「手が足りない、魔術師たちを連れてきて!? 連中の砲撃が必要になったら屋根の上から撃たせなさい!」
「ウォーリア隊の負傷者が運ばれてきました!」
「ハンター隊の護送してきた労働区の住民も一緒です!」
「わかりました、すぐに向かいます!」
「いてえ……いてええええ」
「息を吸って、吐いて――。ええ大丈夫です、貴方はきっと治しますからね……」
「! しもべの接近を確認――待って、貴方はまだ怪我がっ、……ごめん、ごめんなさい! お願いだから司祭さまが到着するまでは死なないでよ!」
天井の一角が崩れ落ちた教会の中は騒然としていた。
タルパ労働区、その中心に座す中央教会――ヴァールハイト帝国唯一の宗教組織の保有する幾つものの教会の一つ。
突如天から
区画の住民の心の拠り所として機能した、穏やかな静謐に満ちていた空間。怒号と悲鳴、呻き声の飛び交う場へと変貌した教会の中を、無線や医療器具、
「負傷者の輸送は!」
「もうじ4台目の機動車両が到着するとの連絡が――、来ました!」
「中にありったけのシートを敷いて! ――これから運びますよ、楽にしてくださいねえっ……せえっの!!」
教会前でつんざくような擦過音を立てながら停車した機動車両。人外の徒との戦闘行為も視野に入れた鋼鉄の大型車両にできる限りの処置を行った怪我人が運び込まれていく。
負傷者の中には光のしもべと戦い、そして倒れた機動の人員も含まれていた。光の残り香に触れ身体の大部分を焼かれた者、あるいは調査中にしもべの群れを相手取り袋叩きに遭った者。プリーストたちが即座に回復できる限度を超えたと判断された人員を中心に積み込まれた車両は、メタルテクニカル社へと運び込まれていく。
そんな中。教会で処置を終え機材を抱え労働区を走る少女を、背後から伸ばした手で掴み止める。
「え、エミリアさん……!?」
「……フレンダ、顔色が悪いわよ。一旦スキルの使用も停止、クールタイムを置きなさい」
「い、いえ副隊長。わたしは──」
「そこまでいけば自覚症状も有るでしょう。焼き切れるわよ。どうしても素直に休めないなら運搬作業と施術の補助、炊き出しの手伝いにでもいってらっしゃい。言っておくけれど倒れても私は過労で倒れた貴女にわざわざヒールをかけるつもりは……いや待って、倒れたプリーストを蘇生させた後の作業効率はどのくらいかしら。ゾンビ戦法で24時間駆動の戦線維持はいけるか……?」
「や、休ませて頂きます!」
「あ、待ちなさいなんならもう少し手伝ってくれても──……行ったか。まったくとっととそうしてればいいものを……」
注意、警告、時々脅迫。ありったけの言葉をぶつけても尚働き続けて教会での活動を支えてきた少女がようやく休息に入ったのを確認し、白を貴重とした中央教会支給の衣服の上から右肩から先が露出するように袖の切り取られた赤黒いコートを羽織る修道女はやれやれと息を吐く。
「──おやおやまあまあ。随分とまあお疲れのようですね、副隊長殿」
足音。気配を隠すこともなく背後から近寄ってきた相手を一瞥して、金髪の美女――エミリア・センベルン・トワイライトは鼻を鳴らした。
「……ええ、まあ。イグナーツ隊長は、この状況下で随分と余裕そうですね。何か進展でも?」
「刺々しい反応ですねぇ、上司がそう張り詰めた顔をしていては部下のコンディションにも影響がでますよ? ほらスマイル、スマーイル!」
「……」
些か不本意ではあったし、この胡散臭い眼鏡のいうことを素直に聞く気にはなれなかったが──指摘そのものを否定することは、できなかった。
労働区の大半を消し飛ばした第一の光と、それに伴う生物の暴走、しもべの大量発生。光が堕ちてから数日間戦線の要となって調査活動を支えていたウォーリア隊が
そんな中で目の前の男のように飄々と振る舞うのはとてもできるものではないが──それでも、必要以上に固くなって周囲を無為に緊張させるのは本意ではない。
「……気遣いには感謝しますが、それならフレンダに声をかけてください。隊に配属されてから3日も経っていない新人なのに、ここに来てからずっと働き続けてやめないんですよ」
「ああさっきの娘。しん……新人。えぇ……、新人かあ……」
どうせ声をかけてくる前から自分たちのやりとりを伺っていたのだろう。おどけたような態度をひっこませ、頬を引きつらせたイグナーツにさもありなんと頷く。
フレンダ・ウィットウェル。プリーストとしての適性を見出され、数時間程度の新人研修を済ませた直後に最前線に放り込まれた新人。
中央教会でごくごくありふれた修道女として活動していた頃はほとんど血に触れることのなかっただろう彼女は派遣されたこの場で労働区の惨状を知り、血みどろの負傷者たちの運び込まれた救護現場を診ては胃の中身を吐き出して。重傷を負った機動兵団が蘇生されては戦場に送り出されるのを涙ながらに見送って──吹っ切れたと、いうことだろう。二日目には前日の消耗をみせることなく教会を奔走する彼女の姿が見えた。
それを成長ととるか、適応ととるか。少なくともエミリアには、素直に喜べるものとして彼女の変化を捉えることはできなかった。
「彼女だけじゃありません。多くの隊員が、身を削るようにしてこの場を支えています。けれど休むという選択肢を自ら放棄しているような状況が続けばいずれ限界がくる──、隊長、一言かけて貰えると」
「えー、別にいいんじゃないですかね? 放っといて倒れないぎりぎりっってくらいまでがんがん働いてもらいましょう」
「――」
反射的な罵声を抑え込めることができたのは、疲弊し鈍った頭を律する理性の賜物か。白髪の男性の言葉を反芻し、状況と照らし合わせ、エミリアは苦悶するように唸る。
「……ええ、分かります、分かりますとも」
「気持ちは理解できますけどねえ、少なくとも今は、狂うだけのリソースもなくなるくらいにはきりきり働いてもらわないときついですよ」
自害されるだけならまだしも暴走されてしまってはどんな事態に陥るか分かったもんじゃありませんし。
そう
この戦場では、誰もが平等に追い詰められている。
労働区の『失われた世代』、獣たち、覚醒者――今も教会に座し負傷者の保護、治療に取り組むプリースト隊とて、それは例外ではない。寧ろ調査活動を中心となって行っているだけあり、ある意味では機動の大半より光という危機のどうしようもなさを理解した人員といえた。
自分のできることを理解し、己の手が届く限界まで挑む。口にするのは簡単なことだが、そんな状況を恐慌状態に陥ることなく構築できているだけでも奇跡のようなものなのだ。
不幸中の幸い。考える暇もないくらいに忙しなくしているが故の安定か。
「堕ちた光による環境の変容、しもべの発生は労働区だけじゃぁありません。鉱道、たまわりの森、山脈に広野……他国との通信施設が一向に繋がらないのもこれらの地域の変質だけが原因ではないでしょう。調べなければならないことはあまりに多い、未知の脅威に挑むストレスは馬鹿にできませんよお?」
「……カウンセラーは欲しいところですね」
「……んーーー不要とまでは言いませんが効果的ではないんじゃないですかね。心身ともに休まる場所が必要ですよ。娯楽! 中央教会で娯楽施設作りましょう! ゆったりと読書をしながら過ごせ! 温かな湯に浸かり身を休ませ! 甘いものを好きな時に好きなだけ食べられる空間を!」
「娯楽も結構ですけど……、それを利用できるだけの休暇を隊長が確保するのは不可能に近いのでは……?」
「!?!? あれ私そんな酷使されるんです!?」
ぎょっと目を剥いて叫んだイグナーツのノリのいい反応にくすくすと笑う。基本的に胡散臭く、陰湿で、多分帝都の裏側を牛耳る黒幕の一人。そんな信用ならない男ではあったが――軽いからかいにもこうして応じてくれる気安さとささやかな気遣いにはありがたいものがあった。
『z。zぃジ……』
「おや、そろそろ定期連絡の時間ですか」
「えぇ。ウォーリア隊の到着日時や運送予定の機材の確認、調査内容の報告もしなけれ、ば――」
着信を知らせるように画面を明滅させる無線を手に取り、通信に応じようとする。空からそれが堕ちてきたのは、その時だった。
地面に激突し、イグナーツとエミリアのすぐそばを擦過音と共に転がるヒトガタの金属塊。砂埃を巻き上げ破片を散らしながら動きを止めたそれを見て、イグナーツが目を見開いた。
機械仕掛けの五体、ソウルの輝きを漏らす動力炉。ところどころ欠損し罅割れたそれは、紛れもなく機動に所属する魔術師の作成し、多くの人員を要する戦場を支えるべく各地へ派遣されていた戦闘人形であった。
「これは……、レヴィスさんの配置した、ゴーレムですよね?」
「えぇ、そしてこれは……」
――教会の防衛線の構築に、利用されていた筈だった。
『z、ザ――聞こえますか、プリースト隊の皆さん!輝度の爆発的反応が観測されました。ガンナー隊の応援が向かっています、ただちに避難を開始してください……!』
緊急回線が繋がれ、切迫した情報部の人員の警句が響く。
『災厄種――疾風のバルノクが出現しました!ただちに討伐を……!』
「――、っ!?」
轟音。
そのしもべの名を聞き届けるなり走り出した直後、目の前で教会の屋根が崩れ落ちるのに、思わず絶句する。
「ま、ずっ」
「ぁ――」
そこ、は。
労働区の住民に対する慈善事業の行われていた場所だ。
避難した労働区の難民を受け入れていた場所だ。
負傷した機動兵団員の治療をしていた場所だ。
――自分たちの部下が、居る場所だ。
「ふざけるな……!」
暴風を巻き起こす怪鳥の姿を確認するまでもなく、走り出す。
****
光。
帝都から視察に訪れていた王妃とその護衛であった聖騎士の部隊を巻き込むようにしてタルパ労働区に堕ち、そして爆ぜた災害――それは、人を、獣を、大地を残酷なまでに平等に呑み込んだ。
犠牲者10万人、行方不明者100万人。そして、光を浴びた生物の変質。自我を失い暴走する異常進化を遂げた生物たち。メタルテクニカ社社長であるファウスト・エルデムに『光のしもべ』と呼称される彼らを討伐することで調査活動の安全を確保し、被害者たちの保護、誘導を行うのが当初の機動の想定であったが――光の墜落から三日目にして彼らの動きを阻んだのが、突如現れたその特異個体だった。
『kyeeeeeeeeeeeaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』
災厄種――疾風のバルノク。
遭遇したウォーリア隊の部隊を圧倒し、多数の負傷者を出して撤退にまで追い込ませた災厄種。
『『『――』』』
「……うるっっせぇ!!!!」
「くそ、危なかった……このツケは高いぞ、忌々しいしもべめ……!」
教会に保護され処置を受けていた難民たちが言葉も失って見守る中、崩れ落ちた天井の瓦礫の中から破片や石塊を吹き飛ばすようにして、この教会の防衛にあたっていたガンナーとウィザードが進み出る。
「あぁクソ、例の災厄種か?!」
「っ――落ち着いてください、皆さんは私たちが守ります――」
「出口に殺到させるな、確実に誘導する!カーディナルブック起動――
日の光が差し込む文字通りの意味で開け放たれた拠点から怪鳥の存在を確認するなり速やかに動き出したプリースト隊の人員。結界を展開し難民たちの恐慌をせき止めるようにして矢継ぎ早の指示を出す。怪我人と老人を優先して避難していく様子を見守り、魔術師の青年は苦笑した。
「まったく、迷惑をかける。……中央教会に借りを作るのは避けたかったんだがな」
「はは、まあ気持ちはわかるよ。だけど俺たちの不手際で守るべきやつらを死なせる訳にはいかない――!?」
銃撃、連射をもって撃ち落したのは4枚の羽根。
己を脅かし得る覚醒者を狙った《疾風》の攻撃を負傷しながらも対処した狙撃手が凍り付いたのは、しもべの攻撃によるものではない。
その、余波――廃墟同然でありながらも、臨時的なプリーストによる結界の張られる教会の外にいた労働区の住民が、突如として現れた竜巻に攫われて上空まで吹き飛ばされていたのを、目にしてしまったからだった。
『あっ、ああああああああああああああああああああああああ!!!!???』
「ま、ず」
「させん!」
事前情報と一致する交戦時の特徴から今の現象もまた《風》の属性を操ることによって生み出されたものと判断――対応するように魔術師もまた、命を預ける得物であるロッドを用いて風のソウルを手繰り寄せる。
「えぇい詠唱などまだるっこしい――
今にも複数発生した竜巻に擂り潰されそうになっていた男性が、竜巻を霧散させた風の刃、同時上方から身を叩き落すように迫る烈風によって怪鳥の射程圏から強引に逃れる。
既に高度10m近くまで巻き上げられていた彼がそのまま地面に墜落してしまえば、そのまま命を落としてしまうことは想像に難くなかった、が――更なる、風。
意識の失った男性の下方で炸裂した風が、クッションとなって落下速度を著しく弱める。落ちる勢いの弱まった男性を、飛び出した射手がしっかりと受け止めた。
『aaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』
「っ――」
「セイン!」
竜巻からの救出劇。本来詠唱を要する魔術を無理に使ったことで生まれたあらかさまな隙を、相対する《疾風》がみすみす見逃す筈はなかった。
銃撃による牽制は暴風に阻まれ射線も碌に通らず、ウィザードの装備には即興で防備を整えられるような術式は搭載されてない。暴風と共に飛来する羽根を身をかがめやりすごそうとしたが――最初にシルクハット状の防具が頭から弾き飛ばされ、次に胸板を複数の羽根が直撃した。
「かっっ……!」
鳥類のものとは思えぬ鋭さ、そして重さ。胸部を覆う装甲に阻まれ刃は通らずとも衝撃は通る。吐血してたたらを踏み、そのまま教会の前で崩れ落ちそうになって……ぼすん、と横から伸びた腕に支えられた。
「随分と、無茶をしますね」
「ぁ――?」
咳きこみながら、見上げる先。怜悧な美貌に呆れたような表情を浮かべながら、金髪のプリーストが自分の身体をまさぐっていた。
「な、やめ触るな――っっっ!!」
「左腕が炭化しかけてるじゃありませんか。まさか自分たちごと巻き込んで魔術を行使したんですか? 全く被害が出ていないから何があったのかと思えば……」
教会の屋根が崩落した時。天井が丸ごと落ちたとは考えられないくらいに怪我人も少なく、また瓦礫も少なかった。
つまり――戦闘の余波に建物が耐え切れないと判断した時、即座に最大火力の魔術で丸ごと消し飛ばしたのだろう。
自傷も厭わず、天井の崩落で内部の人間が生き埋めになることがないように。
「っ。うぉっ、があああああ!?」
握られた腕に灯る光。癒術が施されるとともに蘇った神経が伝達する苦痛に悶え苦しむ魔術師の青年を横たわらせ、光を放つ一冊の書を掲げる。
「
「
「いえ、支援は貴方にお願いします。私が仕留めますので、イグナーツ隊長が怯ませたタイミングに合わせて打ち上げてください」
「?」
「グレンさんが撹乱してくれていますが──やはり単独では無理があるようですね。私も行きます」
「?? いや待て、流石にプリーストでは……おい!?」
僅かな混乱。止めることも叶わぬまま、女の細腕を掴もうとした手が空振る。
「……は?」
危うくかき集めた風のソウルを暴走させそうになりながら、ウィザード隊の青年は目を見張る。
見間違いではない。現に今もまた、腰まで伸びた金色の髪をなびかせながら分厚いブックを、時に拳を叩きつける形でバルノクの攻撃を打ち払いながらしもべへ向かって接近していった。
回復と支援に特化した本来のプリースト隊の様子からは想像もできなかった苛烈な戦闘スタイルを見せるエミリアに、言葉を失う。そんな魔術師に向かって悠々と歩み寄ったのは、避難誘導、光の災害に触れ緊急の治癒を必要とした労働区の住民に対する処置を終えた白髪の男性だった。
「驚いたでしょう?」
「イグナーツ氏……」
「彼女は中央教会に来る前はかなりの武闘派だったみたいでしてね。機動に配属された時も熱くウォーリア隊を希望していたようですが、貴重なプリーストとしての適正が発見されまして。需要と本人の技能、を踏まえた結果この部隊に配属され──えぇ。そのまま闘うヒーラーと相成った訳です。遊撃向きすぎて嫌になりますね、その内私の補佐からも外されちゃいそうです」
「何を言っているんだ」
「あーたの困惑する気持ちもわかりますが、まあ詳しい話は本部に戻ってから適当にお調べくださいな。あまり長話しているとどやされちゃいそうです」
待機状態に移行し燐光を灯す
そう簡単にやられこそしないが、戦況を好転させるだけの決定打も与えられない膠着状態。それを確認し、イグナーツは口元を歪めながらスキルの行使に移る。
「最初の交戦時。散々蹴散らされたウォーリア隊が覚醒状態に移行し反撃しようとすれば即座に逃走――えぇ、奴の飛行能力もそうですが、一番厄介なのはその知性ですね。他のしもべと違い暴走するソウルに呑まれただ狂うだけではない――。これは光の墜ちた当日に発見された《白狼》にも共通する事項ですね」
「結論。災厄種を野放しにするのは非常ぉぅに、不味い。何せ危険を察知して逃げるだけの脳があるならきっと学習能力もあるでしょう」
まだ情報が足りない。災厄種に関しての調査がまだ進んでいない以上一度見せた手が次は通用しない可能性を否定することはできなかった。
ならば、どうするか。
答えは分かり切っていた。
「シンプルイズベスト。怯ませ近づき捕まえて――確実に始末するってことですねえ!」
「――なら、任せよう」
ロッドを握り疾駆する魔術師をにこやかも見送ったイグナーツの手の中で、勝手に開かれた書物がばらばらと頁を捲っていく。ブック、プリースト隊を象徴する武器種であり、ブックに宿るソウルや属性を解き放つ特殊兵装。
プリースト隊設立当時、中央教会の教えに則り他者への攻撃よりも自分や仲間の幸福を重んじることを良しとした理念を引き継ぎ攻撃には決して向いていない武器ではあるが――安易に刃を手に取りはしないからこそ、できることがある。
「動きを止める、それだけのことで構わないのならば。ありがたい奇跡のほんの一欠片でこと足りるってもんです。お受け取りなさい!」
――
回復のスキルに秀でたプリーストの唯一操る聖属性の一撃も、火力を確保するなら相応の溜めというものが必要だ。そんな真似をすれば危険を察知した《疾風》が襲い掛かってくるならまだマシ、最悪そのまま飛び去られてしまう。
であれば、威力など必要ない。
ただ、光るだけ。本当にそれだけのことでも――目の前で唐突に光が爆ぜたら、動きも止めたくなるというものだった。
『―――――――!!??』
「これは……!」
「来た!」
幾度となく銃声を浴びても戦闘中常に展開されていた竜巻が、見る影もなく
受け止めた羽根を握り潰し、砂埃に汚れても尚その眼光を鈍らせぬままエミリアが吼える。それに応じるようにして、これまで幾度となく射撃を無力化してきた暴風のなくなった戦場で、銃口が閃き――鮮血が散る。
隙が、広がる。自慢の翼を穿たれ絶叫するバルノクに、ブックを放り捨て素手のプリーストが駆け、跳躍するが……まだ少し、高い。助走の勢いも乗せ全力で飛んでも、尾羽を掠めるのが限界だろう。
だから、それが必要だった。
「地よ、我が猛りに応えよ――」
「……ああ、それでいい」
岩を。土を。地のソウルを操ることで地面を変動させ、
だが今回ぶつけるのは、杭ではない。
エミリアという砲丸を、宙のしもべへと叩きつけるに足る、戦槌だ。
「アースジャベリンっっ!!」
「――やれやれ、ようやっと一段落ですか。まったく嫌になりますね」
眼鏡の奥から覗く視線の先では、再展開された荒れ狂う風もほとんど意に介すことなく、片方の手で翼を握り潰さんばかりにしかと掴み、高々と自由な方の腕を掲げる女の姿があった。
既に十分滾っているのだろう、振り上げた拳は煌々とソウルが輝き、そこに秘められた確かな破壊力を感じさせた。心なしか全身も光を発しているように見えるのも、彼女の操る強化魔術のみに依存したものではない。
――
「災難なことです。……その娘のゲンコツ、痛いじゃすまされませんよ?」
解き放たれた一撃。叩き込まれた拳が熟れた果実のごとくバルノクの頭部を粉砕したのに、イグナーツは思わず肩を震えさせた。
・エミリア・センベルン・トワイライト
みんな大好き頼れるお姉さん。俺が大好き殴って闘うバーサクヒーラー。格上相手には自壊しながら強くなり続ける強化魔術と治癒を並行して戦っていたりする。
・ガンナー
実はこの時点ではヤスミンさんもまだ機動にスカウトされたばかりだったり。ヤスミンやゲロルトがくるまで複数の部隊長兼任していたレオカディオのもとで頑張っていた。ヤスミン隊長がきてから単発ガチャで大当たりしたので崇めているとかどうとか。
・ウィザード
爆裂魔法に憧れていたり。瓦礫撤去に大技使って自傷する辺りまだまだ半人前。書いててセリフがポンポンでたため今後は強い言葉を吐いてフラグ建てながら強力なしもべに半殺しにされる役として出演予定。
・レヴィス
ウィザード隊に所属する人形師。
原作ストーリー上では根絶やしにされた、攻撃魔術だけではない独自の家系の秘術を受け継いだ魔術師を出したかった。
考察してたら上手いこと筆が進みました。ss書く楽しさを久々に思い出せた。モチベーションに直結するのでどしどし感想ください。
次回の禍つヴァールハイトは!
「伝説の傭兵現る」「セイディたんかわいいっていえ 」「災厄種を殺す者」の3本です!
ウフフフフフ