けものフレンズR あるトラのものがたり   作:ナガミヒナゲシ

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 現代編のダイジェストです。長いので2分割します。
 書いたの昔過ぎてビビった。


現代編11「これまでのおはなし その1」

 ヒトの姿をした動物「フレンズ」が暮らす楽園ジャパリパーク。

 自分が何者かわからない謎のフレンズともえは、失われた記憶を求めて、仲間とともに広大なる大地を彷徨っていた。

 

 ともえ達が探しているのは、旅の目的地「セントラルエリア」への道を開くと言われる四つの「オーブ」だった。

 そんな彼女達の行く手に、幾度となく「ビースト」と呼ばれる怪物が現れ襲い掛かってきた。

 ビーストの存在は各地に暮らすフレンズたちにも広く知られ恐れられていた。

 誰もが幸せに暮らしているはずの楽園に、たった一人だけ馴染めない、フレンズのなりそこないの怪物であると・・・・・・

 

 旅の途中で立ち寄った、リャマというフレンズが経営するレストランにて、ビーストが近くの草原を縄張りにしているとの噂を耳にする。

 ともえ達と行動を共にするラッキービースト「ラモリ」は、運の悪いことに、ちょうどその草原を横切らなければならない方角にオーブがあることをともえ達に告げるのだった。

 

 ともえ達は意を決して草原を訪れた。

 仲間の一人イエイヌが、優れた嗅覚によって、案の定ビーストが近くにいることを察知する。

 辺りにまばらに突き出た岩から岩へと隠れて移動している途中、先んじてビーストの居場所を見つけることが出来た。

 

 岩陰から観察するビーストは意外な行動を取っていた。

 草原の中にポツンと一輪だけ咲いている白い花に水をやっていたのだ。

 ともえはその様子を見て、ビーストにもフレンズと変わらない心があるんじゃないか、と疑問を覚えたのだった。

 

 ともえ達は、ビーストに見つからない内にこっそりと草原を抜けようとした。

 ・・・・・・が、そこに通りがかったフレンズが、ビーストを見て悲鳴を上げたことによりそうもいかなくなった。

 フレンズを助けるために、ビーストの注意を自分達の方に逸らそうとするともえ達。

 迫ってくるビーストに対して、仲間のイエイヌとロードランナーと共に、知恵を絞って対処しようとするも、圧倒的な力の差になすすべなく追い詰められてしまう。

 

 しかし絶体絶命の危機を、とつじょ空から現れたフクロウのフレンズの集団が救ってくれたのだった。

 フクロウ達が見事な連携でビーストを網に捕えると、最後に物陰から現れたハツカネズミと呼ばれるフレンズが「麻酔薬」を注射してビーストを眠らせた。

 

 実は、ハツカネズミたちはビーストを捕えるためにあらかじめここで罠を張って待っていたのだった。

 先ほど悲鳴を上げたフレンズのデグーも捕獲劇に参加していたうちの1人だ。

 

 ともえ達はフクロウたちのリーダーであるオオコノハズク、ワシミミズクとも対面を果たす。

 彼女たちは随分と名の知れた存在であるそうだ。

 キョウシュウという、ここからはるか南に位置するエリアを治めるフレンズであるという。

 ビーストを捕まえるために、ここホッカイの地にはるばる遠征してきたらしい。

 

 聞いたところによると、2人はかつてキョウシュウにて「ヒトのフレンズ」に会ったことがあるという。

 そしてビーストの捕獲に協力してくれたお礼に、そのフレンズの情報を話しても構わないと言ってくれた。

 

 フクロウたちはハツカネズミと共に、眠るビーストを、ジャパリホテルと呼ばれるハツカネズミの根城に移して閉じ込めるために飛び立った。

 ともえ達はデグーの案内を受けながら、徒歩でそれを追いかけることになった。

 新たな手掛かりが得られそうなことに気分を良くするイエイヌとロードランナー。

 ・・・・・・しかし、ともえは内心、ビーストのことが気にかかり、出来るならば話がしてみたいと思ったのだった。

 

 

 デグーの案内を受けて歩き続けていると、やがて海岸にたどり着く。

 ジャパリホテルはなんと、海の上にそびえ立っていた。

 世にも奇妙な、建物の大半が海に水没した巨大な建物だったのだ。

 

 ともえ達が渡し舟を使ってジャパリホテルに入っていくと、そこに住んでいたフレンズたちから歓迎を受けた。

 そこは実際にホテルとして使われ、各地からフレンズが客として訪れる観光名所だったのだ。

 だが今は客足が遠のいてきているという。

 ビースト騒ぎの一件もあるし、またここ最近は辺り一帯に深い霧が立ち込めて、居心地のいい場所ではなくなってきているかららしい。

 

 ホテルの中には数多くの「ヒトの時代の機械」が、実際に使用できる状態で置かれており、見世物として客を楽しませていた。

 それらはハツカネズミが修理した物らしい。

 かつて自分が何者かもわからないまま彷徨っていたハツカネズミは、そのままジャパリホテルに居つくことになりスタッフとして働くことになったという話だ。

 

 ホテルの支配人のオオミミギツネは、そんなハツカネズミのことを大事に思っていたが、最近は外からきたフクロウのフレンズたちと、何やら秘密の相談ばかりしているから心配だと述べた。

 

 ハツカネズミとフクロウたちは、ジャパリホテルの地下深く、深海の中にあるハツカネズミの研究室にいるらしい。

 眠るビーストもそこに運び込まれたという話だ。

 ともえ達はエレベーターに乗り研究室へと向かった。

 その最中、ラモリがオーブの反応を検知する。が、詳細なことは何もわからなかった。

 

 研究室にてオオコノハズクとワシミミズクに出迎えられるともえ達。

 さっそく「ヒトのフレンズ」の話を聞かせてもらった。かつてその者は、ともえと同じように自分の居場所や生まれてきた理由を探していたという。

 だが今はどこで何をしているかわからないらしいのだ。

 どうやら2人はヒトのフレンズに関する具体的な手がかりを持っているわけではなかった。

 

 話を聞き終えた後、ともえは胸に秘めていた思いをフクロウたちに打ち明ける。

 ビーストとは和解できるかもしれない、だから話をさせて欲しいと。

 しかしその頼みは、にべもなくフクロウたちに断られてしまった。

 負けじと何度も頼み込んでいると「美味い料理を食べさせてくれたら考えてやってもいい」と、半ば冗談めかした条件が返ってきた。

 

 ・・・・・・が、イエイヌはそれに見事に答えた。

 リャマのレストランでもらった白トリュフを持ち出して「自分ならこれを再現できる」と豪語したのだ。

 美味い食べ物に目がないフクロウたちは白トリュフに釣られてしまい、渋々その言葉を飲んで、ともえ達をビーストを閉じ込めている檻の傍へと案内した。

 

 ビーストは檻の中ですでに目を覚ましていた。

 もしビーストが暴れても絶対に大丈夫なように作られている頑丈な檻だ。 

 とはいえ彼女は自分からはピクリとも動こうとせず、食べ物や水を上げようとしても見向きもしなかったという。

 フクロウたちの調べによると、どうやらビーストは、元は「アムールトラ」という種族のネコ科のフレンズであるらしかった。

 

 ともえは自ら名乗り出て、鉄格子ごしにアムールトラとの会話を試みる。

 だがアムールトラはともえの言葉を無視し、しまいには「ハナシカケルナ」と片言で答えるのみだった。

 落胆するともえを他所に、フクロウたちやハツカネズミら3人の学者達は、自分たちが何をしても無反応だったアムールトラが言葉を発したことに驚いた。

 

 3人の学者たちは、アムールトラのことがもっと良くわかれば、彼女を外に出してやることも出来るかもしれないと結論づけ、アムールトラとさらに話をしてほしいとともえに頼んできた。

 ともえはこれを快諾するが、その準備をするために、トラという種族のことをもっと勉強したいと考え、学者たちから書物を借りることにした。

 

 その日はすでに日も暮れており、ともえたちも随分疲れていたので、借りた本を片手に研究室を後にし、ジャパリホテルの客室で休むことに決めた。

 客室に向かう途中ホテルの通路で、オオミミギツネと、ホテルの従業員である数人の海生哺乳類のフレンズたちが口論をしているのを見た。

 

 海生哺乳類たちが言うには、海底の暗闇の中で、青く輝く謎の物体を見つけたらしいのだ。

 そして青い光のすぐ近くに”船みたいな巨大な影”が動いているのも目撃したらしい。

 影がその場から移動して見えなくなったのを確認してから、謎の光る物体を探そうとしたが、光は消えてしまっており見つけることが出来なかったという。

 

 ともえ達は彼女たちの話を聞いて、自分たちが探している「オーブ」に違いないと思い、そのことを周囲に話した。

 ここで話がとんとん拍子で進むことになった。

 無鉄砲な所があるロードランナーと、スリルのある探検がしたい海生哺乳類たちが意気投合したのだ。

 

 さらに珍しい物に興味があるハツカネズミがそれを後押しした。潜水用の道具をロードランナーに貸し出してやることにしたのだ。

 これでロードランナーも水の中に潜れるようになった。

 支配人オオミミギツネが渋々承諾したことで、ロードランナーと、海生哺乳類たちによる海中探検が翌日行われることになった。

 

 その後ともえ達がホテル内で夕食を取っていると、副支配人ハブに話しかけられた。

 自分がホテルの内部を詳しく案内してやるから一緒に来いと誘ってくれたのだ。

 ともえとロードランナーはハブについて行くことにした。

 しかしイエイヌだけは別行動を取って、ホテルの一角で仕事に励むハツカネズミを訪ねた。

 

 実はイエイヌは、ハツカネズミのことが初めて見た時から気になっていた。

 自分と同じ白い体と、左右で色の異なる瞳を持っていたので、自分に近しいフレンズではないのかと思ったためだ。

 

 イエイヌもまた、ともえと同じく昔の記憶を失っていたフレンズだった。

 彼女にはヒトのことを守りたいという強い気持ちがあった。今はともえが守る対象だ。 

 しかしその気持ちがどこから来たものなのかわからなくて、それが彼女の不安の種だった。

 だから自分によく似たハツカネズミに質問をしてみたのだ。

 どうして機械のことに詳しいのか? それはヒトから教わったものではないのかと。

 

 残念なことに、ハツカネズミも過去の記憶を失っており、かつてはヒトと関わりがあったのかもしれないが断言することはできないという。

 しかし彼女はイエイヌのように悩んではいなかった。

 無くした記憶よりも、自分を拾ってくれたオオミミギツネやジャパリホテルの仲間たちに恩返しをすることの方が大事だと思っていたからだ。

 大事だと思っているならば、それは自分にとって揺るぎない物のはずだ、と。

 ハツカネズミのその言葉を聞いて、イエイヌは少しばかり勇気づけられた。

 

 

 ともえとロードランナーは、ハブに案内されて色々な物を見て回っていた。

 ホテル内には、かつてヒトがいた時代の数々の遺物が展示されていた。中でも驚かされたのは、ヒトを乗せて空を飛んだといわれる「ヘリコプター」だ。

 その後はハブが切り盛りする土産物店で珍しい品物を貰ったりした。

 ・・・・・・ともえはアムールトラの事が気にかかり、彼女が草原で世話をしていた白い花によく似たブローチを選んだ。

 

 その後はイエイヌとも合流して、3人でホテルの一室に泊まることになった。

 窓から海底の景色を一望できる幻想的な部屋だ。

 ロードランナーは明日の冒険に供えて早々と眠ってしまった。

 

 ともえはアムールトラと話をする準備のために、借りた本を読みこんだり、アムールトラに見せるための絵を描いたりして夜更かしをしていた。

 そんなともえに、イエイヌがコーヒーを差し入れながら話しかける。

 ともえはアムールトラを牢屋から出してあげたい気持ちでいっぱいになっていた。

 イエイヌはともえのことが心配で、もしアムールトラがまた彼女を襲ったらと思うと気が気じゃなかった。

 

 そんな2人の間で少しすれ違いが起きてしまった。

 イエイヌが「アムールトラはこのまま牢屋に入れておいた方が良いのかもしれない」と言ってしまい、ともえがそれに怒って猛反発したことで、気まずい空気になってしまった。

 それきりイエイヌは黙り、ともえは1人もくもくと作業に打ち込んで夜を明かした。

 

 次の日、作業をしながら寝てしまったともえを、イエイヌが元気よく起こした。昨日の諍いのことを、あえて気にしないようにしているのがわかる。

 ともえは謝ろうかとも思ったが、イエイヌが気遣ってくれているのに調子を合わせて、普段通り振る舞うことに決めた。

 

 一行は予定通り別行動を取ることになった。

 ともえとイエイヌは牢屋の中にいるアムールトラを訪ねに行き、ロードランナーは海生哺乳類たちと共に、海の中へオーブを探しに行った。

 どうやらラッキービーストのラモリもロードランナーに付いていくつもりのようだ。

 

 ロードランナーは生まれて初めて訪れた幻想的な海の景色に心を躍らせたが、やがて何も見えないほどに深く暗い海底へと潜っていくことになった。

 海生哺乳類たちが持ち前の反響定位(ソナー)を使ってオーブを見つけようとするも上手く行かず、探索は手詰まり状態になっていった。

 

 そんな時、ラモリが謎の音を発し始める。

 ロードランナーはその音がオーブへの目印であり、オーブに近づけば近づくほど音の感覚が短くなっているのではないかと推理した。

 音を頼りに周囲を探っていると、やがて海底に足が付いた。

 ロードランナーの目算は当たり、海の底の砂丘にて、青い輝きを放つオーブを発見出来た。

 

 オーブを手に再び海面へと浮上しようとするロードランナーたち。

 辺りの景色が日の光に照らされ始める・・・・・・が、そこで彼女たちは、船のような形の巨大な影に遭遇することになる。

 どうやら海生哺乳類たちが先日海の中で目撃した物と同じであるようだった。

 あれがセルリアンだったとしたら、自分達では到底太刀打ちできないし、逃げようにも見つかって後を付けられたらジャパリホテルに被害が出かねない。

 

 そう思い隠れてやり過ごそうとした海生哺乳類たちだった・・・・・・が、それは無理な相談だった。

 ロードランナーがいたからだ。彼女が背負っている酸素ボンベの残量が少なくなってきている。

 何とかして海面に浮上しなければ溺れてしまう。

 しかし下手に動こうものなら、船の怪物にソナーで位置を知られてしまう。

 

 必死に考えた結果ロードランナーは、自分が動くのではなく、酸素ボンベなどを全部捨てて、自然に浮き上がることで海面に出ようという捨て身の作戦を考案した。

 海生哺乳類たちが協力してくれたことで、その場は何とか見つかることなく逃げることが出来たのだった。

 

 

 一方そのころ、ともえは地下室にて、用意した資料を使ってアムールトラとコミュニケーションを取ろうとしていた。

 動物のトラが住んでいるような深い森の絵や、大昔のヒトが描いたトラの絵の模写などを見せ、アムールトラに昔のことを思い出してもらおうと問いかけた。

 

 ・・・・・・アムールトラは段々と、ともえの言っていることが頭に入り始めていた。

 そして自分が今まで正気を失っていたことや、昔の自分のことについて何も思い出せないことを自覚した。

 長いこと他のフレンズたちから恐れられ避けられてきたために、ともえに対しても心を開く気にはなれなかったが、敵意や恐怖を抱かれているわけではないようだとも考えた。

 ともえが水と食料を差しだしてきたので、ひとまず水だけを受け取ることにした。

 

 ハツカネズミとフクロウたちは、2人のやり取りを離れた所から見ていて、研究が進捗してきていることに確かな手ごたえを感じていた。

 一方のイエイヌは、やはりアムールトラのことが恐ろしくて、ともえから遠ざけたい気持ちが捨てられなかった。

 状況に流されるまま後ろで見ていることしか出来ない自分を歯がゆく感じていた。

 

 ・・・・・・が、上手く行っていた空気がいっぺんに崩れる出来事が起きる。

 ともえが白い花のブローチをアムールトラに手渡したことがきっかけだ。

 アムールトラはブローチをしばし無心になって見つめた。

 理由は良くわからないけれども、白い花はアムールトラの中に穏やかで優しい気持ちを呼び起こした。

 

 しかしその後、アムールトラは白い花のブローチが血にまみれる幻覚を見た。

 どうやら白い花は自分にとって特別な意味を持っているらしい。

 そのことがきっかけで、優しい気持ちだけでなく、奥底に眠っていたおぞましい記憶の片鱗が呼び覚まされてしまったのだ。

 

 アムールトラはたまらず感情の抑えが聞かなくなり、白い花のブローチを放り捨てると、記憶を振り払うように自傷行為を始めた。

 苦しみから逃れる方法はたったひとつ。自らの命を断つことだ。

 ・・・・・・しかしアムールトラは、自身の内側から呼びかけてくる謎の声によってギリギリ踏みとどまった。

 そして目の前にいるともえに「モウ、来ナイデクレ」と静かに伝えた。

 

 さしものハツカネズミ達もこれ以上会話を続けさせるべきではないと判断し、ともえに戻ってくるように伝えた。

 ともえは「ますます傷付けただけだった」と意気消沈してアムールトラの前から去った。 

 

 落ち込むともえ達の前に、一匹のラッキービーストが現れる。

 それは赤い体のラモリではなく、ともえ達の知らない通常の青色カラーの機体だった。

 しかしどうやらオオコノハズクとワシミミズクには心当たりがあるらしい。

 2人のフクロウはともえ達に退室するように告げた。

 

 2人のフクロウとハツカネズミは、3人でラッキービーストと向かい合うことになった。

 ハツカネズミが動揺する最中、ラッキービーストから謎の声が発せられる。

 遠い所から何者かが、ラッキービーストを介して話しかけてきたのだった。

 

 謎の声の主は、自分のことを「園長」と名乗った。

 園長が言うには、今回ビーストを捕える作戦を考えたのは自分であり、オオコノハズクとワシミミズクはそれを実行しただけに過ぎないという。

 

 園長は「ジャパリパークを正しい方向に導く」という理想を持っており、そのために仲間を集めようとしているのだという。

 実際のところオオコノハズクとワシミミズクは、まだ園長の正式な仲間ではなく、姿を見たことすらもなかったが、ビーストを捕えるという役目を果たせば仲間に加えてもらうという約束を交わしていたらしい。

 

 自分の仲間になったフレンズには、その子が望む者を与える、と園長は豪語していた。

 2人のフクロウが園長の誘いに乗ったのも、園長が持っている知識を自分達も学びたいと考えたからであった。

 

 そして園長は、ハツカネズミのことも誘ってきたのだった。

 ハツカネズミは、園長という謎のフレンズが底知れない知識を持っていると実感し、魅力的な誘いだとも思った。

 しかしジャパリホテルの仲間たちのことが頭をもたげ、返事を先延ばしにすることにした。

 

 ハツカネズミの「NO」の返事に構うことなく、園長は別の話題を切り出してきた。

 ビーストが自傷行為をしたのを見て、このままでは彼女が自殺してしまう可能性を危惧していると言うのだ。

 それでは困るので、ビーストのことを「これから迎えに行く」と言ってきたのだ。

 

 2人のフクロウは、話があまりに急すぎると非難し、準備する時間をくれと園長に願い出た。

 しかし園長はにべもなく拒否し、強引に話を進めてきた。

 

 園長いわく「フォルネウス」という自分の使いを、これからジャパリホテルに向かわせると。

 後のことは全てフォルネウスが引き継ぐので、ビーストには誰にも近づけさせるなと。

 そして他のフレンズは一刻も早くジャパリホテルから立ち去れと。

 

 要件だけ告げた園長が、一方的に通話を打ち切ってしまうと、残されたハツカネズミたちがこれからのことを話し合った。

 2人のフクロウはハツカネズミに、これまで隠し事をしてきたことを詫びた。

 だが園長の言葉には従うべきだとも告げてきた。

 ハツカネズミは渋々それに同意することにした。

 

 

 ・・・・・・檻の中でジッとしていたアムールトラは、上で見張っていたハツカネズミたちの気配がなくなったことを察した。

 アムールトラは深い失意に包まれていた。

 ともえという、敵意なく自分に歩み寄り、記憶を掘り起こそうとしてくれた存在を拒絶したことを後悔していた。

 

 だが、結局思い出せた記憶は、凄惨な血だまりのイメージだけだったのだ。

 やはり自分は救いようがない存在であると悟ったアムールトラは、あれこれ考えるのを止めて、冷たい檻の中で朽ち果てていくことだけを願った。

 ・・・・・・しかしそんな彼女に、どこからか何者かの声が語り掛けてきたのだ。

 アムールトラはなぜだかその声に聞き覚えがあった。以前から何度も、自分に語り掛けてきていたような気がした。

 

 そして自分以外は無人だったはずの牢屋に、白い光を放ちながら謎のフレンズが現れる。

「ビャッコ」と名乗るその者は、自らを白いオーブの具現体だと称した。

 以前から何度もアムールトラに思念を送り、その行動を誘導していたのだという。

 アムールトラはビャッコに導かれるまま行動し、自分でも気が付かない内に、彼女を体内に受け入れていたというのだ。

 

 その結果、ビャッコはアムールトラの行動を内側からある程度コントロールすることが出来るようになっていた。

 つい先ほどアムールトラが自傷行為を行っていた時も、ビャッコが止めてくれたから、すんでのところで思いとどまることが出来ていたのだった。

 

 ビャッコは自分がアムールトラに取り付いた目的を語りだす。

 それは大昔のジャパリパークの歴史に関係したことだった。

 

 かつて「女王」の指揮の下、虚無の怪物セルリアンが暴れまわっていた。

 フレンズは、旧世界の支配者であったヒトと協力してセルリアンと戦った。

 戦いの末に女王を滅ぼすことに成功し平和が訪れた。

 戦禍は去ったものの、その代償として、大地がヒトが住むことができない程に汚染されてしまったため、ヒトは星から去ってしまった。

 残されたフレンズはジャパリパークにて暮らすようになった・・・・・・

 

 しかし、ここでビャッコの話が現代へと戻る。

 ずっと平和を享受してきたはずのジャパリパークに不穏な空気が立ち込めているのだと。

 セルリアンの女王か、それに近しい者が暗躍してセルリアンを操っていると言うのだ。

 このままではジャパリパークの平和が脅かされてしまう、と。

 

 ビャッコがアムールトラに取り付いたのは、かつてフレンズの中でも卓越した戦士だった彼女に、再び世界を守るために戦ってほしいという目的があったからだ。

 

 しかし、アムールトラはビャッコの懇願を断った。

 彼女はすっかり自信を失い、恐怖に囚われてしまっていたのだ。

 いつまた己の意志とは無関係にフレンズを襲ってしまうかわからない。そんな自分にジャパリパークを救うことなど出来るはずがない・・・・・・と。

 

 ビャッコはそんなアムールトラに対して助言をした。

 恐怖を消そうとするのではなく、あるがままの感情を受け入れ、己が大切にしていた価値のままに行動しろ、と。

 そして最後に、床に投げ出された白い花のブローチを照らし出し、アムールトラに注目させてから、ビャッコは再びその場から消え去った。

 

 

 ともえとイエイヌは、アムールトラがいる牢屋とは離れた区画にて、博士たちの話が済むまで待っていた。

 そこは研究員たちの生活空間であり、オオコノハズクとワシミミズクの弟子であるフクロウ達が、呑気にカード遊びなんかに興じていた。

 

 フクロウ達はともえとイエイヌを誘ってくれたりしたが、アムールトラの件で意気消沈している2人は、それをやんわりと断り、黙りこくって時間が経つのを待っていた。

 そんな折、新たなフレンズが部屋に訪れた。

 ロードランナーだ。その手には、海底で手に入れた青いオーブが握られていた。

 

 ともえは、目的の品を手に入れて意気揚々としているロードランナーに対して、アムールトラが自傷行為を行ったという経緯を聞かせた。

 3人が3人とも「もうアムールトラのことはあきらめるしかないのだろうか」と頭を抱えた。

 

 しばらくすると、オオコノハズクとワシミミズク、そしてハツカネズミが戻ってきた。

 そして3人は、思いがけない話をともえ達一行と、弟子のフクロウたちに聞かせた。

 3人で話し合った結果、アムールトラの研究を打ち切ることにしたというのだ。

 自分達とは別のフレンズが研究を引き継ぐことになり、アムールトラは違う場所に移されることになったと言うのだ。

 当然ともえ達もお役御免だ。

 アムールトラのことはあきらめて、今まで通り旅を続けろとフクロウたちは言う。

 

 突然のことに納得がいかないともえ達がうろたえていると、彼女たちがいる地下室に、一本の電話が鳴り響いた。

 電話の主はハツカネズミの助手であるデグーだ。

 彼女は上階のホテルから連絡を寄越していた。何やらひどく取り乱した様子だ。

 

 デグーの報告は驚くべき内容だった。

 見たこともないような巨大なセルリアンが、ジャパリホテルを襲っているというのだ。

 セルリアンがホテルの壁面のガラスを砕いたことで、建物内に浸水が始まっている。

 大混乱が起きていて、宿泊客の避難誘導もままならない状況なのだと。

 

 最後にデグーは、一刻も早く逃げるように伝えて電話を切った。

 ともえ達が今いる地下室は、エレベーターを通じて上階から繋がっているのみであり、もし浸水の影響でエレベーターが動かなくなったのなら、完全に閉じ込められてしまうからだ。

 

 デグーの連絡が真実であることを裏付けるように、地下室が水圧で軋む音が聴こえてきた。

 もはや一刻の猶予もないと判断した博士たちは、弟子たちに荷物をまとめ、エレベーターに向かうように命令した。

 

 そして博士達は、ともえ達にも一緒に来るように伝える。

 もはや牢屋の中にいるアムールトラは置き去りにしていくしかない。

 そのことに踏ん切りがつかないともえに対して「お前が頑張って説得しても、あの怪物が心を動かすことはなかった」と、冷淡な言葉で釘をさした。

 

 もうアムールトラのことはあきらめるしかないのだろうか・・・・・・と、ともえはついに心が折れそうになった。

 しかしそんなともえを、イエイヌが引き止めた。

 

 今までイエイヌはアムールトラのことを、セルリアンよりも怖い怪物だと思い、ともえから引き離したいと思っていた。

 だがアムールトラが自傷行為をした時、涙を流していたのを見たことで、彼女もまたフレンズであったことに気付いたのだ。

 

 イエイヌはさらにともえを励まし、鼓舞した。

 アムールトラに寄り添おうとしたことは間違ってなかったと。

 このまま見捨ててしまっては、アムールトラは誰にも理解されないまま消えていってしまう。だから助けに行こう、と。

 

 ともえはイエイヌの言葉で自信を取り戻し、アムールトラを助けに行く覚悟を固めた。

 ロードランナーも「やると決めたんならやろう」と、持ち前の無鉄砲さで2人の肩を持った。

 

 オオコノハズクとワシミミズクは猛反対したが、ハツカネズミだけは理解を示し、アムールトラの牢屋を開ける鍵を手渡した。

 自分達だけ逃げるようなことをしてすまない、と謝るハツカネズミ。

 しかしともえは、彼女がホテルの仲間のことを大事に思っていることを知っていたため「仲間を助けるためにも早く行ってあげて」と答えた。

 かくしてともえ達一行は皆と別れて、危険も顧みずアムールトラの救出に向かった。

 

 牢屋にいるアムールトラもまた、外で何か異常なことが起きているのを感じ取っていた。

 体内にいるビャッコも「何とかしてここを出ろ」と促してくる。セルリアンがここを襲っていることを看破しているのだ。

 

 アムールトラはビャッコの願いを改めて断った。

 この世界を救うために戦うことなんて無理だし、自分なんか誰からも必要とされていないと。

 しかしビャッコは「もしお前を必要とする者がいたら」と予言めいたようなことを告げる。

 

 その予言は間もなく的中することになる。

 ともえ達一行が牢屋の鍵を開けて、アムールトラの前に姿を現したのだった。

 刹那、アムールトラの体内にいるビャッコと、ロードランナーが持っている青いオーブが光を放ち共鳴しはじめた。

 どうやらともえ達の目にはビャッコが見えていないようだ。

 

 ビャッコ曰く、青いオーブには「我が同胞」が封じられているという。

 離れていても通じ合っている彼女たちは、連絡を取り合いながら同じ目的の下に行動していた。

 彼女たちの最終的な目的は、アムールトラに女王を倒させることであったが、それよりも何よりもまずは、アムールトラの味方になってくれるフレンズを引き会わせたいという意図があった。

 

 何が起きているかわからず、ぽかんとするともえ達を横目に、ビャッコは再びアムールトラを叱咤した。

 危険を顧みず助けにきてくれた彼女達の気持ちに答えるか、このままここで朽ち果てるのを待つか自分で選べ、と言い残してビャッコは姿を消した。

 具現化を長く続けたことで疲労してしまったようだ。

 

 ともえはハツカネズミから貰った鍵でアムールトラを解放したが、アムールトラはどうしたら良いのか迷い、すぐに動くことが出来なかった。

 いつまた暴走するかも知れないアムールトラにとっては、誰かと一緒にいることは恐怖でしかなかった。

 

 ともえ達はアムールトラを慮り、行動を強制することはなかった。

 自分達はもう行くから、後できっと逃げてほしいと言い残してその場から立ち去ろうとした。

 

 ・・・・・・が、その直後、ひと際大きな振動が地下牢を襲った。

 地下設備が停電を起こし、そのうえ浸水まで始まってしまったのだ。

 そしてラモリから衝撃の事実が告げられる。

 エレベーターがもう使えなくなってしまったと。

 

 暗闇の中ともえ達は、ラモリにライト代わりになってもらい、上に通じる別の出口を探すことになった。

 エレベーター以外の出入口はきっとあるはずだ、とともえは思った。

 でなければ、ホテルにいるフレンズたちに知られずにアムールトラを牢獄に運び込むことは不可能だからだ。

 

 もはや一刻の猶予もない。足元には海水が流れ込んで来ている。

 あれこれ考えを整理した結果、今いる地下牢の天井を調べることにした。

 すでに何度かここに出入りしたともえ達は、ここの天井が、はっきりとした高さがわからないぐらいに高いことを知っていたからだ。

 

 ラモリさんにサーチライトを出してもらい、天井を一通り調べた結果、不自然な凹みがあるのを見つけた。

 ここで鳥類であるロードランナーの出番だ。

 天井まで飛んでいき、不自然な凹みの横にある鍵穴に鍵を差し入れこじ開けようとした。

 

 が、しかしともえ達はここでピンチに陥った。

 ハツカネズミがくれた鍵によって、天井の隠し扉を開錠すること自体は出来た。

 だが外部から加えられた衝撃により区画全体が歪んだことで、本来なら開くはずの物が動かなくなってしまったのだ。

 

 ロードランナーがいくら力を込めても扉は動かない。

 浸水はみるみる内に進んでいき、下にいるともえ達が今にも溺れそうになっていた。

 ・・・・・・が、その瞬間、救いの手が差し伸べられることになる。

 ついにアムールトラが動いたのだ。

 

 彼女はその身体能力を生かし、地下牢の壁を三角飛びで駆け上がると、ロードランナーが開こうとしていた天井の隠し扉を、力づくでこじ開けた。

 ともえ達が土産物屋でロープを手に入れていたことも幸いして、無事に全員が地下牢から脱出することが出来た。

 一緒に来てくれることを喜ぶともえ達に対して、アムールトラは「お前たちを外に逃がすまでだ」と釘を差した。

 

 天井裏の隠し通路を進むともえ達。

 やがて一行は、どこまでも上に続く細長いパイプ状の通路にたどり着いた。

 そこには梯子が取り付けられていて、一列に並んでそれを登ることになった。梯子を上り切った先の扉を開けると、一行はついに地上への帰還を果たした。

 

 そこはジャパリホテルの外壁のどこかであり、すぐ下には足場に出来そうなベランダがあった。そこに降りて下の様子を一望すると、そこが海面からかなり高い場所にあることがわかった。

 ベランダはろくに手入れがされておらず荒れ果てていた。

 ともえ達が案内を受けたのも海の下のエリアだけだったことから、上の方には普段からフレンズが立ち入っていないように思われた。

 

 ひとまず危機を脱したので、イエイヌとロードランナーは改めてアムールトラに自己紹介をし、ともえはみんながまとまっていることを喜んだ。

 アムールトラはそれに対して、ここを出るまでの付き合いということを強調し、突き放すような態度を取りつつも、久しぶりに他のフレンズと話せたことや、ビャッコの影響で言葉を思い出しつつあることを内心嬉しく思った。

 

 とにもかくにも一行は、地下室で別れたハツカネズミたちと合流するために、下の様子を観察することにした。

 ・・・・・・ほどなくして、はるか眼下の海の上に、巨大なクジラのような形のセルリアンが現れるのを目撃した。

 ともえはデグーの言っていたセルリアンはあれで間違いないだろうと思った。

 場所はホテルの入り口である、海に面した中庭のすぐ近くだ。

 

 中庭には、脱出しようとしているのであろう数多くのフレンズが集まっていて、このままではセルリアンの犠牲になるのは時間の問題だ。

 ともえ達はなんとかしてこっちに注意を逸らせないかと思案した。

 だが下にはあんなにたくさんのフレンズがいるのに、都合よくこっちだけを狙わせる方法は思い浮かばなかった。

 

 焦るともえ達を横目に、アムールトラは自分の中にいるビャッコに呼びかける。

 アムールトラが聞くまでもなく、ビャッコが彼女の疑問を察してくれた。

 あのセルリアンの狙いについてだ。

 仮に女王の命令で動いているのなら、恐らくは、自身の脅威となり得るアムールトラを狙っているのだろうとのことだ。

 ならば他のフレンズを巻き込むわけにはいかない、とアムールトラは思った。

 

 アムールトラはともえ達に「自分が囮になりに行く」と告げた。

 自分は今すぐここから飛び降り、壁を伝って下に降りるつもりだと。いっぽうのともえ達は、ホテル内の階段を降りて下に行けと。

 ともえ達が下に着くころには、きっとセルリアンを引き離してみせるから、その間に他のフレンズと合流して逃げろと伝えた。

 

 アムールトラの有無を言わさぬ硬い意志を感じ取り、決断の速いロードランナーは、すぐにホテルの中に入っていった。

 しかしともえとイエイヌは迷い動けないでいる。

 

 アムールトラはともえに対して、彼女がプレゼントしてくれたブローチを返すことにした。

 激しく動き回ったら落としてしまいそうな気がしたからだ。

 しかしともえは「こうすれば落とすことなんかないよ」と、アムールトラの胸にブローチを留めてあげた。

 

「かならず生きてまた会おう」と約束してから、アムールトラとともえ達一行は別れた。

 アムールトラは爪を突き立てて垂直なホテルの壁面を下り、眼下の海上で暴れるセルリアンへと向かって行った。

 

 海上ではアムールトラに先んじて、巨大セルリアンと戦っているフレンズがいた。

 オオコノハズクとワシミミズクだ。

 地下室にてともえ達と別れた後、ホテルのスタッフたちと協力して宿泊客を逃がそうとしていた矢先に、海中から現れた巨大セルリアンに襲われたのだ。

 

 キョウシュウのリーダーである彼女たちはかなり戦闘慣れしており、使いこなすフレンズが滅多にいない野生開放をも習得していた。

 巨大セルリアンの攻撃を躱しながら、幾度も超スピードの爪の一撃を浴びせ続けたが、その堅牢な外皮には、自分達の攻撃がまるで通用していないと悟った。

 

 2人の脳裏に昔の記憶がよみがえる。

 姿かたちは違えど、このセルリアンは、自分達がかつてキョウシュウエリアで戦った「4本足のセルリアン」とそっくりだということを。

 あの時は、キョウシュウのフレンズたちの力を結集し、さらに「ヒトのフレンズ」が頑張ってくれたために倒すことが出来た。

 しかし今のこの状況は、あの時よりもさらに絶望的だと思った。

 

 とつじょオオコノハズクの動きが遅れた。

 巨大セルリアンが繰り出した触手に捕まってしまったのだ。

 しかしワシミミズクが必死になって触手を切断しオオコノハズクを救出した。

 

 だが今度はワシミミズクの方が何本もの触手に巻き付かれ、みるみるうちに引き込まれてしまったのだ。

 セルリアンに飲み込まれていくワシミミズクを、オオコノハズクがいくら頑張って引っ張り上げようともビクともしなかった。

 ワシミミズクは覚悟を決めた。自分にとってオオコノハズクは大切な存在であり、彼女を守れるのなら自分の命がどうなっても構わないと思った。

 

 ・・・・・・が、ワシミミズクはすんでの所で助けられた。

 アムールトラが上から現れ、巨大セルリアンの背中に飛び乗ったのだ。

 彼女はオオコノハズクを遥かに上回る腕力でワシミミズクの襟首を掴み、セルリアンの体表から引き抜いた。

 

 オオコノハズクたちは大急ぎでアムールトラから離れた。

 2人のフクロウはアムールトラに助けられたとは思っていない。彼女たちにとってビーストもまた恐ろしい怪物だからだ。

 何が起きたか理解できずに、安全な所から状況を見定めるしかなかった。

 

 そんな2人を後目にアムールトラは巨大セルリアンに戦いを挑む。

 背中に飛び乗ろうとも一筋縄ではいかない相手だ。

 無数の触手を生やし、鞭のように振るってくるセルリアンに対して、アムールトラは早くも防戦一方に陥った。

 

 一撃をくらい、セルリアンの背中から叩き落されたアムールトラが落下したのは、ジャパリホテルの入口である、海に面した中庭だった。

 脱出するために集まっていたフレンズたちが、アムールトラを見て恐怖の声を上げる。

「セルリアンだけでも絶望的なのに、さらに怪物がもう一匹現れた」と戦慄しているのだ。

 

 アムールトラはあらためて、自分がフレンズたちから恐れられ嫌われていることを実感した。

 そして彼女たちには構わずに巨大セルリアンに対峙する。

 船のような、またはクジラのような異様な姿を見上げていると、アムールトラの奥底で眠りに付いていた「ビースト」の意志がふたたび頭をもたげた。

 暴力的な衝動に支配され、戦うこと以外は考えられなくなりそうになっていた。

 

 正気を失いそうなアムールトラをビャッコが叱咤した。

 このままでは誰も助けられない。ともえのことも、それでもいいのか、と。

 その言葉によって、アムールトラは住んでのところで正気を取り戻すことが出来た。

 

 冷静になったアムールトラが取った行動は、敵から逃げることだった。

 セルリアンの狙いが自分であることはわかっている。

 ならばやることは一つ。注意を引き付け、フレンズたちがいる中庭から遠ざけるために、壁伝いに横方向に移動するのだ。

 そうすれば、船のような体のセルリアンには手の出しようがない。一定の距離を保ったまま追跡することしか出来ないだろう。

 

 が、そんなアムールトラの目算は、敵の驚くべき行動によってひっくり返された。

 セルリアンの全身が融解し始め、海中に沈んで見えなくなってしまった・・・・・・かと思いきや、ほどなくしてセルリアンは再び浮上し姿を現した。

 直前までの船のような姿とは違う、8本の長大な足を生やしたクモのような姿だ。

 

 巨大蜘蛛と化したセルリアンは、垂直なジャパリホテルの壁をよじ登ってアムールトラを追跡し始めた。

 アムールトラは爪を突き立てて、壁面を上へ上へと登っていくことで逃れようとした。

 

 アムールトラにはある狙いがあった。

 このジャパリホテルがどれほど高いのか知らないが、いずれは屋上に辿りつくはずだと。

 そうすればセルリアンと一対一で戦えると。

「化け物同士、最後までお前に付き合ってやる」と、内心独り言ちながら、セルリアンを上へと誘導し続けた。

 

 to be continued・・・




 過去編は1人称で進めましたが、現代編を書き始めた当初は3人称と1人称がごちゃ混ぜになったような形式でした。
 改めて小説の知識が何もない状態で書き始めたな、と思います。今もないけどね。

_______________Story inspired by________________

“けものフレンズ”  “けものフレンズ2”
      byけものフレンズプロジェクト

     “けものフレンズR”
      by呪詛兄貴
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