艦娘計画1
新世界歴100年、帝国歴71年、新生大日本帝国帝国議会
「だから、今この国難を乗り越えるためには、これしかないんだ!それとも君達は帝国が滅んでも構わんというのか!」
「我々とて、現状を打開する手伝いをしたいと思っている。しかし、"意志持つ人型の兵器"なんて、承認できるわけ無いでしょう!反乱でも起こされたらどうするんです?今よりもさらに悪化する危険もあるんですよ!」
議場は、怒号の飛び交う、ある意味無法地帯になっていた。議題は今年度の予算。揉めているのは、国防省海軍局の代表者達と、行政省財務局の代表者達だ。
新生大日本帝国帝国議会は、全国から選挙で選ばれた189人の議員と、各局の代表者数名で構成される。議長は与党の中から選任される。
基本的に、議会で承認されたことは、帝国五権(監督省、国防省、司法省、立法省、行政省)の中において絶対であり、五権の介入を許さないようになっている。
但し、国家予算については、行政省財務局の介入が許されている。と、いうより財務局に一任されていると言って良かった。
つまり、どういうことが起こるかというと、
その他の省、局「予算増やせ!」
財務局「No。」
こういう構造が出来上がる。
中でも、国防省と財務局の仲は最悪と言ってよいほどに悪かった。
軍拡を進めようとする国防省と、内政を充実させようとするスタンス(つまり、やや行政省寄り)の財務局では、対立するなというほうが無理であろう。
これまでにも、このような言い合いを数多くやって来たため、議会の春の名物、とまで言われていたほどだ。(予算委員会は春の3月から4月にかけて行われるため。)
しかし、今回は少しばかり事情が違っていた。特に、国防省の代表者の必死さが大きく違っていた。
「それについては、セーフティを掛けるから心配ないと言っているだろう!それに今はそんな下らないリスクの話をしていられるような状況か?!奴ら、"深海棲艦"はもう沖縄近海まで迫っているんだぞ!」
海の底から突如として出現したとされる謎の艦艇軍、"深海棲艦"。これによって、人類は制海権を喪失した。
海運は麻痺し、あちこちで空襲があり、民衆の生活はぎりぎりまで追い詰められていった。
太刀打ちしようにも、奴らは障壁によってこちらの攻撃を無効化してしまい、歯が立たない。
世界各国の海軍保有量が、この一年間で4割近くにまで減少したといわれている程にだ。
東洋一の海軍国家といわれた日本も例外ではなく、この一年間で、フィリピン、インドネシア、マレーシアなどの植民地から撤退している。
そして、その毒牙は、ついに本土にまで迫ろうとしていた。
そんな中、海軍局はある兵器の開発に成功する。それは、深海棲艦と同じように人型であるためか、彼らの張る障壁を打ち破る能力を持った"意志ある兵器"。
艤装と呼ばれる武器を使うこと、そしてその容姿が皆可憐な少女のようであることから、海軍局の者達はこう名付けた。
"艦娘"と。
深海棲艦出現とほぼ同時期に、存在が確認されたされる謎の存在"妖精"。
彼らの力を借りねば作ることができないが、それでも現状を打開するだけの力を彼女たちは持っている。
そう判断した海軍局はすぐに、全国に艦娘を配備し、深海棲艦に対抗。その後時期を見て反攻作戦を行うという趣旨の「艦娘計画」を立案し、これを実行するための予算の増額を財務局に求めていた。
普段は、なにかと理由をつけて予算の増額を渋る財務局だが、今回ばかりは承認してくれるだろうと海軍局の上層部は考えていた。彼らとて国を思って仕事をしているはずだ。国の危機に対しての打開策を、みすみす頓挫させるような、そんなことはしないはずだと。しかし、
「そのセーフティもどこまで信用できるのやら、それに今は空襲を受けた地区の復興に多額の予算が必要なんだ!そんなハイリスクで効果も出るかわからない兵器の量産、配備のための金なんて無いんだ!」
「貴様!」
結局何も変わらなかった。いや、財務局からすれば変わることなど不可能なのだ。
ある意味独立国家のような強力な権力を持つ財務局であるが、それでも所属する行政省の意向は無視できない。
「直したところで、また空襲されては意味がないではないか!」
「だが、民衆はそれを望んでいる!それが民意だ!復興もせずによくわからん兵器に多額の税金をつぎ込んでいる余裕はない。わかったか!」
議員の日高は、この二人のやり取りに冷めた視線を送っていた。
(下らん。非常に下らん。お互いに時間の浪費というのがわからんのか。)
軍部は国のために、新兵器の配備資金等を寄越せと言っている。財務局、この場合は行政省か。彼らは民衆のために、復興予算を確保しようとしている。
お互いに筋が通っているため一向に話が進まない。
今ここで、どちらの意見を尊重するか議会で投票してみても良いが、恐らく渋ることだろう。
何故か。議会は、というよりそれを構成する議員は国民の代表であるからだ。
もっと分かりやすくいうと、国民によって選ばれた者達だということだ。
つまり、国民が自分の意見と違う考えだったとしても、それに従わなければ彼らは議員ですらいられなくなるのだ。
彼らとて、海軍局の言うとおりにしなければならないことぐらい分かっている。さもなくばこの国が滅んでしまう可能性もあるのだから。
しかし、先ほども言った通り彼らは国民の代表だ。民意は無視できない。
ここでもし、海軍局の言うとおりにしてしまえば国民の信頼の失うことになりかねない。そして議会の解散なんてことになってしまった場合、呑気に選挙をしている余裕が果たしてあるのだろうか。結局、国としての足並みも揃わないまま滅ぶことになるだろう。
つまり、どちらを選んでも国の滅亡しか見えてこないわけだ。
そんなことを選べと言われて選べるわけがないだろう。
誰だって、国の滅亡の張本人になるのは嫌なはずだ。例え自分が国と共に死ぬとしても。
よって多くの議員はこのやり取りを傍観するつもりしかない。実際、ほとんどが我関せずという顔と、早く決めろよ、という顔をした(自分は決める気のない)者ばかりである。
だからこそ、
(貴様らそれでも本当に国民に選ばれた議員なのか?こういう時のために"あれ"があるというのに。)
日高はイライラせずにはいられなかった。
政治は汚職にまみれ、やがて腐敗していき、そして崩れていく。それはこの国でも例外ではない。
今この議場にいる殆どが、親やその知り合いのつてで議員になった者ばかりだ。
一応、議員は国民の投票によって決まるものだが、著名な元議員や経済界の大物等がバックにいて、本当に平等な選挙活動を他の者が出来るのか?
結局、金持ちで世渡りのうまいやつが楽に議員になっている。だから、政治の勉強なんて最低限もしない。議員になったらそれっぽいことをして、国民の機嫌をとっていけばそれだけで必要経費という名の賞金が手に入る。
あとはその金で悠々自適な生活を送る。それだけだ。それだけの議員が、今この議場に何人居るのか?一人いても胸くそ悪いのに、百人を遊に越すなど、堪えられない。
(まあ、いい。)
今そんなことを考えたところでどうにもならない。今自分にできるのは、腐った無知な奴らに見せ付けてやることぐらいだ。
日高は手を挙げ「議長。宜しいでしょうか?」と言った。議員が議長に意見申し立てするときの慣例だ。シンと静まり返る議場。「どうしました?日高議員?」と返す議長。
(この場にいる無知どもに目にもの見せてくれる。)
マイクが来るまでの間、日高は口の中でククッと笑っていた。
艦これ春イベ辛いよお、陸上型が倒せないよお。