止める度に、全身を覆う黒い炎が肥大化していくようにも思えた。
やがて兵士たちに困惑の色が見え始めた頃、クズリさんも新たな動きを見せていた。
怪物的なその右手を、おもむろに頭上に掲げたのだ。手のひらに漆黒の炎が凝縮されている・・・・・・アムールトラがやって見せたそれと全く同じような様相だった。
________ブォンッッ! ドッシャアアアッッ!!
クズリさんが振りかぶった剛腕を振り下ろすと、右手に纏わりついていた炎が漆黒の衝撃波として前方に放たれた。
天地がひっくり返ったような振動が部屋中を揺るがし、あらゆる機器を破壊し、地面に亀裂を走らせた。
まるで爆弾でも投げ込まれたかのような有様だ。
「うわあっ! ううっ・・・・・・」
腕輪で縛られて座っていた僕は、椅子から勢いよく投げ出され床を転がることになった。
あわてて顔を上げるも、照明があらかた破壊されてしまったようで、隅々まで照らされていた部屋が一転して薄暗く視界不良になっている。
しかし兵士たちの銃声がピタリと止んだことだけは確認できた。
クズリさんの放った衝撃波の破壊力が、アムールトラと同等のものであるならば・・・・・・それを正面から受け止めた彼らがどうなったかは考えるまでもないことだろう。
≪×××・・・・・・!≫
グレンらしき聴き取れない声がノイズのように聞こえて来た。
解剖室があらかたクズリさんに破壊されたことで、通信がまともに機能しなくなった証拠だ。
________ジリリリリリッ!
程なくして非常事態を示す甲高いサイレンが辺り一面に響き渡った。
クズリさんの突然の復活、そして反抗に対してのリアクションであることは明らかだった。
________ヒタッ、ヒタッ・・・・・・
クズリさんが黒い炎を灯した全身を引きずるようにして、寝転がった僕の方へと近づいてきた。
すぐそばで、感情を灯さない虚ろな瞳で見下ろしてくる彼女と目が合う・・・・・・間近で見ると、その禍々しく凄絶な立ち姿の迫力に圧倒される。
あきらかに僕の知っている彼女ではなくなっている。
「進化できたんですね」と、クズリさんを見上げながら安堵の溜息をつく。
・・・・・・最後にひとつだけ僕の願いがかなった。
進化促進薬でクズリさんを進化させることが出来た。
僕の分まで思う存分グレン・ヴェスパーたちに復讐を果たしてくれることだろう。
「これでもう思い残すことはありません。さあ・・・・・・」
うながすようにつぶやくと、観念して目を閉じる。
進化したからには、クズリさんは僕が僕であることもわからなくなったはずだ。もう間もなく僕は彼女に殺される。
アムールトラはスパイダーさんを食べてしまったという話だった。
僕もクズリさんに食べられるのだろうか・・・・・・かつて動物だったころの記憶が鮮明によみがえる。僕の原風景。始まりにして終わりの景色。
強き肉食獣の喉の中で僕は生まれ、そして死んでいく・・・・・・
「今度はてめえが寝んのか?」
「え・・・・・・!?」
しかし予想とは違った展開となった。
ぶっきらぼうな声が、陶酔したまま死を待っていた僕を驚かせ瞳をこじ開けた。
間違えなく進化態と化したはずなのに、クズリさんが変わらぬ様子で僕に言葉をかけてきているのだ。
「・・・・・・どうして、喋れて?」
「知るかよ。んなことよりよォ」
クズリさんが何かを言いかけて黙った。
そしておもむろに禍々しい右手を動かして、左手の腕輪から伸びる鎖を握りしめたのだった。
「く、鎖を引きちぎるつもりですか?」
鎖の腕輪とは、あらゆる手段を持ってしても破壊出来ない拘束具だったはず。
現にクズリさんだって今まで腕輪に縛られ続けてきたというのに、いったいどういうつもりで・・・・・・
________バキャンッッ!!
しかし、僕の懸念など全く意に介しもせず、クズリさんは腕輪から伸びる鎖を根元から力づくで引き千切ってしまった。
進化したクズリさんの力は、今や絶対の拘束具すらも寄せ付けなくなったというのか。
「なぁメリノ、そろそろ、オレ達がやり返す番だと思わねえか?」
クズリさんはそう言うと、己の力の象徴であるような右手を見せつけるように突き出し、僕の顔の前で開いてみせた。
手のひらの中から、粉々になった鎖の破片がポロポロと零れ落ちた。
「はははっ・・・・・・クズリさん、あなたというフレンズは・・・・・・」
それを見るなり甘い眩暈に脊髄が震えて、目の前が殺意の赤に染め上げられていった。
世を儚んで死んでやろうなんて気持ちがいっぺんに吹き飛んでしまった。
溜まりに溜まった鬱憤を晴らす時がついに来たんだ。
クズリさんと一緒にスパイダーさんの弔い合戦をやるんだ。グレン・ヴェスパーとその手下どもに僕らの怒りを思い知らせてやる・・・・・・
「やりましょう!!」
血走った瞳に歓喜を湛えながら僕は答えた。
to be continued・・・
_______________Cast________________
哺乳綱・鯨偶蹄目・ウシ科・ヤギ亜科・ヒツジ属
「メリノヒツジ」
哺乳綱・ネコ目・イタチ科・クズリ属
「クズリ(ウルヴァリン)」
_______________Human cast ________________
「グレン・S・ヴェスパー(Glenn Storm Vesper)」
年齢:74歳 性別:男 職業:Cフォースアメリカ本部総督ならびにアトランタ研究所所長
「イブン・エダ・カルナヴァル (Ibn Edd Carnaval)」
享年67歳 性別:男 職業:国際的非政府組織「PARK」現代表
_______________Story inspired by________________
“けものフレンズ” “けものフレンズ2”
byけものフレンズプロジェクト
“けものフレンズR”
by呪詛兄貴